NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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071.負の連鎖の終着点 前編

 忍び五大国による統治が揺らぎ、各国の国境付近において、小国や忍びの隠れ里を巻き込んでの大小様々な軍事的な衝突が頻発し、長引いていた。

 そして長引く戦争は忍び五大国である火の国も例外なく大きく国力を落としていた。

 その火の国の軍事力たる木ノ葉隠れ里にも多大なる戦死者を出して。

 

 ---第3次忍界大戦---

 

 その足掛け4年にも渡る激しい戦いの日々は名もなき多くの忍びたちの犠牲をもって終結した。

 そして同時に。

 名だたる英雄たちを。

 語り継がれる数々の伝説を残したのである。

 

 

 

 まったく・・・戦争というものは、人間(オレたち)生命(いのち)をゴミのように無視して成立する。

 そんなクソったれな毎日にも終わりはあった。

 

 第3次忍界大戦の終戦した日。

 つまり、後には終戦記念日やら戦勝記念日と言われることになる日。

 

 その日、オレは自分の身長の倍以上ある大刀『鮫肌』を担ぎながら、対岩隠れ戦線の最前線で敵国の動きを監視していた。

 その当時はまだ停戦協定には合意していたため、戦闘行為自体は行われていなかったが、現場には双方ともに主戦力の大多数をこの戦線に投入していたこともあってピリピリとした雰囲気(ムード)が漂っていた。

 そしてその停戦協定で双方が双方の動きを監視するために四人一組(フォーマンセル)の小隊を5小隊20名ずつ、ローテーションを組んで相手の顔が見える距離まで近づいて立っていた。

 イメージとしては、国境警備隊がバリケードの前に銃を持って立ってお互いに睨み合っているような感じだ。まぁ、この世界に銃はないが。

 

「それにしてもお前が前線に出てきてると分かっただけで、岩隠れ(あちらさん)の緊張感が桁違いに上がるなぁ」

「そうですか?」

 

 この敵とお見合い状態になる相互監視のローテーションには数時間に1回。1回は約1時間ほどでオレの出番は回ってくるのだが。

 

「あぁ。逆にお前が少し後方に下がって見えなくなるとホッとした顔になる。・・・まぁ、俺も敵側の人間ならそうなると思うがな!」

 

 何分(なにぶん)、オレがいるときといないときの相手の緊張具合や態度の差はオレにゃあわからない。

 ちなみにオレの隣で話し相手になっているのは、いつの日かの支援物資輸送任務の際にお世話になったイブという男だった。

 あれから3年。

 久しぶりにあったオレを見て、あの時と変わらない態度で絡んで来たのだった。

 それにしてもイブの声が大きいから会話は全部筒抜け。

 敵さんの表情も微妙な顔になっている。

 

「いや、しっかしなぁ。土影が自らこの前線に出て来たときはもうお終いかと覚悟したもんだが、まさかカルタが追い返してしまうなんざ。びっくりぽんや〜」

「ははっ。びっくりぽんなんですか」

 

 木ノ葉も岩も最終決戦はこの戦場と言わんばかりに戦力を結集させていた停戦前。

 両天秤のオオノキ。どの情報網にも引っかかっていなかった三代目土影が突如として戦場に現れた。

 己のチャクラの殆どをつぎ込んだと思われるほどの巨大な《塵遁・原界剥離の術》を発動出現させ、木ノ葉隠れの里が存亡の危機になるほどの被害が出る直前まで行ったのだった。

 

「そりゃあそうだぜ。だって相手はあの土影『両天秤のオオノキ』だぜ?あのわけわからん術は触れるだけで存在が消されちまうって伝説のやつだ。それをお前は真似して相殺させちまったんだからよ」

 

 オレは咄嗟の判断で右眼に宿った万華鏡写輪眼の能力。《天忍(アメノオシヒ)》を使ってコピー。それを使ってオオノキの原界剥離の術を消し飛ばしたのだ。

 ただおかげさまで万華鏡写輪眼がバレてしまったがな。

 

「それも含めてだよ。お前がうちはだろうが羽衣だろうが関係ない。伝説的な英雄だってことはな、ただの事実だ」

「やめてくださいよ。そんな大げさに伝説だとか英雄だとかは。土影には結局逃げられましたし。恥ずかしいじゃないですか」

「大げさなんてことはないさ。現に木ノ葉の未来を守ったんだ。一体、幾つの命を救ったのかなんて数え切れないぜ」

 

 お前の勇名の前じゃ、あの伝説の三忍や木ノ葉の黄色い閃光の名も霞んじまうな。と、続けるイブ。

 

「次の火影はお前かな」

「無理です。執務室にじっとなんか座っていられません」

 

 それに次の火影は波風ミナトに決まってるだろ。

 ナルトの父ちゃん差し置いて火影になるなんて嫌だよ。てか、それ以前にオレまだ7歳。元の世界だと義務教育期間に突入したばかりな。

 

 そんな会話をしていた数刻後には土の国と岩隠れの里との間に平和条約が締結され、前線基地には撤退命令が届くのであった。

 

 

 

 第3次忍界大戦の前期。

 木ノ葉の雷皇と呼ばれたひとりの少年というにも幼すぎる少年がいた。

 

 その少年は数々の戦場を転戦し、人々の記憶と。

 そして、歴史にその名を刻み。

 

 大戦も後期、末期に入ると敵国からは死神と畏れられた。

 

 雷皇。死神。雷神。現人神。

 

 人々はこのように彼のことを呼ぶようになっていたが、彼の本質はそこではない。

 

 転生者。

 

 この事実は彼のみぞ知る・・・。

 

 

 


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