ストリームス隊長瑠 蒼に連れられウォータとなって倒した怪獣の住処にやってきた水野は以前は心優しかったという怪獣の変貌を知らされ、同じように変貌を遂げていた怪獣の子供を射殺する。そして炎、木野の二人は戦う理由、水野と友となった理由を思い出し、前の惨敗で失った名誉を挽回せんと短いスパンで現れた別の怪獣をウォータ抜きの二人での退治に成功する。そして水野は、瑠から告げられた言葉に迷いが生まれていた。
―――――
ウルトラフレンズ 第三話 『三位一体』 絶交星人 ブリツ 巨人人形 ゼッコロイドW 登場
とある会議室。半球状の机の円弧側に、三人の人物が座っていた。
一人は青い制服を着た長髪の女性、ストリームス隊長『瑠 蒼』。一人は赤い制服を着た短髪の男性、アンデッド隊長『藤 列士』。そしてもう一人は緑色の制服を着た長髪の男性、ガードナイツ隊長『
とある一つの議題を話し合うために集まった3人は、調停役であり重役の一人が遅れているため他のことを話していた。
「しかし、瑠。随分新人にお熱じゃないか。惚れたか?」
「フン、惚れた腫れたじゃない。奴は学生時代中々筋の良い剣士でな。目をつけていた」
「瑠さん瑠さん、それ惚れた腫れたなのでは?」
「性別が違うだけですぐそう結びつけるな。青臭い学生じゃあるまいし。肝さえ据わっていれば跡を任せてもいいか、と思っただけだ」
瑠の言葉に須賀は疑問を覚え、瑠へ問うた。
「あれ、青嶋君は」
「あれが管理職につける柄か。補佐当たりが丁度いいだろう」
「……適正でしか物を見てない」
須賀は瑠のキッパリ切った物言いに頭を抱えるが、瑠はそれを見て須賀の言いたいであろう言葉に先駆けて反論する。
「適正以外だけで物を見るよりかはマシだ。それに、5年10年は私もまだ引かんよ。あれが十分に育ってから、だ」
「……まあ、少し調べただけでもわかる生まれだと、その筋は十分にアリだが」
「私は生まれではモノを見んぞ? まあ、それが口実になるなら使わせてもらうがな」
クツクツと笑う瑠に、藤と須賀は苦笑すると、会議室に一人の老人が入ってきた。
「いやすまんね、道路が混んでて。しかし、邪魔したかの?」
「いえ、こちらも話し始めたばかりでしたので。しかし、一つ言わせていただくと。このあたり渋滞の情報ははいってきていませんが」
「……トイレじゃよ」
「何で嘘ついたんです」
瑠の呆れた声に老人は苦笑を返すと机の直線側の席へと座った。この老人こそTPCの重役でありSAG計画の立案者。ストリームス・アンデッド・ガードナイツを纏める『
「さて、君たちを呼んだのはほかでもない。【新しいウルトラマン達】の事だ」
「ええ。存じて。しかし呼称以外には特に話すことは無いように思えますが。地球人類に敵対する意思は見えませんし」
藤の言葉に佐渡川は顎に蓄えた髭を撫でる。
「それはそうとは言い切れん。確かに過去現れたウルトラマンは地球人類の味方であった。だがそれはその正体が地球人類であったからこそ、だとわしは考える。過去の資料にも全て地球人類だったと記載されておるしのう。ティガ然り、英雄アスカのダイナ然り」
「しかし、正体を暴けばマサキ・ケイゴやゼルガノイド計画の二の舞の可能性があります」
「このまま正体不明のままじゃとキリエル人の可能性もある。疑わしいのはこうも短く怪獣が現れ、そのどちらをも【ウルトラマン】が現れ、退治したことじゃ」
「マッチポンプの可能性があると?」
「望むべくは心清き地球人類がウルトラマンであることじゃが……我々防衛隊は常に最悪の可能性を頭に秘めておらねばならん。他の凶悪な何かに地球が狙われとってそれに応えて3人現れただけかも知れんしの?」
「いきなり現れた存在に、心全てから信頼を置くなと」
「ま、そういうことじゃな」
佐渡川はそういって区切ると心底楽しそうにフリップを取り出した。
「で、じゃ。ウルトラマンの名前なんじゃがあの必殺技のときの掛け声からとってじゃな、この青いのをウォータ、赤いのをヒート、緑のをクラッシャーと」
「その流れだと緑のウッドでしょうが!?」
―――――
とあるマンションの一室、ベッドの近くのテーブルに置かれた目覚まし時計が鳴り響き、部屋の主が起きてそれを止める。
「……ねむ」
