日本東京大本営
大本営一角の会議室で重苦しい空気を漂う空間の中、上層部の人間達がいた
大本営では一つの出来事で混乱状態となっていた
それは補給艦「神威」の行方不明である
神威には日米との取引で輸送していた米国の新型装備が積載していた
その中には試作品の兵器もあることから万全の状態で輸送任務に就かせていた
空母・潜水艦を含む護衛艦隊、あらかた決めていたルートには深海棲艦が進出しない海域を選び、すべては万全状態で行われ、計画は順調と思われた矢先、嵐との遭遇により行方不明と来た
通常艦娘は嵐でも航行は可能で余程の津波、竜巻、敵艦による攻撃、機関等の不調等がない限りは・・・
しかし、報告ではまさかの超大型ハリケーンが発生し、迂回することもできなかった艦隊はそのまま進むが、嵐の波による衝撃、威力が凄まじく、結果艦隊はお互いを確認できないほど、自身が転覆しないよう保つだけで精一杯
大本営は直ちに大本営直属部隊を派遣するが、一向に発見できなかった
「・・・それで捜索の結果まだ見つからないのか?補給艦神威は」
と白い髭を生やす大将が言う
「はい・・・潜水艦、駆逐艦、航空機などを導入して捜索しましたが、南方方面には発見することができず、恐らく轟沈した可能性が高いと思われます。」
「撃沈・・・か・・・拙いな、神威には米国からの新型装備を積載しているのに、これじゃあ顔向けできんぞ!」
「そもそも嵐で艦隊が四散するなぞ旗艦の管理問題があるのではないのか!?」
「・・・あの嵐では例え大型艦でも転覆する可能性があるのに生き残れただけでも奇跡に近いものだ、それを管理問題と罵倒するのは如何な者かと思われますが?そもそもあの艦隊で護衛に就かせると決定したのは参謀長ではないのかね?」
「う・・・それは・・・」
「何にせよ、今は責任の話ではないのだ、問題は神威が捜索し、残骸でも良いから発見できなければ米国は我々の主張を信じない可能性が高い・・・我々の管理体制に問題があるとな」
「・・・・・・」
アメリカと日本との関係は良好とはいかずともお互い一度は戦火を交じった関係であり、結局第二次世界大戦は深海棲艦によって途中で交戦国が敵勢力を深海棲艦となり、利害関係が成り立っているからこそ、枢軸国と連合国は歩み寄っているが、実際のところ水面下では牽制が続いていた
そんな重苦しい空気の中、思わぬ報告が飛んで来る
「失礼いたします!捜索隊より報告!補給艦神威を発見したとのことです!」
「何本当か!」
「はっ!状態も安定しており目立った怪我もないとのことです!」
「どこで発見したんだ?」
「はい、和歌山沖あたりで発見したとのことで、現在こちらへ急行中です。」
「・・・例の積み荷に関しては?」
「米国からの積み荷は何も目立った損傷はなく問題ありませんでした!」
「そうか・・・分かった、神威には着いたら報告するために会議室に来るように、と伝令を」
「はっ!」
と兵士は退室すると重苦しい空気が少し軽くなる
「ふ〜・・・発見できて良かった・・・一時はどうなるか、と思ったが積み荷が無事であれば安堵できる・・・」
「全くだ・・・頭を高くして眠ることができなくなるからな・・・」
上層部の人間はホッとした表情になるが、後にとんでもない報告が来るとは思いもよらなかった
横須賀軍港
「ふう・・・やっと着いた・・・久しぶりの横須賀ね・・・」
「神威さん!嵐で遭難し、漂流していたと聞きますが大丈夫ですか!」
同僚である速吸が神威を心配し、駆けつけた
「あ、速吸さん!大丈夫ですよ!一時は遭難した時はどうなるか、と思いましたが途中で助けもあって助かりましたから!」
「そうなんだ・・・捜索隊が見つかって良かったよ〜・・・・」
「結構遭難してから大部時間が経ったと思いますが、どうやって生き残れたのですか?」
