俺と音姫と猫かぶり優等生   作:焔火

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初投稿で右も左も分からない素人の作品を多くの人が呼んでくださり感激の至りです!
感想を送ってくれる人もいて、とてもモチベーション向上に繋がっています。

またしても明久とのバカな会話メインですが、宜しくお願いします!


Aクラス打倒の目標は?

 

「ねえ和樹、もう一度休戦協定を結びたいんだけど……」

 

「同感だ。ここまで不毛な戦いは未だかつてないな……」

 

皿割れ、箸折れ、そしてせっかく摂取したカロリーを消費するだけで終わってしまった第一次明久家大戦。

ここまで何も生み出さない戦争が未だかつて存在したのだろうか? いや、ないと断言できる。

 

仰向けに倒れた状態から気合いで立ち上がる。

 

「じゃあ、俺はエロ本頂戴するついでに布団持ってくるから、お前は皿の片づけしてくれ」

 

「うぅ……さよなら、僕のマドンナ」

 

「どんだけエロ本に心血注いでんだよ」

 

呆れながらも俺は明久の部屋に入り、エロ本をナチュラルに自分の鞄に入れながら、ベッドから布団を剥がしてリビングに持ち帰る。

俺が止まりに来た時はこうしてリビングに布団を集め雑魚寝するのが普通だ。

これの方がゲームしやすいし、寝たい時に寝れて楽だ。

 

そんなこんなで二人揃って寝間着になったところで、明久家寝泊り恒例のゲーム大会に突入しようとした時、前代未聞、空前絶後、天変地異と称するに値する事件は起きた。

 

 

「あっ、和樹。僕は今日勉強するから、一人でゲームやってて」

 

 

ぽろっと手元からゲームコントローラーを落としたことすら意識外だ。

ちょっと待て。

 

今、あの……キング・オブ・バカの明久が自主的に『勉強』などと言わなかったか……?

 

「悪い、俺耳が遠いみたいだ。もう一回言ってくれ」

 

「だから、僕は今日勉強するから和樹一人でゲームをしてていいよ」

 

振り返ると、本当に明久がリビングの机に教科書を並べていた。その目には並々ならぬ闘志が燃え盛っている。

 

ふー……やれやれ、そういうことか。

 

俺はテレビの電源を消して立ち上がり、明久へと詰め寄る。

素早くおでこに手をやる。

 

「ふむ……熱は無いみたいだな。明久、今日はもう寝るぞ。おしぼりくらい俺が持ってきてやるからもう横に慣れ」

 

「か、和樹……? なんか凄く心配してくれてるのは嬉しいんだけど、この通り、僕はなんともないからさ」

 

は? なんともない? 冗談も休み休みに言え。

 

「お前が自主的に勉強をするとか、熱がなけりゃ頭のネジが二、三百本飛んでいるとしか思えねえ。明日は朝一で病院に行って来い…………頭の」

 

「コラぁっ!! 優しくしているように見せて僕の事をとことんバカにしてるだろ!」

 

あっ、気付いた。

 

「悪い悪い、本気だ」

 

「本気!? そこって普通冗談じゃないの!?」

 

「冗談だ」

 

「何が!?」

 

面白いくらい挙動不審な明久を眺めながら、向かいの席に座る。

 

「さて、明久との戯れはこれくらいにしておいてだな……」

 

「戯れ!? 僕をからかって楽しんでたんだな!」

 

「はいはい、静かに。………で、お前なんで勉強してんだ?」

 

「……そりゃ次はBクラスとの試招戦争があるからね。雄二にも勉強しとけって言われたし」

 

ほーう、こいつらDクラスの後はBクラス狙いか。

まあ、単純な戦争じゃAクラスには勝ち目はない。それくらい雄二だって分かっているはずだ。つまり、これはAクラス戦に臨むための前準備。

それは理解した。だが、

 

「なーんか引っかかるんだよな。明久、何でお前がそんなに試招戦争に拘ってんだよ?」

 

雄二の目的もさることながら明久が自主的に勉強するほどAクラスに勝ちたい理由が思いつかない。

こいつはバカ騒ぎにこそ巻き込まれがちだが、別に望んで問題を引き起こすほど酔狂な奴でもない(多分)。

 

分かりやすく視線を逸らす明久。こりゃ面白いネタを隠してやがるな?

 

「そりゃFクラス全員の悲願だからね」

 

「いつお前にそんなカッコいい仲間意識が芽生えたんだよ。友達すら鉄人への身代わり程度の認識だろうが」

 

「うっ……ほ、ほら同じ学年の生徒なのに設備に差があるのは耐えられないでしょ?」

 

「この学校を選んだ理由は学費が安くて、家から近い、のお前が言うな」

 

「うぐっ……ほ、ほほ、ほら僕と雄二は一年からの付き合いでしょ?僕は友達の為に戦ってやろうと思って――」

 

「隙さえあれば裏切り多発のお前らにいつそんな青春物の友情が生まれたんだよ?」

 

「うぐぐっ……ほ、ほほ、ほら……えっと、その、あの……」

 

「明久のちんけな脳味噌で考えられる嘘なんてそんなレベルだ。諦めろ。さっさと本当の理由を言え。次嘘付いたら霧島にFクラスに試招戦争を申し込むように頼むぞ」

 

「鬼! 外道! 悪魔! 人でなし!」

 

「何とでも言え。ほら、白状しろ」

 

「ううっ……。雄二以外には絶対に黙っておこうと思ったのに……」

 

項垂れる明久が「他のみんなには内緒だよ!」と言った後、説明開始。

 

