「あああああああ!!! こうすれば、こうすればああああ!!!」
リミッターを外した。痛みでどうにかなりそうで、朦朧とする意識の中、彼に対する明確な殺意だけをむき出しにした。リミッター解除はパイロットとしての寿命を一瞬で失うが、それだけ強力な機体出力を一瞬で得る。しかし、四肢をほぼすべて使うそのシステムの痛みに肉体がついていけるパイロットが存在するだろうか。……おそらくいない。乗るたびにただでさえ精神的、肉体的にも衰退していくこのシステムを迷いなく乗りこなせる。それだけで、パイロットの候補となりうる、
技術だけがすべてじゃない。技術が劣るものが技術の勝るものに勝つために。敗者が勝者となるためのシステムがこのSSSなんだ。
現に僕は、自分よりはるかに技術の勝る存在であるアニエスを圧倒している。
ああ、そうか……これが――勝者の気持ちなんだ――
「……自分を見失って投げだす奴は、もう人間じゃねえんじゃねえかな。俺は、そう思う」
ほんの一瞬であった。彼のヴェーぜスが僕のサージエストのすべてを断ち切ったのは、ほんの一瞬だった。その鮮やかすぎる一閃は敗者のなしえないものだ。僕のように、技術のないものでは決して破ることのできない、技術での敗北だった――
「お前の技術は間違っちゃいねえ。お前の作った技術は、確かにこうして結果を残した。だが、お前はそいつに乗るべきではなかった……たった、それだけなんだよ」
そう言い残し、アニエスは基地攻略へ乗り出す。
「平気か? アニエス。無理するな」
「なに……リミッターは外してない」
「……リミッター。お前は知ってたのか?」
「……秘密兵器は最後まで隠し通すもんだぜ」
「お前はそのまま基地を制圧しろ。……サージエストのデータを全て持ち帰れ」
「了解」
……サージエスト。歴史に翻弄され、振り回され、見捨てられた悲しき叛逆の騎士。だが、歴史に名を残した。こいつは……お前の作ったMSは、これから世界を大きく変えるだろう。
「……なあ、ユウセイ。お前は――世界を、お前を殺した世界が憎いか? 俺は憎い。悔しい。だからこそ……世界は美しい。人間は、人類は次に進まなきゃいけねえんだ……そのためにも、宇宙世紀に移り変わること……許してくれ」
普段の好戦的すぎる性格からは考えられぬほど彼はナナト・ユウセイにやさしかった。だからこそ、彼は迷わず彼を殺した。
彼にも、彼なりの考えがある。彼にも、彼なりに宇宙世紀に賛成する理由があったのだ。