部屋の主は水野。ゆったりしたスラックスを上下そろえた寝巻きの袖で目をこすりながら洗面所に歩き、蛇口のレバーを上げて冷水を出し、手で汲んで顔にぱしゃりと叩きつける。そうやって脳のスイッチを入れた水野はそのままてに洗顔フォームを出して顔を荒い、洗い流してタオルで拭く。初出勤の時の色々なトラブル(戦闘機でマシントラブル・強制的に生身で怪獣討伐)に巻き込まれた結果、青嶋副隊長の鶴の一声により休日となっていた。他の二人も理由は違うが休みとなっていた。
カーテンを開けると水野は日差しに思わず目を細める。
「……なにすっかなぁ」
主な友人である二人は怪我で休みで誘うわけには行かず、他に友人もいない水野は一人で街に出かけることにした。
シックな私服に着替え玄関でブーツを履く水野の背中には、妙に哀愁が漂っていた。
―――――
街で服や靴を見たり、店で適当なスイーツを買って頬張っていたりした水野はふと、街の異変に気付く。
やけに剣呑とした張り詰めた雰囲気。剣道の試合でよく感じていた場違いなそれに、水野は首を傾げる。
「なんで、こんな?」
何かが砕ける音が響き、水野は音がしたほうへと駆け出す。
路地裏へと駆け込むとそこでは喧嘩が起こっていた。片方が相手の顔を殴れば、殴られたほうは落ちていたビンで殴った相手の頭を殴る。
段々とエスカレートしていき殺意すら見え始めたそれに、水野はあわてて割り込んだ。
「それ以上は駄目だ! 死んじまうぞ!?」
「うるさい! そ、そうやって、あんたも一緒になって!」
「俺じゃない! お前の方が!」
「何……!?」
割り込んで両方の顔を見て初めて気付く。これは、水野の大学の同期。それも、とても仲がいいことで有名だった二人。そして、その目に浮かんでいたのは以前倒した怪獣と同じ、怯えや怒り。揺れる瞳に釣られるように、水野の心も揺れる。
「……思い出した、お前、無感情の化物! そんなのを呼ぶなんて!」
「だから! おまえだろ!? こんな奴を呼んだのは!」
「ッ」
水野の脳裏にはこれまで受けてきた罵倒や、陰口が浮かぶ。『化物』、『何を考えてるのかわからない』、『人外』、『七光り』。出会った人間にはほぼ確実に何かしらの悪口を言われていた。ただ、勉強や剣道をがんばっていただけで。例外は家族と炎と木野。木野だって会って言葉を交わす前は偏見を持っていたことに気付いている。いくら親の真似をしても、顔を見て言葉を交わさなければその偏見は剥がせない。言葉を交わしたって、教師のプライドを気付かぬ内に傷つけていたのか、化物を見る目で見られていたこともある。だけど、だからといって、正義を為さない理由は無い。わかってくれる家族が居る、わかってくれる友が居る。だからこそ、世界が平和であって欲しい。それを護るために、SAGに入隊したのだから。
「違う! どちらに呼ばれたわけじゃない! 喧嘩の音が聞こえた! だからそれを止めに来た! アンタら、仲が良かっただろう! このままじゃ殺し合いになっていた、それはどちらにしたって後悔する!」
だから、と続けようとした瞬間、水野の後頭部に衝撃が走り、水野は地面に倒れ伏し、喧嘩をしていた二人は後ずさって逃げ出した。
「う、グ……」
「……フン」
水野に危害を加えたローブを羽織った下手人は踵を返して何処かへと去っていく。水野が立ち上がろうとしても手は滑り、そのまま意識は遠のいていく……
―――――
街の空にスクリーンに映し出されるように映像が浮かび上がる。そこに映っているのは先程水野を襲撃した下手人。無論、街の人々はそれを知る由も無く、空に映るそれにざわついていた。
『……地球人類に告ぐ』
フードを脱いだ下手人はその姿を表すと、声を発する。甲冑めいたその姿は明らかに地球人ではないことを示していた。
『絆などと嘯くものよ、友情だと嘯くものよ。全て我が前にひれ伏せ』
そして下手人が手を上げると宇宙より何かが落ち、落下地点を破壊する。
『我が名は絶交星人ブリツ。これは試しだ。弱いならば我が人形によって散るがいい』
落下地点の煙が腫れ、落ちたその物体の姿を現す。その姿はカラーリングを全体的に暗くしたウルトラマンウォータそのものであった。その名は【ゼッコロイド】。絶交星人・ブリツの尖兵の機械人形である。
―――――
姿を見た瞬間、炎と木野の二人は自室から飛び出し、
だからこそ二人は走り、すぐにでもゼッコロイドを自分たちの手で倒そうとしているのである。
