ハリーポッターとゴーント家の令嬢   作:ゆきみかん

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血の調べ

書庫で作業をしていると、近くでポンとリーネが部屋へと入って来る音がした。

 

「お嬢様、ホグワーツからのお返事が届きましたでございます」

「開けて構わないから、内容読み上げて頂戴」

 

周りに積まれた蔵書の山の向こうへと返事を返す。

 

「はい、お嬢様。【サラ・フォウリー様 

訪問日時に関する返答を受領致しました。いつでも構わないとの事ですので、本日、昼の二時に訪問させて頂きます。 副校長 ミネルバ・マクゴナガル】

との事でございます」

「今日?いつでも、と返事したのは私だけど、まさかフクロウ便で返事がきたその当日になるとは思わなかったな」

 

軽くため息をつきながら蔵書をずらして立ち上がる。時計を見ると11時を指し示そうとしていた。どうやら、この作業は明日以降に持ち越さないといけないらしい。

ホグワーツに持っていく物を選ぶついでにと整理を始めたのだが、これが全く終わりが見えない。内容をみてジャンル分けをするだけでもそれなりな分量があるのだが、代々続くフォウリー家の書庫だけあり得体の知れない魔導書が数多く紛れ込んでいるため、思うように進まないのだ。家にある杖で魔法が使えるとはいえ正直心がかなり折れてきた。

 

 

 

今の時間を考えるとあまり余裕はないな、未だお昼ごはんもたべていないし。

 

「シャワーを浴びてくるから、簡単な昼食を用意しておいてくれる?」

 

かしこまりました、とお辞儀をしながら消えるリーネを見送る。

 

流石に女子として、いや人としてこんなホコリまみれで接客をする訳にはいかないだろう。

しかし書庫でこれでは、次にもっと混沌としている地下の魔具の整理をする事を考えると、家の杖より効率的に魔法を使うためにも先に新しく私の杖を手に入れた方がいいかも知れない。

そんな事を考えながら、バスルームへと足を向けるのだった。

 

 

 

ロンドン・ウェストブリッジは雨滴と見紛うばかりの大粒の霧に包まれていた。霧のせいで夏のさかりだというのにじんわりと肌寒くこの濃い霧を嫌ってか、何処をみても出歩く人影はない。そんな閑散としたこの街を歩く1匹のトラ猫が居た。

トラ猫はまるで目的があるかのようなしっかりとした足取りで、中心街からどんどんと離れ、やがて外れの丘の上にポツンと忘れられた様に立つ館の前にて立ち止まる。

次の瞬間、猫は消えていた。それまで猫が居た場所にはエメラルドグリーンのマントに同じ色の三角帽子を付け、四角い眼鏡を掛けた女性が立っていた。

女性はチラリと腕時計を確認し、キッカリ2時になったのを確認すると、館の扉を叩いた。

 

 

 

居間の大時計が2時を告げると同時に、玄関にて来客を告げる音が鳴る。

 

「本当に2時ピッタリ」

 

リーネに客間にお茶の準備をするように言うと、苦笑しながら玄関へと向かう。

マクゴナガルは非常に厳格な性格なのだろう。まあ、初めて訪問する生徒の家に遅刻する教師は居ないだろうけども。

玄関を開け、目の前にエメラルドグリーンのローブをまとった女性が立っているのを見ると、尋ねた。

 

「ホグワーツ魔法魔術学校の方ですか?」

 

目の前の女性は軽く頷くと答えた。

 

「そうです、ホグワーツ魔法魔術学校の副校長、ミネルバ・マクゴナガルです。訪問についてのフクロウは問題なく受け取れたようですね。貴方はサラ・フォウリーで間違いありませんね?」

 

今度は私が頷く番だった。

名前の事も伝えたくはあるが、玄関先で真っ先にする話ではないだろう。

 

「はい、サラと申します、玄関先ではお話も出来ませんしどうぞ客間のほうへ」

「お言葉に甘えましょう」

 

 

