ハリーポッターとゴーント家の令嬢   作:ゆきみかん

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クィディッチとクリスマス

ホグワーツ全体が今日のクィディッチの試合に対して大きな盛り上がりを見せていた。

ここ最近トロールだなんだとトラブルが続いていた上に、宿敵同士のスリザリンとグリフィンドールの試合なのでそれぞれの寮はもとより、レイブンクローやハッフルパフに関してもどちらが勝つかなどしきりに言い合っていた。

最大の注目ポイントとしては今日はハリーのデビュー戦でもある。1年生でシーカーになったのは50年ぶり、そしてなによりそれが生き残った男の子とあってはここまでの盛り上がりをみせるのは当然と言えた。

私の友人たちも例にもれず試合に対してテンションが上がっているようだった。特にダフネとドラコは元々クィディッチが好きなのもあるだろうが。

 

 

「いやぁ、楽しみだ。ポッターが全校生徒の前で恥をかくかとおもうと」

「ね、もうすこし真っ当にたのしみなよ」

「楽しんでるともさ」

 

そんな中ダフネがこちらに話を振ってくる。

 

「ね、もちろんサラも見に行くでしょう?」

「んー。いや行かないかなぁ。ルール良く分からんし私が飛ぶわけでもないし」

「ええ!そんなもったいないよ!ルールなら教えてあげるからさ」

「そうだぞ。こんな日に寮にいても仕方ないだろう?解説してあげるよ。ポッターの不甲斐ないデビュー戦を特等席で見損ねるのは後悔するぞ」

「そうだなぁ・・・。ハリーは別にいいけども。まあじゃあ行こうかな」

「そうこなくっちゃ。じゃとりあえず朝食食べに行こ」

「ああ。ミリセント達も待ってるだろうしね」

 

そう言いつつ朝食の席確保をお願いしていたパンジー達へと合流しに食堂へ向かうと何やら騒がしい。

グリフィンドールのテーブルからはみ出して七色に輝く旗がはためいており皆それに対してヤジを飛ばしたり手をたたいて盛り上がったりしている。

 

ドラコやノットは一目その旗を見ると不機嫌そうに言葉を吐き出した。

 

「なんだあれ?ふざけてるのか?」

 

旗にはハリーポッターを大統領にという文字とグリフィンドールのエンブレムが書かれていた。

 

「英国には魔法界もマグルにも大統領はいないんですけどねぇ・・・」

「サラ、そこじゃないでしょ。ねぇ。ドラコ」

「ふん。くだらない。どんなに無様な試合をするのか見てやろうじゃないか」

 

グリフィンドールの悪口を言いながら席に座るドラコ達。

 

「さて、サラのために食べながら簡単にルールを教えてあげるよ」

「あ、いいわね。先に知っておいた方が楽しめるよ。きっと」

「まあ、じゃあおねがいするわ」

 

ドラコは満足そうにうなずくと簡単にルールを教えてくれた。

 

ゴールは3つあり、基本はクアッフルをお互いに入れていく事やビーターと呼ばれる邪魔をする役などざっと説明を聞いていく。ルールとしては単純でそうむつかしい事はなさそうだった。

 

「スニッチをとると150点で試合終了というのは極端だね」

「ん、それだけ見つけるのもとるのも難しいんだよ」

「例えば200点差ついてるときに負けてるチームがスニッチ取っても勝てないんだよね?」

「その通りさ。だからシーカーは見つけてもすぐには取れない場合もある。ただどのみち相手にとられたらその時点で大差で負けるからとらざるを得ないときもあるけど」

「その時は捕まえて負けるってこと?」

「ああ。めったに起こらないけどね」

「なるほど」

 

ひとしきりルールを教わり、朝食を食べ終えた後に競技場へと移動する。

競技場は各寮、そして教師、貴賓席に分かれておりすでに客席は満員に近く非常に盛り上がりを見せていた。

スリザリンの席の前側に皆で陣取り試合開始を待つ。

 

「レディースアンドジェントルメン。さあ、運命のスリザリン対グリフィンドールの試合がやってまいりました。実況は私、ジョーダンが解説はマクゴナガル先生にお願いしております!」

 

「解説とかあるのね。ありがたい」

「でも上級生曰くかなり偏った実況でスリザリンでは評判わるいみたいよ」

「ふーん。マクゴナガル先生いるのにね」

 