一番厄介なのは、『地球人類の手であの機械人形が倒されても向こうとしては何の問題もない』ことだろう。なぜならそれが完了した瞬間ウルトラマンウォータは敵なのか味方なのか、カラーリングを明るくしただけの機械人形かもしれない。そういう疑念が付きまとうようになる。まだウルトラマンウォータが一度しか現れてない、というのもこの疑念をわかせる原因だ。二人よりも遅れて現れたため、ヒートとウッドと別勢力だと捉えられてもおかしくはない。
この問題の解決策として最上なのは水野自身が現れて人々の前でウォータに変身し、機械人形ではないと明かすのが一番ではある。だが、来訪者であるウルトラフレンズたちがそれを許さない。まだ詳しく知っているわけではない、契約者が善人だからといって地球人類が全て善人なわけはない。それを明かせば絶対に利用しようとする輩が居るだろう。それも歴史に二人も前例が居る。ならば正体が明かせない、というのももっともであるのだ。
では、その次に善い策はなんなのか。それは、ウォータ・ヒート・ウッドの3人で共闘してゼッコロイドを倒すことだ。ヒート・ウッドの二人だけで倒した場合やはり疑念は晴れない。ウォータが直接対峙しなければ意味がないのだ。
「ヒィィィトォ!」
「ウッドォォォ!」
炎と木野は変身して空へと飛び上がりながら巨大化する。水野と連絡を取ってからにはしたかったが水野が携帯に出なかったため仕方なく二人で先に足止めすることにした。暴れさせるままでは駄目だから。二人もまた、人々を守るためにSAGに志願したのだから。
―――――
『―――ツル! ミツル!』
「―――んん」
指輪から響く
「……そうだ、あの二人は!?」
『キミが襲われた後、一目散に逃げて言ったよ。恐らく絶交星人に君が戦った怪獣同様に何かされていたのだろう』
「確かに、同じような表情を浮かべていたけど」
ウォータの言葉に先程の二人と先日戦った怪獣の姿を思い出す。
恐れ、怒り。恐怖感や憎悪を増幅させたとして、何に? そんな水野の考えを読んだのか、それとも現れた故に説明する気になったのか。ウォータは説明する。
『奴は宇宙を渡り、社会を形成する知性的生命体を発見するとそれを滅ぼそうというのが目的の傍迷惑な奴だ。絶交星人というのも通り名で、奴自身の出身はわかりはしない。だが、社会に亀裂を入れることが生きがいであることは確かだ。奴が行う事は様々だが、それだけは決してブレない。だからこそ、止めなくてはならない』
「それを止めるために地球に来たのか」
『奴はある決まったパターンで宇宙を移動している。そのパターンの軌道上に目に付く社会的知性生命体が住む星を目的として来たんだ。まあ、こんなに早く到着するとは思わなかったがな』
「お前らが?」
『まさか』
水野がウォータに問うたその時、二人の居る場所が影に包まれる。そして水野が空を見上げると、大きなウルトラマンの顔があった。
『奴がさ』
「ッ―――!? ウォータァァァ!」
水野は冷や汗を垂らしながら拳を掲げて叫び、変身する。光を放ちながら巨大化し、その勢いのままウルトラマンの顎にアッパーを入れる。
危険を感じてのことだったが、ウォータに変身した水野はすぐに間違いではないことを悟る。その姿は、ウルトラマンに変身した自分と瓜二つであったからだ。
≪なんだ、こいつは……!?≫
【ゼッコロイド。奴の尖兵。成程、どうやら奴も何度か邪魔されてよほど腹に据えかねたらしい。私に似た人形を作って仲違いさせようとは】
≪偽者暴れさせて信頼なくそうってか……!≫
『ゼェア!』
ウォータは構えをとるとゼッコロイドへと近づき、右ストレートや左のジャブを織り交ぜたコンビネーションを放つ。それを受け止めることもせず、ゼッコロイドは段々と後ずさっていく。
≪今だ!≫
『ゼェェア!』
今までよりも大きくゼッコロイドがよろめいたその瞬間、大きく振りかぶったパンチを放つ。が、ゼッコロイドはそれを掌で軽く受け止めた。
『ゼア!?』
「PPP...」
ゼッコロイドは電子音を発しながらウォータの拳を捻り上げ、ウォータは苦悶の声を発する。が、何処からともなく赤と緑の2条の光線がゼッコロイドに突き刺さり、ウォータを開放する。
≪無事か、ミズノ!?≫
≪あんまり油断しないようにってお父さんに鍛えられたんじゃ?≫
≪その声は、炎に、木野!? おい、大丈夫なのか!? お前ら怪我してたろ、軽くない奴!≫
