「・・・俺様はそれでもかまわねえが、まさか嫌とは言わねえよな、ライザー?」
「へえ、受けるのか。それはかまわないが俺たちはすでに公式のゲーム経験もあれば勝ち星も多いぜ?」
部長とライザーが不敵ににらみ合う。
ああ、なんてこった。
悪魔になっていきなり堕天使と揉めたと思ったら、今度はいきなりレーティングゲームですよ。
「俺様が勝ったら、もちろんこの話はなかったことになるわけだ。・・・文句はねえよな?」
「もちろんだ。まあ、万が一・・・の話だけどな」
再び鋭いにらみ合いが勃発するが、しかしライザーはふと嘲笑を浮かべた。
「しかし、君の眷属はこれっぽっちか?」
「あ? なんか文句でもあんのか?」
部長が馬鹿にされたと思ったのかかなり表情を険しくするが、ライザーも全く動じない。
「いや? まだデビューもしてない悪魔にしてはそこそこかもしれないが、俺の下僕の相手をするにはまだまだだともってな」
そういうと、ライザーは指をパチンと鳴らす。
その瞬間、また魔方陣と炎が巻き起こった。
そして、その中から何人もの女の子が・・・女の子しかいない!?
「・・・なあ、これって、まさか?」
「そのまさかです」
小猫ちゃんが俺の心を読んだかのように答えてくれる。
ああ、間違いないだろう。これは間違いなくあれだ。
この野郎、ハーレム作ってやがる!
「くそがぁああああああああああああああああああああ!!!」
俺は心の底から崩れ落ちた。
ああ、崩れ落ちるとも!
だって俺は、初恋の女の子を女に取られた挙句、こくってきた女が殺すための刺客だという女運の悪さを誇る男だぜ!?
いや、アーシアがそのつもりなのはうれしいんですが、さすがにこの連発はきついからまだその気にはなれねえしさ!
なんか涙すら出てきたぁあああああ!!!
「謝れ! 告白する前に女に寝取られた俺に謝れぇええええ!!」
「うぉ!? なんだ!?」
思わずつかみかかりそうになってしまうが、部長に首根っこを捕まえられて止められる。
「あ、悪いな。こいつ、初恋の女に彼女ができたらしくって」
部長! 言わないでください!
と、ライザーはそんな俺に肩に手を置いた。
「・・・頑張れ」
「うるせえぇええええ!!」
そうじゃねえんだよぉおおおお!!!
くそ! 殴り飛ばしてやりたいけど、そうすると部長に迷惑がかかる!
ええい! こうなったらレーティングゲームでケリをつけてやる!!
「レーティングゲームを待ってやがれよよこの野郎! 焼き鳥にして食べてやる!」
「ハッ! 元人間ごときにやられる俺じゃない。・・・それに、ゲームは十日後ぐらいでいいだろう?」
あれ? てっきり今すぐ始めるのかと思ったけど、そんなに待つの?
「それはかまいませんが、よろしいので?」
「かまわないさ。数の差はあるんだしちょうどいいハンデだろう」
うっわぁ。確かにその通りだけど余裕満々だなこの野郎。
だが、少年兵としての記憶が事実であることを証明する。
敵は
だけど、ここで尻込みするわけにもいかないわけだ。
・・・絶対勝ってやるからな!
