それはそうとしてここ数日サボってたのに一気に今日の夜からテンション上げて書いたので疲れましたわ……やっぱ毎日コツコツって大事ですね(当たり前)
あ、今回書き過ぎたんで2話更新です
ゆらり、ゆらり。
陽炎のように虚ろぎ揺らぐ意識がふと、覚醒する。
視界が開け、眼前の風景が顕になる。
畳張りの部屋に、色鮮やかな内装。とても煌びやかな部屋だ。そして、目の前には美しい花魁姿の女性が見える。つまり、これはまたセイバーの記憶の、夢だろうか。しかしそれにしては、随分と雰囲気が違う。
「あい、お出でんなし。おあがりなんし、お客様。」
目の前の花魁の様な女性が声をかけてくる。
おい、まさか。情事の記憶じゃねぇよな、これ。
「久しいなぁ、八ツ橋。お前さんが見受けを断ってから、俺はずっとお前に会うのを楽しみにしとったんじゃ。」
そう、俺の意識の入った身体は下卑た笑いを浮かべながら言う。
「こちこそ、お久しぶりでありんす。今日は、来てくれてありがとうござりんした。」
しかし目の前の花魁はたおやかな笑みを崩さず、こちらを受け入れている。
が、しかし。
俺の意識の入ったこの身体は、突如として何もない空から刀を引っ張り出す。いや、これは引っ張り出したというより、見えなくしていたのかもしれない。
そして、その刀はーーやはり。俺の見慣れたセイバー自身であった。
おそらく遊郭であるが故に、武装禁止のこの場に突如刀を取り出したこの身体の持ち主に、目の前の花魁は表情を青ざめて怯えを顕にし始める。
「じ、次郎左衛門の旦那。な、何をするつもりでありんす。」
「何をだァ?八ツ橋ィ、お前この間は俺に赤っ恥をかかせておいてよく言ったじゃねぇかよォ。なァに、この
「ひ、ひぃぃぃ!」
目の前の花魁からは先程までのたおやかな仕草は完全に失せ、こちらに背を向けて慌てて逃げ出す。
が、遅い。その背を袈裟懸けに一太刀。物の見事に一撃で、絶命させた。
「あァ、あァ、あァ。いいねェいいねェ。ひゃ、ひゃは、ひゃはははははははは!!!!」
そう、この身体の主が高笑いをあげているとドタドタという足音共に下男らしき男がやってくる。
「き、貴様、八ツ橋に何を!」
「あァん、そうか、てめェも斬ればいいのかァ。ひゃは!!」
今度は逆袈裟に一閃。下男も体の前面から血を吹き出しながら倒れる。
それを見届けると、この身体は窓をあけ、物干しと屋根を伝いながら走り出す。そして途中にある遊郭の遊女を斬り、客を斬り。男を斬り、女を斬り。人を斬り、人を斬り、人を斬り、人を斬り人を斬り人を斬り人を斬り斬り斬り斬り斬り斬り斬り斬り斬りーーーー!!
