NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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015.東部戦線異状あり 海戦

 

 置手紙を書き終えたオレはその部屋を後にした。

 

 え、なんて書いたかって?それはもう、書き出しは「拝啓」からきちんと書かせてもらった。内容は教えん。プライベートだ。

 

 このまま船内の間取りも知らないまま出口を探していたら、移動中に誰かと鉢合わせするだろうと考えたオレは、隠れ蓑の術の上位互換。雷遁・光学迷彩の術[※]を使って(つまりはステルス化。透明人間化して)船外への脱出を開始した。船がガンガン揺れる。船上ではもうすでに戦場と化しているのだろう。いや、ダジャレを言うつもりは微塵もなかったのだが。ほんとに。まじで。

 道中、一人でいる乗組員を見つけると陰遁(げんじゅつ)を使って尋問。出口を聞き出しながらずんずんと進んでいった。

 こうしていると、なんだかRPGのダンジョンを攻略していってるみたいだな。まぁ、敵が出てこないから戦闘シーンはないが。

 

 そしてようやく甲板へ出てみるとそこは阿鼻叫喚の地獄絵図。というか、怪獣映画のワンシーンに入り込んでしまったかと思うほどの光景が広がっていた。

 

 ハリウッドの怪獣大戦争のワンシーン。

 

 もしくは、旧約聖書やギリシャ神話。北欧神話のワンシーン。まぁオレには神話の知識なんぞないが、イメージ的にはそんな感じだった。

 

 船を襲う巨大な海蛇と思わしき怪物。馬鹿でかい図体と無数の触手をもつ蛸と烏賊の怪物。その口だけで小さな島なら呑み込めそうなほど大きな口の鯨のような、いや金魚のような怪物。鰐と鮫を足して更に50掛けたような怪物。それからネス湖のネッシーを獰猛で狂暴にしたような怪物までいる。

 

 これは後で調べたり、聞いたりして知り得た知識、情報だがこの化物怪獣たちは通称、海王獣(かいおうじゅう)海神獣(かいじんじゅう)と呼ばれているものらしい。十数年から数十年に一度のスパンで水の国や海の国といった海洋国家の周辺海域を1体で荒らし回る言わば天災のような伝説的存在らしい。そんな規格外な連中が今回はまとめて6体もやってきているのだ。それだけで今この状況がどれだけ悲惨で凄惨で過酷な状況かわかることだろう。

 

 周りの船の多くが木っ端微塵となり、海の藻屑と化している。このままだとこの船もあれらと同じような運命をたどるのだろう。

 

 甲板や海上にいる忍びたちが死に物狂いで戦闘を繰り広げている。中にはダメージを与えている者もいれば、今まさに命を散らしている忍びもいる。 

 船ごと丸呑みされれば乗っている乗組員も命はないだろう。

 

 オレはその場から立ち去ろうとした。

 

 ここで霧隠れの忍びが1人でも多く犠牲者が出れば戦力は大きく下がるし、戦場へ送り届けられるはずの物資も全て海に沈むとするのであれば、木ノ葉としては願ったり叶ったりだろう。オレとしてもこの戦場で命を懸けるつもりは毛頭ない。

 もちろんオレが強いことは百も承知だ。ここでオレが参戦することによって救われる命もきっと少なくないだろうとも思う。でも、オレがここで死ぬ可能性もなくはない。オレは水中戦、海中戦なんざやったことはないし相手は超巨大海獣どもだ。地の利ならぬ、海の利は敵にしかない。

 

 だから、卑怯と言われようと主人公(ヒーロー)失格と言われようとオレはここから立ち去ろうとしたのだった。甲板に出て状況を確認したその時までは。知っている声の悲鳴が耳に届くその直前までは。

 

 こんな大荒れの天気の中、怪獣たちが暴れる中、忍びたちが忍術を発動する中、そんな騒音の中、なぜその声がはっきりとオレの耳に届いたのかはわからない。でも、やけに(・・・)はっきりと聞こえたのだった。

 

「メイっ!?」

 

 そしてその悲鳴の発信源である少女はすぐに見つけられた。化物蛸か化物烏賊のどちらかか、もしくはその両方の触手に捕まっていた。

 両手も両足も拘束されてたら印も結べない。あのまま海面に叩きつけられたり、食われたりでもしたらひとたまりもないだろう。そうしたら確実にメイは、

 

 死ぬ。

 

 どういう訳か、自然と身体が動いていた。光学迷彩なんか取っ払い、雷遁を身に纏っていた。

 

「重明!羽ッ!!」

『応ッ』

 

 六枚翅(ろくまいば)が背中の封印式から飛び出す。

 

 八門遁甲【第一開門】開ッ!

 

 ガクンと自分の中でギアが無理やり上がる感触がする。

 

 八門遁甲【第二休門】開ッ!!

 

 2つのリミッターを解除したと同時に、甲板を強く蹴って空中に飛び出す。

 

 まずはお前だ。このタコ!!

 

「千鳥ッ!!」

 

 ボゴッ、っとすごい音を出してオレの身体ごとタコの頭を貫通した。このタコに痛覚があるのかは知らないが、オレを敵と認識したのだろう。滅茶苦茶に暴れて怒り狂っている。タフなタコだ。

 

 メイはまだ触手に囚われの身となっている。まずはあの触手をなんとかするか。

 

「又旅!爪ッ!!」

『しかたないのぅ。ほれ』

 

 又旅が力を貸してくれると同時にオレの右手の爪が二尾のそれとなった。

 空中での方向転換。化物タコへの再突撃。

 

 メイを捕らえている触手はタコもイカも関係なくぶった切った。容赦なくぶった斬った。

 自分の腕である触手を断ち切られたタコはもっと怒り狂い、同様にイカの方もオレを敵と認識したようだった。

 

 無数の触手の拘束から解放されたメイは万有引力の法則に従って自由落下が始まっていた。あの様子じゃ気を失ってるみたいだ。

 

「お前は水影になる女だ。こんなイレギュラーなところで命散らしてんじゃねぇぞ」

 

 落ちていく最中、何とかメイを空中で抱きかかえることのできたオレはここよりは安全地帯であると思われる陸に向かって飛んで行った。

 

 

 




※雷遁・光学迷彩の術とは
 そのまんま。透明人間になれます。
 女風呂とか覗けるので、三代目や自来也には教えられない。



オリジナル忍術の説明、こんど一覧にして出します。

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