そう最初は思っていたが試合開始後暫くすると、マクゴナガルはクディッチに関してはネジが外れる事が判明した。普段からは考えられない態度はみてて面白い。

 

試合はグリフィンドールに先取点を取られたが、その後点を取り返したりとそれなりに拮抗して進んでいく。

スリザリンがラフなプレーが多く会場内からはブーイングが上がっていたがルール違反では無いとの事だった。

ルール違反でないのなら勝つためにあらゆる手を尽くすのは悪くはないと思う。

二人の解説のおかげもあり、それなりに楽しく見ていたが暫くして会場がざわつき出す。

ハリーがあらゆふ方向にふらふら飛んだりとバランスを崩したような動きをし始めたのだ。

 

「あれはどうしたの?」

「はっ、箒のコントロールを失ったのさ。不釣り合いな高性能な箒にむりやり乗るからさ」

 

そうドラコは馬鹿にしたようにニヤニヤしていたがダフネが納得できなさそうに続ける。

 

「え、コントロール失ってもあんなに暴れるかなぁ・・・。まるで何かに操られてるみたい」

「うーむ。原因はしらんがスリザリンのチャンスには違いないな。このうちにスニッチとってしまえ!」

「ノット、その遠見の双眼鏡貸してよ」

「ん、ああ構わないが」

 

ハリーの状況がスリザリンへ有利だと話していたノットから魔法具の双眼鏡を借り受けハリーを拡大して視る。

ぶれるのでちゃんとは分からないが、たしかに魔術が箒に干渉してるようだった。

元々箒には飛行やクッションなどの魔法が刻まれているらしいがそこに対して強力な呪いがまとわりついている。

 

「・・・」

 

目を凝らしながら干渉してる魔術をよく視ると先程の干渉してる呪いとは別におそらく反対呪文と思われる魔術反応も見て取れた。

 

「箒って割と簡単に妨害しようと思えばできるもの?魔法で」

 

そう、ノットに尋ねる。

 

「いや、無理だ。箒は競技用にかなり高度な魔法が多数かけられているからね。ニンバス2000ともなれば少なくとも生徒じゃ話にならんとおもうがな」

「そっか」

 

試合から目を離さないノットにうなずきつつ魔術干渉をうけているハリーを確認する。

 

試合に勝つためにスリザリンの誰かの仕業かとも思ったが、さすがに目立ちすぎるし手としては悪手だろう。

どうせそんな安直な手段では没収試合になるだろうしそれは無いなと思い直しす。

そう考えると逆に単純にハリーを害したい者の仕業だろうか?

つい何かが起きると理由を考えてしまう癖は治らないなと思いつつ、双眼鏡の倍率を変えてより詳しくハリーを視る。反対呪文と思わしき魔術からこぼれ出ている魔力に何となく見覚えがあって思わずその持ち主が居るであろう方向を視る。

 

魔法や呪いには体内の魔力を使うのだが、発現した魔法自体にも私から視ると元の魔力のゆらぎのような物が確認できる。最も単発発動型の魔法ではなく今回の様な継続型の魔法でないととてもじゃないが確認できないが。そして魔力は人によってゆらぎが微妙に違うので完全ではないが誰が魔法を使ったのか場合によっては分かるのだ。

 

そして今回の魔力の持ち主、スネイプ先生を双眼鏡で捉えると確かにハリーから目を離さずに魔法を唱え続けている。いまいち状況が分からないが先生から目をはずし大本の呪いを唱えている人物を教師、貴賓の席から探してみる。しかし私は魔法が視えるからアレだが、もし誰か他の人にこの先生を見られたら先生が疑われるだろうなと思ってしまった。これは普段の先生のハリーを嫌いすぎる態度が悪いと思うので仕方ないが。

 

席をまんべんなく見ていると先生の左手前の端の席からハリーにまとわりついている呪いと同様の魔法が視てとれた。なんと驚くことにこれも教師、闇の魔術に対する防衛術のクィレルだった。

理由は後で考えるとしてハリーが落ちるのをぼっと見てるのも流石に違うし、先生の手伝いをするべく杖を目立たないように引き抜く。最も、私の行動は杞憂に終わった。

教職員の席から炎が大きく上がり先生もクィレルもその影響で魔法発動が止まってしまったのだ。炎を消化してる先生達を見ていたがハッとしてハリーの方を確認する。

残るタイプの呪いではなかったらしくすでにまとわりついていた呪いは無くなっていた。

 

試合がまた動き出したのをぼんやりと視界にいれつつ先程の事を考える。

クィレルが先生と敵対して何かを盗もうとしているのは知っていたがなぜハリーに呪いをかけていたのだろうか?

