潜水戦闘空母の第二の生   作:ミュラ

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首都侵攻迎撃戦後編

戦いの先手を取るのは戦艦水鬼だった

彼女の艤装から16インチ三連装主砲から砲弾が飛翔するが、ジェラードは身体を捻らせながら6発の砲弾を避ける

代わりにジェラードからは対艦ミサイルを近距離から発射し、戦艦水鬼に迫るが、彼女はミサイルを艤装の巨大な腕でミサイルを叩き落とす。

文字通り両手を使って渾身を込め、ミサイルが自身の目の前まで接近するのを見計らって叩き落とした

 

「ははははー!それがあなたの攻撃方法ね!」

と彼女は笑いながらジェラードへ迫る

 

艤装の副砲や高角砲、対空機銃で牽制する

 

ジェラードは40mm機関砲やバルカン砲で対抗する

戦艦水鬼はアメリカ海軍アイオワ級戦艦に匹敵するほどの16インチ三連装主砲と装甲を持ち、高い戦闘能力がある

 

(ミサイルを叩き落とすとはな、人型になったからこそできる迎撃方法だな)

 

と若干驚きの感情も出ていた

 

すると戦艦水鬼は装填が終わったのか、主砲をこちらへ照準する

即座に砲塔の付け根に機関砲弾を叩き込むとギ、ギギギと金属の鈍い音がなる

 

だが、そんな損傷を顧みずに副砲で砲撃する。

 

さすが戦艦というべきか、40mm機関砲弾やバルカン砲弾も被弾しながら損害軽微という頑丈さ

 

「ははは!もっともっとよ!あなたの戦いを見せてちょうだい!!!」

 

「言われずともな!」

と再びVLSからミサイルを発射する。

ミサイルは戦艦水鬼には向かわず、急上昇して天空へ登る。

 

そして、ある程度登ったところで向きを変え、急降下する

「!ロケットを上から攻撃させることで防げないようにするつもりね!」

 

とジェラードと直接殴りあいながら言うと、すぐに後方へ移動したと思えば、ミサイルが誘導に従い戦艦水鬼へ向かうが、主砲を海面に砲撃する

 

巨大な水しぶきを上げたと思えば、そこにミサイルが着弾した。

 

「ち、逃げられたか、どこにいる?」

と空間投影から送られる水上レーダーを見るが、何も映っていない

 

レーダーに映っていない?

これほど近距離ならば映るはずだが、どこに…

 

ジェラードの背後の海面が一瞬膨らんだか、と思えば戦艦水鬼がジェラードの首に目掛けて艤装の拳を殴るが、ジェラードが身体を回転させながら回し蹴りを繰り出し、お互いの衝撃波が波に伝わる。

 

「・・・さすがね、水中からも来ることを予想していたのかしら?」

 

「お前たちは深海棲艦だからな、まさか戦艦が水中から襲って来るとは思わなかったが」

 

「なるほどね、だけど、勝負はまだまだよ?ふふふ」

 

と戦艦水鬼は海面を蹴ると空中で身体の向きを変えて、そのまま海中へ潜水する。

 

「ふ、戦艦水鬼、どうやら貴様は本気で戦いわないといけないのかもしれないな…貴様が海中で戦いたいと言うならば望み通り海中で戦うではないか!」

 

とすぐに隔壁を閉じ、潜水モードに変更するとジェラードは海中へ潜水する

 

その様子を戦艦水鬼は驚愕していた

 

(な!?この艦娘潜水もできると言うの!?空母のはずが、なぜ…)

と戦艦水鬼はジェラードが最初に言った言葉を思い出していた。

 

『私は潜水戦闘空母ジェラード級一番艦ジェラードだ』

 

 

 

(潜水戦闘空母って潜水することもできる空母ということ!?接近戦で戦闘することもできて、艦載機も飛ばし、潜水できるって規格外にもほどがあるわ…)

 

海中では直接話すことはできないので、通信を使いながら話す

 

「驚いたわ…まさか、潜水までできるなんて本当あなたは飽きさせない艦娘ね」

 

「そうか?私としてはお前がミサイルを叩き落としたり、ミサイルの攻撃を海中で阻止する戦闘能力も規格外と言えると思うが」

 

「あなたよりはずっと普通でしょ?」

 

「お前は一回あの世でも行ってきた時、辞書でも開くのだな」

 

「ふ、ふふふ、所詮はガラクタもどきと思っていたけど、ガラクタどころか、海の魔物とはね…ある意味私たちより魔物ぽっくないかしら?」

 

