会計を済ませて店を出ると、委員長と錬土の2人が俺を待っていた。
「それじゃ伍道君、その女の子について説明してもらおうかしら。」
「そうだな。俺もお前が誘拐してきたとは思わねぇけどそのロリっ子が何なのかは皆目検討つかねえしな。」
「えーと、だな。この娘は親戚に預けられた子なんだ。名前はセイバーっていうんだけども。」
「セイバー(騎兵剣)?またけったい名前だな……というかどう見ても日本人なのにそんな名前なのかよ。」
「ちょっと、ホントのこと話してもらえる?私たちも別に疑いたい訳じゃないんだから。」
「いや、本当じゃよ。儂の名はセイバー。伍道 聖化(ごとう せいば)じゃ。戈咒お兄ちゃんの従姉妹じゃよ。」
よしっ!ナイスゥ!
よく口裏合わせてくれたなっ!
『ふふふ、儂に任せればこの程度お茶の子サイサイよ。』
得意げにセイバーが因果線を通じて会話してくる。そうか、この手があったな。
よし、打合せしながらうまく誤魔化すぞセイバー!
『任せておくのじゃ!儂はお主の従姉妹で両親の旅行の間ますたぁが儂を2週間預かってるという設定でいいかの?』
よし、それでいこう!
というか……さっきの受け答えする前に一言相談してくれれば良かったろ……
『と、とっさのことじゃからしょうがないじゃろっ!忘れてたわけではないぞ、ただびっくりしただけなんじゃからっ!』
お、おう……
そんな必死になって否定しないでも……
『とにかく、その受け答えでいくからの!』
よし、分かった。ところで、お兄ちゃんってのいいな。どうした急に。
『あ、あれは咄嗟になんか口にしてたんじゃ。儂にも分からんがなんかしっくりきたのでそう呼んだのじゃが…不快か?』
いや、全然オッケー。寧ろ呼んでくれ。
『やっぱお主変態じゃろ……』
自分でも薄々感づいてるからそれを言うのはやめてやってくれ。
「セイバーはあだ名なんだ。2人もセイバーって呼んでやってくれ。」
「なるほど、あだ名か。それで、一緒に暮らしてるってことか?」
「ああ、セイバーの両親が帰ってくるまでの2週間の間だけな。」
「そう……それにしてもセイバーちゃんの御両親もよく貴方に預けようなんて思ったわね……」
うわぁ、俺の信頼無さすぎぃ。
「人をなんだと思ってるんだよ、委員長は。」
「ロリペド野郎の変態クラスメイト。」
うわぁ、辛辣。
「ま、それなら心配はいらねぇか。何だかんだ戈咒は面倒見もいいしな。それじゃあ、俺らは帰るけど。何かあったならいつでも連絡しろよ、特にセイバーちゃんのことでおかしなことでもあったら(・・・・・・・)。」
「なに?その言い方だと貴方まで手出ししそうに聞こえるんだけども。」
「冗談。俺は胸のある女が好きなんだよ。その点委員長は背は低いがおっぱいが素晴らしゅぼっ!」
あ、殴られた。やーいざまぁ。ついでに俺も1発殴っておこう。
「なにっ、言ってん、のよっ!このっ、変っ、態っ!もう知らない!」
「やめ、やめ、やめって。痛い痛い、痛い。というか戈咒てめぇこら一発どさくさに紛れて殴るな!」
あ、バレた。
「いやでも仕方ないだろ、お前さっき分かってて敢えて話ややこしくしたし。一発は殴ってしかるべき。」
「ぐっ……それより委員長怒って行っちまったぞ。フォローしとけよ。」
「え、なんで俺が。」
うわぁ何このラノベ主人公体質。ぶん殴りてぇ。
「ぐはっ!てめぇこら戈咒なにいきなり殴ってんだ。」
「あ、つい。鈍感ぷりにムカついたもんで。」
「ついじゃねぇよ!……ったく。とりあえず委員長に謝っときゃいいんだろ、ほいほい。……そこまで鈍感な訳ねぇだろ、阿呆。」
「おう、それじゃあな。」
「明日はサボんなよー、豪ちゃん怒ってたぜ。あと手出すなよー!」
