この素晴らしい世界にデストロイヤーを!   作:疑似好天

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三部 2話 黒の部隊

「どうしていうことを聞かないんだ!」

 

 前の戦いでの勝利により、俺は総督より大隊長に任命された。……されたまではいいんだが。

 

「名乗るポーズはなにがいい?」

「爆炎の炎使いとか、雷撃の雷使いとかおかしな通り名には気をつけないと」

「我が刃……我が狂気……我が狂気を持て顕現せよ! うーん……」

 

 前回俺の命令を無視し、勝手に突撃して敵を圧勝。俺のもくろみは完全に外れたものの、勝利を収めた紅魔族。その紅魔族は、好き勝手に名乗りあげの練習をしてる。

 

「こいつらは……どいつもこいつも命令をききやしない!」

 

 他にもある。放置された大きなゴーレムを見てため息をつく。

 これは『紅魔族用歩行型トランスポーター』。俺が考案した新しいゴーレム兵器だ。四本の足でどんな道も付き進む大型のゴーレムであり、戦場に紅魔族を送り込むことが出来る。そのまま上から敵を攻撃する事で敵を圧倒出来る。出来るのだが、紅魔族にダサいと言われて乗ってくれない。

 

「せっかく作ったのに……」

 

 試作機を数台作ったがそれで生産はストップだ。鳴り物入りで製造させたのに残念だよ。

 

「おい聞いてんのか!!」

 

 かってに突撃しては、死体の山を築く紅魔族たちに文句を言いに行った。こいつらは魔法を撃ちまくった後、少し睡眠をとり、すぐに魔力を回復してはまた出撃してモンスターを壊滅させていく。それ自体は文句はないんだが。

 

「捕虜を取れって言ったよな? 魔王軍に属しているモンスターは生かしたまま連れて来いと!」

「その必要は無い! 全て灰燼にすれば問題なし!」

 

 俺の要望を完全無視する紅魔族。

 

「このアホ共め! お前らの高い知能は飾りなのか? いいか? 捕虜を取ればな、色々と魔王軍の情報を聞きだせる! 魔王城にどんな配備がされているのか。これらの情報がいずれ来る魔王攻略に役に立つ。それをかたっぱしから殺しやがって!」

「私達は強いからそんな必要は無い!」

「そうだそうだ! 堂々と襲撃して破壊すればいい!」

 

 くっそう。こいつらがいくら強いといっても、たった9人だぞ? 9人で残りの魔王幹部を倒し、あの魔王城の結界を破壊し、城の軍勢を撃破してそのまま魔王を倒すのは無理だ。これから増えるとしてもだ。

 

「お前たち! 何か勘違いをしているようだが! 紅魔部隊を預かるのはこの俺だ! そしてお前たちはこの俺の命令には絶対! それを忘れるな!」

 

 とうとう我慢の限界で、正式な書類を見せて紅魔族に怒鳴りつけると。

 

「なんだと? センスも何もねえクセに。お前のようなザコに俺たちの指揮が勤まるとでも?」

 

 一人の男が反論してきた。顔のナンバーは01、いっくんだ。

 

「言ってくれるな1番。では試してみるか? 俺とお前で、どちらが強いのか?」

「本気で言ってるのか? お前は上手く政府に取り入ったようだが、所詮は最弱職の冒険者だ。最強の紅魔族に勝てると?」

 

 俺は拳を握り締め、1番を睨みつける。向こうも目を光らせて威嚇してくる。そういえば俺は最弱職の冒険者だった……結構レベルも上がってて転職する機会もあったんだけど、あまり必要ないかーっとおもってそのままにしていたんだった。

 

「マサキ様に逆らうものは、私が代わりに――」

「その必要はない。下がっていろれいれい。従わないなら従わせるまでだ。丁度いい。この場の全員に俺の実力を見せてやる」

 

 れいれいを下がらせ、一対一でいっくんと対峙した。

 

「わかっているだろうな? これで負けたら、貴様、いや貴様ら全員は俺の命令に従え」

「やれるもんならやってみろ! 冒険者如き瞬殺だ」

 

 俺といっくんの決闘が始まる。この紅魔族のリーダーをかけた戦いだ。

 少しの間睨みあった後……。

 先に動いたのはいっくんだった。すかさず俺に攻撃を仕掛ける。

 