「魔物とは失敬だな」

 

「あらあら…でも、水中へ潜水できたからといって舐めてもらったら困るわね!!!」

 

接近するが、ジェラードは対潜水中レーザー砲、対潜レールガンを起動させ、海中を揺らしながら青い閃光が発生するたびに戦艦水鬼に被弾する

今度は艤装の片腕が完全吹っ飛び、ジェラードの正確な精密射撃が当たる。

 

ジェラード級はもともと海中での航空戦力の展開、統制能力に加え、圧倒的ミサイルや対潜兵器で敵艦隊及び潜水艦に対抗することを目的としている。

そのため、ジェラード級は海上よりも海中の方が戦闘しやすい点においてヒールシフトを使用しない限り戦いやすい。

 

近年、ジェラードが艦艇の時に戦っていた相手にも潜水兵器というものは発達し、機動潜水兵器に対抗することが可能な艦載機を搭載・運用する能力が求められたことで建造された。

 

 

「あら、意外と痛いものね…あなた海上よりも海中の方が弾幕の密度が上がっているわね?」

 

「お前たちが海中の方が動きやすい点では私も共感するが、戦いやすい海域は対潜兵器を思う存分使用することができるからな」

 

「あらあら…」

と若干呆れながらも見ていた。

 

「だけど、あなたがそれだけの弾幕を張っても直接殴り合いしましょ!!!」

 

「できればしたくないものだな、私は一応空母だからな」

 

「あなたのような空母があってたまるものか!!!」

と思わずツッコミを入れる戦艦水鬼

 

さらに何とか対潜兵器からの攻撃を避けながらも接近が成功しても、戦艦水鬼の艤装は損傷していくばかりであった。

既にここまでの戦闘で戦艦水鬼は主砲一基と片方の腕を使えものにならなくなり、いくつかの対空火器も損傷していた。

 

それに対しジェラードはほぼ損傷が少ないという。

 

(このままじゃ、まずいわね…もし、もう片方の主砲や腕も破壊されれば戦闘能力をほぼ全てを損失したといっても過言ではない。だけど、あのジェラードは強い)

 

 

強いからこそ戦艦水鬼は高揚感で胸がいっぱいになる気持ちだった。

 

これだけ強力で面白い戦闘をしたのは一体何年ぶりあろうか、最後に戦った強者は大本営に所属する古参組である雷と戦って以来だろう

 

「もっと…もっと!もっともっともっと!味合わせてちょうだい!」

 

(こいつまさか、狂っているのか?)

と戦艦水鬼は笑いながら腕を振り下ろすが、ジェラードがそれを横へずらすことで防ぎ、逆に戦艦水鬼の腹に蹴りをお見舞いする。

 

「くっ!」

 

「どうした!それが戦艦というものなのか!貴様の戦いはまだ続くぞ!

 

「ええ、もっと戦艦の戦い方を教えてあげるわああああ!!!!」

 

と残った副砲で再び海面へ砲撃すると水柱が上がり、すぐにジェラードの後ろへ回り込み、砲撃するが、砲撃する直前に空中へ舞い上がったVLSから放たれたミサイルが空中へ上がる

 

(遅いわ!これだけ近距離なら命中するはず)

と砲撃をするが、空中へ舞い上がったミサイルがジェラードと戦艦水鬼の間へ突っ込む。

爆発したミサイルの爆発エネルギーによって砲弾の近接信管が作動し、爆発する。

 

!?

 

 

爆煙によって辺りは黒煙で見えなくなるが、背後から気配を感じた戦艦水鬼は直感で背後へ腕を振る

 

その腕が何かに当たる。

 

(!当たった!)

 

と攻撃ができたと思ったが、黒煙が晴れるとその考えは消えた

 

なぜなら当たったのはジェラードの艤装であり、艤装の艦首に当たったからだ、艦首の砲門から青い閃光を走りながら電磁波も発生していた。

 

既に戦艦水鬼の艤装は大破し、主砲も大破している状況では物理的なダメージしか与えられないが、ジェラードに銃口を向けられているため、決着はついていた。

 

 

「・・・まさか、これほどとはね…あなたは一体何者かしら?」

 

「私は独立軍の司令官、潜水戦闘空母のジェラードだ、貴様からすれば異世界から来た艦娘と言ったほうがいいか?」

 

「そう…誰があなたを呼んだのか、わからないけど、もし出会う場所が違った場所ならあなたと上手くやっていけそうな気がするわ」

 

「奇遇だな、私もだ。貴様は惜しい人材だな。できれば私と共にきて欲しかったものだ」

 

