NARUTO-カルタ外伝- 転生者の独擅舞台《チーターライフ》 作:新名蝦夷守
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では、つづきをどうぞー
ここは蝦蟇たちが隠れ住む秘境『妙木山』。
他では見ることのできない木々や野草といった植物が生い茂り、恐らくそれに伴って昆虫類なども他とは違った進化を遂げている外の世界に住む人間からするとまさに未知の領域。
その場所は意外にも木ノ葉隠れの里から歩いて1ヶ月ほどの場所に存在すると言われるが、妙木山があるとされる場所は通称、迷いの森の中になる。
それ故に秘密のルートを知らなければ絶対にたどり着けないと言われ、それ故に蛞蝓が棲む里『湿骨林』、大蛇が棲む『龍地洞』と並び、秘境とされている。
これはもう少し後になってからわかったことだが、妙木山のある迷いの森には特殊な磁場が形成されており、微妙にだが空間の層がズレているのだ。
語弊を恐れずにもう少しわかりやすく言うならば、異空間。というところか。
だから特定の条件が揃った時空間忍術でしか浸入が出来ないのである。自来也のような例外を除いてな。
術者の元へ召喚する《口寄せの術》や《逆口寄せの術》。それから特殊な札を時空間移動の際に目印とする《飛雷神の術》だ。
オレの天送の術をベースにした派生の術では、術者が座標を計算してから時空間移動することになるが、妙木山のある迷いの森ではその座標計算が崩れてしまうため、仮に『x』という座標に飛んだとしても毎回別のところに飛んでしまうのである。
そのランダム性を解析してそのパターン可視化できるようになればオレの術でも浸入できるようになるのかもしれないが、下手をしたら何億通りや何兆通り以上ものパターンがあるかもしれないことに時間は割けない。よって現実的、実質的には天送系の術では浸入が不可能な空間だった。
そんな蝦蟇の秘境。摩訶不思議空間である妙木山にオレはいた。
入れた理由?そんなの決まってらぁ。
ミナトの飛雷神の術で、みんな仲良く連れてきてもらったんだよ。
火影の執務室での一件の後。
自来也は波風ミナトと無事合流してミナトの飛雷神の術で、彼らが契約している蝦蟇たちのトップがいるここ妙木山に飛び、大蝦蟇仙人に話を通してクシナが出産により、九尾の封印が弱まる間だけ場所を提供してくれることとなったのだ。
「うぅぅぅぅぅぅ!!あーッ!!痛いってばねーッ!!!!!」
簡易的なテントを張って、その中には分娩台の上にいて先程から断続的に陣痛が来ているらしく絶叫しているクシナ。その横に陣取って心配そうにしながらも励ましつつ手を握るミナト。助産師としての役割を持った猿飛ビワコがクシナの股下の方におり。そして、今は少し離れてクシナの視界には入らないところにオレと自来也がいる。
このテント内にはいないが、蝦蟇たちには外で何かあった時の備えとして待機してもらっている。
「がんばれクシナ!がんばれ・・・」
「ほれクシナよ。ひっひっふーぞえ。ひっひっふー。ほれ・・・さん、はいっ!」
ミナトは先程からテンパり過ぎて「がんばれ」という単語しか口から出てきていない。
それでも今は落ち着いたほうなのだ。最初なんて特に酷いったらありゃしなかった。その様子からは到底他国から「木ノ葉の黄色い閃光」と畏れられ、味方からは尊敬され、敬わられ、頼りにされる男と同一人物とは思えないほどの慌てふためき様。
結局、助産師役の猿飛ビワコから「これから父親になるお前がそんなんでどうする!男なんていなくても女は子どもを産めるんだ!わかったらシャキッとするかテントの外で待っておれ!そんなんじゃ目障りだ!」と、要約するとこのように一喝されて今に至る。
「うぅぅぅぅ。ひ、ひ、ひふー、ひ、ひ・・・いィィやァァァ!!痛いってばねーッ!!!」
妙木山に移動してからというものこんなやり取りが陣痛が起こるたびに始まったり、終わったりを繰り返しているのである。
それに出産が近づいているのか、その間隔も最初から比べると短くなっているような気がする。
正直、見てられないほど苦しそうなのだが・・・。
もう全身麻酔からの帝王切開で良いんじゃないかなぁ。この世界なら医療忍術で切開痕もキレイに治るだろうし。それ以前にクシナは人柱力だから、九尾のチャクラですぐに傷口は治りそうなものだし。
なんてことを考えつつ。しかしこの世界の出産方法として一切認知されていない帝王切開をこの場で提案するわけにもいかず。
今度綱手に会ったときにでも案として提供してみようというところまでで留めることにする。
「カルタ。クシナの封印術式の様子はどうだ?」
「弱まったり、正常に戻ったりを繰り返していますね。やはり陣痛が強まると封印が弱まり、九尾のチャクラが漏れ出しています。この様子だと、子どもが生まれるその瞬間に封印が解かれてしまうかもしれないですね」
いやーこれは大変よろしくないですねー。と、やや間延びした緊張感や緊迫感というものが一切感じられない声色で自来也の問いに写輪眼を通してクシナを観察している結果を報告する。
「ばっかもーん!!」
だったら早く何とかしてこい!と、まるで某海の家族の髪の毛が一本しか残っていない家長か長年ひとりの大怪盗を追い続けている国際刑事警察機構に所属する某刑事のような「馬鹿者」をいただいたオレはそそくさとクシナの元へと駆け寄る。むしろ這い寄る。
いつもニコニコ。クシナ(九尾の人柱力)の隣に這い寄る混沌(多重人柱力)。羽衣カルタですっ!
そんなぐだらなさ過ぎることを考えながらクシナの元に駆け寄ったオレは一言「失礼します」と声をかけてから封印術式が浮き出ているお腹に手を当てる。
・・・うん。めっちゃ赤ちゃんがお腹蹴ってる。てか、ナルト暴れ過ぎ。
そして九尾のチャクラを実際に手で感じ取ったところで写輪眼を万華鏡写輪眼に変えてクシナの瞳を覗き込む。
オレの意識はスゥーッとクシナの精神世界。暗くそれでいて禍々しいチャクラが充満している空間へと落ちていくのであった・・・。