 

 

――三分後。

 

「つまり」

 

俺は明久が長々と話してくれた内容を頭で整理しながら、椅子を後ろに傾ける。

そして、結論を口にする。

 

「小学生の時からベタ惚れだった姫路を劣悪な勉強環境から救い出したいって訳だ。王子様な明久君は?」

「全然違うよ!?」

 

顔を赤くした明久が怒鳴り返してくる。

 

「そんなに違わないだろ? 振り分け試験で風邪を引いただけの姫路が、たった一度のチャンスを逃しただけでFクラスにいるのはおかしい。体調も悪いみたいだし、せめて彼女が苦しまない設備を手に入れたい、だろ?」

 

「うん。いや、それはあってるんだけどさ……どう考えても省略したはずの和樹の言葉に余計な単語がいっぱい加えられている気がしたんだ」

 

「気のせいだぞ、姫路にガチ惚れの王子様よ」

 

「やっぱり増えてるじゃないか!」

 

俺としては間違っていないと思うんだが?

それに明久も惚れている、に対して否定を入れてこない。こりゃもしかしたら本気で好きなのかもしれない。

 

ひゅー、明久に春到来か?

 

「まあ、頑張れよ。《観察処分者》なら点数低くても色々と有利だろ?」

 

「でも僕の召喚獣攻撃くらうとフィードバックで体が痛いんだよね……」

 

「それくらい我慢しろ」

 

「それくらいって言うけど、滅茶苦茶痛いんだからね」

 

そういや、一年の時に島田と模擬戦闘をやった時にサーベルで斬られた箇所を痛そうに抑えてたっけか。

俺が思っている以上にフィードバックはきついらしい。

 

そんなことを考えていると明久が上目づかいしてきやがった。どうした? 凄く気持ち悪いな。

 

「ねえ、和樹ぃ……そんな訳だから勉強教えてく・れ・な・い?」

 

最終目標である敵対クラスの奴に勉強見てもらおうと考えるなんてさすが明久だ。それも下手くそな愛想まで振りまいてやがる。

 

「くぅ……! これが一昔前にテレビっ子を苦しめたポリゴン効果ってやつか……! 気持ち悪すぎて吐きそうだ」

 

「……そ、そんなイジワル言わずに、ねぇ……?」

 

おお、私利私欲にまみれながら色気を使うだけあって俺の挑発に耐えているぞ。

懐から携帯を取り出し、

 

「ほら明久、色気出したいなら両手首を合わせて顎の下に添えろ。それで渾身の笑みを浮かべるんだ」

 

「こう? これで満足ぅ?」

 

躊躇いなくぶりっ子ポーズを取る明久に吐き気を催しながらも写真を一枚取っておく。

 

「これで勉強教えてくれるのぉ?」

 

「ああ……ちょっと待ってくれ。今この画像を俺がメアド知っている文月学園の生徒全員に配布してからな」

 

「お願い、それだけはご勘弁を! ただでさえ僕女装が似合う男子ランキング上位にランクインしているのが悩みの種なのに!」

 

そんなランキングがあるとは知らなかった。てか、それ……

 

「秀吉の優勝間違いねえじゃねえか」

 

あいつは並の女子を超越する女子力を持った男子だ。

 

「何言ってるのさ。秀吉は男子ランキングに入らないよ? だって秀吉は秀吉だもん」

 

「何言ってるのか意味わからんのはお前だ」

 

なんて会話をしながら俺は送信先に坂本雄二を選択し、画像を添付し文面に『正直な感想が欲しい』と書いてメールを送る。

 

ピロピロリン。

 

「おっ、返信が来たな」

 

「待って!? 誰に送ったの!?」

 

「安心しろ、雄二だ」

 

「どこに安心したらいいのさ!? 最悪な相手じゃないか!」

 

さてさて、正直な感想はどんなものかね。

 

「明久、雄二からお前の色気満載画像について一言書いてあるぞ」

 

「……なんて?」

 

「ゲロテスク画像を送ってくんじゃねえ、だってさ」

 

「えっ? なにゲロテスクって?」

 

「ちゃんと説明書いてあるぞ。――『ゲロテスクとはゲロりそうになるほどグロテスクで醜悪、まるで明久のようにこの世にいるだけで周りに不快感を撒き散らす有害物質に対する蔑称。訳例、明久はぶりっ子ポーズをせずとも既にゲロテスクである』――追記。『一枚マイナス五万円なら購入も考えてやる。明日までに諭吉を五人用意しとけよ』だってさ」

 

「あの一瞬でよくもまあ、これほどの暴言をさらさら書けるね!?」

 

俺も雄二の明久に対する友情に対して疑問を感じずにはいられない

 

「てか、要望に応えたんだから勉強教えてよ!」

 

「ダリィ」

 

「ムキィ――ッ!」

 

いきり立つ明久。やれやれ。

 

「仕方ない。特別大サービスだ。明久がこのゲームで俺に連勝できたら考えてやらんでもない」

 

俺が取り出したのは、明久のコレクションの中でもお気に入りのゲーム。

 

「よーし、言ったな! 男に二言は無いよ! ぎったんぎったんにして勉強手伝わせてやる!」

「はっ、かかってきな」

 

男二人、布団の上で胡坐をかき、いざ真剣勝負。テレビの電源を入れて、コントローラを持つ手に力を入れた。

 

 

 

明久が勉強するつもりだったのに、俺の手によりゲームに誘導されたことに気付いたのは、それから二時間後だった。

 

 

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