Fate/erosion   作:ロリトラ

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やっと3章!久しぶりの戈咒君!
いやぁ……すごい久々に書いた気がするなぁ….


第3章 剥落する日々
2日目/夢


ーーーカァン!カァン!

 

甲高い金属音が響く。

 

ーーーガギィン!ガギィン!

 

少し、音が変化した。

 

ーーージュゥウウウ!

 

液体が熱せられらる様な音だ。

 

 

ーーーー視界が、開ける。

 

そこは、真っ暗な。いや、仄かに橙色の燈りが感じ取れる。

目が慣れてきたのか、周りが見えてくる。

 

ここはーー、工房?何やらそのような雰囲気だ。

手元にはやっとこに挟まれた朱く熱せられた金属の刃。そして右の手には鎚が握られている。ここは、鍛冶場のようだ。

 

「全く……なんつーもんが出来ちまったんだか………」

 

口から声が零れる。いいや、違う。これは俺の声じゃ、/ボクの声でも、ない。それで自身の腕を見て気づく。これは俺の身体じゃない。

つまりーー夢か?

 

そう自問自答してる間にもこの身体の持ち主は鎚を振り上げ両刃だった刃を日本刀の刀身のように成形していく。

 

「ーーお前さんは、危険だ。だから、人しか斬れない妖刀になるしか無かった。この俺様にすら、そこまでしか打ちなおせなかった剣。そんなものをまぐれとはいえ造れちまう俺様の才能が末恐ろしいと同時に、お前さんが不憫でならねぇ……」

 

何を言っているんだ?刀に語りかけてるのだろうか。

鎚の音は益々激しくなっていき、遂には最高潮へと達する。

 

「いつか……お前さんを満足に振るえる使い手が現れることを祈って、俺様はこの銘を刻もう。この◾◾の名を。」

 

吹き上がる蒸気の音で言葉にノイズがかかる。

ーーそうして蒸気が晴れた後に。目の前に打ち上がったのは、俺自身もこの一両日中で見慣れてしまったセイバーそのもの、即ちあの妖刀だった。

 

意識が、急速に引き戻される。ここが夢だというのなら目が覚めようとしているのかもしれない。そう考えている間にも意識は遠のきーーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ーーたぁ」

 

「ーーすたぁ」

 

「ーーますたぁ!!」

 

「ーーー!!」

 

目が覚める。周囲を見回すとそこは既に鍛冶場ではなく、見慣れた自室であった。セイバーが横で呼びかけてくれていたようだ。

 

「ーーはぁ、はぁ、はぁ。俺は……そうか、あの後。」

 

俺の様子を見て一心地ついたのか、安堵の表情を顔に浮かべてセイバーがちょこん、とその場にへたりこむ。

 

「ふん……どうやら無事だったようじゃの。こんな所で倒れられては儂にとっても困るのじゃ、全く。」

「あぁ……ごめんな、迷惑をかけた。ちょっと無理し過ぎたみたいだ。」

「全く……運んできた儂の迷惑も考えて欲しいものじゃの。……ん?なんか今朝のお主妙に殊勝ではないかの?」

「そうか……?ただ申し訳ないって気持ちがふつふつと湧き出てきただけなんだがな。」

 

護るべき幼女に守られるなんてロリコンとして三流だ。今後はこのような事のないようにしなくては。そう、心中で自戒しているとまたその心中の声を因果線越しに聞き取ったのか、セイバーが引きつった笑みを目の前で浮かべている。

 

「あぁ……そのどこまでも気持ち悪い思考回路、間違いなくいつものますたぁじゃったわ……殊勝になったなんての儂の勘違いだったの。」

「そこまで言わなくても……まぁそれはそれでご褒美みたいなものだからいいけどさ。」

「お主は常に気持ち悪いことを話し続けないと死ぬ病かなにかなのか……!?」

 

