NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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009.東部戦線異状なし 到着

 

 その日の夕方。太陽が傾く頃。

 

「着いたか」

「オビトせんせ」

「あぁ、やっとだな」

 

 森を抜けるとそこは少し開けている丘があった。そこには多少のテントや天幕といった簡易の建物と木ノ葉の額当てをした忍びたちがいた。

 

 対『林の国・水の国同盟』の前線基地についに到着したのだった。

 

 道中、突発的な戦闘も発生したが、なんとかひとりの死傷者も出さずに任務を終えることができた。

 

「おっ!オビトじゃねーか!なんだお前前線(ここ)にでも派遣されてきたのかー?」

「ちげーよ、イブ。俺は物資の輸送でこっちきたんだよ。部隊長か兵站の担当者んとこ案内してくれ」

「あいよ」

「あ、あとこいつにお湯渡してやってくれ、途中にあった川で水浴びはさせたんだけどさ、どうしても血の匂いが消えなくてな」

 

 オビトの後ろに隠れてた(別に隠れようと思って隠れていたわけじゃなく、ただ単に背が小さいから隠れてしまっていただけだ)オレを指さす。

 

「マジか。こんなちっこい奴が・・・。おいボウズ、歳いくつだ?」

「4歳です」

「おいおい冗談だろ。4歳って、忍者学校(アカデミー)史上最速卒業記録じゃね」

「はい、一応」

「すげーな、おい。・・・んで、返り血まみれになったんだったな。俺のダチ頼りなかったろ?すまんなー守ってくれて」

 

 オビトは「ぐっ・・・なんもいえねー」とか言ってる。「いえいえ、そんなことないですよ。いい先生です」とオレが言葉をかける。そんな様子を見てイブと呼ばれてた男は大笑い。とりあえずオレの体を洗うより先に部隊長のところへ忍具や丸薬などを詰め込んだ巻物数点を先に渡して、任務完了のサインを頂くこととなった。

 部隊長のいる場所までの間、先の戦闘の話をメインにしていた。オビトが語り手、イブが聞き手だ。

 

「その逃がしたラクサ?って子。まだ心配してるんじゃない?迎えに行かなくていいのか?」

「僕の影分身がついてるから問題はない。一応、さっきこの前線基地(キャンプ)についたと同時に口寄せの八咫烏を向かわせたから直にこっちの情報はラクサに届く。何の心配もいらない」

「っはー。オビト、お前の班はつくづく優秀な奴ばっかだなー。お前すぐ抜かされんじゃねーの」

「ははは。もう抜かされてるよ・・・」

 

 そんな会話をしながら、しばらく歩いているとようやく木材で組み立てられているほかの建物よりは立派な建物が見えた。

 

「あそこにうちの前線を率いる部隊長がいる。怖かねぇが、言葉遣いは気をつけろよ。一応な」

「あぁ、わかった。ありがとな」

「おう。じゃあ、俺はここで待ってるから行ってこい」

「あいよ」

 

 そうしてオレ、ジュウ、オビトの3人は建物の扉をノックする。

 

「失礼します。オビト班、支援物資をお持ちしました」

 

 中から良い声で「入れ」と返事が入ってきた。現世ではテノール歌手にでもなれそうだ。

 

「失礼します」

 

 3人揃ってそそくさと入室をする。親子だろうか。似た顔を持つ男が2人、部屋の中にはいた。

 

「うちはオビト、筧ジュウ、羽衣カルタ、以上3名物資をお持ちしました」

「うむ、ご苦労だった。俺はこの部隊を率いる奈良シカゾウだ。木ノ葉の里より連絡は来ていた。今は戦闘が小康状態だからまだなんとかなっていたが、もう少し遅れていたら物資が届かないと前線が保てなかった。感謝する」

「「「はっ」」」

「だが、木ノ葉からはもう一人来ると聞いていたが・・・殉職か」

「いえ、道中霧隠れの襲撃があったのでその報告に里へ帰らせました。ジュウの影分身も同行しています」

「そうか。霧隠れがそちら側に出たか・・・その話詳しく聞かせろ」

「はい」

 

 先程イブにも話した内容をオビトが今度は事細かに説明をした。

 

「なるほどな・・・。シカク、どう思う」

「あぁ。恐らくだけどな、お前らが戦った相手は霧隠れの前線で俺たちも辛酸をなめさせられていた真水(まみず)一族の新鋭三義兄弟(さんきょうだい)カンスイ・タンスイ・ジュンスイだろう。水陣壁を水のないところで三重にして使える忍びはいくら霧隠れといえどもそう多くはいねぇ。最近前線で見かけねぇと思ったら、裏に回られてたとはな・・・。親父、こいつらが()ってくれてなかったらもしかすると挟撃されてたかもしれねぇぞ」

「まぁ、その可能性はゼロではないがそれ以上に単純に兵站を狙ったんだろう。物資の補給に支障をきたしたらこの前線は終わりだぞ。日向の者に警戒を怠らせるな。鳥を口寄せできる忍びと連携させてネズミ一匹たりともこの前線より先に進ますな」

「了解。ちょっくら指示出してくるわ」

 

 そう言い残してシカクと呼ばれた男はその部屋を後にした。そしてオレたち3人に部隊長の奈良シカゾウを含めた4人だけがこの空間に残った。

 

「シカゾウさん」

「・・・なんだ、筧の(せがれ)

 

 ジュウがこの場で初めて口を開いた。ジュウのやつ、この部隊長と知り合いだったのか。

 

「あなたに影縛りを見せていただいたお蔭で仲間を守ることができました。ありがとうございましたッ」

 

 そういって、ジュウは頭を下げた。いままでジュウが頭を下げるところなんてみたことがない。それも正座で頭を地面につくまで下げている、いわゆる土下座だった。ジュウの突然の行動にオレも驚いているが、それよりも謝って頭を下げてないところがジュウらしいなとも思った。だからか、オビトのほうがもっと驚いている。

 

「面を上げろ。筧の倅」

「はい・・・」

「まさかあの1回で術を盗まれるとはな。いや、いい。これからも木ノ葉の(ぎょく)を守るために気張れよ」

「・・・はいッ」

 

 ジュウのやつ、木ノ葉の秘伝忍術を無許可で使ってたようだ。

 そしてそれを許してもらったって感じなのだろうか。

 

「ジュウ、それからオビト小隊長は外で待っててくれ。俺はこ奴と話がある」

 

 ・・・え、オレ?

 

 

 


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