NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》   作:新名蝦夷守

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089.九尾の封印術式 其の壱

 オレがメイのアパートで睡眠を取ろうとした時に、木ノ葉に残して置いた自分の影分身から入ってきた情報とは。

 

 九尾の人柱力である、うずまきクシナが産気づいている。というものだった。

 

 その情報を得たオレはすぐさま木ノ葉へ帰る段取りを始めた。

 霧隠れの里の結界は中から外に時空間忍術で出る分には何の支障も無いものだったが、それだと門から外に出た記録が残らない。それは次回以降潜入するときに、お前いつの間に里外に出たんだ?ということになり面倒になる。

 というわけで一度、徒歩で門から里外に抜け出し、それから《座標天身の術》で木ノ葉へと飛んだのだ。

 ちなみに完全なる蛇足だが、霧隠れの里でのオレの立ち位置はメイが拾った孤児として義弟ポジションになっている。

 

 確かに周りの原作登場人物の年齢から逆算すると今年の10月10日が主人公うずまきナルトの生誕の時であったことに間違いないのだが、オレはオレで国外で潜入任務に就いていたこともあって綺麗さっぱり頭の中から抜け落ちていた。

 

 そんな時に影分身からの情報である。

 本当に木ノ葉に保険として影分身を置いといてよかった。

 

 もちろんこの世界軸では、原作との相違点がいくつもある。

 今回の件で言うならば。

 原作世界では、ナルト生誕時にクシナに封印されてた九尾を解き放った仮面の男の正体であったうちはオビトはこちらの世界では闇落ちせずに木ノ葉の中忍だ。

 

 このことだけを見たら、この世界でのナルトの生誕は大きな事件も起こらずに済むだろう。

 過去からの知識もある木ノ葉の里の上層は、人柱力の封印術式は出産するときに弱まることも知っている。だからこそ今回のクシナの出産にはバックアップ体制には万全を期すだろうしな。

 

 しかし、歴史修正能力とやらで原作世界のオビトの立ち位置の人間がこの世界軸に現れないとも限らない。

 それに、この世界軸でも、うちはマダラや黒ゼツが尾獣を欲しがっているのには変わりがない。

 

 もし仮にそうなった時。

 

 死傷者が出ないとは限らない。

 

 そうならないために。

 考えられる中で最悪の結果を回避するために、オレは水の国・霧隠れの里での活動を一旦切り上げてまで戻ってきた。

 

「で。今の状況は?」

「はい。里上層部がうずまきクシナの位置情報を極秘扱いとして火の国国内にある洞窟へと身柄を隠匿しています。その場所にはごく数名の暗部と夫の波風ミナト、助産師として三代目火影様の奥様しか入られていません」

 

 木ノ葉隠れの里に戻ってすぐに向かったのは、オレが頭の組織『宵』のアジトだった。

 そして、オレがそこに到着する前には情報を集め終えていた部下が待っており、現状の説明を受ける。

 

「当然大蛇丸さんは知ってるんだな?」

「はい。暗部長なので」

「火影様と大蛇丸さんの居場所は?」

 

 そうオレが尋ねるとすぐさまその欲している答えが返ってくる。

 火影の自宅兼職場である木ノ葉版ホワイトハウスである場所の執務室と、いつもの研究所らしい。

 

 良かった。里外とか国外とか、色街とか含めて辺鄙なところじゃなくて。

 

「さんきゅ。とりあえず、お前はここで待機。次の命令を待て」

「了解致しました」

 

 よし。とりあえずはオレらの直属の上司。大蛇丸のところからだ。オレがクシナの出産の警備に立ち会う理由を作る必要がある。つまりは辻褄合わせ、口裏合わせのお願いをする必要がある。

 オレは聞いた場所の大体の座標を計算して、それよりも少しだけ高い場所へと転移を開始した。

 

 

 

 建物だとか人だとかに間違ってもめり込まないために少し空高く転移したのだが、その加減をやり過ぎてしまった件は横に置いて。

 

 オレは大蛇丸が所長を務める研究所へと出向いていた。

 

 研究所の扉を開けると、研究員が出てきてオレが用件だけ言うと直ぐに所長室へ案内される。いわゆる顔パスというものだ。

 一応の礼儀としてノックはするものの、その返事は聞かずにサクッと室内に侵入した。

 

「あら。本体(アナタ)が来るなんて久しぶりよねェ。カルタくん」

 

 影分身を里に残しているだけで、ここ9ヶ月ほど一度も直接報告に上がらなかったことを嫌味ったらしく指摘されるが、そんな些細なことは完全に流すに限る。

 

「ご無沙汰してます大蛇丸さん。挨拶はこのくらいにして本題に入ってもよろしいでしょうか」

「そうね・・・私とアナタはビジネスライクな関係だものねェ。良いわよ、話してみなさい」

 

 それを感じ取ったのか、大蛇丸のほうも多少トーンダウンして話の続きを促した。

 オレはそれに対して前置きが長いという文句はさておき早速話し始める。

 

「九尾の人柱力、うずまきクシナの件です」

 

 そういったオレの言葉にピクリと反応を示す大蛇丸。

 里の上層部でもほんの一握りしか知らない。現時点で最重要案件である人物の名前がいきなり出てきたことに驚いているのだろう。

 そして、同時に『宵』の情報収集能力の高さも予想以上のもので驚いているのだろう。

 

「この件をより安全性を高くするには今の場所では物足りなさ過ぎます。現に我が組織の情報網だけで今現在の位置情報まで割り出せています。自来也さん・・・四代目にも忠告をして今すぐにでも場所を変えるべきです」

 

 そのように提案するオレに、大蛇丸は「具体的には何処に?」と尋ねてくる。

 

 大蛇丸のその問いに返す言葉はもちろん。

 

「蝦蟇たちが隠れ棲む里である・・・『妙木山』です」

 

 そう言ってオレは尚も言葉を続ける。

 

「あそこなら人が通常だと立ち入ることのできない秘境ですし、何よりクシナさんの夫であるミナトさんとその師匠である自来也さんが蝦蟇たちとの契約者。事の重大さを鑑みれば協力を頼めば断られることは無いかと」

 

 オレが一通り話し終えると大蛇丸はうんともすんとも言わずに静かに目を伏せて考え始めた。

 

 そして。

 

「良いでしょう。自来也に掛け合ってあげるわ。ただし自来也にはアナタから説明しなさい。辻褄は合わせておいてあげるわ」

 

 こうして、大蛇丸との交渉は意外にもあっさりとクリアしたのであった・・・。

 

 




新しい回に突入しました!

ナルトがある意味ではいよいよ始まりますね。

この世界軸ではどのような展開になるのか!恐らく一番作者が楽しみで仕方ありません。


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以上。新名蝦夷守でしたー

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