NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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今回もお越しいただきありがとうございます。

初の3000文字超えです。

では、早速つづきをどうぞー




045.雨に蠢く闇の住人 其の拾弐

 光と闇の境界を抜けると、そこはよく知る場所となった。

 

 又旅と重明の趣味が最大限に反映されている自然豊かな風景が広がるオレの精神世界だった。

 

「おぉ!やっと来たな!!」

悟空(カカロット)・・・お前なんか性格丸くなったな」

「いや、カカロット言うなしー」

 

 うぇ・・・。なんか孫悟空が気持ち悪い感じにキャラ変してる。

 これも又旅、重明同様にまたオレの精神世界に閉じ込められていることが原因・・・なのか?

 

「おまえ様!」「(あるじ)様!」

 

 噂を(心の中だが)していると当の本人たちが登場。

 

「無事つけたようじゃな」

「まぁな。それで?今、オレの身体はどういう状況なんだ?」

 

 そうオレが尋ねると、待ってましたと言わんばかりに又旅が饒舌に話し始める。

 

「今はじゃな、妾らが無理矢理に尾獣のチャクラを供給することによって身体を支配しているジュウを困らせておるところじゃ。ジュウは使いこなせない尾獣チャクラを過剰に供給されていることによって身体の制御が覚束ないようで現実世界では今、尾獣化しかけておるようじゃな」

「ただ主様の身体につけられている封印術式の効力が効いているが故、我らのジュウに対する抵抗も直に弱まってしまうだろう」

 

 なるほどな。爺さんやオレがやった《羽衣式封印術・尾獣封印》の効果が効き過ぎてオレの身体を乗っ取っているジュウに対してこれ以上の抵抗、反抗が出来ないというわけか。

 ということは・・・。

 

「オレが自分の精神世界(ここ)で封印術式を緩めればいいんじゃないの?オレの身体を支配しているジュウをお前たちのうちの誰かが尾獣化完全体になって逆にジュウのことを支配して、その後に身体の支配(コントロール)権をオレに渡してくれれば問題解決じゃない?」

 

 完璧じゃん!と、名案を思いつき自慢げに披露したのだが、みんなの反応がない。

 ・・・あれ?オレ、トンチンカンなこと言った?だとしたら、すごく恥ずかしい。とても恥ずかしい。穴があったら入りたい。墓穴を掘ってでも入りたい。前言撤回したい。します。させてください、お願いします。

 

「「「それだっ!!!」」」

「いや、いいんかいッ!」

 

 思わずつっこんでしまった。

 オレの後悔を返せ。

 

「完璧ですな!それでこそ我が主様だ」

「その名策士ぶり、流石じゃのう!おまえ様よ。妾はおまえ様に惚れ直したぞ!」

「マジウキキィ!!」

 

 最後のマジウキキィってなんだよ。意味わかんねーよ。

 

「じゃあ、又旅の封印を緩めるからな。一気に尾獣化完全体になってオレの身体の所有権奪い返してくれよ?」

「モチのロンじゃ!」

「よし。それじゃあ、行くぞ・・・」

 

《二尾封印・解》

 

 

 

 羽衣カルタを支配する時機は当初からの予定とは違い、かなり早い段階での決行となってしまったが、まあ良い。尾獣を何体も封印しても問題がない特異な身体に異常なまでの忍術センスを持つ若い身体を我が物としたことには変わりがないのだから。

 

 そんなことを考えていた木ノ葉の闇志村ダンゾウとその部下ジン改めて筧ジュウ。

 

 ダンゾウは大蛇丸と戦闘をしながらも羽衣カルタと筧ジュウの戦闘を盗み見ていた。

 その結果が自分の右腕とも呼べる筧ジュウが羽衣カルタの身体を支配したことによる勝利。

 

 羽衣カルタという名の兵器を我が物にしたダンゾウは勝利を確信した。

 

 一方の筧ジュウはというと目論見通りチームメイトであったカルタの身体を木ノ葉の名門・山中一族の中でも裏宗家と呼ばれる血筋から100年に1人の割合でしか使用者を輩出されることのない《禁術・心統身の術》で奪った。

 あとは2、3年の月日をかけてじっくりとカルタの身体と自分の精神体を馴染ませることができれば、カルタの能力を保有したまま、また新たな肉体へと憑依とも言える《心統身の術》を使えるようになるのだ。

 

 だから、カルタの身体を支配する。そこまでは良かったのだ。

 

 だが、事は思い通りには進まない。

 