テレパシーで聞こえてきた二人の声に、先日見た二人の姿を思い出して水野は心配そうに問うと、ウォータの両隣に降り立った二人は構えを取りながら力強く応える。
≪ハッ! あの程度、一晩寝れば直る!≫
≪そんなことより強敵だ。3人の力を合わせるよ!≫
≪そっか、そうだな……!≫
二人の心強い言葉に水野は心の中で強く笑って、不安を振り切って構える。
『ゼェア!』
『シュア!』
『ジャッ!』
三人のウルトラマンは掛け声を上げると両翼の二人はそれぞれの方向に分かれ、まずウォータがゼッコロイドとがっぷり四つ組み合った。
『ゼェアァ……!』
「PPP...」
その結果がら空きとなっているゼッコロイドの背後から二人がかりで羽交い絞めにして、ウォータが腹部にパンチを入れると、ウォータはバク転してその場を離れると、ゼッコロイドは目からビームを放ち、ウォータが先程まで居た場所を撃ち抜く。ゼッコロイドは羽交い絞めにしている二人を振り払うと真っ直ぐウォータの方へと向かうが、そこには光の楕球を創り、構えたウォータの姿があった。
≪【ウォータスプラッシュ!】≫
放たれた無数の光弾はゼッコロイドへと襲い掛かり、大量の煙を巻き上げる。しかし、煙が晴れた後も、そこには防御姿勢をとり無傷のゼッコロイドの姿があった。
≪チッ、硬ぇな≫
≪三方向から飽和攻撃を仕掛けるか?≫
≪いや、僕の技はそれに向かない。あの大量の講談を受けてあれだ。あまり効果があるとは考え辛い≫
【丁度いい。私達の本当の力を発揮するときが来た】
【俺たちが≪ウルトラフレンズ≫と名乗る理由。そして3人でこの地球へと降り立った理由】
【それを今、あなたたちへと教えよう……!】
ヒートとウッドが炎と木野の意思を全く反映せずに両手を突き出すように構えると、その手の先からそれぞれの色のビームが発射され、ウォータの胸のカラータイマーに突き刺さる。
≪いっ!?≫
≪お、おいヒート!? これ、大丈夫なんだろうな!?≫
≪無事ですまなかったらただじゃ……!≫
【これは俺たちの奥の手】
【三位一体の必殺技】
予想外の出来事に慌てる水野に炎は慄き、木野はもしも何かあったらと怒りを顕にする。が、ヒート、ウッドは事もなさげに応える。
【念じろ、ミツル。ここに渦巻く3つの力、それを纏め上げて発射しろ】
≪これを、纏め上げて≫
ウォータが手を胸の前で付き合わせると右手には赤の、左手には緑の光が纏いつき、胸のカラータイマーは青く強く発光を始める。
≪これがぁ!≫
【三位一体!】
≪【アァァァス! ストリィィィム!】≫
叫びと共に突き出された腕から放たれた虹色の光線はゼッコロイドに突き刺さり、そのままゼッコロイドの体を空高く持ち上げていく。
「P...P...P...」
そして途切れ途切れに電子音を上げた後、上空で大爆発を起こす。今度は爆炎が晴れた後もその姿は残っていなかった。
―――――
また別の日。休みをそろえた3人は、街のカフェにてケーキをつつきながらコーヒーを嗜んでいた。
コーヒーも飲み干し皿も空になったところに二人の男が駆け寄ってくる。
「ん? あれ、大学の」
「同期、だねぇ? 僕たちとはあまり関係ないはずだけど」
近くに来た二人は炎と木野の疑問の声には目もくれず、水野へと全力で頭を下げる。
「「この間は、ゴメン!」」
いきなりの事に訳もわからずきょとんとする炎と木野を横目に、二人は謝罪の言葉を重ねていく。
「勝手に喧嘩してて、止める義理もなかったのに止めようとしてくれて」
「説得しようとしてたのに、聞かないで。あのままじゃお前の言うとおり、どっちかが死んで、後悔してた。今でもこいつと殴り合って、後悔してるんだ」
「「だから、ゴメン!」」
「……」
二人の謝罪の言葉に水野は困ったように他所を見ながら頬を掻くと、二人を見直して微笑んだ。
「いいよ、許す。じゃ、ここの会計お願いね?」
「ああ、これだけで許してくれるとも思えないけど」
「結果的には見捨ててしまったわけだし」
「良いの、良いの」
そういうと水野は炎と木野を促して3人で席を立ち、別の場所へと歩いていく。
「しかし、光」
「なんだよ、木野」
「割と怒ってない? あの二人に」
「なんでさ」
「いや、あの会計、僕がわりと食べた後」
木野の言葉を人差し指で遮ると水野は舌を出していたずらっぽく笑う。
「ま、後頭部殴られた侘びって事で♪」
空は青く、全ての人々を照らしている。
まだ最終回じゃないです。