「俺は紳士だからしねぇっての!というかそれマジか、うわやだなぁ行きたくねぇ……」
「はははは、ザマァ。」
うわくっそムカつく。というか豪ちゃんキレてるってマジかよガチで行きたくねぇなぁ……
「いや、お主どんだけ自分の担任にビビっとるんじゃ。」
「いやお前も見れば分かるから。あれは教師の風格じゃないから。その道のプロの風格だから。」
「なんでますたぁの学校はそんなんが教師やっとるんじゃ……」
しょうがないだろ、校長がヘッドハンティングしてきたんだから。地下闘技場か何かで。
「それにしても、あやつ。儂が人間じゃないと気づいておったの。」
「え……はぁ?マジで!?」
「何を驚くんじゃ……そりゃ感の鋭い奴なら人間じゃないって何となく感じる奴はおるじゃろ。ただそれを確信出来るほどの真人間はそうそういないというだけじゃ。」
「……真人間?アイツが?」
「魔術師でないという意味じゃよ。魔術回路はあの女子(おなご)諸共存在しておらんようじゃからの。サーヴァントのマスター足りえないし、聖杯戦争の関係者ではないじゃろ。」
「……そっか。ならいいんだ。」
いやホント、最悪の自体は避けられたようで何よりだな……それにしてももう夜か。晩飯の用意しないと。
「セイバー、晩飯何食いたい?」
「パンケーキ!」
「却下だ。ていうか今さっき散々食っといてまだ足りねぇのかよ……」
底無しか?コイツ。
「えー、ダメなの?戈咒お、兄、ちゃ、ん?」
「ぐはっ!」
うわちょっと何この娘あざといやばい。だが耐えるのだ俺、まいにちもやしライフを防ぐ為に!
「だ……だめ、だっ!リクエスト無いなら今日の晩飯は素麺!文句は言うなら食うなっ!」
「えー、まぁ儂和食は基本的に皆好きじゃからいいけど。」
よしっ!よく耐えた俺!頑張った!
「そうだ、素麺なら手のべ素麺がいーなー。」
「そんな高いもんはお前さんがパンケーキ喰いすぎたお陰で食べられません。安物で我慢しなさい。」
「えー。情けないのぉ、儂のますたぁは。そのくらいの甲斐性は見せぬかい。」
俺はお前のメシ使いじゃねえんだよ。
というかそんな食に拘る必要ねえだろサーヴァントなのにっ!
「まぁいい、うちに薬味類はまだあったからスーパーで素麺だけ買って帰るぞ。」
「うむ。」
そこでふと本来の目的を思い出して聞いてみる。
「そういえば、魔術師いたのか?」
「おらんかったなぁ、それらしきものは。」
「マジで何のために出てきたんだよ俺ら……」
「ふふふふ、気にするな気にするな。この程度へこたれとって駄目じゃぞ。まだまだ先は長い。早速今夜から見回りに出発じゃ!」
え、なにもう今夜から戦いに出るの?まだ疲れ抜けきってないし明日からでいいじゃん。
「えー、明日からにしようぜ。今日は疲れたし、ゆっくり寝たい。」
「何腑抜けとるのじゃうちのますたぁは。そうこうしとるうちに気づいたら詰んでても知らぬぞ。魔術師はあくどいからのう。そうなったら幾ら儂を装備したところで切り抜けられないかもしれんぞ。」
ぬぬ、痛いところを突いてくる。確かに俺も死にたいわけじゃないからなぁ。そこに関しては完全に利害も一致してるのだし。
「ぐむ……しゃーない。ただしあんまし自分から首突っ込む気は無いからな。なるたけお前を使いたくないんだし。」
「分かっておるよ。だから遠くから観察して他のサーヴァント同士が戦ってるところでマスターの首を背後から取る!一般人の振りして近づけば何とかなるじゃろ。」
「お前、ホントに剣士の英霊かよ……」
それガチモンの暗殺者(アサシン)じゃん。昨日のが実はセイバーでこのロリこそアサシンなんじゃないの?
