Fate/erosion   作:ロリトラ

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本当はこれと次の併せて一話予定だったのに気づいたら七千字近くなってたので分割されたとかなんとか。
だから書くのに時間かかるんだよ!


1日目/三日月の獣

遠くで戦闘音が聞こえる。いいや、違う。

あれはランサーとアーチャーの戦闘音だ。だから殆ど離れているはずが無い。

だからこれは、単純に俺の意識がそれだけ目の前のコイツに集中しているだけなのだ。

 

「もうやだなぁ、そんな心配しなくてもとって食ったりはしないわよ。ま、殺しはするだろうけどね。それじゃあ、やっちゃえバーサーカー!」

「……承知した、マスターよ。」

 

指示と共に両手剣を構えた戦士が踏み込み、一気に距離を詰めてこちらを断ちにくる。

 

「グッ……はあっ!」

 

ーー重い。さっきのランサーや昨日のアサシンなんかとは比較にならないほどの一撃の重さだ。

 

『馬鹿かますたぁ!日本刀は受けるのに向いてない、受け流せ!というか儂に支配権を寄越せ!』

 

セイバーがこちらに叫んでくる。

そして肉体の意識を刀に、妖刀(セイバー)の本能に委ねると意識が薄れ身体が勝手に動き出す。昨日や、さっきと同じ。遠隔操作を見ている気分だ。

 

「……中身が変わった、か。先程はただの小僧だったが。フッ……なるほど。これが剣士の英霊の真の姿ということか。では、お手並み拝見といこうかッ!!」

 

バーサーカーは期待するように口角を吊り上げ、一足飛びに間合いを詰め、再び戦闘が再開される。

 

俺の身体は刀身を斜めに使いながら両手剣の一撃を受け流しつつ、相手を断とうとするがバーサーカーもさしたるもの。強靭な肉体と高い膂力で両手剣を振り回し近づかせない。しかし剣術としての技術はセイバーの方が上なのか、向こうもこちらに有効打を与えられない。さしづめ剛剣のバーサーカーと柔刀のセイバーと言ったところか。

 

そうして幾分ほどか。息をつかせぬ、されど気を抜かせぬ剣戟の果てにバーサーカーが惜しそうに呟く。

 

「まさか死後に、これほどの難敵と見えられるとは。だがそれだけに、残念だ。ここで終わりとは。」

「褒められるのは光栄じゃがの。最後のは聞き捨てならんの。儂はまだピンピンしておるが?」

 

気分を害したかのようにセイバーが俺の身体で話す。しかし、なんだ。自分の声で小さい女の子(ロリータ)が話してると考えるとそこはかとない背徳感が……

 

『……おい、こんな時まで何を考えとるんじゃこの馬鹿ますたぁは。シリアスをぶち壊す天才か?お主。』

 

セイバーに怒られてしまった。いや、なんかほんとすみません。

と、こちらが念話で騒いでる間にもバーサーカーは残念そうに呟き続ける。

 

「いいや、違うのだ。()()()()()()()()からな。」

 

そう言いながら、バーサーカーが頭上を指さす。

 

「ええ、そうね。天気予報は見てなかったのかな。今日は日が沈む頃から曇だったけれど、日付が変わる頃からは星空が綺麗に見える程の快晴なのよ。」

 

空を見ると。丁度それまで天を覆っていた雲の切れ間が見え。病的な程に青白く、幽鬼のように燦く三日月が、姿を見せた。

 

「ぐ……ぐぉ、オオオ、オオオオオオオオオーーーーーーーー!!!!」

 

同時に。月光を浴びたバーサーカーが絶叫を発する。

 

「はじまったはじまった♪」

「な、なんなんじゃあれは……」

 

肉体はパンプアップしたかのように膨れ上がり、羽織っているジャケットの毛皮は広がりバーサーカーの全身を覆っていく。

 

「が、がうう、ルラ、がらルララ……grrr……!!」

 

