NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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014.東部戦線異状あり 襲撃

 

 なんで、気付かなかったんだ・・・オレ。

 いくら悪天候で視界不良だったとはいえ、抱きしめられるくらい近かったら顔ぐらい間近で確認できただろ。

 こんなところで原作キャラ(現在敵)に会う予定なんざ無かったというのに。

 

 照美メイ。原作では物語後半の五影会談にて初登場。長い茶髪で右目を隠したセクシー美女だが、30歳独身というのをすごく気にしているため「結婚」「婚期」「遅れる」「破棄」という言葉と同音異義語に過敏に反応して唐突に笑顔で「黙れ殺すぞ」と言い放つというキャラだった。

 でもこの世界の照美メイは、独身を拗らせる前の普通の少女だった(普通というには戦闘力は高すぎるか)。それでも戦争孤児(と誤認をしたオレ)を見かねて保護するような心優しい少女だった。

 

「さぁ、お姉さんたちは自己紹介をしたわよ。きみは何ていうの?」

 

 すごく笑顔がまぶしい。まぶしすぎるぜー未来の水影様。今なら国民的美少女コンテストでも優勝狙えるとお兄さんは思う。

 でもなぁ。どうせすぐ裏切っちゃうことになるし・・・それなら最初から猫なんか被らなくてもいいよな。うん。

 

「オレはカルタ。よろしく」

「うわぁ。生意気盛りなんだー。やだぁーかわいいー」

 

 念のため苗字は隠すことにした。

 え、でもなんか、想像してた返事と違う。もっと言葉遣いとか注意されるかと思った。ほら、年功序列的にあっちのほうが年上だし。怖いイメージのある霧隠れの里の忍びだし。血霧の里だし。

 でも子ども(オレ)相手だからなのか、口調もなんか甘い。ちょっとびっくりした。拍子抜けだ。

 じゃあ、このままでいこう。そのほうがオレも楽だし。

 

「そんなことよりここが何処だか教えてくれないか。オレは行かなくちゃならないところがあるんだ」

「だめよ。外はまだ暴風雨が吹き荒れているわ。カルタくんみたいな子どもが外出ちゃ危ないのよ。さっきだって私が見つけてあげなかったら凍死しちゃってたかもしれないんだからねっ」

 

 びしっと人差し指を立てて顔がグーンっと近づいてきた。

 

 やだぁーなにそれーかわいいー。

 

 ・・・こほん。さっきのメイの真似だ。

 とりあえず、照美メイの監視の目がある内は自由に動けないな。話題を変えるか。

 少しでも今の情報が欲しい。・・・ちょっとだけぶりっ子するか。

 

「っちぇ、わかったよー。メイの言う通りにするからさぁ。ここがどこかだけ教えてくれない?お願いっ!」

「本当でしょうねぇ?しょうがないじゃあ、ちょっとだけね。今いるここは海の上なのよ。大きな船の中に私たちはいるの。そうねぇ・・・港からだいたい2,3kmってところかしらね」

「おい、メイ。あんまりべらべら喋るんじゃないゾ。ガキとはいえコイツは部外者ダ」

「わかってるわよ。だからここまでしか教えないつもりだったってば」

「フン。本当かねェ・・・」

「本当だって~」

「じゃあワタシは医務室に戻るからナ。精々ショタコンに目覚めないことだナ」

 

 そう言い残してランは部屋を後にした。メイはランの言葉に「そんなことありません~」と返していたが、ランが聞いていたかは怪しいところだ。

 よし。お目付け役もいなくなったことだし、まだなんか聞き出そう。

 

「ねぇ、メイ。大きな船ってどれくらいあるんだ?」

「うちの里に?う~ん、それは私にもわからないわ」

 

 う~ん。本当に知らないのか、躱されたのか。わかんねぇな。

 

「じゃあ、一緒に来てる船はどれくらいなんだ?船って確か、艦隊ってのをつくって海をまわるんだよな?」

「へぇ。カルタくんって物知りなのねぇ。この第2艦隊は大きい船は3隻ね。荷物だったり、人だったりを大陸に輸送するのよ。あとはその周りに小さめの船が何隻かあるわね」

 

 なるほどな。この船は物資や人員を本国から戦地へ運ぶ輸送船ってことか。

 

「そうなのか。じゃあこの第2艦隊以外にもいくつも艦隊があるってこと?」

「そうよ。あ、でもこれ以上は話してあげないからね。一応里の機密事項にもあたるだろうし、それにランにも言われたし」

「ふーん。じゃあ仕方ないね」

 

 他に聞きたいことはある?と、話を振ってくれるメイ。おいおい忍びがそんなに情報漏らしていいのかよ、とも思うがオレとしてはありがたいので乗っかっとく。

 

「メイって上忍なんだろ?どんな術使えるんだ?」

「あー私?私は火遁と水遁と土遁を使えるのよ。3つも性質変化を持ってるって中々いないのよ?あ、そんなに詳しいこといっても分からないかしら。でもねぇ、うちの照美一族は代々風遁と雷遁の家系でねー。正直一族の中では肩身狭いのよ。まぁその分、部隊では評価してもらえたから上忍になれたんだけどさ」

 

 なんとそんな設定があったとは。いや、あまり触れられたくはないのかな。表情がさっきまでとは違ってちょっと曇ってる。別のこと聞こう。

 

『て、敵襲ーっ!!』

 

 そんなときだった。ドアの向こうから叫び声が聞こえてきたのは。

 それが聞こえた時からメイの行動は早かった。迅速だった。オレに早口で「ここから絶対に外には出ないように」と念を押し、「私はこれから甲板に出て戦ってくるけどすぐに帰ってくるから心配しないで待っててね」と言ったかと思うとすでにその場からは消え去っていった。

 

 瞬身の術か。

 

 それから直後、船内放送も流れた。

 

『船内全ての人員に告ぐ。忍びは直ちに甲板に防衛へ。乗組員は船内で待機するように』

 

 よっしゃ。オレはこの機に脱出しよう。

 

 

 

 置手紙くらいしてあげても罰は当たらない・・・よな?

 

 

 


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