 カルタに封印されている尾獣たちがいきなりやってきたよそ者支配者に対してこれ以上ないほどに抵抗を見せる。

 

 尾獣を有する身体を支配したのは初めてのこと。そしてその尾獣から尾獣のチャクラを供給されることも初めてのことであるし、チャクラの供給量も過剰が過ぎる。

 

 ジュウは尾獣チャクラをコントロールし切れずに暴走を許してしまう。

 身体を覆うようにして尾獣チャクラが溢れ出し、赤黒い衣のようなものが形成され、禍々しいチャクラの尾も数本生える。

 ジュウの意識はそのあたりから朦朧とし出す。

 

 そして、カルタの精神世界で二尾又旅の封印術式を緩められたことによって身体は尾獣二尾へと完全体化。

 

 このままでは自分自身が逆に二尾又旅に征服されてしまうと感じたジュウは反射的に術を解いてしまう。

 

 こうしてカルタの身体を乗っ取った無法者ジュウは、カルタの飼い猫二尾又旅によってカルタの身体から追い出され取り返されてしまうのであった。

 

 

 

『おまえ様!』

『サンキュー!又旅』

 

 無事、作戦通り又旅がオレの身体を取り返してくれたのと同時にオレに身体を返してくれる。

 そしてオレは尾獣化していたオレの身体を通常に戻す。

 

 この一連の大事件(オレにとっては大事件だったのだ)を外から見ると、オレと仮面の男が一騎打ちをし、突然小さくなった元仮面の男に何かされた途端にオレが暴れ出し尾獣化。そしてすぐにそれを解除するという意味不明な現象の数々だったであろうことは想像に難くない。

 

 それはさておき。

 

「おい、ジュウ。てめぇよくも裏切りやがったな・・・」

 

 大切なのはチームワーク。そう教えてくれたオビトに謝れこの野郎。

 今まで仲良くやってたのは全部嘘で演技で(まやかし)だったのかよ。

 

 言いたいことはたくさんある。だが、口に出して言葉として発することはできなかった。

 

 感情がぐるんぐるんと乱れるのだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。裏切るも何も最初から僕はダンゾウ様の駒だ。カルタ、お前は初めっからこの僕が次に身体を乗っ取る目標(ターゲット)でしかない。自惚れるんじゃねーよ」

 

 どうやら尾獣たちにこっ酷く引っ掻き回されたジュウは相当体力を消費してしまっているらしい。

 

 しかし、初めからだと?忍者学校(アカデミー)のとき初めて話したあのときから。忍者学校(アカデミー)を卒業して同じ班員になって、お互いに術を教え合ったりしたことも、切磋琢磨して術を鍛え合ったりしたことも、オレが初めての人殺しで落ち込んでいたときに励まそうとしてくれたことも、バカなことをしてオビトやラクサに怒られたことも、中忍昇格試験にみんなで合格してそのあとオレが上忍になってジュウが暗部養成部門に行くことが決まってラクサと3人でお祝いをしたことも。

 

 全部、嘘で演技で(まやかし)だったってそういうことかよ。

 

「忍の世界で、ルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされるが仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ。と、オレはオビトから教わった」

「ふん。僕はお前のことを獲物(ターゲット)として以外見たことはない。お前に術を教えてやったり、アドバイスをしてやったのも、お前が成長し丸々と肥えたところを丸呑みしてやろうとそう思っただけのことだ」

 

 ジュウはそう吐き捨てるようにして言葉を発する。

 

「それでもオレはジュウのことを仲間だと思っていた。できることならオレの仲間のまま死んでくれ」

 

《麒麟》

 

 一筋の大きな(いかづち)が落ちてくる。

 

 オレに向かって。

 

 オレはそれを回避もせずに右腕を(いかづち)に差し出す。

 

「さよならだ。ジュウくん」

 

 明らかな過剰攻撃(オーバーキル)

 (いかづち)と化した、いや、雷神が宿ったといっても過言ではないオレの右腕をジュウの心臓目掛けて突き立てる。

 

《雷切》

 

 そして今度こそ、心臓部分にポッカリと穴が空いた筧ジュウは、オレがその身体を貫通させている右腕を抜くと、力なくゆっくりと地面へ倒れていった・・・。

 

 

 




毎度ありがとうございます。新名蝦夷守です。

あと数話で『雨に蠢く闇の住人』シリーズも終わります。
感想や評価をいただけると次回以降の執筆の励みになります。
ポジティブなものを心からお待ちしております。笑

また次回は明日更新できる予定です。ではっ!

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