フューチャー・フレンズ   作:ファルメール

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第02話 さばんなちほー 2

「がーいど、がーいど、さばんながーいど♪」

 

 陽気に歌いながら進むサーバルを先頭に、一行はサバンナを進んでいく。

 

 道中、崖に突き当たった。

 

 サーバルは自慢のジャンプ力で軽々と崖を下っていく。

 

 しょくしゅは頭から伸びたうねうねを器用に使って体の安定を確保して、危なげなく降りていく。

 

 対してかばんは、手足を使ってじりじりと降りていく。表情を見ると少し怯えているようだ。

 

「はやくはやくー!!」

 

 サーバルに急かされて、かばんは気持ち動作を速くする。しかしそれが良くなかった。

 

「うわぁっ!!」

 

 手が滑ってバランスを崩してしまう。

 

 当然、かばんの体は崖下に真っ逆さま。

 

「わぅ!!」

 

 しかし地面に激突する前に、しょくしゅが頭のうねうねを伸ばしてかばんの体を空中でキャッチしていた。

 

 しょくしゅはそのままかばんを、ゆっくりと下ろしてやる。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい……ありがとうございます……すいません、僕がのろまで……」

 

「へいきへいき、フレンズによって、得意な事違うから」

 

 と、サーバル。

 

「あ、ありがとうございます……あ、しょくしゅさん」

 

「うん? どうしたの、かばんちゃん」

 

「すいませんが、その道具を二つ貸してもらえませんか?」

 

 かばんが指差したのは、しょくしゅがバブカリと作っていた「どーぐ」だった。職人気質の仕事人気質で100点以外は99点も0点も同じなバブカリと違って、しょくしゅは実用レベル(80点)に達していれば使うタイプだった。その為、試作した物も含めて幾つかの「どーぐ」を持ってきていたのだ。

 

「うん? いいけどこんなのどうするの?」

 

 うねうねを動かして、しょくしゅはかばんに「どーぐ」を渡す。

 

「ありがとうございます。よっと……」

 

 かばんは棒状のその道具を両手に持つと、それぞれ杖のように使って体重を支えた。

 

 フレンズ達は知らないが、遠い地ではストックやトレッキングポールと呼ばれていた道具と同じ要領である。

 

「あぁ、これなら楽ちんです」

 

「へぇ……」

 

 しょくしゅも真似をして同じように、杖のように使ってみる。

 

 すると体重が上手い具合に分散して支えられて、足への負担が小さくなった。

 

 しょくしゅは感心したようにかばんを見詰める。この「どーぐ」はセルリアンをやっつける為の物だったのに、こんな使い方があるとは。

 

「すごいね。君は、「どーぐ」を上手く使えるフレンズなのか」

 

 ううんと頷くしょくしゅ。

 

 こうした一幕を経て、一行はゲートへと向かう。

 

 途中、小さなセルリアンと遭遇したがこれはサーバルがやっつけてしまったのでしょくしゅの「どーぐ」が威力を発揮する事は無かった。

 

 水場ではカバに会って、最近セルリアンが増えているので気を付けるようにと忠告を受けた。

 

 そうして日が落ちる前にゲートの付近にまで辿り着いた一行であったが……ここで足が止まってしまう。

 

 ちょうどゲートを塞ぐようにして、セルリアンが陣取っていたのである。

 

「うぅっ……さっきのより大分大きいですよ……」

 

「でも、さっき誰かの悲鳴が聞こえたし……助けなきゃ!!」

 

 サーバルがそう言って、セルリアンに突進するが……5メートルほどまで距離を詰めると、足が止まってしまう。

 

「ええーっ!! 石が無いよ!! なんでーー!?」

 

 立ち往生してしまう。

 

 セルリアンの弱点は体のどこかにある石だが、眼前のセルリアンは一見してそれが見当たらなかった。

 

「うぅっ……こんなの初めて……」

 

「サーバルさん、石は後ろに!!」

 

「あっ、ほんとだ!! 背中にある!!」

 

