NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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008.支援物資輸送任務 完了

 初めて人を殺した感触はまるで薄い壁をただ殴って穴をあけたようなものだった。

 それぐらい抵抗なく無抵抗で。雷遁を身に纏い千鳥で武装したオレの腕は人の身体をいとも簡単に貫通した。

 

「うぐっ・・・」

 

 返り血が身体に降り注ぐ。もともと4歳児の身体のオレだ。大の大人の胸を貫くとなると直前での跳躍がある。今は腕が人の胸に突き刺さってて足は身体ごと宙に浮いている。情けない。みっともない。目も当てられない。

 両足で相手の肩を蹴って、一思いに、一気に腕を引き抜く。

 

 無様に転んだ。受け身をすることなく後頭部から地面に落ちた。痛い。

 

 栓になっていた腕を無理矢理に胸から引き抜いたため、更に返り血を浴び、4歳児の平均もない低身長なオレの身体はほぼ全身真っ赤な鮮血で染まった。

 

 ポッカリと胸のところに穴の開いた男は、オレが蹴った拍子に後ろに倒れていった。男を拘束していたジュウの影はすでに引いている。引いた分の影は隣の別の男を更にきつく拘束するために移動していった。

 

 血の臭いがひどい。口の中も鉄の味がする。忍びをやっている以上、いつかは人を殺さなくちゃいけないことも起こりうるというのは知っていたし、嫌だ嫌だといいながらも漠然とした覚悟なら随分前からしていた。でもいざこうなったとしたら、もっと発狂するかとも思ったし、もしくは吐き気でもして実際に吐くかとも思っていたが今の気分はなんだろう。思ったよりも冷静な自分がいた。冷酷に今の状況を見て、考えてこの後なにをしなければならないか頭を働かせている自分がそこにはいた。

 

「次」

 

 右手にまた雷の塊が顕現する。次の標的とされた男の表情が強張る。チッ、チッ、チッと鳥の鳴き声にも似た独特なこの音が男には死が忍び寄る音に聞こえているのだろう。

 

「や、やめッ」

 

 それがその男の最期に発した言葉となった。

 

 

 

 

 

 残った最後の1人はオレが貫くまでもなく、その前にジュウの影首縛りで息絶えていた。

 それからの行軍は正直あまり記憶がない。

 その場から離れる前に土葬くらいはしてあげたのだろうか。それともオビトの火遁で火葬でもしたのだろうか。たしか手は合わせたような記憶はある。それは間違いない。

 

 とりあえず返り血がひどいからと言って、近くの沢か小川で水浴びをした。

 そのあとはたぶん目的地に向けて再び出発したんだと思う。その道中、ジュウとオビトの2人はなんだかんだオレのことを気にかけてくれて色々と話しを振ってくれたり、ちょっと休もうかって言ってくれたりしてたんだろうけど、なんでだろう。ぼんやりとしていたのか、心ここに在らずといった状態だったオレはきっと、うんとかふーんとかテキトーな返事をしていたんだろう。

 

 

 

 そして前線基地まであと少しというところまで来た頃だった。脳内にあいつらが出てきたのは。

 

『おまえ様よ。いつまでウジウジウジウジウジウジしてるのじゃ。おまえ様のシケた顔なんか見たくないのじゃよ、妾は』

『イェェェェェェェイ!空前絶後のォォォ!!超絶怒涛の七尾(ラッキーセブン)ンンン!!幸運(ラッキー)を愛し、幸福(ラッキー)に愛された男ォォォ!!そう!我こそはァァァ!!・・・幼虫、蛹、成虫(カブトムシ)、全ての蟲の産みの親ァァァ!そう!我こそはァァァ!!サンシャイィィィン!!(ちょう)・・・ボフンッ!(めい)・・・・・・イェェェェェェェイ!!ジャースティスッ!!』

『お前ら、何しに出てきたんだよ。任務中だから構ってらんねぇよ』

『いやな、主様が元気なさげだと気が付いた故、我らが励まそうとだな』

『お前様よ。元気だしてにゃん♪』

 

 お前らそんなキャラしてたか。オレを元気付けようとしてくれてるらしいことは理解できたが、頭が痛い。逆効果だということに気づけよ。

 てかなんだよお前らの濃すぎるキャラはっ!

 

『致し方ないじゃろ。お主に封ぜられた妾たちは否が応でもお主の精神状態に影響されるのじゃ。キャラがどうとか、こうとか言われる筋合いはないわい。全ておまえ様のせいじゃ』

 

 なんだその設定。

 そんな設定、原作にはなかっただろ。尾獣、封印されようが何されようが迷惑極まりない自我はきちんと保ってただろ。

 

『主様の爺様と婆様にそういう風に封印されたのだよ』

『幼いおまえ様の精神を妾らに乗っ取られんようにするためにのう』

 

 キャラ崩壊もいいとこだ。しかもその原因がオレの爺さんと婆さんにあったとは・・・つくづく原作を崩壊させる人たちだ。まったく。

 

『んで、なに?お前らが出てきた理由はわかったけど正直言って今は有難迷惑だから引っ込んでてくれない?今、任務中だから』

『なんじゃ。つれない奴よのぅ』

『仕方あるまい。主様はただいま絶賛、後悔懺悔中が故』

『わかったなら夜まで寝てろ。又旅(ばかねこ)重明(あほむし)

 

 結局、去り際に又旅が、『まぁ、あまり気を詰めないことじゃ。今は戦時中、ああでもせんとあの場で死んでたのはおまえ様じゃったろうよ。それにおまえ様が気にかけておった回文娘(恐らく桜田ラクサのこと)を守れたんじゃ。そのことに変わりはない。誇りこそすれそれは罪ではないじゃろ。まぁそんなしょうもないことでウジウジと悩む心優しいおまえ様も妾は好いておるんじゃがな』と言いたいことだけ言い切って脳内から気配を消した。重明もそれに続いて「我も同感である」とだけ言い残していった。

 

 なんだよ。優しすぎんだろ、お前ら。

 

「・・・ありがとう」

「ん?カルタなんか言ったか」

「お、復活?」

「ううん、なんでもない」

 

 オレは初めての殺人からこうして少し立ち直れたのだった。

 

 

 




 ここまでお読みくださった読者のみなさまありがとうございます。
 新名蝦夷守(にいなえぞのかみ)です。

 とうとう出してしまいました二尾又旅と七尾重明のキャラ崩壊。
 怒られてしまうかもしれませんが、後悔はしてません!
 というわけで、この件に関するクレームはご容赦くださいますようよろしくおねがいします(泣)



 もっと展開を遅くしたい・・・。

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