「ふ、それは叶わない問題ね…あなたとはまたどこかで会いたいものね…」

 

「あの世で先に待ってくれ、どうせ、私も貴様と同じ戦闘艦だ。戦闘艦はいずれ平和になった世界には必要とされなくなる。この戦いが終わればお役御免となるだろう。」

 

「あら?誰がそれを決めるのかしら?独立軍なら自由に生きてもいいじゃないかしら?」

 

「貴様がそれを言うか、まあ、それもいいかもな」

 

「なら、あの世から楽しみに見ておくわ」

 

「ああ、先に逝っててくれ、楽しかったぞ」

 

「私もよ、あなたと戦えて光栄だった。」

と戦艦水鬼はまるで憑き物がなくなったかのように微笑む。

 

 

 

それが戦艦水鬼の最後の言葉となり、東京から青い閃光が見えた

 

 

 

 

 

独立軍の支援のもと、深海棲艦の上陸部隊や攻撃隊が全滅し、深海棲艦による日本軍首都侵攻は失敗したのであった。

 

戦艦水鬼とジェラードとの戦いは大和にも艦載機からその光景を見ていた。

 

 

そして、ずっと考え込んでいた。

 

ジェラードという存在を

 

あの深海棲艦の姫クラスの中でも最強の戦闘能力を持つ戦艦水鬼を単独で撃滅し、ほぼ無傷で勝利した。

 

戦闘能力も私たち艦娘が持つ能力や日本軍だけではなく各国の持つあらゆる兵器よりも戦闘能力が高く、彼女が持つ航空戦力だけで数千といた敵艦載機部隊は数十機という少数に全て迎撃された。

 

のちにわかった情報だが、戦艦棲姫率いる水上艦隊も独立軍所属のアイオワや矢矧、陽炎、雪風などの水上艦隊によって殲滅された。

 

今回使用した兵器についてもどれもが日本軍が持ちようがない兵器ばかりだ。

 

ジェラードが使用したロケット推進式誘導弾、大口径の対空砲、それらを正確に誘導する電子能力

そして、空母という水上艦かと思われたジェラードに潜水能力も持つこと。

 

一体なぜ、これほどの能力を持つ艦娘が生み出されたのか、全く不明だった。

 

ただ一つわかることはあれほどの戦闘能力を持つ艦娘を日本・アメリカ・ソ連・イギリス・イタリア・フランス・ドイツが総力を上げても生み出すことはできない。ということだ。

 

彼女の記憶から蘇る数年前に突如来襲した謎の組織、『霧の艦隊』を思い浮かぶ

 

彼女たちもジェラード同様誘導弾や強力な兵器で深海棲艦を撃滅し、一時は敵霧の艦隊に日本は完全に領海を失うこともあった。

 

もしかするとジェラードも霧の艦隊ではないのか?

 

しかし、それでは説明できないことがいくつか、ある。

 

まず霧の艦隊は来襲する予兆として霧が発生するということだ。

 

味方としてついてくれたイオナ、タカオ、ヒュウガ、ハルナも初めて会うときは霧が発生していた。

 

だが、彼女…いや、彼女たちにはそれがない。

 

そして、霧の艦隊が艦娘を従えているということ。

 

艦娘は基本的に提督の命令しか指示を受けず、自身の提督となる人間以外の命令には従わない。

 

さらに彼女には妖精がいた。

 

妖精は艦娘の艤装にしか現れず、霧の艦隊では一切確認されていないなど

以上の確信から彼女は霧の艦隊ではない、と考えている。

 

もし、彼女が敵対すればどの国も彼女単独でも勝利できる国はいないだろう。

 

謎が深まるばかり…

と大和は色々思案しながら艦娘の救助が終わるのと同時にジェラードから通信が入る。

 

 

『こちらジェラード、大和聞こえているか?』

 

「え、ええ、聞こえているわよ、見事な戦闘だったわね、まさか戦艦水鬼を単独で倒すなんてあなたは何者かしら?」

 

『それはもうすぐわかる。大和、連絡を取りたいところがあるのだが、繋げてもらうことは可能だろうか?』

 

「ええ、大丈夫です。無線機の方は無事生きていますので、いつでも使えます。」

 

『そうか、わかった。ある場所にコンタクトを取りたいのだが、そこへ繋げて欲しい。』

 

「はい、どこへ?」

 

 

 

 

 

『日本政府と大本営だ』

 

 

 

 

 