客間へと案内されながらマクゴナガルは彼女に視線を向ける。

透き通るような白い肌によく映える、肩まで伸びたつややかな黒髪、淡い桜色の唇。スッキリと整った目鼻立ち。そう、何と言ってもこの眼だ。海を彷彿とさせる見ていると吸い込まれそうになるこの深い青。セブルスから聞いていたように彼女の母親にそっくりだ。同世代の生徒と比べると、少し小柄ではあるが、幼さは感じる事は無く同性の自分でさえも見惚れてしまうような美しさがあった。

 

 

「マクゴナガル副校長先生、どうぞそちらへ」

ふかふかの肘掛け椅子へ座るように促すと自分も対面へと座る。

 

「どうも、フォウリー。それと私の事はマクゴナガル先生、もしくは単に先生で構いません」

「はい、マクゴナガル先生」

「結構、本日のようにホグワーツから教師が出向いて説明を行うのは、マグル生まれの生徒と保護者が居ない魔法族の生徒に限られます。前者は言うまでも無いですが、後者の場合も必要な知識が欠けている場合があるためです」

「なるほど」

「ホグワーツ魔法魔術学校についてはどの程度ご存知ですか?」

「はい、ホグワーツの歴史を一読した他、セブルス・スネイプ先生からある程度の事は聞いております」

「なるほど、スネイプ先生が後見人なのでしたね?」

「はい、良くして頂いております」

「では概問題はなそうですね?それに・・・」

 

言葉の途中で客間の戸が叩かれた。

 

「お嬢様、お話中申し訳ございません。紅茶をお持ちしました」

「ありがとう、リーネ、マクゴナガル先生の前において頂戴、おかわりは自分でやるから戻っていいよ」

「はい、お嬢様」

 

リーネは、私とマクゴナガルに深く頭を下げると客間から出ていった。

 

「すみません、マクゴナガル先生。どうぞ」

 

マクゴナガルは一口飲むと言葉を続けた。

 

「どうも、フォウリー。入学前後問わずホグワーツの歴史を読んでいる生徒は稀ですよ、非常に悲しむべき事ですが。スネイプ先生からどの程度教えられたかは分かりませんが、ホグワーツの歴史を読んだのであれば、ホグワーツへの入学前としては十分な知識を得ていると言って良いでしょう」

「読書は好きなもので」

「本から新たな知識を取り入れるのは素晴らしい事ですよ」

 

そう言って、褒めてくれた。教育熱心だった母の影響もあってか元々私は勉強や読書が嫌いではなかったが、母の死後はより一層知識を蓄えることに貪欲になった。知識は自分を磨く武器の一つだと考えたからだ。それに父の足跡を追うにはできる限り色々な知識を集めておきたかった事もある。

 

「正しく理解できているかの確認のため、一応私の口からも簡単に説明を行いますがよろしいですね?」

 

私が頷くと、一通りホグワーツについて聞かせてくれた。

 

 

 

 

おかわりの紅茶が無くなる頃には、一通りの説明を受けおえたが、基本的には知らない事は無かった。同じホグワーツの教師でもスネイプ先生とはまた違う視点だったため非常に興味深い。

 

「これで説明しなければならない事柄については全て話したと思います。何か質問はありますか?」

 

私は首を振る。

 

「結構、でしたら本日の訪問は・・・」

「マクゴナガル先生、質問ではないのですが」

 

マクゴナガルの言葉を遮る。彼女が帰る前には名前の事をお願いしておいた方がいいだろう。本来スネイプ先生に相談していた事ではあるが、同じホグワーツ教師別にマクゴナガルにお願いしてもいいだろう。

お母様のフォウリーの名に不満がある訳では無かったが、父の足跡を追う手がかりになるかもしれないし、何より母の死と共に自分で決めた事だ。ホグワーツに入る前にはきちんとしておきたい。

 

 

「どうしたのですか?はっきりとお言いになりなさい」

「はい、ホグワーツからの手紙なのですが、名前が間違っていました」

「本当ですか?魔法省の出生届けが間違っていない限りはそんな事はあるはず無いのですが。今拝見しても?」

 

頷くと、客間のデスクに入れておいた封筒と、入学許可証を渡す。

出生記録によって名前が管理されているというのは初耳だ。しかしその話を聞くとおそらく記録と比べると間違ってはいないだろう。そもそも出生記録に私の名前があるのかも疑問だが。

マクゴナガルは丁寧に両方に目を通すと、私に目を戻した。

 

