ある補佐役の日常・・・星導館学園生徒会にて   作:jig

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TOO MUCH TROUBLE

 

 

 

星導館学園。

学生食堂、『ル・モーリス』

 

学食と言うには豪華過ぎるメニューと内装を持つ店だが、あくまで学食である。

 

 

「では。お疲れ!お二人さん」

 

「志摩先輩。ありがとうございます」

 

「まあお疲れと言われる程ではありませんが」

 

フェニクスは早くも5日目が終わった。

その日の夕方、志摩 涼は天霧/リースフェルトペアを夕食に招待していた。

一応仕事の一環ではあるが(参加選手から試合の感触や見通しを直接聞いておく)、涼としてもこのペアには興味を持っている。何しろ参加者の中では最強なのだ。

 

「確かにね。2回戦終了時点でまだタッグとしての戦いを見せていない。余裕だな」

 

「次はそうはいかないでしょうけど」

 

流石に人ではなく、パペットがドリンクとメニューを持って来る。

 

「さて、何にする?あまり悩みたくなければ『本日のディナー』がお勧めかな」

 

「では、それでお願いします。でも良いんですか・・・?」

 

「気にするな。ああ、これは生徒会予算じゃないぜ。俺のポケットマネーだから」

 

「余計心配になるんですけど・・・」

 

天霧綾斗の心配ももっともだが、それでも学食であり、本当の高級ダイニングに比べればそこまで気になるお値段にはならない。

 

「良いって。それよりフェニクスだ。3回戦、界龍が相手だろ」

 

「油断するつもりはありませんが、綾斗と一緒なら問題ありません」

 

「流石だな。まあ俺もそう思うけどね。やはり厳しくなるのは次の次、本戦からだな」

 

「はい。アルルカントのパペットとレヴォルフのイレーネ・ウルサイス。間違いなく上がってくるでしょう」

 

前菜が運ばれてきて、一旦中断の後、涼が話題を再開する。

 

「アルルカントとレヴォルフ、どちらが面倒かな?」

 

ユリスが答える。

 

「どちらも強敵ですが、やはりあのパペット、でしょう。情報が少なすぎる。ラミレクシアの方はまだ戦い方の予想がつきます」

 

イレーネ・ウルサイスは純星煌式武装(オーガルクス)、グラヴィシーズの使い手だ。重力を操る能力自体は良く知られている。今日の試合でもその力で星導館のマクフェイル/フックのペアを余裕で破った。

その対策は難しいが、綾斗もオーガルクス、セル=ベレスタを使う。対抗はできるだろう。

 

「ああ、そうだな。・・・すまん。アルルカントの情報管理は上手くてね。あのパペット、まだ詳しい事がわからないんだよ」

 

何しろ強力な防御障壁を発生させてあらゆる攻撃を防いでしまい、あまり手の内を見せない。これでは対策も作戦も難しい。生徒会としてそういう面をフォローすべきなのだが、上手くいっていないのが現状。

 

「大丈夫です。あの防御障壁は厄介ですが、綾斗なら」

 

「まあなんとか。試合が長引く事が無ければいいんですが」

 

「おい綾斗」

 

「あ・・・」

 

「いいんだ。察しはついているが誰にも言わないよ」

 

やはり天霧の力には制限が、多分時間的な物があるらしい。

 

「お願いします」

 

「ああ。だが俺が気付くんだ。そろそろ他にもおかしいと思う奴が出るかもな」

 

「気をつけます」

 

「うん。あ、メインディッシュが来るか」

 

その時、涼の端末に呼び出し。

 

「こんな時に・・・優か?すまんが今はちょっと・・・。何だと!?商業エリアの、ああ、5ブロックの南か。分かった。すぐ行く」

 

「どうしたんですか?」

 

「いや、まあ・・・トラブル発生ってやつ?俺も顔出さないとね。すまんが後はお二人でどうぞってな。ああ、むしろ俺がいない方がいいのか? なあお姫様」

 

「は・・・?そうかも・・・って何でそうなる!」

 

「あははは。まあいいじゃないか。二人で、ディナーを楽しんでくれ。じゃあな」

 