セイバーがそう、戦慄した表情で少し後ずさる。

え、なんか今そんなにやばいこと言っちゃったっけな。

と、考えたところで幾つかふと気になっていたことを思い出す。

 

「そう言えば、さ。セイバー。」

「ん……なんじゃい。裸なら見せんぞ。」

「そんなこと要求しねぇよ、俺は犯罪者じゃねぇんだ。同意もなしそんなこと頼むかよ。」

「同意があれば頼むって時点でかなり近しいと思うのじゃが……まぁいいわい。それで、お主の気になることとはなんじゃ?」

「いやまぁ、こっちは大したことじゃないんだけども。お前ってすぐ俺の心の中聞き取るけど、サーヴァントとマスターの因果線ってそんなに互いに筒抜けなの?」

「ん……聖杯から与えられた情報に余り具体的な情報は無かったから分からぬが多分そんなことはないと思うぞ。サーヴァントにしろマスターにしろ、相手に伝えたくないことの一つや二つはあるじゃろ。」

「ん、別に俺はないけど。それどころか俺の全てを余す所なく知ってもらいたいまであるぞ。」

「お主みたいなのは例外じゃ例外!聖杯だって想定しとらんわこんなマスターの存在は!」

 

例外って……聖杯も想定外とか、ほこまで言わなくても。まぁ……呆れた顔も可愛いからいいか、うん。それにしてもだとすると少し気になるのは確かだ。

 

「それじゃあ、俺のは何で筒抜けなんだ。」

「儂の考えてることが丸伝わりしてないことから考えるに、じゃな。仮説じゃが…….お主阿呆なこと考えてる時、大体心の中で大声でさけんどるじゃろ。」

「ん?何を当たり前のことを確認してるんだ。ロリに出逢えば心中で快哉をあげ、ロリが可愛ければ弁舌を尽くしてその素晴らしさをとうとうと語る。至極当然のことじゃないか。」

 

幼女は可愛い。だから喜ぶ。

幼女は美しい。だから楽しむ。

幼女は素晴らしい。だから幸せ。

 

うん、とても。それは、とても。当たり前のことじゃないかーーーー!

 

「当たり前であってたまるか阿呆っ!!」

 

瞬間、頭蓋に衝撃が走る。な、何しやがるんだこの妖刀ロリめ……刀の柄は拳銃の台尻と同じくらい人の頭を殴るところじゃないんだぞ……

 

「お主さっきから因果線越しで心中でとうとうと語りながら口でもペラペラ語り続けてサラウンドで気持ち悪くて完全にアウトじゃ阿呆!お主みたいな思考が当たり前であってたまるか!そんなんじゃから昨日のランサーのマスターにも同盟を拒否られるんじゃ!」

 

セイバーが怒りながら呆れたようにまくしたてる。確かに、ちょっとからかい過ぎたかもしれないな。

……まぁ、八割型本音だけども。

 

閑話休題。それにしてもいいことを思い出させてくれた、昨日のロリを小学校を張って探し出さなければならない。

 

「そうだ、セイバー。今から小学校に張り込んで…」

「却下じゃ。それなら大人しく学校にでも行くぞ。」

 

えー、そんなー。

渾身の計画はすげなく却下されてしまった。絶対見つける自信があったのになぁ。いや、ここで食い下がるようではロリコンの名折れ。もう少し粘るべきではないのか?うんうん、きっとそうだ。

 

「いやいや、セイバー。今は聖杯戦争中だぜ?呑気に学校なんか言ってる場合かよ、それよりは他のマスターの調査をした方が遥かに有意義ってもんだぜ?」

 

しかし、セイバーの信用は得られなかったらしく白い目をこちらに向けてくる。

 

「ますたぁよ…….今までの流れからなぜそれで誤魔化せると思ったのじゃ……?大体、お主こそ聖杯戦争中ってことを理解しとるのか……その全てを幼子目的で考えるのいい加減にして欲しいんじゃが……」

 

ふむ、流石俺の可愛いサーヴァント。こちらの思考はお見通しというわけか。しかし、後者にそう簡単に頷くわけにはいかないな。

 

「俺に幼女中心の行動をやめろって?ソイツは無理な相談だぜセイバー。それは魚にエラを動かすな、人間に息を吸うな、っていうのと同レベルの無茶だ。俺が全ての幼女を愛で続けるロリコンである限りそれは変わらないさ。」

 

あれ……なんか視線が冷たい……?