『リフレクション』

「マジックキャンセラー」

 

 すかさずスクロールを起動し、いっくんの魔法を無効化する。

 

「なっ!」

 

 驚くいっくんの隙をついて襲いかかり、そのまま押し倒して転倒させる。

 

「お、おのれ……卑劣な真似を! 『カースド――」

「詠唱などさせるものか。『バインド』」

 

 縄で首を絞めあげて押さえつけた。

 

「うっくくくくくく!」

 

 喉を締め上げられ、詠唱どころか呼吸も出来ないいっくんは、そのままバタバタと苦しむ。

 

「どうした? 戦闘用改造魔道兵001、コードネーム……いっくんよ。貴様は最弱職の冒険者に敗れたぞ? 紅魔族といえど俺の敵ではない。甘く見たな。俺はそこにいるれいれいや、リッチーとも渡り合ってきたんだ。貴様らのような改造されただけのひよっこチートとは、場数が違うんだよ」

 

 首を押さえるいっくんを踏みつけ勝利宣言をする。

 するとザザっと紅い眼をした他の紅魔族に包囲された。皆目を真っ赤に光らせ、俺に手をかざして狙いを定めている。

 

「貴様ら、何のつもりだ? この戦いは一対一の決闘だったはずだ。取り決めを守らないつもりか?」

 

 残り8人に言い返すと。

 

「黙れ! この卑怯者!」

「こんな勝ち方認められるか!」

「いっくんを放しなさい!」

 

 俺を狙う紅魔族の間に、今度はれいれいが割って入る。

 

「マサキ様に手を出すなら、誰であろうと殺しますよ?」

 

 バチバチと魔力を高めて紅魔族を威嚇するれいれい。眼は赤く光り、体から火花が散る。

 

「おもしれえな! このまま殺し合いか?」

「ちょっと、皆さんやめてください! マサキもです。このまま味方同士で争っても無意味ですわ!」

 

 アルタリアは面白がっている。一方マリンは必死であたふたし、みんなを止めようとする。

 

「わかった。マリンの言うとおりだ。ここで戦うのはやめよう」

 

 俺は両手を挙げ、いっくんを解放した。

 

「ゲホッ、ゲホッ! ハァ……ハァ……」

 

 バインドの縄を切ってもらい、なんとか呼吸を取り戻すいっくん。

 

「よ、よくもやってくれましたね!」

「いっくん、大丈夫か!?」

「まだやる気ですか? 次は私がお相手しますよ?」

「プロトタイプ! いくらあなたが止めても! 私たちにも譲れないものが――」

 

 今度はれいれいと揉めている紅い集団に。 

 

「いいだろう、君たちの根性はよくわかった。これはちょっとしたテストだ。ナンバー001、いっくん、君を正式な紅魔族の隊長に任命する。総督には俺から伝えよう。では解散!」

 

 まだ激怒している紅魔族に、俺は冷たい声で告げた。

 

「ど、どういうつもりだ? ぐっ……」

「言葉通りだ。お前たち紅魔族はこれからは自分の意思で動くといい。お前が指揮をとれ。不服か?」

 

 ヨロヨロと立ち上がるいっくんに一方的に告げ、背を向けてノイズへと戻った。

 れいれいと共に、紅魔の里から帰還中。

 

「いいんですか、マサキ様に逆らうなんて許せません! これでいいんですか?」

「いいんだれいれい。マリンの言うとおり、ここで争っても無意味だ。紅魔族は一応味方同士だからな。同士討ちはごめんだ」

 

 まだ眼を赤くするれいれいを落ち着かせる。

 

「本当はどうなんです?」

「見てろよあいつら。いつか痛い目に合わしてやる! 絶対にこの借りは返してもらうからな」

「それでこそマサキ様」

 

 俺は次の行動に移る。紅魔族が俺の手に負えないのなら……別の手を取らせてもらう。

 前の会戦といい、今回の命令無視といい、俺のいやな予感は的中した。紅魔族は俺の野望にとって邪魔になる。奴らの好きにさせれば俺の目的は果たせない。

 俺に忠実なコマが必要だ。強いだけでは意味が無い。忠誠心が無ければ。あんな中二集団ではない、本物の軍隊が必要だ。

 さっそく王との謁見室に向かった。

 