顔を赤らめるユリスと、あまりよくわかっていない綾斗に手を振ると席を立つ。

生徒会の義務、良いのか悪いのか。

 

 

 

 

店を出ると能力発動。

上空を転移しつつ、商業エリアに向かう。

二人には顔を出してくる、と言ったが多分その程度では済まないだろうと覚悟する。

端末に送られてきた動画と優の話では、結構深刻な事態だ。

 

「あれか・・・よりによってこんな時に!」

 

現場上空から地上に転移。

 

そこには睨み合う二つのグループがいて、怒鳴り合っている。

片方は聞いていた通り、ウチの連中。高等部の奴らか?制服姿と私服が混ざっている。とりあえず校章をつけてはいるが、あまり大人しくない学生ばかりらしい。

 

問題はその相手だった。

よりにもよってガラードワースだ。

品の良い彼らがこんな状況になるのも珍しいが・・・

 

「マジかよ・・・」

 

思わず天を仰ぎたくなった。

 

オープンテラスの前の路上に椅子やテーブルが転がり、一人の学生が倒れ、もう一人が膝をついている。

つまり負傷者発生。

多分そのせいで彼らもすっかり頭に血が上っている。数人の学生がルークスを取り出して起動している。

 

「涼!」

 

「優、お前がいながらこの事態か!」

 

「あたしだって来たばかりだって!」

 

こうなったきっかけはまあ想像がつく。

だがここまで悪化するのは珍しい。まして片方はあのガラードワースの連中だ。

よほど星導館側がバカやったらしい。

 

野次馬が集まってきた。

良い見世物だから仕方ないが、ここで乱闘とかになったら、副次被害が出かねない。

一般観光客に怪我でもさせたら・・・それがかすり傷程度でも、あまり考えたくない大問題となる。

 

「かかってこいや!」「貴様!許さん!」

 

「いかん、始まっちまった!」

 

こうなったら強引に収めるしかない。

 

「優、ウチの連中を叩きのめせ。武器は使うな。俺は向こうを何とかする!」

 

「わかった。やってみる!」

 

返事と同時に能力発動、鏡像の多重展開。

鏡像間を瞬間移動しながらガラードワース学生に接近し、その手からルークスを取り上げて行く。

 

優の方は―――大丈夫だろう。能力と体術の組み合わせで上手く制圧している。

水飛沫と共に学生が倒れた。

 

水。

 

彼女の能力。

 

カフェのテーブル上のグラスから、入っていた水が吹き上がると水球を形成。

そして飛んで行く。

水球は次々と暴れる学生の顔や腹を直撃。打たれた学生は次々と倒れる。

 

ガラードワースの連中は・・・突然多数出現した涼の鏡像に驚いて動きを止めた。

 

「うん、こんなものかな」

 

「テメエ!邪魔するな!」

 

「へえ。こんな事しておいてまだ風紀委員に逆らうんだ。ふーん」

 

「風紀委員がなんだ!てめえらなんぞに・・・グハッ!」

 

倒れていた学生が次々に喉をおさえて激しく咳き込む。涙目になっているから相当苦しいんだろう。ともあれこれでは抵抗など出来ないな。

 

「ひょっとして気管に水を入れたのか?」

 

「当たり」

 

怖いねえ、と呟いた所で気が付く。他の風紀委員が駆け寄って来た。

ガラードワースの方も、一人風紀委員の腕章をした男が怪我人に近づいて様子を看ている。

取り敢えず声をかける。

 

「星導館、生徒会の志摩だ。ウチの連中はこっちの風紀委員が抑える。とりあえずこの場は一旦離れないか?もちろん後で改めて話は聞く」

 

「いいだろう。だが私が聞いた限り、非はそちらにあるようだが?」

 

「わかっている。必要ならば生徒会同士で話をつけよう。その辺は誤魔化すつもりはない。だが警備隊の世話になるのはお互い避けたいのではないか?」

 

「それは同意する。では」

 

「ああ。いずれな」

 

話が通じる奴で良かった。ただ間違いなく生徒会には話が行くな。あの会長はどうかわからないが、レティシアは・・・怒った顔が目に浮かぶ。

 

「優、そっちはどうだ」

 