「残念ながら、私には間違っているようには見えませんが」

 

まあ、それはそうだろう。というのもこれは私の言い方が悪かった。

 

「すいません、マクゴナガル先生。間違っているというのは語弊がありました。確かに私はサラ・フォウリーなんですが、フォウリーは母方の名前なんです、スネイプ先生には以前から相談はしていたのですが・・・」

 

そう言って私は簡単にだが事情を説明した。

父は私が生まれる前に消息を断っている事、おそらく魔法省に管理されている出生記録は存在しないか、母の名前で登録されているであろう事。そして父を探すためにも、今父方の名を名乗っているという事、そして父の姓がゴーントだという事を。

 

ゴーントが私の名前だと知ったマクゴナガルは驚いていたが、話を聞き終わったマクゴナガルは大きくうなずき、目頭を抑えながら言った。

「そんな事情があったのに、お母様も亡くなられて、大変辛かった事でしょう・・・事情はわかりました。ですがこれはホグワーツではなく、魔法省の管轄なのです」

「父の姓を名乗るのは無理なのでしょうか?スネイプ先生は方法はあると仰ってましたが」

 

私はどうしても、父の名を名乗りたかった。私は私で名前も血も私を構成するパーツの一つでしかないが、父の足跡を追いやすくなる可能性があったしやはりスリザリンから連なるゴーントの名を途絶えさせるのは罪深い様に思えたのだ。

 

「非常に珍しいケースですが、法律が対応していない訳ではありません。貴方が望むのであればもちろん叶えられます。先ずは魔法省に行き血の調べを受けねばなりません。おそらくスネイプ先生も同じ方法をとるつもりだったのでしょう」

 

何やら、物騒な響きに思わず聞き返した

「血の調べ?」

「はい。貴方の場合は父親との血縁を証明できる物がありません。ですが、血の調べを受けることによりそれを証明する事が可能なのです」

 

どうやら、魔法省では歴代の家系ごとの血の記録というのを残しているらしく、それと私の血を特別な魔法器具によって比べる事を血の調べと呼ぶのだそうだ。

親子の証明には双方の血が必要らしいが、家系証明には私の血だけでも大丈夫らしい。

マグルの血が濃く混ざる程判別が難しいのだそうだが、純血であれば必ず判別が可能なんだとか。なんにせよ、方法があるのであれば願ったりかなったりだ。入学までに名前を変えるのであれば、早いほうがいいだろう。

魔法省に行ったことは無いが、行き方は知っている。

 

「さて、名前の他に問題はありませんか?」

「はい」

「ではゴーント、出かける準備をしてきなさい」

「えっ?」

 

また聞き返してしまった。

「一人で魔法省に向かうつもりだったのでしょう?生徒の力になるのは私の仕事です、お頼りなさい」

 

正直自身の問題でそこまでしてもらうのもどうかと思ったし、書庫の片付けも途中だしすぐさま行こうとしていたわけでは無かったのだが。話を切り出したのは私だし一方的な好意を無碍にするのも失礼かなと思い素直に言葉に甘える事にした。というかこれこそ後見人の出番なのではと思わないでも無かったが、ここに居ない先生の事を言ってもしかたないだろう。

マクゴナガルを客間で待たせ、 私が使ってる杖と念のため母の杖を持つとリーネを呼ぶ。

 

「今から魔法省に出向いてくるから、留守番よろしくね」

「かしこまりました、お嬢様。どうかお気をつけて」

 

頷くと、マクゴナガルを待たせている客間に戻る。

 

「準備は出来たようですね、ではお掴まりなさい」

 

付き添い姿現しかぁ・・・。私はこれが嫌いだ。駄々をこねるわけにも行かないので、素直にマクゴナガルの左腕に掴まると急激に体が捻れたような、酷いめまいと息苦しさを感じ思わず顔をしかめる。

リーネやスネイプ先生とと共に何回かはした事があったが、やはりこの感覚は好ましくはない。というか吐きそう。スッと地面に足が着く感覚と共に目を開くと辺りは先ほどまで視界にあった見慣れた客間はなく、広いホールへと様変わりしていた。ここが魔法省なのだろう。目の前には大きな噴水、これは何だろうか?魔女、魔法使いにケンタウロス、ゴブリン。下に見えるのは屋敷しもべ妖精か、権力の象徴なのかな?なんとも悪趣味な噴水である。

