NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
そして心よりお待ちしております。
「はいはい。元気なのは結構なことだけど、ここ敵地だから。静かにしてね」
いつの間にやら、左目の応急処置を終えていたカカシから注意を受ける。
「わ、悪い・・・」
「お前もたしか怪我してただろう?さっさと止血しろ」
「あぁ」
「それが終わったら、さっさと行くぞ」
カカシは視覚が使えない。あとはそれ以外の聴覚、触覚、嗅覚。所謂、他の五感をフルに使って戦闘をするしかない。
かなりの戦力ダウンだった。
それでもリンを助けるにはそうするしか。俺とカカシが共闘する以外方法はない。
「オビト。敵はひとりだ・・・俺が陽動をやる。お前は隙を見てリンを救出してくれ。それができたらさっさと退散するぞ」
「了解」
そうして、俺たちは作戦を確認したあと。
岩隠れの忍びがリンを尋問しているであろう洞窟へと足を踏み入れた。
ジャリッ!という、足音に敵が気付き振り返る。
敵は仲間が帰ってきたかと思い最初は警戒心が無かったように思うが、俺たちの姿を確認すると一気に警戒レベルを引き上げたようだ。
「ったく。どいつもこいつもだらしねぇなぁ・・・」
俺は写輪眼でそいつの隣にいたリンを見る。
「おい、カカシ。リンのチャクラの動きが変だぞ」
カカシは俺のその言葉でピンと来たものがあったらしい。すぐに、気がついた。
「オビト、お前いつの間に写輪眼なんて開眼させたんだ・・・。チャクラの動きがおかしいというのはきっと幻術をかけられているせいだろう。すぐにでも情報を吐き出させようとしたんだ」
「なるほど、な。そういうことか」
俺たちの会話に敵も警戒を更に強める。
そして、どちらからともなく走り出した。
敵と交錯したその瞬間から、高速戦闘が始まる。
いままでの俺では到底届かなかった域。次元。レベル。
カカシと俺のコンビネーションが徐々に敵を追い詰めていく。
目が全く見えてないのにこの動きをできるカカシには脱帽だ。
逆に俺はこの眼が無ければこんな動きはできない。
これが天才と落ちこぼれの差か・・・。
なんてことを思いつつも、それよりもようやくカカシと同じ次元で、隣で、肩を並べて戦えることが嬉しかった。
いままでは足手まといでしかなかったからな。
この眼は敵の動きが良く見える。
フェイントもカウンターも全て見切れる。
そして最後は焦った敵が、カカシがわざと隙を見せたところに突撃する。
きっと「もらったァァァ!!」とか「死ねッ!!」とか思っているんだろう。
勝利を確信したとき、人は一番油断をする。
つまり、隙ができる。
「カカシィィ!!」
一発で仕留めてくれっ!カカシ!!
敵がカカシの頸を狙って両腕に仕込んである小刀を横一文字を交錯させるようにして振る。
俺はその動きを封じるように敵の腕の内側に蹴りを入れた。
その間に、がら空きとなった敵の頭頂部目掛けてカカシのチャクラ刀が振り下ろされた。
頭部を真っ二つに斬られた敵はそのまま地面に崩れ落ちる。
俺らはその生死を確認するまでもないと、真っ先に、我先にとリンの元へと駆け寄る。
「「解ッ!」」
そして俺たちは図らずとも同じタイミングでリンにかけられていた幻術を解いた。
「・・・カカシ?オビト?」
「助けに来たぞ。リン」
あとはさっさと退散だ。と俺の言葉に続いたカカシの顔を見てリンが声を上げる。
「カカシ!め、目がっ!!」
しかし、カカシは何でもないような物言いをする。
「そんなことより今は早くこの場から立ち去るぞ。隊長命令だ」
この場から早く移動することに否はない。
カカシのその言葉で俺たち3人は洞窟の出口に向かって一斉に走り出した。
その時だった。
「道連れにしてやる・・・」
その声は薄っすらと、聞こえたか聞こえてないか。それくらいの声量だったのだが、やけに俺たちの耳には響いた。
《土遁・岩宿崩し》
術が発動し洞窟が崩れ始める。
敵の最期の自爆攻撃だった。
くそっ。
こんなことになるなら、あのときちゃんとトドメを刺しておくんだったッ!!
「走れッ!!」
と、カカシが叫ぶ。
だが、無情にも入り口が先に塞がる。
そして・・・。
「危ないッ!!」
カカシの頭上へと落ちてくる巨大な岩からカカシを守るため、体当たりをして弾き飛ばす。
一瞬にしていままで感じたことのないような痛み。というか熱を全身に覚える。
何の言葉も発せない。
恐らく意識も一瞬だが吹っ飛んだ。
「「オビトォォ!!」」
カカシとリンの悲鳴にも近い叫び声が耳に届く。
あぁ、よかった・・・今度はカカシを守ってやれた。
俺のそんな心情に気づくわけもないカカシは必死になって俺の身体に覆いかぶさっている大きな岩を退かそうとしてくれる。
だが、その岩はピクリとも動かない。
「くそッ!ちくしょうッ!!俺が・・・俺が最初からお前の言う通りにリンを助けに来てたら、お前が俺のことを庇う必要もなかった・・・。こんな状況にはならなかったんだッ!」
ガハッ・・・と、気管に詰まっていた血を口から吐き出した俺はようやく口を開いた。
「カカシ・・・」
「何が隊長だっ!何が上忍だっ!」
「カカシッ!俺に残された時間はもう残り少ない!」
「ッ!」
懺悔。後悔。自分を戒めているカカシを黙らせて、俺は話し出す。
「肩から下はもうほとんど潰れちまって感覚すらねぇ。いままでありがとな。上忍祝いのプレゼント、まだ俺だけ渡してなかったよな・・・この写輪眼でいいか?」
お前丁度両目無いしな。と冗談っぽく続ける。
俺の言葉にカカシだけじゃなく、リンまでもが驚きの表情を浮かべている。
もっとも、首が動かないからそんな雰囲気を感じただけだが。
「里の奴らが何て言おうと、お前は立派な上忍だ。俺はもう死ぬけど、お前の両眼になって、これから先を見てやるからよ・・・」
そして、リンに眼軸ごと俺の写輪眼を取り除いてもらい、カカシに移植してもらう。
そこから先はもう、何も見えなかった・・・。