「いや〜・・・輸送している物資で何とか生きていたけど、もう物資がなくなって、燃料もなくなったところでだめかな・・・と思っていたところに助けもあって、ここに来れたんですよ!」
「へ〜・・・なるほど・・・うん?助けって捜索隊じゃないの?」
「えーとね、後で報告する予定なんだけど、どこの軍・国家にも所属していない組織が南方方面にあってそこで助けられたのです!」
「えーーーー!!!??南方方面って確か敵勢力範囲じゃないの!?それって大丈夫なの?」
「大丈夫よ、もし彼女達が敵勢力であるなら私は行きて帰ってないからね・・・あ、ごめんね、そろそろ報告に行かなくちゃいけないから」
「そうだけど・・・後でじっくりまた聞かせてね!」
「分かりました〜!」
神威は艤装をドックで外した後に報告のために上層部が待つ会議室へ足を踏み入れ、今までの出来事を報告する
嵐で遭難し、漂流していたところを別の独立した組織が南方方面に存在し、自分を救助してくれたこと
そこには巨大な工業地帯と軍用基地がある島
数多の艦艇が停泊し、人間はおらず完全なる妖精と艦娘だけで運用された基地
大まかな見たことを話した
次々と出るルクラニア基地のことには上層部は驚愕し、持って来た写真(あらかじめジェラード達が用意した)と一緒に提出した
「見たことのない艦娘に大規模な工業施設と軍用基地・・・だと・・・!?」
「妖精と艦娘だけで運用されている基地なんぞ、あり得ない!」
「・・・・・・・まさか、南方方面に艦娘の姿が発見され、深海棲艦の動きがおかしいとは思ったがそんな組織があるとはな・・・その組織は何と言うのだ?」
「はい、彼女達は自分たちを独立軍と評していました、基地の名前は「ルクラニア」とのことです。」
「独立軍?・・・その名の通り何処の国、組織にも属していない独立した組織ということか・・・それにルクラニア・・・知らない名だな」
「しかもその基地には海外と我が国の艦娘が複数おり、膨大な妖精の数が居ると・・・」
「あの地帯でそれだけの組織がいるとは信じられないな・・・」
「神威くん・・・それは本当のことなのかね?君が幻を見たという訳ではないのかね?」
「いえ、確かな情報です、私はその組織に救助されました」
「・・・この写真以外にも何かあるのかね?」
「物的証拠は写真以外はありませんが、彼女達の持つ技術はあの欧米よりも高いと考えられ、味方に付けておくことが我が国にとって非常に有効だと思われます。」
「欧米より?それはあり得ない!あの技術大国であるドイツとアメリカ、イギリスより上の技術を持つ組織なぞ、馬鹿も休み休み言え!!だいたいその組織は本当に信用できるのかね?」
「南方方面にそんな巨大な基地なぞあったらたちまち深海棲艦に攻撃され壊滅される!例えそんなところにドイツ、アメリカ、イギリスが強固な基地に加え強力な大和級、長門級艦娘を配備したところで一ヶ月は持たぬ!」
「いえ、彼女達の基地は旧軍の基地を改装したとはいえまさに鉄壁の要塞と言えるほどのものです。高射砲と思われる砲台が無数に存在し、ロケット兵器、強固なトーチカ、巨大な軍用飛行場、陸戦隊の見たことのない戦闘車両・・・彼女達の基地を攻略しようと思えば、日本中の艦娘を集結させても足りないくらいかもしれません、もし、敵対すれば我らとて大損害を受けることは間違いないです」
「何!?何を馬鹿なことを言う、小娘が!」
「・・・・・・・・そう言える根拠はなんだ?」
「大将!?」
「黙っとれ・・・で、なぜだ?」大将が鋭い目付きで睨みを効かすと、相手側は黙った
「はい、まず彼女達には人間が基本的に居ませんが、妖精さんの人数が非常に多く、その数は数千以上とも言えます」
「す、数千!!?」