 

あたりを見回すと床や天井ありとあらゆる場所にフォウリー家のより多数の魔法がかかっているのが視える。どんな魔法なのかと目を凝らしているとマクゴナガルから声がかかった。

 

「こちらにおいでなさい、守衛室で杖登録をせねばなりません」

 

なるほど、魔法省というだけあって外からフリーパスな訳ではないらしい。守衛室で2本とも杖登録とやらをすますと、マクゴナガルの案内で地下へと向かう。エレベータを二回ほど乗り継ぎ、地下2階、魔法法執行部と書かれたフロアへと止まった。魔法警察部隊、闇払い本部、魔法不適正使用取締局、婚姻出生登録局はこちらとのアナウンス。

この、婚姻出生登録局とやらが目的の場所らしい。部屋の前まで行くと、マクゴナガルはこちらへと振り返る。

 

「事情を説明してきますので、しばしここでお待ちなさい」

 

そう言い残すとマクゴナガルは部屋の中に入っていく。

しかし、婚姻出生登録管理局で私が今から行うのが、部署の字面とはかけ離れた血の調べとやらだと思うと何とも言えない気持ちになるな・・・。

要はただの記録照合だろうから、大した事では無いのだろうが。

程なくして、扉が開きマクゴナガルが中へ入るようにと言ってくる

マクゴナガルへついて中へ入ると、手前にカウンターがあり、その向こうには雑多に机や椅子が並んでいた。その脇を通り過ぎ、奥の小部屋に通される。

小部屋には中央に机とその脇に2つの椅子が置いてあり、壁際にはパイプオルガンに大きな天球儀をくっつけたような装置が置いてあった。

 

「そこにお座りなさい」

 

促されるままに座ると、マクゴナガルは壁際へとさがる。程なくして部屋に中年の魔法使いが入ってきて扉を閉めた。

 

「さてと、血の調べを希望しているのはこの子か?ミネルバ」

「その通りですよ」

 

男はうなずくと、私の隣に座る。

 

「出生記録に登録されているファミリーネームを母方ではなく、父方の名前に変えたいとの事だったね?血の調べを行う前に記載されている内容の確認をするから何かまちがっていたら言ってくれたまえ」

「わかりました」

「名前:サラ・フォウリー、生まれ:1991年7月27日、母:ジェシカ・フォウリー、父:登録なし、肌:白、髪:黒、目:青、住居:ロンドン・ウェストブリッジ2番街の外れ」

 

やはり、父の登録は無かったらしい。一瞬父自身の記録もここに保存されれているのでは無いかと思ったが、淡い期待だったようだ。

 

「特に問題ないです」

「よろしい。すでにミネルバから説明を受けているかも知れないが、父親の登録が無い君が父方の名前を名乗るには、血の調べによる魔法証明が必要になる。ただし、この血の調べでは君のルーツである両親の家系については保存されている血の記録と重ねる事で判別する事が可能だが、あくまで家系だけだ。たとえば君の父親個人が誰かの特定を行う事はできない。君が父親の血をもっていれば親子かの確認はできるがね」

 

なるほど、私の血から行えるのは歴代の血の記録から家系を特定するだけという事なのか。まあ、聞いていた通りだ。しかしこの血の記録とやらは本来は何をするために保存されているのだろうか?

 

「問題ありません」

 

男はうなずくと、壁際の装置へと向かうと試験管大の白銀色の棒をもって戻ってきた。

 

「この血定めの天秤を使って調べるのだが、まずは君の血を採らなくては。どちらでもいいから腕を出しておくれ。大丈夫、痛みは無い」

 

この白銀の棒は採血装置なのだろう。私が左腕を差し出すと、男は垂直になるよう腕に棒をくっつけてきた。

白銀の棒に吸引と転送、停滞の魔法式が視える。棒の周りに私の物と思われる血がまとわりついてゆく。

白銀の半分程が赤く染まると、男は棒を腕から離し血定めの天秤と呼んでいた装置へと持って行く。ふとたった今まで血があふれ出ていた場所を見ても何の傷もついていなかった。

 

