NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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025.雲による木ノ葉奇襲作戦 災禍

 

 尾獣化したキラービーは山の如く巨大化し、完全体となっていた。

 

「こいつ。勝手に俺を呼び出しやがったな」

 

 キラービー(八尾完全体)は声も口調も先程までとはまるっきり打って変わっていた。もっと落ち着いている雰囲気が出ている。

 八尾の完全体になったキラービーは八尾と意識が入れ替わっていた。

 ということは、キラービーはまだ原作ほど八尾の力を十全に扱えているわけではないみたいだ。

 

 ちっぽけなオレと巨大な八尾の視線がぶつかる。

 

「お前の中に二尾と七尾がいるな」

 

 ただ目が合っただけなのに、何も言う前から八尾には重明のこともバレていた。

 

「なんだ。やっぱり尾獣同士ならわかるっていうのか?」

「当たり前だ。もともと俺達は9体で一つだったんだ」

「なるほどな。じゃあ、久しぶりに会わせてやるよ。八尾」

 

 自然破壊だとか、周りの被害だとか、あっちが完全体になったらそんなことに構ってはいられない。もしこの状態で攻撃でもされようものなら1発でノックアウトされかねない。

 オレはこうなった場合の予定通り、又旅と重明を外に出すことにする。

 

《影分身の術》

 

 ボフンとオレが2体増える。

 

「じゃ、又旅と重明。好きに尾獣化してくれ」

『了解じゃ』

『承知した』

 

 そう言うと又旅と重明は、オレの出した影分身体を乗っ取って尾獣化して完全体となった。

 ついでだから、オレは重明の頭に乗せてもらっている。すごく視点が高いが、いつも翅を借りて飛んでいるので真新しい感想だとか、感動だとかは特にはなかった。ただ、八尾の視線と同じなので、これはこれで圧迫感がある。

 

「久しいのう。八尾」

「久しぶりだな、八尾」

「二尾に七尾か。二尾はお前が雲隠れから拉致された時以来だな。七尾とはもう随分昔ぶりだな」

 

 それからというもの、巨大な体躯をした3匹が昔話で花を咲かせている。

 あれ。尾獣ってこんなに大人しいやつらだっけ。存在そのものが災害扱いの非常識の集まりだったような。

 

「ふむふむ、それで八尾よ。今のお前の人柱力はどういう奴なのだ」

「それがだな、普段は底抜けに明るいアホな奴で、下手くそな癖にラップが好きでな。正直、好きこそ物の上手なれとは言うものだがこの言葉を信じられなくなったな。こいつのは下手の横好きだ。毎日耳障りなラップを聞かされちゃあやってられねぇ。そういうお前らの人柱力はどうなんだ」

 

 その八尾からの問いに又旅と重明が、というよりもほぼ又旅が嬉々として話し出す。

 内容としてはオレのことを褒めちぎってくれているのだから悪意は全くないのだろうが、本人が目の前にいる状況で賛美と言っていいくらいに褒めるのはある意味で拷問に近い。

 又旅がそこまで思ってくれているのは本当にありがたい限りだし、嬉しいのだが。オレの目の前でそれを言うのは限度って言うものを考えてくれなければ恥ずかしいし、照れる。

 

 もう、穴があったら入りたい。

 

 聞き手に回っている八尾どころか、同じくオレに封ぜられている仲間のはずの重明ですら引いている。

 

 おーい。又旅。そろそろ戻ってこーい。

 

「・・・というようにじゃな、まぁこれまで話したのはほんの少し。物語で言うところの序章程度のことでしかないがの。我が主様は人柱力の鑑といっても過言ではないのじゃよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 オレと重明、それから八尾はもう何も言えなかった。

 

「こほん。そ、そうか。よかったな二尾」

「まぁ、我の言いたいことは又旅が全て言ってくれた」

「当然じゃの」

 

 又旅は誇らしげな表情で八尾を見ている。どうやらオレらの反応には気付いていないらしい。

 とりあえず、この何とも言えない空気をどうにかしたい。全くどうしてくれるんだうちのバカ猫め。

 

「なぁ、八尾」

「ん?なんだ二尾と七尾の人柱力」

「オレの名前は羽衣カルタだ。お互いにいつまでも八尾とか人柱力って呼ばれるのもなんか嫌だろ?少なくともオレは嫌だ。だからこれからオレのことはカルタって名前で呼んでくれ。お前の名前は?」

 

 この話題転換は急だったかもしれない。いや、かもしれないではなく事実、突然で唐突だったのだろう。

 八尾は鳩が豆鉄砲を食ったような表情でオレを見ていた。

 その表情が余程ツボに入ったのか、又旅がケラケラと笑っている。

 

「かっかっか。八尾よ。我が主様はこういう奴よ」

「我らもこういうお方だからついていくのだよ」

「なるほどな。よっぽどカルタ、お前は好かれているらしいな。俺の名は『牛鬼(ぎゅうき)』だ。これからはそう呼べばいい」

牛鬼(ぎゅうき)か。よろしくな」

 

 象と蟻並みにサイズ感の違うオレと牛鬼だったが、グータッチを交わす。

 

「それでさ、悪いんだけど牛鬼。今回のところは引いてくれないか?そっちの事情があることは察するんだけどな。こっちにも事情っていうのがあるんだ」

「カルタ。お前、自分の言っていることが分かっているのか?今お前は自分たちの里のことしか考えていない発言だったぞ」

「わかってて言ってるんだよ、牛鬼。お前ら雲が今引いても被害は出ないだろ。でもオレらが引いたら非戦闘員の無駄な死がたくさん起こるんだよ」

 

 オレと牛鬼の間でバチバチと火花が散っているのは気のせいではないだろう。

 

「でもな。ここで仮に俺が引いたとしたら、木ノ葉が反撃に出て今度は雲が危機に陥るのではないか?」

「その可能性は0とは言い切れないが、100ではない。だが、今ここでオレたちがドンパチやると被害は100パーセント出るぞ」

 

 しばらくの間、にらみ合いがつづいた。

 オレと牛鬼の間にこの時季としては冷たい風が吹き抜ける。

 

 先に口を開いたのは牛鬼の方だった。

 

「ふん。交渉は決裂のようだな」

「あぁ。又旅ッ!重明ッ!!」

 

 その直後、3つの尾獣玉が炸裂した。その威力は凄まじく全世界に衝撃波が届いたのではないだろうかというほどの轟音と振動によって空間が歪められた。

 

 

 

 


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