 

「……と、いうわけでノイズ総督。私は新たな部隊を創設したいと思います。紅魔族は強力ですが、不得手な分野も多い。それをカバーする部隊を私が直々に率います」

『紅魔族だけでは不服だというのか?』

「お言葉ですが総督。紅魔族は強い。確かに強い。ですがいつまでもこちら側につくとはいえません」

『紅魔族が謀反を企んでいるというのか? サトー大隊長?』

「いいえ、現時点ではその兆候はありません。ですがもし彼らが裏切った際、それを制止できる部隊が必要です。何事も抑止力が無くては。国家は全ての出来事に備える必要があります」

『なるほど。いいだろう。新たな軍の創設を認めよう。万が一紅魔族が反乱を起こしたとき、鎮圧に当たれ、大隊長』

 

 総督との話はついた。

 これで新しい軍勢を作ることが出来る。さっそく志願兵を集めた。

 魔王軍と戦いたいけど、改造されるのはちょっと影響がある。そんな人達を集める。その中でも盗賊、アーチャーなどに適正がありそうな人間を冒険者カードを見て選抜していく。

 正式名称は『紅魔補助隊』

 紅魔族が不得意とする分野をフォローするために作り上げた部隊だ。あくまで表向きの理由は。

 

「おめーら! 俺こそがノイズの大隊長にて! おめーら紅魔補助隊の隊長でもあるサトー・マサキだ! これから俺の事はサーと呼べ!」

 

 軍曹ごっこ。これやってみたかったんだよな。いやごっこじゃない。思わずにやけるのを首を振って我慢する。俺の肩にはノイズの存亡がかかっているのだ。

 

「俺はお前ら蛆虫を真の兵士にするため! 厳しい訓練を叩き込む! わかったなそこの! そこの少年! ええっと! 名前なんだっけ?」

「僕の名は――」

「うるさい! 今からお前の名は! 名前は……。思いつかなかったわ。面白いあだ名ってぱっと出てこないよな。まぁいい少年、これから訓練を始めるぞ!」

「は、はぁ? 隊長」

「違う! 俺の事はサーとよべ! 返事はイエッサーだ!」

「サー! イエッサー!」

 

 思ったようにはいかないなあ。でもグダグダだったのにちゃんと答えてくれるこの少年はいい奴だな。

 

 それから。

 選抜した人間を一人前の兵隊にするべく訓練が始まった。

 俺は指揮官用ゴーレムに乗り、志望者を追いかける。まずは基礎体力作り。マラソンだ。

 適当に作った歌を叫ばせながら走らせる。

 

「魔王なんてサノバビッチ!!」

「「「「魔王なんてサノバビッチ!!」」」

 

「紅魔族はへちゃむくれー!」

「「「「紅魔族はへちゃむくれー!」」」」

 

 この世界では力はレベルアップによってあがるため、マラソンして意味あんの? と思ったけどとりあえず形から入ってみた。連帯感を持つのにも役に立つしな。紅魔族みたいにバラバラだと困るし。

 

「戦場ってのはな! とにかく走る事だ! 攻撃にも、逃げ出すにも! とにかく走るのが必要だ! 一応後で『逃走』スキルも教えてやるが、取れない奴らもとにかく走るんだ! いいな!」

 

 ゴーレムに乗って叫びながら追いかけた。 

 

「はぁ……はぁ……」

「つかれた……」

 

 休憩タイム。それが終わると。

 

「次は戦闘訓練。とにかく素早く動くのが重要だ」

 

 その辺の機材を使い、戦場っぽくしてみた。岩を盾にしながら、障害物を乗り越えゴールまでたどり着く訓練だ。

 

「おいおい! そんな動きでは魔法使いに先に撃たれる! もっと素早く動け!」

 

 動きの遅い奴らを怒鳴りつける。

 

「よし、では本番といこう。対R戦術を開始する! れいれい、準備はいいな!」

「はい、マサキ様!」

 

 これぞ本番の訓練だ。れいれいを特別教官とし、訓練兵へ紹介する。

 