あまりに目立つしもし盗む事に関してハリーが邪魔だとしても正直ハリーがクィレルの障害になるとは思えない。そう考えるとクィレルないしはそのバックに居る者がハリーを害したいんだろうか。

この現状を考えるとハリーをなんなら殺したいってのは誰が得をするだろうか?誰が望むだろう。

ハリーの事を考える。最少年シーカー、グリフィンドールの学生、生き残った男の子。

考えるべくもなくこの中で関係しそうなのはヴォルデモートを打倒したという所なのは明白だ。

そう考えるとハリーを害したいのはヴォルデモート、ないしは死喰い人、という事になるか?

考えを飛躍させすぎだろうか?先生が言っていた闇の帝王は力を失うだけで死んでいないって話を聞いたからもあるだろうが。

 

しばらく思考の海に潜っていたが、爆発するような歓声で現実に戻される。

ふと見ると競技場の真ん中でハリーが手を突き出しているのが見えた。

どうやらハリーがスニッチを取ったらしい。点数をみるとスリザリンが10点差で負けていた。

クィディッチには元々興味はなかったのに、スリザリンが負けたと思うと何故か悔しかった。

 

 

試合がおわり一ヶ月もすると完全に冬が枯到来しホグワーツは大きく白く景観をかえていた。クリスマスシーズンの始まりである。ちなみに談話室には殆ど生徒は残っていない。クリスマス休暇で皆家に帰っているのだ。

 

「こんなに静かな寮も久々だな・・・」

 

私は大きく伸びをするとベッドから立ち上がる、と同時に足元に山積みにされたプレゼントの山が目に入った。

 

「あ、今日がクリスマス当日かぁ」

 

クリスマス休暇はいってからは日付の感覚が無かったがどうやら気が付かないうちにクリスマス当日を迎えていたらしい。元々ひとりぐらしだったのもありこうなるのも仕方ないと言えるが。

 

「結局いかなかったな、ドラコのパーティ」

 

自分の机の上に置きっぱなしの招待状を見ながら休暇前の会話を思い出す。

 

――――――――――

 

「君たちクリスマスはどうするんだい?」

「どうするとは?」

「なんだ、サラ聞いてなかったのか?クリスマス休暇に帰るかホグワーツに残るのか選べるんだよ」

「ああ、その話か。私は残ろうかなと。リーネにも帰らないって伝えてあるし他にはだれも会う人いないし」

「ね、誰?リーネって」

「私の屋敷しもべ妖精」

「ほう、しもべ妖精を持ってるのか。しもべ妖精は別にどうでもいいだろうが、家族に会いに行かないのか?」

「ちょっと、ドラコ!」

「な、なんだよ」

「デリカシーなさすぎるでしょ」

「・・・あ、そういう事か。すまん、サラ」

 

私の両親の事を察したのかバツが悪そうにしているドラコと本気で怒ってそうなダフネに肩をすくめる。

 

「いいよ別に。で皆はどうすんの?」

「私は帰るわよ、妹のアステリアと約束してるからね」

「僕も帰るさ。家でクリスマスパーティもあるしね」

 

ノットやミリセント達を含め今年は皆帰るようだった。

 

「なるほどね」

「サラも僕んちのクリスマスパーティに来ないか?元々みんなを誘う予定だったんだ」

「あら、ドラコありがとう。ダフネにサラも行きましょうよ!せっかくドラコが誘ってくれたのよ」

「妹連れてっても平気?」

「もちろん歓迎さ。サラは?」

「んー、考えとく」

「そうか。じゃあ招待状は出しておくから気が向いたらおいでよ」

「ああ。ありがとう」

 

―――――――――

 

まあ、元々今回はあまり行く気が無かったしいいかな。ちょっと気にならないではなかったが。

頭を切り替えると着替えを済ませせっかくなのでプレゼントの開封を行う。

 

ちなみに、皆へのプレゼントはいくつか見繕ってリーネにお願いをしていたので届いているはずだ。

 

ダフネたちを始めハーマイオニーや先生からもきていて今までの人生においての最大数もらったのは間違いあるまい。

 