男は、魔法族は家系が多い訳ではないためすぐわかると言いながら、装置を操作する。すると、天球儀のような部分がぐるぐると回転しはじめ、その回転が止まると同時に装置の下から何かプレートの様な物が吐き出される。

 

 

「でたでた。さてと・・・これは・・・?」

 

男はしばしプレートを見つめると言葉を失っている様だった。

しばらくプレートを見つめていたがこちらに向き直ると言葉を続ける。

 

「非常に高潔な家柄だな、多少血の混じりはあるがフォウリー家とゴーント家の子供に間違いない。聖28一族の一つであるフォウリー姓からの変更なんて理解しかねたがこれなら納得できる。しかし、・・・」

 

男は自問するようにつぶやくと話を続けた。

 

「・・・ともあれ、血定めの天秤の結果は絶対だ。これで証明については問題ない。今、登録を変更してこよう。少し待っていてくれたまえ」

 

男はそういって部屋を後にした。ちらりとマクゴナガルの方をみると、不安げな表情をしている様な気がする。

私はというと、正直安心していた。母の事は信用していたが心のどこかに実は全然違う結果がでるのでは?という考えがあったからだ。

 

 

しばらくすると、男は大型の封筒と一枚の紙をもって戻ってきた。

 

「今しがた君の希望通りの変更を行ってきた。この書類はその写しだ。確認してくれたまえ」

 

出生届と書かれた書類に目を通すと、確かに名前がサラ・ゴーントに変更されている。

 

「こちらの封筒には、血統証明書を入れておいた。血定めの天秤によって作成された魔法書類となるから役に立つこともあるだろう」

 

封筒を受け取る。マクゴナガルは私が封筒を受け取った事を確認すると、では、行きましょう、と外に出るよう促してきた。

私がうなずき、部屋の外へと向かおうとした時、後ろから男がささやくように話しかけてくる。

 

「あー、これは私の独り言なのだが・・・、ゴーント家は当局に保存されている出生・死亡記録の限りでは、すでに滅びた一族なんだ。ここ何十年も記録上は確認できない。だが君がゴーント家の者であることは間違いない。ゴーント家に何があったのかは私には分かりかねるが、サラザール・スリザリンに連なる家系が断絶していなかったというのは非常に喜ばしい事なんだ。その年で当主というのは色々と大変だとおもうけどがんばりたまえ」

 

振り返り、軽く会釈をすると、婚姻出生登録局を後にするのだった。

歩きながら今の言葉を反芻する。すでに滅びた一族とはどういう事なんだろうか。何十年も確認できないという事は、父も登録がされていないという事なのか。私が生まれている時点で少なくとも11年前には父、つまりはゴーントの血を持つものは生存していたはずだし。

 

マクゴナガルに再びつかまり、付き添い姿くらましにて家の前まで送ってもらう。

 

「では、ゴーント、私はこれで。九月一日に会えることを楽しみにしていますよ」

「はい、マクゴナガル先生。スネイプ先生にもよろしくお伝えいただけますか?」

 

マクゴナガルが頷き、背を向け霧の中へと歩を進めた次の瞬間、溶けるように影が小さくなり、そこにはもう人影は無かった。

 

 

そのままの足で自室に戻り、血統証明書を取り出し眺める。

仰々しい魔法式と上部に私の名前が書いてある。ただそれだけだったが、今日から名実ともゴーント家の一員になったのだと改めて実感した。昨日までと私自身が何か変わった訳では無い。だが、自分の中でぼやけていた部分がクッキリとした様な気がしたのだった。

 

せっかくだから、明日は杖を買いに行こう。サラ・ゴーントだけの杖を。

 

リーネの御夕飯の準備が出来ましたとの声に我に返ると、にっこり笑って食卓へと向かうのだった。

 

 

 

 




2017/08/18 一部改訂


第一話の誤字報告頂きありがとうございました。
1、2話は物語の導入~主人公への肉付で非常に内容の進行がスローでしたが
賢者の石本編に入ればもう少しサクサク進みます。

聖28一族での順位づけは基本本作ではありませんが、ブラック・マルフォイなどはその中でも特に純血として有名。ゴーント家は衰退して久しいが、一部の純血主義者、特に親世代は存在とその先祖を知っているでしょう。

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