NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
オレは研究所にて大蛇丸を言い包めたあと。
大蛇丸を連れ立って火影の執務室へとやってきていた。
自来也の様相から見るに寝起きからそんなに経っていないらしく、まだ目がシャキッとはなっていなかったが(目がシャキッとなるエナジードリンクでも差し入れしようか)、それでも明るく迎え入れてもらうことができた。
「おぉーカルタかのォ!いやぁ~なんだか随分と久しぶりのような気がするのォ・・・。最近はどうだ?と言ってもどうせ大蛇丸の奴にこき使われてるんだろうが」
「えぇ、まぁ。ぼちぼち、そこそこってところでしょうかね」
オレと四代目火影である自来也は、ジト目で睨みつけてくる大蛇丸を横目に差し置いて、そんな中身のない会話を続けていた。
火を見るよりも明らかに苛立ちを隠してすらいない大蛇丸をからかうようにして自来也との雑談を続けるのもまた一興かとも思うが、生憎そんな時間的猶予もないので本題に入ろうと思う。
いや、でもちょっと待てよ。
仮に大蛇丸がイライラしている理由が対外的には大蛇丸の弟子的ポジション。暗部での右腕とも言われているポジションにいるオレが一応師匠である自身よりも、自身と同じく伝説の三忍のひとりである自来也との方が仲良さげに会話していることが気に食わないという嫉妬心からくるものだったとしたら・・・どうだろうか。
つまりは、ツンデレ大蛇丸。
・・・いや、需要は無いか。不毛どころか無毛並みに無意味な妄想はやめておこう。
どうせ同じ妄想をするならば、美少女の可愛い姿や愛らしい姿。普段じゃ抵抗があって決して見ることができないであろう恥ずかしい姿や、ちょっぴりえろっちぃ姿をしたいものだ。
こほん。話が脱線事故を起こしてしまった。急いでレールに戻そう。
「四代目。執務室内に防音結界を張らせていただきますね」
オレがそう言うと、自来也も本題に入るのかと先程は見られなかった真面目な表情へと変わる。
羽衣一族に伝わる結界術のなかでも特に防音に関して効果高い結界忍術を発動させてから、本題に入る。
「波風ミナトさんの奥さん。うずまきクシナの出産にまつわる件です」
「・・・話してみろ」
自来也の声のトーンが低いものに変わる。心なしか室内の温度も下がったような気さえする。
オレを睨みつけるような鋭く真剣な眼差しで先を促す自来也に従って話し始める。
まずは極秘扱いであるクシナの出産に関する情報をなぜ作戦に関わっていないはずのオレが知っているかということから。
上司である大蛇丸はクシナの出産時の護衛小隊にオレを選出する予定だったのだが、いつ帰って来るかわからない長期任務を与えていたため断念していたが、今朝になって突然里に帰ってきたため、まだ間に合うと思い護衛の応援としての任務を与えたこと。
その際にクシナの現在位置の情報を聞き、今のままではあらゆる可能性からクシナの出産を守るには不十分と感じたオレが今現在、代案を上げにここに来たこと。
あとは大蛇丸に言ったように、場所を蝦蟇たちが棲む『妙木山』にクシナを移送することを提案した。
「なるほどのォ・・・」
その一言が、オレが上記の内容と前回大蛇丸にも言った内容を話し終わるまでの間、最初から最後まで一度も口を挟まずにきちんと全て聞き終えた後の自来也の反応だった。
「はい。それに封印術に長けていたうずまき一族の封印術とはいえ当然弱点があり、それは四代目もご存知の通り出産する時です。でも羽衣一族に代々伝わる封印術を扱えるぼくならそれを補強することもできます」
「成功確率は?」
「ほぼ100パーセントに近い数字になるかと思います」
「カルタ、お主はクシナの出産場所への襲撃の可能性を危惧しておったが、その理由はなんだ」
「現在まだ調査中なので正確な情報ではないのですが、どうやら尾獣や人柱力を狙う人物、もしくは組織が存在するようなのです。その者たちの能力は不明ですが、今クシナさんを匿っている場所を特定し張っている結界を破れる可能性もゼロではないので、それならば蝦蟇の隠れ里である『妙木山』にて出産してもらうのが一番安全かと考えた次第です」
そう言ったオレに驚く自来也と、その話は聞いてないわよとこちらを睨みつける大蛇丸。
「ワシとミナトが頼めば『妙木山』での出産を許可してはくれるとは思うがのォ・・・。だが、妙木山に入山できる人数は極端に制限されるだろうの」
自来也とミナトは契約者だからノーカウント。許容範囲内の人数からは除外されるにしても。
多くて他の蝦蟇たちからすれば一般人は最大でも3人くらいのものだろうとの話だった。
当然、出産する本人であるクシナは入るだろう。というか彼女が入れなかったら何の意味もない。そして次点で九尾を封印している術を更に重ね掛けしたり、既にかけられている封印術を補強や強化するためにもオレだろう。そして最後に助産師役の猿飛ビワコ、三代目火影・猿飛ヒルゼンの奥方だろうか。
「護衛のことを考えたら、四代目とミナトさんだけでも十分な戦力となりましょう。それに蝦蟇隠れの里には仙術を使える仙蝦蟇もいると聞きます。まさかそんな魔境の地にまで攻め入って来るバカ者はいないと思います」
それにいざとなったら、ぼくの影分身たちも迎撃に参加できますし。と付け加える。
「それじゃあ、ミナトに話を付けてワシとミナトで妙木山への立ち入りを許可を得に行くことにしようかの」
カルタ。お前はここで待っとれ!というと、自来也は瞬身の術でその場から消え去った。
そして、その場に残されたオレはというと。
それにしても大蛇丸、ここに来てから一番最初の入室したとき「自来也。入るわよ」以降一度も口を開いてねーな。と大蛇丸の方を向くと明らかに不貞腐れていた。
「あのー大蛇丸さん?」
「・・・」
「大蛇丸さーん」
「・・・」
「元気ですかーっ!!」
防音結界を張っているからこそできる荒業。火影の執務室でのアントニオ猪木。
顎を出してしゃくれながら。そして無反応の大蛇丸の耳元で叫んでやったら、鼓膜が破裂するとめちゃくちゃ怒られた。
そして他にもきちんと報告をすることや、研究所にも影分身ではなく本体が来ることを義務付けられた。
なんだよ。結局、ツンデレってるのか。だから、需要なんかないってば。皆無だってばよ。