NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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087.水の国潜入任務 其の拾壱

 羽衣カルタだ。

 

 影分身じゃない。偽者でもない。正真正銘本物で本体である羽衣カルタだ。

 

 オレとメイが影分身を洞窟の奥地へと結界内部の状況を調べさせるために先行させてから十数分。

 2人とも特にその間は口を開くことなく、周囲の警戒をしていたのだが、何の前置きもなく唐突にメイが言葉を発する。

 

「あ、私の影分身がやられたわ」

「音は結界の効果か全く聞こえてこないけど、やっぱりこの微妙な揺れは戦闘によるものだったか」

 

 オレらが派遣した自分たちの影分身はどうやらかなりハッスルしていたようで。いや、エロい意味ではなく。

 結界の位置からはかなり離れているはずのこの位置まで僅かながらも揺れが来ていた。と言っても震度で換算したら恐らく1もないだろうほどのものだったけどな。

 

「それで?どんな状況だった」

 

 影分身の性質。分身体が得た情報は本体に還元されるという性質。

 それによって得たであろう洞窟奥地の結界内の様子を聞く。

 

「今回の任務の目標(ターゲット)で間違いないようね。襲撃した私たちの影分身に対して恨み節の雨よ」

「なるほどね。他には?」

「カルタくんの影分身が何かを探していたようね。その後すぐに戦闘に入ってたから見つかってはなさそうだけど」

 

 ビンゴ。

 

 ・・・だったのだろうか。

 オレの影分身が戻ってきてないから正確にはわからないが、なにか今後の手掛かりになるようなことを見つけたのは間違いなさそうだ。

 

 じゃあ、尚更無差別に殲滅するわけにはいかないな。

 

「メイ。一回外に出よう。オレの術で敵全員を一斉に捕縛する」

「ここじゃ巻き込まれるってことね。了解」

 

 察しの良いメイはオレがそこそこ規模の大きい忍術を使って敵を一網打尽にしようとしていることを見抜く。

 瞬身の術で、すぐさま洞窟から抜け出し外へと出る。すると、霧でぼやけている月明りでさえ明るく見えることから洞窟内は本当に暗かったのだなと今更ながら実感する。

 

 未だにオレの影分身の術が解かれた様子がないということは、戦闘が続いているらしい。

 オレの影分身なのだから苦戦しているということではないだろうが・・・。一体何をしているのやら。

 

 パパパっと印を結んで地面に両手を付ける。

 

 そのポーズだけを見ると某錬金術にも見えるが、当然そんなわけはない。やろうと思えば土遁で再現できるものもありそうだが、その話は一先ず置いといて。

 

 ゴゴゴゴゴォォォと地響きを響き渡らせながら洞窟を形成する大部分であるところの巨大な岩山が崩れ始める。

 

「この規模の岩山を岩宿崩しするつもり!?地形変わっちゃうわよ!」

 

 今、岩宿崩しなんてやったら当然中にいる人間は生き埋め状態で圧死してしまうだろう。仮に運よく隙間に挟まったとしても動けなければそのうち窒息死か餓死は免れない。

 

 それにオレは捕縛するって言ったんだ。それなのに殺すわけないだろ?

 

「いいから見とけって」

 

 そう言ったオレはきっと口角が上がって楽しそうな表情を浮かべていることだろう。

 

《流砂漠大流》

 

 岩山を構成していた土やら岩やらがオレのチャクラによって砂へと変換される。それが連鎖反応を起こすかのように時が経つにつれて砂へと変換されるスピードは速くなる。

 それが原因で先程から《土遁・岩宿崩し》にも見える洞窟の崩壊が始まっていたのだった。

 

 そして大量に生みだされる砂は蟻地獄のように巨大な岩山まるごと飲み込み始め、それと同時に岩山全てを侵食し、場所によっては砂の津波を起こしながらやがて全てが砂となる。

 

 その間も絶え間ない地響きを鳴らしながらオレが地面につけている両手から前方全てを砂の海へと変えてしまう。

 

「ちょ、ちょっとカルタくん!?」

 

 やりすぎよ~というメイの嘆きにも悲鳴にも近い声がかかるが、でももう第一段階は終わってしまったということで愛想笑いをしてスルー。

 

 だが、このままだと結局のところ生き埋め変わらない。

 

 オレは両手を地面から離さずに自分のチャクラが練りこまれている砂漠の中を探知を開始する。

 

 するとすぐに見つかる自分以外のチャクラを放つ生命反応は、間違いなく洞窟の奥に潜んでいた敵。

 

《操砂漠柩》

 

 その反応を頼りに周辺の砂を圧縮して固め、徐々に地表近くへと持ち上げる。

 

 そして、巨人の手を模った砂が敵の人数分。

 既に砂漠となった地表面上へと姿を現わした。

 

「これで全部みたいだな」

 

 オレの作り出した人工的な砂漠に浮き出てきた巨大な手のオブジェの数は20ほど。

 元々、敵の人数はもう少しは多かったのだろうが、オレらの影分身との戦闘で命を落として、生命反応を頼りに敵を感知した《操砂漠柩》に捕縛されなかったのだろう。

 

 それはさておき。

 メイがオレの服の袖をくいくいと引っ張りながら、数ある砂の手から一つを指さす。

 

「カルタくん。あれあれ」

「え?どれ」

「あの砂に囚われてるのってカルタくんの影分身じゃないかしら?」

 

 そう言われた方に目を向けると「おーい」と呑気に叫んでいるバカがいた。

 

 間違いなく羽衣カルタ。オレ自身だった。

 

「はぁ。影分身とはいえ、自分の情けない姿を見るのは結構ショックだなぁ・・・」

 

 現実逃避をしたいくらいだが、それをしても状況は何も変わらず。むしろ羞恥プレイの時間がただ伸びるだけだと判断したオレは仕方なく自分の術に囚われている影分身(じぶん)の元へと向かうのであった・・・。

 

 

 


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