戦闘を繰り広げながら、僕と小猫ちゃんは続いてきた増援を相手にしていた。
イッセー君が四人、小猫ちゃんが兵士三人、そして僕が騎士を一人。これで合計八人を撃破したことになる。つまりは数の上なら半分だ。
質の面ではまだまだ半分以上残っているけど、それでも数の差は大きく縮まった。
残りの兵士が本陣に突入している可能性はあるけれど、そこにはすでに部長もアーシアさんもいない。
あえて敵にプロモーションされる可能性を受け入れて、とにかく奇襲で数を減らす方向にシフトしたからだ。
なかなか博打じみた作戦だけど、おかげでうまくいった。
だが、ここからが本番だろう。
「・・・まさか、いきなりここまで減らされるとは思いませんでしたわ」
と、そこにいるのはライザー氏の僧侶の一人にして、実の妹。レイヴェル・フェニックス嬢だ。
彼女はレーティングゲームに参加しているわけではないが、しかしそれはともかくといてフェニックスの一人でもある。決して油断できる相手ではない。
そう思い身構えているが、レイヴェル嬢は近くにあるベンチに座ると、そのまま軽く微笑んだ。
「ああ、あなたの相手は別にいますわ。わたくしは戦わないので安心してくださいまし」
・・・本当に戦わないんだ。これは、まさかうわさは本当なのか?
「妹萌えをコンプリートするために、本当に眷属悪魔にしたようですね」
と、小猫ちゃんが戻ってきながら同じく構える。
そう、ライザー氏は女好きで眷属全員をハーレムにした男。しかも様々な属性の女性を集めている。
その一つとして妹属性を追加しようと、実の妹であるレイヴェル嬢を眷属悪魔にしたという噂は本当だったのか!
あ、レイヴェル嬢もそれに気づいたのか嫌な顔をしている。
「・・・本当に面倒なことになりましたこと。でも、わたくしがいなくてもこの戦いは負けたりなんてしませんわ」
と、彼女が視線をよそに向ける。
警戒しながらも視線を向ければ、そこには残っている全眷属が総出で姿を現していた。
意外と判断が速い! 部長の捜索を切り上げてまずは僕たちをつぶすつもりか!
「さて、あなた方はいつまで持つのかしら?」
そう自信に満ちた笑みを浮かべながら、レイヴェル嬢は片手を上げる。
それを合図として、全眷属が一斉に襲い掛かった。
俺は割と追い詰められていた。
くそ! すでに弾薬が心もとない! ついでに言うとグレネードは誘爆しそうだから捨てるしかなかった! しかも俺飛べないから接近戦できない!!
なんだこれ、割と詰んでるんじゃないか!?
「さあ、これ以上はどうしようもないでしょう? あきらめて負けを認めなさい」
勝利の笑みを浮かべながら、敵の女王が魔力を集めている。
この女! 俺が抵抗することを確信したうえでとどめを刺すつもりかよ!!
「そもそも、あなた方がどう戦おうと勝ち目がないのがこの戦いでしょうに」
そう、あきれ半分で女王は告げる。
あ? なんだその自信は。
「いかに私たちを全員倒したところで、レイヴェル様とライザー様を倒せるわけがない。フェニックスとはすなわち不死。それをどう突破すると?」
よほどライザーが負けないことを確信しているようだ。
ああ、確かに不死身なんてそれだけでやばいってのはよくわかるさ。
だがな?
「知らないとでも思ってんのか? フェニックスの不死には限界があるんだろう?」
ああ、それについてはしっかりと聞いている。
フェニックスの不死といえど、精神的にへばったりしたら再生できなくなるそうじゃないか。さらに神クラスなどの圧倒的な一撃を喰らって消し飛ばされれば、復活することはできないって聞いたぜ?
それならまだやりようはある。有象無象を全員なぎ倒して、ライザー相手に消耗戦。それ以外にも倒し方は用意してある。
だが、女王は何を言ってるんだこいつらはとばかりにあざ笑う。
「馬鹿馬鹿しい。あなた方下級悪魔風情が、その条件を突破できるわけがないでしょう? フェニックスは至高の一族なのですから」
ああ、そうかい。マジで腹立つ女だな。
俺も負けずと、馬鹿なこと言ってんじゃねえよって感じで笑ってみる。
「・・・何がおかしい?」
「いや別に? そもそもこれはレーティングゲームだって忘れてねえかって思ってよ」
そう、実践においてなら確かにこれはかなり危険な相手だろう。
だが、レーティングゲームは殺し合いじゃない。
だったら、別に殺せなくたってかまわない。
「まあいいさ。そろそろお前ら詰んでるしな」
「・・・なんですって?」
疑問を顔に浮かべた女王の耳に、その声が届いた。
『ライザーさまの兵士二名、騎士一名、戦車二名、リタイア』
「なんですって!?」
あまりの事態に驚愕して、女王が後ろを振り向く。
馬鹿め。それは致命的な隙だ!