「その数千の妖精で海軍関係はもちろん、あの基地には陸戦隊、航空兵団も充実しており、下手に刺激すれば数千の妖精と艦娘軍団が攻撃します」
「数千の妖精・・・か・・・今まで我々は艦娘の誕生に深く研究してきたが全くこれといった成果はなく、妖精の力には驚くようなことばかりだな・・・」
少し顔色を青ざめている上層部の人間もいるが、つまり現在の日本は艦娘を生み出し、艦娘のメンテナンスを行う妖精が敵対するとなれば、まず勝つことはできず、むしろ国が滅んでしまう可能性があるからだ
「・・・前にもこんな報告を流す艦娘も居た・・・潜水艦隊旗艦は南方方面で敵艦隊の襲撃を受け全滅に違いダメージを負うものの、謎の艦娘によって助けられた・・・しかもその艦娘は我々が開発している秘密兵器と似ている部分があり、実用段階とのこと・・・これも彼女達なのか?」
「そちらのほうは私には分かりませんが可能性としては高いです。あちらには現在こちらで試作中の新型兵器、噴式弾も存在していると考えられ、彼女達はそれをさらに進んだ兵器も保有していることもあり、彼女達はある種一つの目的のために行動しているかもしれません
彼女達の提督も女性です、名前はジェラードと言い、海上を彷徨う艦娘・妖精を結集させ一つの独立とした組織を形成しています。」
「・・・一つの独立とした組織・・・か、下手して敵対すれば深海棲艦のみならず艦娘と妖精と戦争になる」
「なるほど・・・それ程の組織であるならば無理に接触し、戦力と技術を拿捕するのは骨が折れるだろう、場合によっては今後の作戦にも影響が出る」
「しかし、我が国が手を出さなくても既に米国・ヨーロッパ勢力、中国にも知られている可能性はあります、先に拿捕され技術と戦力を他国に渡すのは拙いのでは?」
「ならばどうする?彼女達に宣戦布告するか?私は反対するぞ、ただでさえ敵は深海棲艦だけとは限らん、更に敵を作っては日本も持たん」
「・・・・・・・・・・」
「彼女達は敵対する意思が見られない、こちらから友好に歩み寄れば決して敵対することはない・・・そういうことだな?神威」
「はい、それは断言できます」
神威はジェラードと話した時、日本と接触することを最後に呟いていた
つまり、自分の報告次第では日本とジェラード達との関係は大きく左右され、個人的には友好に接することが最も最善策と言える。そのために何としても上層部を説得する気でいた
彼女達は言っていた自分たちは深海棲艦側には付かないが、人間側にも付かないと、彼女達は人間を警戒しているとも言える。
国家とはあくまで国家の利益となる形で動かなければならない
深海棲艦との戦争が終結すれば今度は他国同士の戦争が勃発し、第二次世界大戦の続きが出る可能性もないことはない
そのために他国は優位に立つために手段は選ばない
特に日本は陸軍の影響力が減っているとはいえ、独断で動く傾向がある
万一ジェラード達に技術徴収、武力で拿捕しようもなら全滅するのは自分たちだ
ジェラード達・・・いや、ジェラードとその周囲にいる艦娘の力を少し話を聞くと映像を見たが、まさしく圧倒と言葉で表すのにふさわしいものだった・・・
我が国で研究中の噴式弾あちらではミサイルと言うらしいが、噴式弾が敵艦に命中し爆沈する、それが艦艇のみならず陸上、航空機にも通用し、爆発影響範囲は種類によって違い、ジェラード達はそれを迎撃する能力も持っている
それを艦娘に搭載しているときた
これは一人の少女が例え艤装を隠したまま、重要な施設、都市部で大暴れでもすれば凄まじい被害が出てしまい、それが同時に起これば国として対応できなくなる
ただでさえ、艦娘一人でも主砲・魚雷・爆弾等で攻撃するだけでも厄介なのに、精密な誘導可能な噴式弾にさらに音速を超える航空機を運用していると聞き、神威は卒倒しそうになった