皆個性的なプレゼントで思わず笑顔がでる。蛇をあしらったチェスセットに、セーター、ちょっと高級な羽ペン等々

私が喜びそうなものばかりである。

先生からは魔法薬学の上級調合セット、ダフネからは高級ティーセットと茶葉だった。

最後のプレゼントを開け終え、ベッドに腰掛け整理しながら時計を見る。

 

「げ」

 

なんと14時過ぎ、めちゃめちゃ寝坊していたらしい。なんとなくお腹が空いたとおもったが当たり前である。

 

「どうしようかな・・・」

 

この時間は大広間でもとうぜん昼食は無いだろうし、と考えていたがふっと思いついて身だしなみを整えるとダフネのプレゼントを手に取り目的の部屋に行くことにした。

 

少し地下牢を歩き目的の部屋にたどり着くと扉が少し開いていたので中を除く。

中では目的の人物がなにやら仕事をしてるようだったので顔を見せた状態でノックする。

 

「メリークリスマス、先生」

 

先生は私を一瞥すると書類に目線を戻しつつ言った。

 

「ああ、おめでとうサラ」

「本当におめでたいとおもってます?」

 

思わず無愛想な先生に笑いをこらえながら聞き返す。

 

「見て分からないかも知れませんが、クリスマス休暇と浮かれる生徒諸君と違い吾輩は仕事中でしてね」

「先生、別にクリスマス休暇がないわけじゃないでしょ。他の先生でホグワーツから帰省してる人いるの知ってますよ。とりあえず入ってもいいですか?」

 

先生がふんと鼻を鳴らしたので中に入りソファに腰掛ける。

 

「先生、きり良いところで休憩にしませんか?クリスマスにこんな可愛い女の子とお茶できるんですから多少時間作らないとバチ当たりますよ」

 

私の言葉を聞いた先生が吹き出した。

 

「サラ、君はそういう所だぞ?」

「やっと笑いましたね?さ、ほら先生」

 

先生は深くため息を付くと書類を整え私の前に座った。

 

「強引さだけは君の母上そっくりだよ」

「どうも。母娘なのものですのでね」

 

ダフネのティーセットでお茶をしながら他愛ない話をしていく。

暫くお茶を楽しみおかわりもなくなってきた頃にふと気になっていた事を聞く。

 

「そういえば、ヴォルデモートとクィレルはどうですか?この前ハリーの事を箒から落とそうとしてましたけど」

 

先生はクッキーを手からぽろりと落とす。こちらを凝視すると諦めたように口を開いた。

 

「どこでそれを?」

「この前の試合見てましたし。ハリーの箒にまとわりつく呪いの元をたどるのは私には難しくないですので」

「なるほど、クィレルはともかく闇の帝王の名が何故出てきたのだね?」

「可能性としてはあるかなと思いまして。その反応は私の飛躍のし過ぎじゃなかったようですね」

 

この前見た試合の時に考えていた話を先生にする。今のハリーをダンブルドアの庇護下で害して意味があるのは闇の帝王かもしくは闇に潜んでいる死喰い人かといった考察だ。

ちなみに話の流れで私の眼が実は魔力もある程度見分けられるといった所で相当驚いていた。どうやら母はそういった事は出来なかったらしい。

 

「ふむ。鋭い考察だ」

「でしょう?」

「だが前も言ったが、この件に深く首を突っ込むんじゃない。校長がしっかりと対処をしている」

「首を突っ込むつもりはないですけども。気にはなるじゃないですか世界最強の魔法使いだったヴォルデモートの事は」

「それが首を突っ込むという事だと思うがね」

「まあまあ。ていうことは先生やダンブルドア先生も裏で手を引いているのはヴォルデモートとお考えなんですね?」

 

少し考えるような素振りを見せたがうなずいた。

 

「そうだ。闇の帝王が裏で手を引いてると考えている」

「へー。じゃあ前にお聞きしたヴォルデモートが死んでないってのは本当なんですね」

「今回の件でより現実味を帯びたと言えるだろう。そう校長はお考えだ」

「で、この4階には何があるです?」

 

そこで先生は黙り込んだ。

ヴォルデモートが今最も欲しい物。今力を失った闇の帝王が望むことはなんだろうか?

力を失わせたハリーの命?それとも宿敵ダンブルドアの命?

いや、力だろう。昔に世界最強の座に座り今そのすべてを失った。その力こそが闇の帝王の欲しがるものではないだろうか?