 弱点を見付けたサーバルは何とか後ろに回り込もうとするが、セルリアンもさるもの。巨大な目の視線とサーバルが繋がっているかのように動いて、簡単には背後を取らせてくれない。

 

「よし、ここは私が……」

 

 4本の「どーぐ」を携えてしょくしゅが前に出る。

 

「待って、しょくしゅさん。何とか、僕がセルリアンの注意を引いてみます」

 

 かばんは、道中で見付けた看板に付けられたケースから取り出した地図で紙飛行機を折ると、それを飛ばした。

 

 ゆったりと飛行するそれはセルリアンのすぐ脇を通り過ぎていって、その動きを追おうとしたセルリアンの注意がサーバルから紙飛行機に移る。

 

 ぐるりと、体を回すセルリアン。

 

 当然、弱点の石がある背中がサーバルに晒される形となる。

 

「今だ!! サーバル!!」

 

「みゃみゃみゃみゃみゃ……!! みゃーっ!!」

 

 サーバル自慢の爪が、セルリアンの石に食い込んだ。

 

 石が砕けて、セルリアンの巨体も木っ端微塵となった。

 

「ふん……私のこの「どーぐ」の出番はなかったか」

 

 少し残念そうに、溜息を吐くしょくしゅ。

 

 一方でサーバルは、かばんへと駆け寄った。

 

「すごーい!! 何あれ何あれ!! あのひゅーって飛ぶやつ!!」

 

「えっと、紙飛行機かな……作ったんですけど……」

 

「作ったーーっ? すごいすごーーい!!」

 

「私にも是非使い方を教えてほしいな」

 

 しょくしゅもかばんに歩み寄ってくる。

 

「えっと……作り方は……うっ……」

 

 紙飛行機の作り方を説明しようとするかばんだったが……不意に、その表情が凍り付いた。

 

「? どうしたの、かばんちゃん。妙な顔をして……」

 

「う……うし、うし……」

 

「牛? ここには牛のフレンズは居ないが……」

 

「うし、後ろ……後ろです!! 二人とも!!」

 

「「!?」」

 

 ここでサーバルとしょくしゅは、妙に自分達の周りが暗くなっている事に気付いた。まだ日暮れまでには時間がある……

 

 と、いう事は……

 

「「ま、まさか……」」

 

 恐る恐る二人が振り向くと……

 

「うわあーーーっ!! また出たーーーっ!!」

 

 先程のセルリアンの3倍はある巨大セルリアンが、すぐ後ろに迫っていた。

 

「今度こそ、私の出番だな。くらえっ!!」

 

 しょくしゅが、手にした「どーぐ」を投げ付ける。

 

 棒状の「どーぐ」は、その尖った先端がセルリアンの風船のような体に見事突き刺さった。

 

「やった!!」

 

 と、喜んだのは一瞬だった。

 

 セルリアンは何ともないかのように全身から伸びたうねうねで「どーぐ」を掴み、引き抜くと、べきっとへし折ってしまった。

 

「ああっ!!」

 

「ううっ……どうしよう!!」

 

「ま、また紙飛行機を……」

 

「危ない!!」

 

 かばんは再びセルリアンの注意を逸らすべく紙飛行機を折ろうとするが、その前にセルリアンがうねうねを振り下ろしてきた。サーバルが咄嗟にかばんに飛び掛かって、二人は何とか攻撃をかわした。

 

「どうしよう!!」

 

 万事休す。

 

 かと、思われたが……

 

 ズシ……

 

 地面に付いたしょくしゅの掌に、かすかな振動が伝わってくる。

 

「これは……二人とも、私に付いてきて!!」

 

「う、うん……!!」

 

「どうするの!?」

 

「いいからこっちへ!! 急いで!!」

 

 しょくしゅに先導されて、サーバルとかばんが走る。セルリアンも、ぴったり3人を追ってくる。

 

 しかし少し走って、すぐにサーバルが青い顔になった。

 

「ま、待ってしょくしゅちゃん!! そっちは崖だよ!!」

 

