Fate/erosion   作:ロリトラ

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1日目/パンケーキ・パニック

その後、着替えて身支度を済ませて2人で駅前まで来ていた。

 

「うわ……すげぇ。やっぱオープンしたての昼過ぎなだけあって混んでるな……」

「何をぼやぼやしておるのじゃ、並ぶぞますたぁ!パンケーキが儂を待っておる!」

「わわっ、そんな思っきり手ぇ引っ張るなよ。」

 

セイバーに手を引かれて列に並ばされる。

それにしてもやっぱこんな形だけど人間じゃないんだな……引っ張る力が其の歳頃の女の子の15倍はあったぞ、間違いなく。

 

「それにしても、そんなにここに来たかったのかお前。甘いもの好きなの?」

「べ、別にそういう訳だけじゃないのじゃ。戦略的にも人目のある日中に出回って地の利を得ておくのは意味あることなのじゃ。」

 

そういう訳だけ(・・・・・・・)じゃないってことはそういう訳もあったんだな、うん。

 

「……にしてもそういう理由があるならそう言ってくれれば俺も文句なんて言わなかったのに。だいたいあれはやり過ぎだ、女の子が裸を見せても何にも思わないとかそういうのはどうかと思うぞ、いくら俺でも。」

 

そう聞くと、セイバーはまるで不思議なものでも見たかのように目を丸くしてこちらをひとしきり見つめた後、笑い出した。

 

「ふふ、ふふふふ!お主まさか儂を女の子扱いしてくれとるのか。ふふふ、はははは。」

「な、何がそんなにおかしいんだよ!」

「いや悪い悪い。そうじゃった、お主は我がますたぁであっても魔術師ではないものな。そう考えるも不思議ではないかの。」

「考えるって、何をだよ?」

「儂の事を人間だとして考えるか、ということじゃよ。」

「別に、お前達が人間なんて思ってねぇぞ?というかあんな化物地味た人間がいてたまるかって話だよ。」

「そういう話ではない。サーヴァントは基本的に人間から英霊へと押し上げられて『座』に登録された魂、そのコピーなのじゃよ。だからそもそも人間ですらなくなっておるのじゃよ。だから、儂は裸を見られる事に何も感じぬ。幾ら話が通じて対話が出来ようと自分と違う生き物に欲情はせぬし羞恥も湧かぬじゃろ。」

 

思いもしなかった事実に言葉も出ない。

このセイバーは羞恥がないのではなく。

人間を別の生き物としてしか見れてないのだ。

 

「そ……そうは言っても元は人間だろ。それにお前は今ここにいるじゃねぇか、コピーだろうと英霊だろうと、心の在り方が人ならまだ人間のままだろ。」

「忘れたのか?さっきのは普通のサーヴァントの話であり、そもそも儂は妖刀の概念が霊基を得ただけのサーヴァントもどき。『座』にも登録されておらん紛い物じゃよ。つまり儂は人間として生きていたこともないし、人生というものを経験したこともない。知識としてしか人を知らん生き損ないが、人と同列なわけあるまい。それとも、まだ言うことがあるのかの?」

 

……そうか。コイツは。

人間を見下している訳ではなく。

どこまでも、紛い物な自分を見下しているんだ。

 

「そ、それは……」

 

俺には、何も言えない。

人として、家族との平和な生活を/ナンダソレハ?/送ってきた俺には。

 

軽い頭痛が頭を襲う。

幾ら人ではないとはいえ、ロリがこんなふうになってるのに気づいて精神的にショックを受けてしまったのだろうか。

 

「おい、ますたぁ。急に頭を抱えて大丈夫か!?見たところ、呪術の類を掛けられたとかでは無さそうじゃが……」

「あぁ、いや問題ないよ。ちょっと痛んだだけだ。昨日誰かさんのせいで安眠出来なかったからじゃないかな。」

 

これ以上彼女に心労を負わせるわけにはいかない。何事も無かったかのように、平然を装わなくては。

 

「……ふん。酷くなるようなら言うのじゃぞ。まぁよい、それならパンケーキじゃパンケーキ。下らんお喋りの間にもう次の順番だぞ!」

 

どうやら誤魔化しきれたようで、ほう、と息をつく。

そしていつの間にか次呼ばれるタイミングまで列は進んでいたらしい。

 

「2名でお待ちの伍道様ー、お席の用意が出来ました。」

 