そして、ライザーたちが帰った後、俺たちは会議をすることになった。
「いや、マジで悪かった!」
と、真っ先に部長が頭を下げる。
「親父殿が筋の通らない真似をしたせいで、頭がカッとなっちまった。おかげで不利な勝負を受けさせちまって済まねえ!」
「顔を上げてください部長。実際、約束をたがえているのはジオティクス様の方なのですから」
おお、さすがはイケメン王子の木場祐斗だ。こういう時も完璧な対応だよ。
「でも、なんで急にそんなことを決定したのでしょうか?」
と、疑問符を浮かべるアーシアだが、其れに堪えらえる人はいない。
部長もさっぱりわからないらしく、胴にも首をかしげていた。
「そうなんだよなぁ。親父殿は娘の俺様がいうのもあれなぐらい親馬鹿だが、理由もなく筋を曲げるような人じゃねえのに・・・」
うーん。どういうことなんだろう。
「部長が知ると、余計なもめ事になるような理由があるからでは? 部長は不用意な喧嘩はしませんが、理由があるとすぐに動くタイプじゃないですか」
「俺様の縄張りでなんか妙な動きがあったとでも? それにしたって無意味な喧嘩なんてする気はねえぞ?」
確かに部長はそういう人物だが、となれば喧嘩を確実に売るような相手が動ているということになる。
そんな相手、心当たりは一つしかいない。
「・・・ワールマターとかいうのが、動いた?」
小猫ちゃんが言葉にする中、全員が少し沈黙した。
あの野郎、ついに侵攻を開始したってのか?
「いや、それなら親父殿もちゃんと言ってくるはずだ。・・・第一、全軍総出で動き出すレベルだよ、そいつぁな」
部長はそういうが、しかしなんか不安になってきた。
なんでだろう、すごい嫌な予感がしてきてるんだけど、俺。
それはともかく、今はレーティングゲーム。
俺たちは、十日間も何もしないわけにはいかないので修行を行うことになった。
そのためにとりあえず、部長の別荘がある山の中にレッツゴー!
・・・なんだけど、ね?
「部長! なんか荷物多くありませんか!?」
「おう! どうせなら行きも含めて特訓した方がいいと思ってよ! 大量に缶詰を入れてきたぜ!」
うわっはー! 道理で重いと思った!
今、俺の背中には俺の全身よりでかい荷物が背負われている。
うん、確かに鍛えてるし悪魔にもなったけど、ひどくね?
内心でそう思うけど口には出さない。
なにせ、隣の木場も同じぐらいの荷物を背負っている。部長はその倍ぐらいの荷物を背負っている。小猫ちゃんに至っては、五倍ぐらいの荷物を背負って平然としている。
これじゃあ文句は言えないぜ! アーシアにこんな思いに持つを背負わせるわけにはいかないしね!
「それにしたって、どうするんですか部長? 数の差は圧倒的なんですけど」
と、俺は歩きながら懸念を口にする。
なにせ数は圧倒的だ。そして数は間違いなく力だ。
戦闘において敵より多くの数を用意するのは当然の理屈。三倍以上の数を用意されてるなんて、その時点で負け確定といっても過言じゃない。
「ま、
と、前もって告げてから部長はにやりと笑った。
「だけど、この世界はインフレが激しいんだぜ、イッセー?」
まあ確かに。
レイナーレとの一件がいい例だ。
あの時の数の差はこんなもんじゃなかった。そして、部長たちは割と無双していた。
「群と数と範囲が中心だった人間世界の争いと違って、異形たちの争いは個と質と深度が重要だ。実力者ならマジで無双ゲームみたいなことが平然とできるし、その気になれば小さな島ぐらいなら吹き飛ばせるぜ?」
「うっわぁ、なんでそれを隠し通せてきたんですか?」
ちょっと戦闘したら地形変わるじゃん。人間にばれないように争いとかできないよ。
「まあ、作る力が強ければ直す力も強くなるってことさ。・・・実際、レーティングゲームの舞台とかはその都度作ることも多いけど、ショッピングモール程度の空間なら簡単に作れるんだよ」
マジか木場。悪魔ってすごいんだなぁ。
「はぅう。そんなことになったら迷ってしまいそうです」
「大丈夫。アーシア先輩は護衛しますから」
怖気づくアーシアに小猫ちゃんが安心させるようにそう告げる。
小猫ちゃんって無表情に見えて、実は意外とかわいらしいよなぁ。
そんな子が怪力で戦うんだからすごいなぁ。
俺も、しっかり頑張らないと。
気合を入れますか、俺も!!