 

「今力を失っている闇の帝王が力を取り戻せるもの・・・。闇の帝王はどう力を失っているんでしょうか?」

「・・・それは誰にもわからぬ。だが体を失いゴーストにも近しい存在になっていると校長はお考えだ」

「ということは力と体を取り戻せる物・・・。生命を戻せる・・・。いや作り出せる・・・。」

 

スネイプは自分の教え子に対してどうしたら良いのか考えていた。

彼女の青い瞳に見つめられ質問されるとどうも心をかき乱され一種の開心術にかかったかのように不要な事まで話してしまう。彼女が鋭い洞察力を持って話をされるとつい目の前の存在が11歳の子供だというのを忘れてしまいそうになる。

 

「そこまでだ」

「へ?」

「その先の答えにたどり着く事を吾輩も校長も望んでおらん」

「えー。でも先生」

「でもではない。何度もいうがサラ、君はそれ以上踏み込むべきでは無い位置に足をつっこんでるのだ」

 

私は不満を言ったが、先生は真剣に首をふるだけだった。

これ以上迷惑かけても仕方ない上に先生の態度が答えそのものだった。

 

「わかりましたよ」

 

そう言ってうなずくと先生もうなずき残されていたティーセットを杖で洗いしまってくれる。

 

「十分息抜きにはなった。もう寮へもどるがよかろう」

 

私は肩をすくめると時計を見てうなずく。どうやらかなり長時間おしゃべりをしていたようだ。

 

「そうですね、もうそろそろ夕飯の時間にもなりますし」

 

私は席から立ち上がり先生にお礼を言う。

 

「じゃ、先生また大広間で」

「うむ」

 

扉から出ようとしたところで名前を呼ばれる。

 

「サラ」

 

私が振り向いたのを確認するとぶっきらぼうに言った。

 

「メリークリスマス」

 

私は満面の笑みでメリークリスマスと返すと先生の部屋を後にした。

 

 

彼女が立ち去るのを確認すると足早に校長室へと足を向ける。

ふざけたお菓子の合言葉を唱えガーゴイルを退け上へと登る。

ノックしてドアを開けると老獪な魔法使いが座ってウールの靴下を眺めていた。

 

「何をしているのです?」

「これはハリーがわしにくれたのじゃ。見事な厚手のウールじゃ。何足持っていてもいいのじゃよ靴下はの」

 

そんなダンブルドアを無視して話しをすすめる。

 

「賢者の石の件、ゴーントが気がついてしまった様です」

「セブルス、君が気が付かせたでは無くかの?」

「心外な。吾輩はそのような事をしないのは貴方もご存知のはずだが」

「そうじゃのう。君との会話からかね?」

「はい。ポッターの箒にかけていた魔法やクィレルが盗みに入ろうとしている事、闇の帝王の事などから導き出したようです」

「恐るべき洞察力じゃな。本来つながらなさそうな情報を繋げて別の事実を導き出せるのは彼女の持ち得る才能と言ってもいいじゃろう」

「闇の帝王の事を伝えるべきではなかったかもしれませんな」

「ハリーにも段階的に伝えていく話じゃ。彼女もまたヴォルデモートとは切っても切れない縁の者知るべきではあるじゃろう」

「だが、彼女は闇の帝王に興味を持っているようでした。彼にのめり込んだ者がどういった末路をたどったか貴方もご存知でしょう?」

「そこについてはセブルス、君の方がくわしいじゃろう。闇にのめり込まないようにする管理は寮監である君がするべきでもある」

「もちろん行います。ですがこれ以上彼女に余計な情報を与えないようにしたいのです。闇の帝王の事も父親の事も」

「裁量は君に任せる。じゃがあらゆる事に対しての道をとざしてはならんぞ?」

「なぜです?」

「彼女もまた予言の子。ヴォルデモートと干渉する事は避けられぬ」

「もし、彼女が闇を選んだとしたら?」

「そう成らないようにするのが、君の役目じゃ」

「ですが、もし」

「これ以上仮定の話をしても仕方がないのう。君はミス・ゴーントを信頼していないのかね?」

「そうではない。だが・・・」

「で、あればこの話はここまでじゃ。まもなく夕食の時間じゃ。クリスマスのごちそうを食べそこねるのは何よりも辛い事のひとつじゃて」

「校長」

「セブルス、なすべきことをするのじゃ。よいな?」

 

ダンブルドアの言葉に吾輩はうなずくしかなかった。

 


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