「呼ばれたぞっ!はやくするのじゃますたぁっ。」

「はいはい、慌てないでもパンケーキは逃げねぇよ。」

 

そうして2人してテラス席に案内され、席についた頃には先程の痛みは何事も無かったかのように失せていた。

やっぱ大したことなかったな。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

ウェイトレスさんが来たのでメニューをザッと眺めて注文を決める。朝昼兼用とするの甘いものより食事系のパンケーキの方がいいだろう。

 

「それじゃ、このサラダパンケーキください。」

 

それにしてもこのウェイトレスさんは胸がつるぺたすっとんなのに背が高めだ。とても惜しい。あと20cm背が低かったら全力でアプローチしたのだが。顔も童顔で好みだし実に惜しい。

そう考えているとまだセイバーが悩んでいるようだ。

 

「まだなのか?早く決めろよ、お姉さん待たせてるだろ。」

「待つのじゃ、どれも美味しそうで決め難い……んむむむむむ。よし!これとこれとこれーー!」

 

「はい、ご注文確認します。サラダパンケーキがお一つ、ベリーミックススペシャルがお一つ、オレンジのチーズパンケーキがお一つ、抹茶パンケーキがお一つですね?以上で宜しいでしょ……」

 

な、一体幾つ頼んでんですかこのあほー!金欠だって言ってるだろ!……いや、言ってなかったか。でもこんなに払ったらマジでやばいから辞めさせなくてはーー!

 

「ちょちょちょっと待って待って待っ、ゲフッ!」

「?」

 

こ、このロリ……鞘で鳩尾ど突きやがった………そこまでパンケーキが食いたいか……ガクッ

 

「な、何でもないのじゃ、それで注文は以上じゃ。」

「分かりました、少々お待ちくださいませ。」

 

そう言うとウェイトレスさんは去っていった。今の反応見て一切引かないとかプロだなこの人……

 

「おい、セイバー。てめぇコラ、何しやがんだこの野郎……」

 

恨みがましく睨みつけて問いつめるとセイバーは慌てて弁明を始めた。

 

「だ、だってあのままますたぁをそのままにしたらパンケーキを1つにしてしまったじゃろう?」

「ったりめぇだろ。やっぱお前パンケーキ沢山食いたいからって……」

「ば、ばかもの!これでも儂は最優のサーヴァント、セイバーじゃぞ!そんな卑しいことなどせぬわ!あれは、そう!いっぱい頼むことで長くここに居座って通る人間にマスターがいないか調査する為なのじゃ!」

 

いや、どう考えても今考えたよねその口実。というかさっきは出歩いて地の利を得るとか言ってたじゃねーか。

 

「……金のことは考えて貰えてるんですかねぇ。払えなかったらお前ここで皿洗いさせるからな。」

「ふふふん、儂がそんな間の抜けたことをすると思うてか。見くびるなよますたぁ。ちゃんと出てくる前にお主の財布の中の金子(きんす)くらい確認してから来ておるわ。ちゃんと払い切れる金額じゃぞ。」

 

ふふん、と無い胸を偉そうに張って自慢げに言うセイバー。

いつの間に……というかそこまで考えてるなら、払った後の我が家の財政状態まで考えてくれませんかねぇ……いやホント。

 

 

 

そうこう落ち込んでいる間にパンケーキが運ばれてきた……のだが。

 

「ますたぁ、ますたぁ凄いぞパンケーキは!このベリーミックススペシャルというのも何種類もの果物によるソースの酸味と甘味が絶妙なバランスをとっており最高じゃ!じゃがオレンジのチーズパンケーキというのも見た目からは予想できないほどの味の重厚さと爽やかさが同居しておって絶品としか言いようがないの!こっちの抹茶パンケーキは抹茶の苦味と渋みを最大に活かして甘いのに詫び寂びを感じる素晴らしい一品じゃのう!まったく、洋菓子に抹茶を練り込むとは現代の菓子職人は素晴らしいのう!」

 

こんな事になるとは誰が予想したよ。

……めっちゃハッスルしてるよこの娘。

人間味がどうこうカッコよく脳内でキメた感じなのがやべぇすっげぇ恥ずかしいんですけど。

甘いもの好きなんだろうなぁとは薄々思っていたがまさかこれ程までとは……!!