幾十人、いや三桁を越えただろうか。それ程の血を浴びたところで、俺の意識の入ったこの身体は動きを止め。
そして再び、いつかのように意識がブレる感覚を錯覚する。つまり。この身体から意識が離れ、夢から覚める時がーーー
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「ん……む……。」
目を開けると、眼前に広がるは白い天井。横を見渡すとカーテンに覆われており、俺が横たわるはベッド。
ここは、保健室か。
今の、夢はーー
『目を覚ましたかっ!ますたぁ!」
「うわわわわっ!!」
突如の脳内に叫びかけてくるセイバーに仰天し、思わず声を上げてしまう。
すると、その声に気づいたのか目の前のカーテンがサッと開き、養護教諭が顔を覗かせる。
「あら、目が覚めたのね
「あ、え、あ、はい。もう楽になったので帰ります。ありがとうございました。」
「いやー、びっくりしたわよ。何てったって廊下で気絶してるんだもん、君。」
「え、あ、はい、すいません。」
そうか、レアとの戦いの時、俺はセイバーによって意識を失ってーー
「まぁ、次から気を失う程体調が悪くなるより早く保健室に来なさいね、それじゃあ。」
そう言うと養護教諭はカーテンを閉めて、奥の事務部屋へと引っ込んでいった。
「さて、と。とりあえず、教室に戻るか。そして、セイバー。アレからどうなったのか聞かせて貰うぞ。」
籠釣瓶に次郎左衛門、どうにも聞き覚えのある名だがイマイチ思い出せない。だが、その夢の事も気になるが、とりあえずはレアとの戦いがどうなったのか確認しなくてはなるまい。それに、アレは場所的にセイバーの情操教育に悪いから話さない方がいいだろう。
『う、うむ……その、じゃな。』
廊下に出て歩き始めた頃に、歯切れ悪くセイバーの声が聞こえ始める。
『どうした、何かあったのか、セイバー。』
『う、うむ……すまぬっ!ますたぁよ、レアをみすみす取り逃がし……それどころかこの学校中を人質に取られ、儂はなす術も無かった!何が最優じゃ!何がサーヴァントじゃ!儂は……サーヴァント、失格じゃ。』
心中での会話だからか、声で言葉を交わすよりもありありとセイバーの悲壮感、絶望、そして自己嫌悪が伝わってくる。
違うんだ、違うんだよセイバー。戦わせていただけで何も出来なかった俺に。気絶していただけの俺にそんなことを言われる資格なんて無いんだ……
そのまま何も言えずに廊下を5分程歩き続けて、セイバーに声をかける。
『……セイバー。ありがとうな。』
『……へ?』
『だって、セイバー。俺の為にレアを見逃してくれたんだろ?』
『……………悪いが、ますたぁの頭のおかしい趣味に付き合う余裕も今はないのじゃよ……』
『……いやいやいやいや!!そうじゃない、そうじゃないから!レアがどうこうじゃなくてさ。あの時俺の意識は無かったんだ、俺の意思なんか無視して人質を殺されようとレアを斬ろうと思えばお前は斬れただろう?』
『む……ま、まぁ……それは……』
『それをさ、俺の為にわざわざとどまってくれた。ありがとな、セイバー。』
『か、かか勘違いするでないわいっ!わ、儂はただ……そう!儂はただあそこで勝った所でお主との関係を悪くするのは聖杯戦争全体で見た時得策でないと考えただけなのじゃから!』
『……そっか。でも、それでも俺は嬉しいさ。』
『〜〜〜!!』
どうしたのだろうか、きゅうに唸り出したぞ。何か不味いこと言っちまったかなぁ……
そう考えているとチャイムの音が響き渡る。7限目が終わったようだ。丁度目の前に自分の教室も見えた。とりあえず、ホームルームくらいには参加しなくては。
そう思い、教室に入る。
「あら、戈咒さん!大丈夫でしたか?」
「れ、レア・アーネス……ッッ!!」
教室には入ると、俺の目の前にいたのは先程去っていった筈のレア・アーネス本人だった。
「私、昨日付けで鎖山高校2-1に転校してきたレア・アーネスです。これから
「あれ、戈咒お前レアさんと知り合いだったのか?」
錬土が俺にそう問いかけてくる。知り合いなんてもんじゃねぇよ……
「ええ、先程廊下でお会いしました。急に気絶してしまったので心配してたんです。」
「はははは、おいおいお前いくら金髪ロリに会ったからって感動の余り気絶って。そりゃねえだろうよ。」
錬土か思わず笑い飛ばす。そんな簡単な話ならよかったんだがな……とりあえず、人目につかないところに連れ出さなくては。
「ちょっと、レア…さん。こっちに来てくれるか。」
「あのう、熱烈なお誘いは嬉しいのですけれど。今からHRですのでそれが終わってからにして頂けますか?」
「流石見境の無いロリコン、いきなりナンパとはねぇ。」
違ぇよ!!てかてめぇだけには言われたかねぇぞ錬土!!!
「いや、そういうのじゃないから。あと、とりあえず、分かった。」
わざわざ俺にそう言ったってことは、向こうも目立つ行動をわざわざ取る気は無いって事だろう。ならそれこそ幸いだ。放課後に、もう1度問い詰めてやる。