俺は躊躇することなくアサルトライフルを構えると、急所をためらうことなく撃ち抜いた。
「・・・しま―」
「油断大敵。まだまだ場数が足りなかったな」
実戦経験が豊富なら、後方に注意を向ける程度はできたはずだぜ?
真正面の敵を忘れて後ろを振り向いたら駄目だろう? 女王さまよぉ!
「・・・キロキロ百キロ・・・千キロ・・・二千キロ・・・四千キロ・・・」
俺様、リアスグレモリーはただいま絶賛降下中だ。
奇襲作戦はうまくいったんだが、胴にも即座に戦力を集中させたようなので、こっちもさらにギャンブルを入れることにした。
『部長さん! 頑張ってください!!』
と、通信越しにアーシアのかわいらしい声援が耳に届いた。
くぅー! 可愛い女の子の声援は、性別とわずやる気をみなぎらせるぜ!!
今俺は、フィールドの範囲ギリギリの高さから急降下。加えて全力で重さを荷重している。
高度数百メートルからの一万キロのフリーフォール。
さあ、受けてみやがれ!!
「キロキロ、メテオストライク!」
そして、今まさに突撃しようとしていた連中に大激突!!
俺様も地面に埋まっちまうが、しかし衝撃波で何人か撃破しながらふっとばした!
「小猫、祐斗!!」
「「はい!!」」
そしてその隙を逃さず、二人が残った連中を隙を突いてぶちのめす!
よっしゃ! できる下僕をもって俺様はうれしいぜ!!
「な・・・な・・・ななな・・・」
そして、レイヴェルは目を大きく見開いて驚愕していた。
「ようレイヴェル。久しぶりだなぁ?」
俺様は挑発もかねて片手をあげてあいさつするが、レイヴェルはそれどころではない。
「な、なんですの今の攻撃は!? 悪魔の能力ともまた違いますわよ!?」
ああ、レイヴェルには話してなかったか。
「あ、言ってなかったな。俺様、体重を自由に操作できるんだよ?」
「き、聞いてませんわよ!?」
だろうな。言ってねえもん。
ライザーは事情は知ってるようだが、細かい能力までは知らないだろう。親父殿にもそこまで詳しく説明してねえからな。
この技は出しずらいが決まれば凶悪。俺様としては決め技として使いたい奥の手ってやつだ。
『ライザーさまの女王、リタイア』
お、イッセーの奴も決めたようだな。
「で、どうすんだレイヴェル? やるか?」
「やりませんわよ!」
お、この期に及んで戦闘しないとは、別の意味で根性あるな。
「・・・腑抜け」
「そこの小娘! 今何か言いました!?」
小猫、変な挑発すんな。
しかしまあ、圧倒的な人数差で追い込まれたかと思ったら、ゲームが始まって見りゃぁなかなかすごいな。
誰一人として掛けることなく、敵は残り二人。レイヴェルはやる気がないようだから事実上あと一人か。
・・・根本的にライザーの不死あってのチーム構成だな。それを頼りにしてるようじゃあ、まだまだ意味がねえ。
そいつを教えてやらねえと、俺様の婿にはさせてやれねえな。
「・・・出て来いよ、ライザー」
「・・・油断を一切してないな。さすがは元兵士といったところか」
そういいながら、ライザーが校舎から姿を見せる。
「まさか全員やられるとはな。十日はハンデがありすぎたか?」
「調子ぶっこくからそういうことになるんだよ。敵の準備が整ってないときに仕掛けるのは立派な戦術だぜ?」
そう、ライザーはまだまだ油断している。
余裕は戦場において生存に役立つが、油断はむしろ致命的だ。
本当の意味で死ぬ危険性が薄いレーティングゲーム。それにフェニックスの不死身の特性。この二つが、ライザーに余裕ではなく油断を作っている。
もし、このままワールマターが動き出せば、ライザーも戦場に出てくることになるだろう。
そして、おそらくワールマターに殺される。
それはだめだ。こいつが死んだらハーレムの連中が必ず悲しむ。レイヴェルも悲しむだろう。
だから、ここで俺様が鍛えてやろう。
「かかって来いよライザー。・・・不死身ってだけで無敵を名乗れるほど、世の中は甘くないって教えてやらぁ」
「言ったなリアス。・・・なら、俺はお前を倒して男としての株を上げるとしよう」
レーティングゲームもクライマックス!
さあ、本気で暴れようか!!