NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
「君、大丈夫っ!?どうしてこんなところにいるのッ!?お父さんやお母さんはどうしたの!?迷子!?サイジ!大変!!男の子がっ!!」
天候は暴風雨。空は暗く、雨も強く降りしきり前もよく見えない。時折、雷もゴロゴロと鳴っている。世界の終焉ってこんな感じなんだろうか。とも思えるような最悪の気象条件。そんな状況下でオレは見知らぬ女の子に、ぎゅぅぅぅっと抱きしめられていた。
これ以上ないほどに強くというか、力強く以上に、力尽くで抱きしめられていた。
そしてオレは身動きが一切取れなくなっていた。いや、冗談じゃなく、大袈裟でもなく。文字通りの意味である。この女の子、やたらと力が強い。オレじゃなきゃ一瞬で意識を飛ばされてるところだった。
どうしてこうなった。
あ、くび。首が絞まってる!!ちょっ、オレのこと抱きしめてる女の子!オレ、息できないんですけどーっ!!オレ、死んじゃうんですけどーっ!!
あ、意識がすーっと遠ざかっていく。
あぁ・・・昔流行してた失神ゲームって、やられる側はこんな感じなんだなぁ。なんて場違いな感想を抱きながら、もう一度思った。
ホントにどうしてこうなった。
そして今度こそ本当に意識を失った。
以下、回想。
オレは『林の国・水の国同盟』に対抗するために設営された前線基地のなかにある会議室から出たあと、敵陣地をもちろん最短距離で目指すわけもなく、一旦北上していた。
一度、大きく北に回って海沿いから敵陣地を目指すことにしたのだ。
そうでもしないとただでさえ、オレが子供であるということを含めても怪しまれそうなものなのに敵からしたら敵の木ノ葉側からやってきた子供なんて怪しさ100パーセントでしかない。
雷遁を纏いながらとはいえ、この悪天候下での強行軍はキツイものがあった。
雨に打たれて濡れた服は雷遁のチャクラで多少渇きはするもののそれ以上の水量が天から降ってくるから、なんの意味もなくオレの体温をぐんぐんと奪っていく。
かといって、雨宿りできるような場所もないし(今走っているところは森林のため大木は数多くあるが落雷の危険性を考えて雨宿りできるところにはカウントしていない)、オレ自身、火遁の術も使えない。こんなことならオビトから豪火球でも習っとくべきだった。
そんな後悔もしつつ、でも立ち止まるわけにもいかず肉体活性を用いた高速移動で南下の目印と決めていた岩場を目指す。
「おい、お前らこういう時にこそ出て来いよ。寒いし冷たいし暗いし、オレの
足を動かす以外に移動中することがないため暇を持て余したオレは(いや、決して寂しいとかではない。うん、絶対に)、同じく暇を持て余しているだろう又旅と重明に呼びかける。
・・・。・・・。応答なし。
留守ということはありえない。なんたってオレの精神世界に封じ込まれているようなもんだからな。つまりほかに考えられることとすれば、寝てるか。最近2人(2匹のほうが正確か)の間でハマっているというツイスターゲームに集中しすぎてオレの呼びかけなんざ聞こえちゃいないか。最悪、ただの居留守か。最後のだったら質が悪い。いつか絞める。
もっかい呼ぶか。
トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・ガチャッ
「おい、又た」
『なんじゃ、おまえ様。そう何度も何度も何度も回線をつなげなくともわかっておるわ。こっちは「ついすたーげぇむ」?とやらで忙しいんじゃ!』
なんか怒られた。理不尽に怒られた。
「なんでそんなに怒ってんだよ・・・。そうカリカリすんなや」
『主様よ、遅れて済まなかったな。ついさっきまでこの前主様から教えてもらったツイスターゲーム50連戦をしていたのだがな、又旅が最後まで勝てなくてなぁ。それで機嫌が悪いのだ』
「なるほど。それでか」
いや、だとしたら尚更質が悪い。
どうせ又旅のことだ。自分から勝負を吹っかけて負けたのが悔しくて50連戦なんざ意味の分からない回数をしたんだろう。きっと敗北数も同じ数だ。聞いてやらんどこう。
『尻尾の数が重明のほうが多いんじゃ。それは卑怯というもんじゃろう!?おまえ様よ、重明の尻尾5本とってまいれ。それで妾と同数じゃ。これでようやく正々堂々とした対等な勝負ができるというもんじゃろ』
「んなアホなこと言うなや」
元来負けず嫌いで好戦的な又旅だ。ゲームとはいえ負け続けたことによってちょっと思考回路がアホなことになっている。
『なんじゃなんじゃ。おまえ様まで重明の味方をするというのか。ふん、長い物には巻かれろっていうニンゲンの醜さが溢れておるわい』
拗ねている。めちゃくちゃ拗ねている。
「まぁまぁ、そんなこと言うなって。今度はお前も楽しめるゲーム考えてやっからさ。とりあえず、頭冷やして寝てろ」
呼んでおいてめんどくさくなったオレは又旅と重明を精神世界へ送り返した。
酷いとか言うな。ああなった又旅の面倒さは本当に放置するしかないんだ。頭が冷えるまでな。
又旅には頭を冷やせと言ったが、そろそろ身体が動かなくなってきた。
寒い、やばい。
どっかで休憩しないと。
そう思って、一旦立ち止まり辺りにどこか雨から身を守れるところはないかと探していると急に気配が感じられた。
やば。想定外のところで人に見つかっちまった。
こんな感じで話は冒頭に遡る・・・