「いいから私に任せて!!」

 

 しょくしゅはそう言うと、頭のうねうねを伸ばしてサーバルとかばんの体を捕まえ、崖から身を躍らせる。

 

 一瞬の浮遊感があり、そのすぐ後に風圧が襲ってくる。

 

 数十メートルの高度から、3人は落下していた。

 

 崖の下はさばんなちほーには珍しい森となっている。

 

 しかしこの高さから落ちたのでは、樹がクッションになったとしても到底助からないだろう。

 

「うわああああああーーーーっ!!」

 

 しかも、セルリアンも3人を追って崖から飛び出してきていた。

 

 これは、落ちるよりもセルリアンに空中で捕まってやられる方が早いかも知れない。

 

 だが逃げようにも、空中では精々手足をばたつかせるだけで身動きが取れない。

 

 絶体絶命。

 

 しかし、その時だった。

 

 森の緑を割るようにして巨大な手が伸びてきて、その手は空中で見事にしょくしゅ、サーバル、かばんの3人をキャッチする。

 

 そしてもう反対側の手が、ハエを払うようにセルリアンを吹っ飛ばした。

 

 丸い体のセルリアンはボールのように跳ねて、500メートルも飛んでやっと止まって、態勢を立て直す。

 

 一体、何が起こったのか?

 

 ぎょろぎょろと目を動かして状況を把握しようとして……セルリアンは、たじろいだような戸惑ったような動きを見せた。

 

 ずしん……!!

 

 轟音。さばんなちほーの大地が揺れる。

 

 ずしん……!!

 

 震動。水場に、波紋が生まれる。

 

 ずしん……!!

 

 森の中から、この音の主が姿を見せる。

 

 鎧のような甲羅を身に纏った、一人のフレンズが姿を現した。

 

 しかもこのフレンズは、大きい。

 

 セルリアンも大きいが、このフレンズに比べれば道ばたの小石ぐらいのスケールでしかない。

 

 それほどにこのフレンズは、大きな体を持っていた。

 

 立ち上がったその身長は、彼女が身を隠していた森の一番高い木よりも、ずっと高かった。

 

 手も足も、その巨体に見合うほどに大きい。

 

 そしてその左手には、空中でキャッチしたしょくしゅ達3人が乗っていた。

 

「あ、僕達……生きてる……?」

 

 何で生きているのか信じられないという顔で、かばんがきょろきょろと視線を彷徨わせた。

 

「うわぁーーっ!! 来てくれたんだね!! こうらちゃん!!」

 

「こうら……うわぁああっ!! たべ、たべな……」

 

 初めて見るこうらの巨体は、かばんにはショックが大きかったようだ。反射的に逃げようとしてこうらの掌から落ちそうになって、慌ててサーバルとしょくしゅが体を掴んで支えた。

 

「大丈夫、食べないよ!! この子はこうらちゃん!! このさばんなちほーで、一番おっきくて一番強いフレンズなんだよ!!」

 

「こうら……さん……ですか……」

 

「……」

 

 こうらの視線がかばんと合って、彼女はにっこりと笑みを見せた。

 

「助かったよ、こうら。あなたが近くに居てくれたのはツイてた」

 

「……」

 

 うねうねを上手く使って、しょくしゅはこうらの肩へと移動した。

 

「気を付けて、あのセルリアンはまだ戦うつもりだ」

 

「……」

 

 しょくしゅに言われてこうらが見ると、セルリアンは全身から何十本もうねうねを伸ばして、しかもそれらは先端が全てハエトリソウのような形状になって、噛み付こうと大きな口を開けた。

 

「……」

 

 じっと、視線だけを動かしてこうらがしょくしゅを見る。しょくしゅは彼女の行動の意味を、すぐに察した。

 

 指示をよこせ。このフレンズは、そう言っている。

 

 ならば自分がこの状況で出す指示は、一つだけだ。

 

「やっつけちゃえ!! こうら!!」

 

「……!!」

 

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