現代では音速航空機はアメリカ、ドイツなどで研究、開発中らしいが、まだそれは開発段階であって、艦娘に搭載できない
艦娘も日本軍の保有する最速航空機は彩雲だ
試作段階で噴式航空機もあるらしいが、音速を超えるものではなく、そもそも艦娘に搭載できるか怪しい
兵器装備だけでこれだけでなく、砲弾を目標へ命中させる電子分野でもかなり進んでいるらしくアメリカとドイツの電子システムが赤子に見えて来るものだ
それだけでも脅威と感じるが、あくまでもジェラード達が研究開発してきたものらしい
それを量産させる妖精さんも工業地帯を持っているから可能だろう
ここまで聞いて普通は警戒、技術・戦力を奪う、攻撃するか、などになるが、不思議と私は思わなかった・・・・
ジェラードの圧倒的歴戦の雰囲気もそうだが、あれは狂気の目でもないし、うぬぼれている訳でもない
むしろ、未来を見据えた目とも言えるだろう
そして、彼女は恐らく例え人類が敵対し、半数が死滅しようともこちらが攻撃するなら躊躇なく攻撃する
そう感じた・・・
「人間との関係は、今後次第と言えるな・・・」
「今後次第・・・ですか、それは現状では友好的に接するに値しないということでしょうか?」
「はっきり言えばそうとも言えるな、人間特に国家となれば我々の持つ技術と軍事力を欲し、敵対する場面があるかもしれない。」
「敵対・・・ですか・・・しかし、共通の敵がいるn「現に同族同士で争っている地域なぞ腐るほどいる」・・・」
「人間を信用するか、どうか、は彼らをよく見極めなければならない・・・そうでなくてはいくら技術力があっても、深海棲艦に圧倒しているとはいえ人類と敵対し、、物量攻勢で来られるとさすがの私やミラ、セラ、キーロフ・・・近代化改修した艦娘・・・アイオワ、ビスマルクでも勝てる見込みは零に等しいからな」
「・・・だから、人間との関係は慎重なのですね・・・ジェラードさんは」
「そうだ」
今思い返してもあの時のジェラードは敵対するなら容赦はしない、と目が語っていた・・・
だから、大本営だけではなく、日本政府を説得する必要があり、いつ接触しにくるか、分からない、ジェラード達に備えておく必要がある
「・・・なるほど・・・分かった・・・この件についてはこちらから政府へ呼びかけよう、反応は分からないがな・・・
その時には神威、お前も出席してもらうぞ?」
と言うと神威は頷く
「よし、衝撃的な報告であったが、明日もっと詳しく聞かせてくれ、今日はゆっくり休め」
「!!大将!もっとこいつから聞かなくてよろしいのですか?もしかすると欺瞞工作する可能性もありますよ?」
「神威にいたってその可能性はないに等しいし、神威も艦娘とはいえ、疲れを感じるし、寝ないと正常な判断は出来ない・・・これに何かあるかね?」
「い・・・いえ・・・分かりました・・・」
「すまなかったね・・・では、下がってよし」
「はい、わかりました。」
と神威は会議室から出る
残った面子は暫く沈黙したが、やがて一人口を開く
「・・・・まさか、南方海域に艦娘と妖精による勢力がいたとはな・・・」
「これには私もびっくりしたよ・・・どう思う?二人は」
そこには大将の嫁艦である雷と大本営直属のヴェールヌイが居た
「・・・神威が嘘を言っているようには見えないわ・・・とはいえ、その勢力との接触は早めにしたほうが良いという点は私も賛成ね」
「ダー・・・写真を見る限り大本営の技術力を軽く上回る兵器もあることを考慮するとこれ以上成長する前に正体を掴んでおいても遅くはないだろう・・・」
「・・・なるほど・・・これは政府に伝えるにはかなり骨がいるな・・・まあ、何とかするしかないがな・・・」
と大将がため息を吐く
他の上層部も頷く
「本件に関することは一切の口外を禁ずる、万一口外したものには銃殺刑ものになると思え」
「「「「了解しました」」」」」