Fate/erosion   作:ロリトラ

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今回、レアの目的に関連してかなりの独自解釈と独自設定が含まれる恐れがあります、お気をつけてお読みください(予防線を張ってくスタイル)


幕間/聖杯の真実

「それで……着いてきたは良いけど、ここか?」

 

ラバックに連れられてきた先には如何にも、といった巨木がそびえ立っていた。

 

「うむ、、ここが私の自慢の魔術工房さ。神殿とはいかないが、なかなかのものだと自負しているよ。」

「はぁ……アタシ、魔術師の工房になんて入りたくないんだけどなぁ……」

 

そうぼやくと、ルトガルディスがつんつんと肩をつついて聞いてくる。

 

「あの、ルキア?魔術師の工房ってそんなに危ないものなのでして?」

「ん?あれ、お前も魔術使うのに工房知らないのか?」

「私は魔術の研究といっても神秘の研究の副産物みたいなものでしたし……魔術基盤をそのまま使ったバージョン違い、みたいな魔術もどきみたいなものなのでそこまでガッツリ研究してた訳ではないので……」

「なるほどなぁ……一般的な魔術師の工房ってのは単なる魔術の研究場所兼修行場所ってだけじゃなくて多くの場合超危険地帯だからな。どうせここも、部外者や外者撃退用のデストラップだらけだろうぜ……」

 

そう嫌そうな顔をすると、安心しろとばかりにいい笑顔でラバックがこちらに親指を突き出す。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だとも。私の工房は安心安全のトラップフリーだ。罠だらけの森よりよっぽど安全だとも。いや何、以前何度か死ぬ目に合ってから全撤去したんだよ。どうせこの森を抜けて来れるようなのはほぼいないし、抜けてくる奴には無意味なレベルのトラップだったからね。」

「自分の罠に引っかかるなよ……」

 

 

そして、奥に入ると、居間のような部屋に通された。

そして全員が席につくと、指をパチン、と打ち鳴らすが早いか、奥の部屋からカップとソーサーを乗せたお盆を持った猿らしき使い魔が現れる。

 

「どうだね。まずは、一口。寛ぎながら話そうとしようではないか。」

「生憎だが、魔術師の工房で出されたものを飲む程アタシは油断しきれないんでね。すまないが、お猿さんたち。これは君たちが持って帰って飲んでくれ。」

「キキッ。」

 

そう言うとアタシとルトガルディスの分の茶を持って使い魔は去っていった。

 

「やれやれ、信用には至らないか。まぁいい、それでは本題に入ろうか。まずはこれを見てくれたまえ。」

 

そう言うとラバックは机の上にあったリモコンを操作する。すると壁からスクリーンが下がってきて、机の上にはプロジェクターが現れる。そして、スクリーンには『レアの計画について』と書かれたプレゼンテーションらしき画面が表示された。

 

ーーうん。ほ、ホントにパワポ用意してやがったコイツーーー!

 

「まず、レアの目的から説明しよう。」

 

そう言いながらラバックはページを進める。

 

「まず、レアの目的についてだ。まず第一に、世界の神代回帰。」

 

……どういう事だ?やべぇいきなり分からんぞ。

 

「といっても伝わりにくいだろうから、画面にイメージ図を用意した。」

 

そう言いながらラバックが操作すると幾つもの楔で布地を縫い止められた球体に、一点から染みが広がり全てを染め尽くした。

 

「見ての通り、彼女は『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』のような楔を抜くのではなく、現在の世界という布地を専用の礼装である毒聖杯で……」

「ちょ、ちょっと、ちょーっとストーップ!」

 

思わずラバックの説明を静止する。いや、だって、流石に置いてきぼりだぞこのレベルの解説は!!

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。全くついてけねぇ。もっとわかり易く解説してくれ。」

「……ふむ。イメージ図なども使ってわかり易く解説したつもりだったのだが。」

「いやごめん、世界という布地とか言われてもついてけねぇぞ。アタシは魔術師じゃねぇんだから。」

「そうか……では仕方ない。一から解説するとしよう。」

 

そう言うとラバックはプロジェクターと電源を落とし、口頭で話し出す。いや……そこでこそ使ってくれよ!パワポ!

 

「まず、この世界は神代……つまり神々の時代の終わりだ。大気中に今とは比べ物にならないほどの大源(マナ)が満ち、神霊達が跋扈していたその時代。ある王によってその終わりは訪れ始めたというが、それにより地上は人間のものとなり、神々や神秘の濃い幻想種は消え去った。」

「幻想種……って言うと、昨夜見た人狼(ワーウルフ)みたいな……」

「レアのサーヴァントか……まぁ、アレはおそらく本物ではないだろう。とはいえ、人狼が幻想種であるのは紛れもない事実だろうし、500年前ならともかく、現在は北欧などにもいないだろうな。そして、他には竜種なども含まれる。」

 

竜種……最強の幻想種。他の亜種聖杯戦争でもサーヴァントの宝具として現れたという話をたまに聞く他、先の聖杯大戦では終盤にも観測されたという話を聞いたことがある。

 