というかお前さっきの長く居座って魔術師来るかどうか見るって言ってたけど俺の3倍あるのに俺より食べるの早ぇじゃねぇか。やっぱ口実だったかコノヤロウ。

思わず呆気に取られて手が止まるとセイバーは食べながら口を開くが何言ってるかわからん。

 

「はむ、はむはも、ましゅたぁよ。手を止めてひょうひた。ひゃべないのならひゃひがもらうひょ。」

「飲み込んでから喋れ行儀悪い。」

 

そう言うとセイバーはゴクリ、と飲み込んでからもう一度話し出す。

 

「じゃからますたぁよ。要らんのなら儂が食べるぞ、ということじゃよ。で、どうなんじゃ?」

「どうなんじゃ?じゃねぇよ……お前ここに来た趣旨完全に忘れてるだろ……」

「え、パンケーキ食べに……じゃないじゃない勿論覚えておるとも!魔術師をいないか見張りに来たのじゃよな!うむ、儂が見た限りそれらしきものはおらんぞ!」

「いや、さっきまで見てなかったのにそんな事言われてもなぁ………」

「ふっ、安心しろますたぁよ。サーヴァントが近づけばサーヴァント同士はいつでも分かる。気配遮断を持つアサシンは無理だがアサシンは昨日倒したから問題なしじゃ」

「………それってさ。ここに居座る理由なくね?むしろ適当に歩き回ってた方が地の利を得られたんじゃ……」

「な、何を言うのじゃ!そんなことは別に……あったね。うん。まぁそれはいいのじゃ。大切なのはこれからじゃよ!これから!」

 

うわすっげぇムカつく。いや待て落ち着け俺。これ以上いいようにされてたまるか。冷静に、それでいて的確に反論するんだ。

 

「いや、あのなぁ……」

「あれ、戈咒じゃねえか。こんなとこで何やってんだ?」

 

唐突に掛けられた声に向かって振り向くと、そこにいたのは下校途中の委員長と錬土だった。

 

「伍道君、珍しく休んだと思ったらまさかこんな所でサボってたとはねぇ……ってどうしたのよその子。え、まさか、誘拐!?」

「マジかよ戈咒……お前は変態だけどロリコンとしての筋は通してると思ったのに……見損なったぞ!」

 

あれ、なんか一気に未成年略取誘拐の犯罪者にされたーー!?

やばいやばいやばやばやばやばい!

委員長これ携帯取り出してるし警察呼ぶ気だこれ!

 

「ちょ、ちょっと待ったちょっと待った!誘拐してきた訳じゃないから!というか何故俺のナンパが成功したって可能性は考慮されないわけ!?」

「されない。」

「ないわね。」

 

一蹴ですかー、ふたりともひどいなー。

 

「だってあんな気持ち悪いのについてく女の子がいる訳ないじゃない。小学生だからって舐めすぎよ貴方。」

 

いや、別に舐めてないんだけどな……むしろロリの御御足なら舐めたいけど!

 

「お前良からぬ妄想してるのが顔に出てるぞ……てか、俺も委員長と同じ理由に加えてお前がナンパ成功したなんてことを認めたくないからお前が誘拐してきた説を推すぞ。」

「そんな理由で人を犯罪者にするなや!俺はロリの為に人の尊厳を失う程度ならまだしもロリを攫う犯罪なんてすることぜったいにない!!」

「伍道君が言うと妙な説得力があるのが困りものよね……言ってることはダメダメなのに。まぁとりあえず、話を聞いてからよね。」

 

そう言うと委員長パンケーキを丁度食べ終わったセイバーを呼びつける。

ここで止めたら自分でやましいことがあるって言ってるようなもんだけどコイツはコイツで誤解招くようなこと言わねぇだろうな……

 

「ねぇ、お嬢さん。貴女とそこの伍道君ってどういう関係なの?」

「ん?ますたぁとの関係か?そりゃあまぁ、主従関係じゃよ。儂がますたぁに隷属してますたぁが儂の願いの為に動く。見事なまでの等価交換じゃ。」

 

………うん、終わった。

確かに嘘はないけどさ、もう少し、その、言い方とかあったよね。

そうして俺は思考を放棄した。

 

「ッッッッッあ、アウトでしょうがこんなもんーーーー!!変態っ!変態よこのペドロリ犯罪者っ!近づかないでっ!」

「お前、そーゆープレイは昼間からやるもんじゃないんだぜ?分かる?」

 