 

「ますたぁ……なぜそこでそんなここ一番のキメ顔を浮かべるのじゃ……」

 

セイバーはそこで一つ、大きく溜息をつくとやれやれ、といった様子で言葉を吐く。

 

「まぁ、いいわい。確かに土着の魔術師の情報が無い以上、マスターの身元候補すら分からぬのじゃからお主の張り込みという作戦自体が理にかなっとるのも事実じゃ。……だからこそ、腹に据えかねるのじゃが……それはもうよい。それより、じゃよ。」

 

そうして言葉を切ると、俺の全身を見回しながら、心配そうに口を開く。

 

「それより……ますたぁ。身体の方は大丈夫なのか?昨日アレだけ負荷を掛けて……反動がないわけ無いと思うのじゃが……」

「いや……何もないぞ?それどころか寧ろ身体の調子はいいくらいだが。」

「な……そ、そうか。それならいいのじゃが。」

 

?そんなに俺を心配してくれてたのか。なんか嬉しいな。

 

「それより、セイバーもいいなら張り込みに出てかないか?絶好の観察ポイント自体は幾つか知ってるが同業者に取られないようにも行くな早めの方がいいし。」

「いや、同業者ってなんじゃ同業者って。」

「なんじゃって、我々の同士のことだよ。老若男女、幼女同盟には様々なメンバーがいるぜ?」

「死ぬほど知りたくなかった情報をどうもありがとうの……というかそもそもお主、今の時間見てないのか?」

「え、時間?」

 

何を急に。ブラインドから夜明けの西()()が差し込んでるしまだ日が昇って少ししたくらいじゃ……ん?西日?

慌てて時計を見ると、針は午後5時を指し示している。

 

「げえっ!」

「漸く気づいたかの。実にお主、半日以上も寝ておったのじゃぞ?」

 

ここから平斗小学校まではどう頑張っても30分はかかる。下校時刻を考えると、おそらく間に合わないだろう。

 

「くっ……仕方ない。なら今日は身体を休めて明日に備えるとするか。セイバー、今日の晩飯は素麺ともやし炒め丼、どっちがいい?」

「何故その二つしか選択肢がないのじゃ……」

 

仕方ないだろ!お前がパンケーキ喰いまくるから金欠なんだよ!!

 

「ぬぬぬ……仕方ないのう。その2種なら、素麺を頼むのじゃ。あ、汁は胡麻ベースで。」

 

セイバーは悩んだ果てに注文をアレコレつけてくる。というか胡麻ベースの汁って、さてはコイツ俺の秘蔵の胡麻タレ見つけたな?

 

「わーったよ。それじゃ茹でるから、少し待っててな。」

「うむ、儂はクイズ番組でも見とるから準備は頼むぞ、ますたぁよ。」

 

そうして素麺を茹であげて2人で静かな夕食……いや結構騒がしかったような夕食を食べて順にシャワーを浴びて床につく。

 

そこで、ふと寝覚めの直前に見ていた夢を思い出す。セイバーのような日本刀が打たれていたあの光景。

 

「なんだだったんだろうな……あれ。まぁ、明日でも聞くとするか……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そうして、夜は更ける。

蠱毒の釜は今宵もその(うち)侵食(どく)を蓄え。

聖杯戦争は刻の針を進めゆく。

 

残るサーヴァント、マスターは共に7つ。均衡の崩れる刻は、近い。


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