声からも人間性が失われ、段々と獣性を帯びていく。

そして、月の光が止んだ時。

そこに立っていたのは、人狼となったバーサーカーだった。

 

「さぁ、行きなさい!バーサーカー!」

 

その号令と共に人狼と化したバーサーカーが迫り来る。

 

「疾いーー!」

「GRRRRAAAAAーーーーーー!!」

 

剣こそ使わなくなったものの、一撃一撃がより鋭く、速くなっている。更に両腕の爪を振るう分リーチこそ落ちたものの手数は優に2倍以上。明らかにセイバーを受け流しきれず、かすり傷が増えてきている。

 

このままじゃーーやられる!

その瞬間、捌き損ねた一撃が頭上より顔面に振り下ろされる。

が、その瞬間。セイバーが一言。

 

「すまんの、ますたぁ。ギアを、上げさせてもらうぞ。」

 

そう、謝るように呟くと。

 

宝具擬似解放・妖刀斬神(みかふつのかみ)

 

その一言と共に全身に再び妖刀の呪詛(いし)が流れ込む。いや、これはさっき以上だ、だル、ろう斬。斬、斬ルル。

 

ーー血を寄越せ

ーー血を満たせ

ーー血を我が刀身(にくたい)へと焚べるのだ

 

我は呪の刀である。

我は妖の刀である。

 

ーーーー故に、ただ斬るのみ。

 

「ル斬斬、ル斬ル斬ル斬ル斬ルルル。」

 

ナンだ/斬/何かがオカしイ/斬れ/セイばーノ意/斬れ/思スラ感じラレなイ/切り刻め/気ヅケば片/断て/手にハ/断ち斬れ/もウ1振リの刀ガーーー/総テヲ、斬レ

 

こうして、俺の意識は沈んで還り。

 

身体にと毒の如く染み渡った悪しき斬妖の意識(ほんのう)が浮き上がる。

 

ーーーーさァ、斬戮(ヒトゴロシ)の時間だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さァ、ヤロウか人狼(ヴェアヴォルフ)。斬り殺シテあげよウ。」

 

ーーーそして、一閃。

 

バーサーカーの胸に、十字の裂傷がはしる。

 

「ヘェ。斬れなイナンてすゴイな、キみ。ならバ……両断シテあげよウ!」

 

そのまま戈咒だったものは間合いを詰め、斬りつける。

しかしバーサーカーも初撃で危険度を悟ったのか、素早く反応し爪で応戦する。

 

「GRRRRRAAAAAAAーーー!!!」

斬斬斬斬(キキキキ)()ャハハハハハ!!!」

 

バーサーカーは人を越えた回復速度と獣性により力で押し。

戈咒だったものは人を越えた剣戟と素早さにより翻弄する。

永遠に続くとすら思われる2人の人外の殺し合い。

 

 

ーーしかし。終わりの時は唐突に訪れた。

 

()ャハ。斬斬斬(キキキ)。ちくしょう、もう時間斬れかよ。」

 

戈咒だったものはあくまで刀の毒により身体を間借りしているに過ぎない。戈咒の身体自身の自浄作用によってその毒が抜けてしまえば、この斬撃の化身とも言うべき状態は消えてしまう。

 

だからこそ、戈咒だったものは。また全力で殺し合う機会が生まれるよう。今の表層の意識は、いけ好かないガキだから。再び自分が出てこざるを得ない状況が生まれることを祈り。敢えてここでバーサーカーを殺さず、ランサー達の下へとはねとばした。

 

目的はただ一つ。自分が出ていない間に戈咒の肉体を殺させない為。

 

()ヒャヒャ……人狼(ヴェアヴォルフ)……テメェは(おれ)が殺スぜ斬斬斬斬斬斬(キキキキキキ)ャヒャヒャヒャ!!」

 

そう高笑いと共にその目にハイライトが戻り、戈咒の意識は再び浮上した。

 


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