「彼女は紅魔族のプロトタイプ。まぁほぼ紅魔族と言ってもいい! れいれい軍曹と呼べ! それでだ。これかられいれいは『クリエイトウォーター』を発射する。水に当たったものは脱落だ! 本物の攻撃魔法だと思って本気で避けろ! いいな! 岩を盾にし進め! れいれい軍曹にタッチできれば合格だ! 失格者は腹筋だからな!」

 

 れいれいと俺の部隊を距離を取らせ、3人ずつ小隊を組ませて突撃させる。

 

「これより対R戦術スタート!」

「では行きます。『クリエイトウォーター』

 

 れいれいが離れた場所から水を浴びせ、必死でかわす訓練兵たち。

 

「1番アウト! 5番アウト!」

 

 水を食らったものを退場させる。最初の対R訓練ではクリア者はいなかった。

 

「もっと連携しろ! 仲間や自分を囮にし、その隙にれいれい軍曹のところまでたどり着く! それが出来ればチームでクリアだ! もっと仲間を信頼するんだ! いいな!」

 

 こんな訓練を毎日行っていった。

 

 ……。

 …………。

 創設から一週間がたち、厳しい訓練を終えた精鋭たちは見違えるようになった。これなら戦える。

 紅魔族のために作って拒絶された近代的な軍服は、俺の創設する黒の部隊に回すことになった。個性のない黒服で身を包む、俺の部隊。

 

「いいか、お前たち! 魔王だろうが紅魔族だろうがぶっ潰すぞ!」

 

 整列させた部隊にそう意気込みを告げる。

 

「あ、あの? 我らは紅魔族を支援するために作られた部隊じゃないのですか?」

「紅魔族を倒すんですか?」

「支援するためには! あいつらの弱点を知らねば! そこをカバーするんだよ。だから倒せるくらいじゃないとダメだ! ダメなんだよ!」

 

 疑問を浮かべる黒の隊員達に、適当に言い訳をする。

 

「とにかく、相手が魔族だろうが紅魔族だろうが関係ない! 俺の訓練を思い出せ! そうすれば勝てる! 間違いない! スクロールも渡したし! いいな!」

 

 彼らには『マジックキャンセラー』のスクロールも渡している。これなら相手が紅魔族だろうが無力化できる。もちろんそれ以外の対魔術師戦法も叩き込んでいる。

 

「打倒紅魔族! 赤い奴らに負けるな! 黒こそノイズの象徴となるのだ!」

 

 もう隠す気無くぶっちゃけて叫んだ。

 

 

「最近みねーと思ったら、おもしろいもんやってるじゃねーか!」

 

 俺が黒の部隊の前で演説していると、アルタリアがやってきた。

 

「おもしれーな! でもよお、そいつら本当に使えるのか? 試してみっか? 誰でもいいからかかってこいよ!!」」

 

 アルタリアがニヤつきながら剣を抜こうとすると。

 

「対A戦術! 発動!」

『バインド!』

『バインド!』

『バインド!』

 

 俺の号令と共に、アルタリアが動く前に拘束スキルを四方から浴びせる黒の部隊。

 

「おいちょっと! いきなりかよ!」

 

 成すすべもなく動けなくなるアルタリア。

 

「それでいいぞ! お前たち、よくやった! これなら紅魔族も敵ではない。おおっと、あくまで任務は紅魔族の補助だ。ま、補助の訓練も叩き込んでいるし、問題はないな。何も」

 

 黒い部隊が、俺の思い通り動くのを見て、邪悪な笑みを浮かべた。

 




・紅魔族用歩行型トランスポーター
四本足で進み、魔王軍を圧倒するために作られた大型のゴーレム。
巨大な像のような姿をしている。
武装は無いため、上に乗った紅魔族に攻撃は任せている。
とにかく頑丈に作ったため、軽い攻撃ではびくともしない。
コストは通常の魔道ゴーレムの5倍以上。
紅魔族用に作ったのだが、紅魔族はデザインが気に食わなかったらしく乗ってくれなかった。
数台試作品を作っただけで生産は中止された。
その数台は黒の部隊が所有している。
この四速歩行のゴーレムで培った技術は、後にある新兵器で応用される事になる。

・指揮官用ゴーレム
ゴーレムの上に人が乗れるように手すりを付けたもの。
攻撃機能は付いてない。あくまで移動用。
戦場を見渡すのに使う。危なくなったら乗り捨てて逃げる。
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