親殺し――そう呼ばれる行為はもはや罪にすらならない。それは宇宙世紀に移民する人間はごくごく一部だと決まっているから、それ以外は切り捨てる。ということだ。そんな罪にならないからって――やっていいわけでもないが……でも、それでも決まっているのは確実に僕らが約束されない明日が待っているということだ。
「……ヴェーゼスは取り返す」
ヴェーゼス。僕の作ろうとしていたMSの名前だ。だけど、今は奪われた。その力は通常の機械を大きく上回る。故に――危険だった。その力が世に出回るには危険すぎたのだ――
「機械が人を殺す時が来たなら――それはこの世の終わる時だ」
僕はそう思っている。故に――危険すぎるMSは提出しなかったのだ。賛成派には。反対派に渡すことにより宇宙世紀への移行を白紙にさせるつもりだった。のだが……
見ての通り、失敗に終わった。そう、奴らに奪われた。奪還されたのだ。ヴェーゼスの設計図は。
「5年かけたんだぞ……それをやすやすと奪われてたまるかよ……!」
そうだ。ヴェーゼスには僕だけじゃない。支えてくれたみんなの思いがこもってるんだ。だからこそ――やり遂げねばならない。この世界の秩序を守るため、ヴェーゼスの奪還を。
「でもお前の中にはあるはずだ。ヴェーゼスを倒せる設計図が」
「……」
「なあ、閉じ困るなよ」
「どうしてお前は――」
僕の中の存在、ナナト・ヴェルチ。彼は僕にいろいろ教えてくれて来た。それは今も変わらない……だからこそ、僕は彼に頼りっぱなしじゃいけないのだ。彼に頼らず――この手で進まなくてはいけないのだ。
それこそが僕たちの生きる道。それこそが僕の存在理由だ。
「お前のすべてをくれよ」
「え……?」
ヴェルチは続けた。
「お前のすべて――ヴェーゼスを俺にくれ」
「でも設計図は――」
「ヴェーゼスの対抗手段――わかるだろ? 作るんだよ、サージエストを」
「!? でもあれは!!」
サージエスト。その機体こそはヴェーゼスと同一の機体である。だがしかし、その本質こそ違う。サージエストは換装により戦略を変える局地仕様の機体。それ故に搭載しなければならなかった――非人道的なシステム、サディストを。
「使ったものは戦いの旅に四股を失っていく。つまり、最大で4回しか乗れない」
「そうだよ……」
そう、時間的には十分すぎたんだ。西暦が終わるまであと4か月。それさえあれば――奪還できるのだ。僕たちの西暦を。だけど――
「サディストシステムの犠牲は許容範囲だろ?」
「それでも……!!」
僕はなれなかった。非道に。