独立軍の介入によって首都東京へ侵攻した深海棲艦はほとんど殲滅することができ、陸上の上陸した深海棲艦陸軍もジェラードの航空支援と独立軍の支援によって難なく無事奪還を成功させた。

 

日本軍の被害は甚大なものとなり、陸軍だけで数万人に及ぶ死傷者を出し、多数の戦闘車両を損失した。

 

海軍の方でも第一鎮守府・第二鎮守府など東京を防衛する鎮守府の艦娘は凡そ7割以上に及ぶ損害を出した。

しかし、奇跡的に轟沈した艦娘は一人も出ず、大破ばかりで済んだ。

 

これは独立軍の介入によって早期に機動艦隊や航空部隊を殲滅したことによって艦娘の救助活動を順調に行うことができ、大元である戦艦水鬼をジェラードが撃沈したことによる深海棲艦の統制が一気に崩れた

 

深海棲艦側は戦力9割以上の損失に加え、多数の大破中破艦を出し、命ながら生き残った。

 

しかし、独立軍による攻撃は重大な傷を負わされ、姫クラスをほとんど撃沈されたことだった。

 

深海棲艦の姫クラスは2000人に一人の確率で出現する

 

それが全体の4割以上参戦したが、ほとんど撃沈されたことで世界中の深海棲艦に大打撃を与えた。

 

その影響は世界中にも及び深海棲艦の行動はかなり制限された瞬間でもあった。

 

首都侵攻迎撃戦以降独立軍は深海棲艦の殲滅が完了すると撤退し、アイオワ・セラ・矢作などの護衛を引き連れて大和を通じ、大本営や政府とコンタクトを取った。

 

大本営や政府は独立軍からの要請に喜んで受け、交渉した。

 

交渉した結果

 

日本との交渉はジェラード直接行った。

 

協定では

・日本政府は独立軍との不可侵条約

 

・独立軍から技術支援を求む代わりに各地の鎮守府や軍港の寄港や補給をできるようにする。

 

・日本軍の傘下に入らない代わりに戦力を貸し出す。

 

・これらの協定を結ぶ代わりに日本政府は独立軍へ必要な資材を供給する

 

などだ。

 

日本政府としても強力な戦力と制限されたとはいえ技術をもらう代わりに資源

 

独立軍は資源や権限などをもらう代わりに戦力の派遣と技術を輸出することでお互いの対等な立場となった。

 

 

大本営側も独立軍との立場が対等で指揮権は独立軍側にあるのと権限を与えることに不満はあるものの、独立軍の参戦や味方へ付くことを歓喜していた。

 

独立軍の活躍は当時の記者やメディアを通じ、新聞などで全国へ出回った。

 

当然ながら東京府民を中心に独立軍を歓迎する声が上がり、独立軍を支持する声があった。

 

この出来事によって日本は強力な味方をつけたということで東京侵攻があったのに関わらず、どこでも活気に沸いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある執務室

 

 

「くそ、くそ、くそおおおおおお!!!!」

 

机を叩く男性がいた。

 

部屋の中は既に書類が散乱し、椅子も壁に投げつけられたのか、折れ曲がっていた。

そして、本棚もひっくり返り、本が散乱していた。

 

男性の陸軍服も暴れたのか、乱れまくれ、顔も怒りで赤くしていた。

 

ちくしょう!まさか、独立軍が参戦してくるなんて完全に想定外だ!

 

参戦してくるのも日本と接触を行ってからだと考えて、全て計画していた。

 

独立軍が持つ技術や戦力、ジェラードの力はかなり強力なもので、事実深海棲艦が用意できる大規模艦隊を僅か5時間ほどで撃滅した。

 

しかも圧倒的数の差において差がついていたにも関わらずだ!

 

おかげで深海棲艦は多数撃沈され、俺と通じていた姫も撃沈しやがった!

 

正直甘く見ていただろう。

 

独立軍は所詮どの国にも所属しないただの技術集団だと

 

それがあれほどの戦闘能力があるとは思わぬデータも拾えたが、それ以前に損害の方が大きい。

 

男性は自国の被害を顧みず、自身の計画のために攻め込ませた深海棲艦のことを考えていた。

 

あと少し、あと2時間ほどあれば日本を浄化できるはずだったのに独立軍が全てを白紙に戻した。

 

まさに計画も途絶し、新たな計画を立てなければならない、

 

待ってろよ…忌まわしい独立軍め…俺たちの浄化はこれからだからな…

 

と修復されていく軍港を見ながら吹くのだった。

 




せ、戦闘描写難しいです…もっとうまい表現方法とかないのでしょうか・・・

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