「そして、その消え去った先は世界の裏側。」

「世界の……裏側?」

「そうだ。地球という星の表面に薄い織物がかかっているとイメージしてもらえばいい。そう、丁度このテーブルクロスのようにだ。私達が今生きているのはこの表面。物理法則が支配する世界だ。そして、神々や幻想種が消え去ったのはこの織物の裏側、ここが世界の裏側だ。通常、ここの織物は何かの間違いがあってひっくり返らないように幾つも楔となるものが撃ち込まれ、固定されている。」

 

先程の神代回帰、という言葉が思い出され、嫌な予想を打ち立てる。

 

「まさか……聖杯でその楔を抜いて、その織物をひっくり返すのがレアの目的だって言うのか……!?」

 

しかし、ラバックは首を降りその予想を否定する。

 

「いんや、そうではない。流石にそれをやるには魔力が足らない、聖杯でもとても無理だ。それこそ人理をエネルギーに変換するレベルの偉業でないとな。……だから、奴は考えた。裏側をそのまま持ってこれないなら、表側を裏側の色に染めればいい、と。」

「染める……?」

「あぁ、今の物理法則が支配する世界、神々の権能が支配する神代へと写し取り、染め替える。この表側を侵食させるんだ。」

「ちょっと、そんなことしたら……」

「ああ、直接ひっくり返さない分人類即死滅……なんてオチにはならねぇだろうがその環境が再現されれば、幻想種や、下手すりゃ神霊までもが再びこちら側に帰ってくる。第一に並の人間じゃその濃すぎる大源(マナ)に耐えられずに肉体が崩壊するだろうよ。」

「そして……それを示したのがさっきのイメージ図か。」

 

漸く、話が繋がる。さっきのイメージ図はそういう事か。だが……いきなりの説明で分かるかあんなもん。

 

「そういう事だ、この地を起点として神代という毒はこの星という織物を侵し、蝕み尽くす。だからこそ、人類の滅亡だ。」

 

ちくしょう……そういう事かよ。だが、奴は何故そんなことをしたがるんだ……?理由の無い虐殺レベルではない、この行為は、今の地球という星が滅びるに近い。それに、まず。そんな事が個人の手で可能なものなのか?

 

「三つ程……気になることがある。」

「私の答えられる範囲ならば、答えよう。」

「まず一つ目、レアはそこまでして何がしたいんだ?そして二つ目、そんなことが本当に可能なのか?」

 

その問いに対し、ラバックは顎髭に手をやりながら、考え込むようにして答えた。

 

「まず一つ目。これは本人が言っていたこと故に間違いないだろうーーあ奴の目的は、根源への到達だ。」

「根源……だと?」

 

根源、それは総ての出づる場所にして全ての魔術師の最終目標。

あらゆる魔術師は根源へと至る為に人生を使い潰し、次世代へと研究を重ねながら発展を目指す。

 

「確かに、魔術師でもあるアイツならば不自然では無い理由だ。だがしかし、何故それが神代回帰へと結びつくのだ!?」

「……神代ってのは、神秘がそこらじゅうに、至って普通に溢れていたのだ。神も近く、幻想種だって沢山いた。だからこそ、根源も今よりずっと身近だった。それが神代の魔術師が根源を目指さなかった理由の一つとも、伝え聞くが……ともかく。それだけ根源が身近ということは、辿り着くことも容易い、ということだ。そして、人間ならば即死しかね無いような大源(マナ)の濃さであろうとも、死徒であるあやつなら生存し続けることも可能。そういう事だ。」

 

そういう事か……だが、何か違和感を感じるような……意図的に何かを隠した、か?……いや、穿ち過ぎか。それより、次の答えを聞こう。

 

「そして、二つ目だが。こちらは私としても確実とは言えないのだが。可能である、と私は思っている。まず、この地の聖杯はサーヴァントを生贄としてくべて根源への孔を空けるものでは無い。まずそのレベルが実現できる大聖杯はアインツベルン以外に鋳造は不可能だし、それ自体も聖杯大戦により失われてしまった。だからといって、他の亜種聖杯のように、サーヴァントの魂を魔力に変えた願望機でもない。これは、この地の毒聖杯は。奴自身の魔術回路を一部移植して作り上げた世界という織物を侵食するための限定礼装だ。英霊召喚はそれを起動させる為の、エネルギーを蓄えるための機能。敗北したサーヴァントの魂を無色の魔力に変換し、それを媒介として神代という色を写し取る。それが、この地の聖杯戦争の真実だ。」

 

思わず、絶句する。言葉も出ないとはこのことか。まさか、ここまで仕組まれていたとはーーー!

 

「ふぅ………俺が語れることは、今の質問で大体語り尽くしたと思うが、まだ、三つ目の問があるのか?」

 

息をつき、カップの茶を飲みながらラバックは問う。

勿論だ。そして今の返答により、益々聞かなくてはならなくなった。

 

「ああ、三つ目の質問だ。……なぁ、ラバック・アルカトよ。お前……()()()()()()()?」

 




でもこれでかなり思いの終わったし?あと1話くらいで二章終われる?

……とか言うとまた伸びそうなので何も言わないことにします……

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