「……そんなに儂がセイバーか疑うなら儂をよく目を凝らして見てみるのじゃ。ちゃんとステータスと共にセイバーってクラスも見えるじゃろ。」
「いや聞いてねぇよ。」
「そういえば言っとらんかったか。まぁよい、論より証拠。とりあえず見てみるのじゃ。」
「わ、ホントだ…」
目を凝らして見るとセイバーのクラスとステータスがグラフ状になって見える……のだが。
「お前さ、ステ低すぎだろ!なんだこれ、セイバーなのに近接戦闘ダメダメって……」
「い、いやだから待つのじゃ!それは儂単体のステータスであって、お主が儂を装備したらもっと高いステになるのじゃ!」
なんだ、それならまだマシか。良かった、装備してもあんなゴミステかと思ったぜ……
「……納得してくれたのはいいのじゃが、なーんか気に食わん。」
「いや、別にお前がそのままじゃ使い物にならないのは気づいてたから気にすることは無いぞ、うん。」
「うわますたぁよ、お主ハッキリというの。地味に傷つくぞ。」
いや知るかよそこまでは流石に。
っと、スーパー見えてきた。さっさと買って帰るか。
「よし、じゃあ素麺買って帰るぞ!セイバー!」
「ちょ、スルーはやめるのじゃぁあ!」
スーパーへ向けて走っていく時に正面に見えた夕日が少し目に染みた気もした。ちょっと黄昏た気分になりたいだけで別にそんなことは無かった気もした。
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素麺を食べ終わって、テレビを見ながらだらだらとしていれば、時刻はいつの間にか午後10時。人気が減ってくる時間だ。
「それじゃ、行くかのう。ますたぁよ。」
「おう、良いぞ。」
そうして家を出る。
「で、何処に向かうんだ?」
「とりあえず昨日ますたぁが襲われたとかいう駅前周辺かのう。アレだけ暴れてたサーヴァントじゃ。おそらくますたぁを失ったはぐれか何も知らないますたぁじゃろう。痕跡を多く残してるじゃろうからな、同じように探しに来てるやつもいるはずじゃ。」
「なるほど、そこを隠れて不意打ちで叩くってことか。」
「そういうことじゃ。」
そのまま駅前付近まで歩いていくと、瞬間。空気が変わったように何かに呑まれた。
「なんか、空気が変わったような。なんかあったか?」
「お、鋭いのますたぁよ。まぁ気にするな、人払いの結界内部に入っただけじゃよ。どっちが張ったか分からんが、なかなかに高度な術式じゃ。気づかれてるのは間違いないじゃろうな。」
「はぇー……っておい。それじゃ、奇襲とか不可能じゃねぇか。」
「うっ……だ、大丈夫じゃよ!張ったのは誰か1人だけだからそれ以外のマスターなら何とかなる、多分!」
「うわぁ……この勢いだけで動いてる感、ホントに大丈夫か。」
「ライブ感は大事じゃよ!」
誰もライブ感は求めてないです。
そんな軽口を叩きながら人気のない道を進んでいくと、硬いもの同士がぶつかり合う金属音が聞こえてきた。
「これって!?」
「うむ、既に戦闘は始まっておったようじゃの。急ぐぞますたぁ!」
音のする方へと走っていくと破壊痕がところどころに見られる。そしてどうやら音源は駅前広場のようだ。駅ビルの非常階段に登って様子を確認すると。
巨大な犬だった。それこそ、あれは象にも匹敵するサイズだろう。
そしてその巨躯から振るわれる爪は電柱を軽くなぎ払い、口腔内からそびえる牙は並の一軒家くらいなら噛み砕きかねない。そんな圧を感じさせる強大な獣だった。そしてその振るわれる爪と直槍で同等に打ち合っているのは俺より幾らか歳上くらいにしか見えないスレンダーな女性だった。
だがその身からは有り得ぬ膂力で爪を打ち払い、薙ぎ、突いている。
しかし獣もただやられるだけでない。四脚の利点を活かして縦横無尽に女性を翻弄しつつ攻撃を仕掛ける。
その状況が数秒、いや数分だろうか。とにかく短くも濃い時間、打ち合いは続いたが互いに致命の一撃には至らない。そして、先程とはうってかわって互いを牽制しつつも動かない睨み合いとなった。しかし溢れ出る魔力と神秘は他の追随を許さず、ここまで覇気が流れ込む程だ。
最大級の神秘と神秘のぶつかり合い。
これがーーー聖杯戦争か!!
このペース配分をまるで計算していないようなぐだぐだ状態。
これでこの時点での書きだめは尽きてるので暫く時間かかるかも
それはそれとしてやっとだよ!久々のサーヴァント戦!ほんと半月ぶりくらいじゃね?
なんかずっと戈咒とセイバーのイチャイチャ書いてた覚えしかないこの半月。
連続更新はこれで終わりだけどこれからもよろしくお願いします