NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
最近じわりじわりと数字が伸びていてまして。それに伴いやる気も比例してじわりじわりと上がって来ております!
そんなわけでつづきです。
さて、我らのヒロイン出るか!?
霧隠れの里を襲った土砂崩れと土石流はもちろん反乱軍側の起こした攻撃であり、自然現象ではない。
最初に起こした土砂崩れはあらかじめ地中に設置しておいた起爆札を連鎖爆破させて、発生させたもの。
次に反対側で起こした土石流は、霧隠れの里から見て北東にある湖から流れている川を堰き止め、合図と同時に堰き止めを起爆札によって爆破し、あとは水の力で山肌や里を押し流した。
その土石流に巻き込まれたオレだったが、命に別条はなく、それどころか怪我も一切負っていなかった。
「サンキューな。守鶴」
『おうよ!いいってことよッ』
その
《守鶴の盾》
この術の内部に入ったことによってオレはこの大規模な土砂崩れと土石流の中を無傷で乗り切れたのであった。
先祖の出身が匠の里だったらしい忍び一族による霧隠れの里への反乱は、霧隠れ側の勝利で終結した。
霧隠れ側の勝利で終わったとはいえ、被害は甚大。
これまでにない規模での復旧工事が必要だった。
里内部の大半は土砂やヘドロの混ざった泥水に覆われ、多くの家屋や重要施設なども流されたり、壊れていたり、被害に遭っていた。
人的被害も甚大で深刻だろう。
生き埋めになっているのは一体どれほどの数になるか。そしてその内、助からない人数は数えたくもないほどになるはずだ。
この霧隠れに反旗を翻した一族は、後でわかったことだが、元々は忍刀七人衆が持っていた忍刀を作った一族だった。
だったのだが、先の大戦で忍刀は全て紛失し、七人衆自体も壊滅。
現代には当時作ったレベルの忍刀を作る技術者はおらず、現存する忍刀の研磨や手入れ、その他の忍具の作成をして生き残ってきた一族は里からしたら既に不要。
元々外様で忍びとしての戦闘能力が低いこの一族は徐々に霧隠れの里上層部から迫害を受け、とうとう反乱に至ったということらしい。
そして霧隠れがその一族を甘く見た結果が現状だ。
一族の人間、ひとりひとりの戦闘能力は低かったにせよ。大量の起爆札や他よりも上質な忍具を数多く使用すればこのような大災害も起こせてしまうのがこの世界なのだろう。
話を戻そう。
オレは守鶴によって守られたことで無傷だったとはいえ、まだ地中で生き埋め状態だった。
そこでオレは《守鶴の盾》に入ったまま地表近くまで移動。そこから術を解いて、土遁で地面へと顔を出した。
と、思ったのだが。
「ッ!?」
流れ溜まった泥水の中だった。
しかも泥水の中で目を開けてしまったし、息をしようともしてしまった。
お蔭で目は痛いし、気管に泥水が入ってしまった。肺には入ってないと思うけど。
「けほっけほっ・・・ケホッ!・・・うげぇぇ」
最悪だ。
死者が多数出ている中、そんな小っちゃいことで最悪とは何事だ。と誰かに言われてしまいそうだが、気分は最悪だった。
「ぺっぺっ」
ジャリジャリする口の中を少しでも改善させようと唾とともに吐き出す。
髪や服も泥水で重くなってしまった。ぶるぶると犬が身震いするような感じで遠心力を使って髪から砂利と水分を飛ばす努力をするが、あまり効果的とは言えなかった。
とりあえず、服だけでも絞っておこうと潜入のため庶民に紛れ込むために着ていたシャツを脱ぐ。
尾獣たちの封印式は尾獣のチャクラを練り上げない限りは浮き出てこないから問題はない。
そこは問題ないのだが。
「ちょっと筋肉質すぎるか」
この国の栄養摂取量ならば、もっとやせ細っているはずだろう。
一般的に言う子ども体型。ちょっとお腹がぽこっと出ている体型ではなく、うっすらと腹筋やら背筋やらの筋肉が見えているオレの身体じゃあ、この国では異質だろう。
階位が高い忍びの一族の子どもならおかしくはないのだろうが・・・。
恐らく子ども一人の身体など、この状況下で一々気に留めるような稀有な人はいないとは思うが、一応。念のために服を絞って早々に着なおしたオレは被災した子どもらしく、絶望感を漂わせてトボトボと里内を歩き始める。
それにしても目に余る惨状だった。
見えている範囲だけでも怪我をしている人がたくさんいる。
見えている範囲だけでも息をしていない人もたくさんいる。
そして怪我人に対して治療に当たっている霧の忍びや瓦礫に挟まれている人などを救助している霧の忍びも見える。
潜入捜査中。つまりは不法入国者であるオレが救助に加わるわけにはいかない。
だって、ここでバレちゃ計画全てがオジャンになる。
でもだからと言って、何の罪もない人たちが死にかけているこの状況で見て見ぬふりをするのは、自分のしょうもない良心と自尊心が許すことはできそうになかった。
オレは人目につかない瓦礫の影へと移動する。
《影分身の術》
《変化の術》
数体の影分身を出したオレはその全てを一般的な男性。平たく言えば可でもなく不可でもない、影の薄い、印象に残らない顔と体型の男たちに変化させて散らばらせた。
そして影分身は各々、瓦礫に埋まっている人やケガをしている人のところへ行って救助や介助を行うことだろう。
それに今の影分身たちはいつもよりもチャクラを多めに練りこんだからちょっとした怪我くらいじゃ解除されないだろう。
こうしてしょうもない偽善行為をして多少の罪悪感が薄まったオレは、被災した里内をまた歩き始める。
被災孤児として保護してくれたり、そういった施設があれば僥倖だと考えながら。
そうして歩き続けること数十分。
里内の広場には臨時で開設されたであろうテントを何個も使って作られた簡易的な野戦病院の前に着いた。
足を引きずっている者や誰かに支えられていないと立つことすらできない者。タンカーに乗っけられて運ばれてくる者など、野戦病院は大混雑していた。
その様子を観察していたオレだったのだが、不意に肩を叩かれる。
振り向いて肩を叩いた人物の方へと顔を向ける。
「オ。坊やもどっかケガしたのカ?だったら見た感じは軽症だから、一番右の列に並ぶんだナ」
その人物は数年経っても成長が見られない。
昔、船の中で会ったときと同じ容姿に白衣を纏い、独特なイントネーションと特徴的な高音域の声。
そう。つまり。
「ん?お前どっかで見たことあるような気ガ・・・」
名前は忘れたが、あの娘だった。
お前かーい!笑
つ、次こそは・・・。
次回もお楽しみに!