ああ、この店にも迷惑かけてるな。どう話をしようか。それに・・・

端末を取り出す。

 

「会長?志摩です。ちょっと困った事になりました―――」

 

 

 

 

生徒会室。

 

時刻は21時を過ぎているが、事態が事態なのでスタッフ全員を集めている。

 

「―――被害のあった店については取り敢えずの話はつけて来ましたが、賠償額については改めて伺う必要があるでしょう。できればガラードワースにも噛んでもらいたいですがね。そのガラードワース側ですが、こちらもその場を収めただけです。別途交渉になりますね」

 

「やらかした連中はどうしてます?」

 

「今は拘束されて風紀委員会で事情聴取中。途中経過でいいから教えろと言っといたが、何か入っているか?」

 

「ええ、こっちの端末に少々。・・・これは駄目ですね。どう考えてもウチが悪いです」

 

「・・・」

 

緊急対策会議なのだが、流石にテンションが下がる。

現時点でわかっているだけでも、問題は星導館側にありそうだった。

カフェに集まっていたガラードワースのフェニクス参加選手―――予選落ちだが―――に星導館のガラの悪い連中が絡み、割って入った学生と口論になった。先に手を出したのはどちらかわからないが、怪我人が出たのはガラードワース側だ。しかも店先で暴れて調度品も壊している。

 

「・・・これは少々まずいかもしれませんね」

 

クローディアの表情も憂色に包まれている。

 

「フェスタの期間中に起こした問題で、軽微とは言え一般への被害と言うのがよろしくありません。シャーナガルムはどうなっていますか?」

 

「その場には警備隊員はいませんでした。ただ関知していないという事は無いでしょう」

 

見つかっていたら問答無用で介入してきて、もっとまずい事になっていただろう。今後の対応も細心の注意がいる。

 

「こりゃあ下手したらフェスタのポイント剥奪になりかねませんよ」

 

「この時期になんて事を・・・連中の処分は?」

 

「当面、停学とします」

 

「足りないような気がしますが」

 

「ええ、ただこれ以上となると、学園側との協議が必要ですので」

 

「協議と言えば、ガラードワースとはどうしますか?」

 

「それもすぐやらなきゃだが、面倒だな・・・」

 

会議とは言え、結論が出る訳でもない。まずは状況説明と共通認識の場だった。

明日のミーティングの時間を決めて解散すると、涼はクローディアに促されて会長室に入る。

 

「涼さん、まずはお疲れ様でした」

 

「それはお互い、でしょう。とにかく、こんな事で会長に手間かけさせる訳にはいかないので。後は俺が何とかします」

 

「お願いできますか。なるべく学園間だけで話を終わらせないと」

 

「ええ。実は表のラインではレティシアに連絡を取っているんですが、出てくれない・・・」

 

「良くない状況ですね。では私が―――」

 

「待って下さい。今はまだ会長が出るべきじゃない。何とか俺のレベルで話をつけます。いざとなったら、『会合』を招集します。これなら直接会えます」

 

「わかりました。まずはお任せします」

 

 

会長室を出ると今度は風紀委員本部へ向かう。

涼も当事者の一人なので事情聴取があるし、その後の会議にも出なければならないだろう。

また徹夜になりそうだった。

 

 

 

翌日。

フェニクスも6日目。予選も後半だが大会の盛り上がりは増すばかり、と言った感じ。

だが涼の気分は最悪。

疲れと寝不足で頭痛までしてきた。

 

朝のミーティングが終わってやっと休めるのだが、学生寮に向かっているところで優に捕まる。

 

「それで、今日も商業エリアに行くの?」

 

「ああ、店の方に正式の謝罪にな。全く、面倒な」

 

「こっちも見回りの強化で今夜も出るよ。非番だったのに」

 

「だったら終わった後、付き合えよ」

 

「嫌よ。何であんたのストレス解消の相手しなきゃいけないのよ」

 

どうやら気分最悪なのは一緒らしい。

 

その時涼の端末にメール。

そうか、こちらも頭の下げ方を考えておく必要がある。

 

 

 

どうやらレティシアは会う気になったようだ。

 

 

 

 

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