委員長は完全に勘違いしてしまってるようで、完全に動転しているようだ……が、錬土。お前完全にこれがそーゆーことじゃないって気づいてるだろおい。やめろそのニヤニヤ顔。自分が女引っ掛けられないのに俺がロリとお茶してたのが気に食わないのかこの。

 

「おいコラ錬土てめぇ分かってておちょくってるだろ。これ以上やるとお店に迷惑だしちょっと外出て説明してやるから委員長説得しとけ、な?」

 

二の腕を思いっきり圧迫しながらそうお願いする。後で一発追加で殴らせてもらおう、うんそうしよう。

 

「あたたたたたギブギブギブ!痛い痛いからマジすんませんやめてちょっと調子乗ってたすまんやめて。」

「分かればいいんだ、分かれば。」

「え?ちょ、どういうこと?」

「はぁ、ハァ。とりあえず先外で待ってよ委員長。安心しなよ、犯罪性は無さそうだからさ。」

 

そう言うと錬土は委員長の肩を抱いて歩いていく。

 

「え、あれ、そうなの?……っていうか何で肩抱いてるのよこの変態っ!スケコマシっ!」

「ふぁんでっ!?」

 

が、その直後自分の状態に気づいて顔を真っ赤にした委員長にビンタされてやがった。やっぱアイツ主人公属性みたいなの持ってるよなぁ……俺もこんな物騒な迷惑ロリじゃなくて可愛いロリとお近づきになりたかったなぁ……やっぱアイツ爆発しろよ。

 

「ん、ますたぁよ。話は終わったのか?」

「終わるわけねぇだろ……というかお前のせいでよりややこしくなってんだからな?とりあえず弁明しにいくから店出るぞ。」

「いや、儂としては特に誤解を招こうとしたつもりは無かったんじゃがのう。」

 

うわマジかよコイツ。天然だったのか。

 

「それはそれとして、じゃ。」

 

急に声を潜め、真剣な声色で話しかける。

 

「お主は魔術師の家系では無かったのじゃよな?」

「あ、ああ。そうだけど。どうしたんだいきなり。」

「いや何、今の小僧の方じゃよ。何らかの魔術が掛けられとる。パッと見大したものではないし、魔術に反応して居場所や生死を術者の下に伝える程度のものじゃろうが……それでも用心するに越したことは無いの。」

 

唐突に伝えられた事実に思わず思考が硬直する。

 

「な……なんだと……!錬土が魔術師だっていうのか!?」

 

しかし俺の不安は杞憂に終わり、セイバーはきっぱりのその懸念を否定した。

 

「いや、それは無いじゃろ。そもそも儂は掛けられとる、と言ったんじゃぞ。それに、あの小僧からは魔力を感じられん。恐らく魔術回路自体が無いのじゃろうな。じゃから、そう。あ奴とお主の関係を知っておるものに魔術師や他のますたぁが存在する可能性がある、ということじゃよ。」

「な……!?それって、学校の中に他のマスターが!?」

「一概には言えんがの。適当にそこらの人間に掛けてレーダー代わりに使っておる可能性も十分あるからのう。じゃが、覚悟くらいはしておけという事じゃよ。身近なものをその手で斬る覚悟をな。」

 

告げられた宣告に、目の前が真っ暗になったような錯覚を受ける。学校ですら安全でないとしたら、常に命の危機があるってことじゃないか……

 

「おいおい、儂が言ったからって気にし過ぎじゃよますたぁ。ますたぁは魔術師の家系ですらないんじゃから、ますたぁにマスター適正があることを知ってるもの自体がほぼおらんじゃろう。じゃからそれよりは適当に魔術を掛けられた相手があの小僧だったって可能性のが高いわ。じゃが、覚悟だけはしておけ。いざという時に殺されぬよう、な。」

 

そう、セイバーは念を押すと途端に顔を明るくして。

 

「それじゃ、店を出るぞますたぁ。それにしてもここのパンケーキは絶品じゃったのう。また連れてきてもらいたいものじゃ。」

「か、勘弁してくれ……」

 

これ以上の出費だとマジでもやしライフになってまうぞ俺……

 

 




戈咒君の財布はこの小悪魔ロリの甘味おねだり攻撃に耐えることができるのか!つづく!

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