もう少しで本編にも出せるかな……?
あ、今回幕間なので多少短いです
そして、時は戻り。
未だ欠けた月が輝く闇夜の中。
平斗の幽霊屋敷、いやライダー陣営の拠点と呼んだ方が既に適切か。その1室で報告を待つ彼女の下に、ライダーのサーヴァントが現れる。
「遅かったわね、ライダー。また何か道草でも喰らっていたの?」
開口一番、サーヴァントに苦言を呈するマスターに対してライダーは肩をすくめる。
「はー、これだからうちのマスターはアレだねぇ。俺の本分とかけ離れた偵察させといて遅いって?当たり前だろうよ。」
「ふん、まぁいいわ。それよりも報告を聞かせてちょうだい。」
「ああ。まず、お前さんの予想に関しては大当たり、だ。近頃多発してる失踪事件の犯人はアサシン達と見て間違いねぇ。」
「やっぱりそうだったのね。ふふん、どう、これで分かったでしょライダー。」
「どうって、なんだよ?」
「ふふん、決まってるじゃない!もちろん私の溢れる知性がよ!全て私の予想通りだわ!」
「あー、はいはいそうだな。まぁたしかにマスターの観察眼と推理力に関しては及第点をやるよ。けどそれだけだぜ、今認めるのはよ。」
「ふん、まぁいいわ。そのうち私の、カフナ家の凄さがあんたにも分かるでしょうから、覚悟しときなさいよ!」
と、少女はビシィッ、と思いっきり指を突きつける。それを興味無さそうに眺めながら、ライダーは報告を再開する。
「あー、はいはい。それで、報告の続きだが。奴らは捉えた人間をだな……」
「やっぱり、
「いんや、違う。奴らは魂でなく、肉を本当に
その言葉の意味がすぐには呑み込めないのか、少女は一瞬ポカンとして口をもぐもぐさせると形相を驚愕の色に染める。
「人を、そのまま……!?なんで、そんなことを。効率も悪いしその行動の意味が分からない……!」
「俺にだって分からねぇよ。サーヴァントがイカレなのか、マスターがイカレなのか。とにかく捕らえた人間を調理して喰らってたぜ。」
「………わ、訳が分からないわ…なんで、そんな無駄な行動を取ってるのよ。勿論、そんな奴らは神秘の秘匿なんてしてないんでしょうね。」
「あぁ、とはいえ魔術を行使している様子は一切見受けられなかったな。」
と、その報告で少女は怪訝な顔を見せる。
「一切見られない……それでよくあんなにもたくさんの人間を攫えたものね。」
「あぁ、いや。そこが報告の根幹なんだが、アイツらは複数存在する。」
「分裂した群体型のサーヴァント、ということ?」
「いや、どちらかと言うと家族だな。家族自体がサーヴァントとしてなっているのか、誰かが正しいアサシンで家族を呼び出す宝具を使えるのか。それは分からんが。」
「なるほど……で、ライダー。あなたの宝具でソイツらは纏めて薙ぎ払える?」
「可能だが。マスターはそれでいいのか、武功を示すんじゃ無かったのかい?」
と、ライダーは皮肉な笑みを浮かべて少女を見やる。
そして彼女はうんざりした顔で答える。
「そんなイカレ、相手にする価値もないわ。わざわざ極東くんだりまで来たっていうのになんでマトモな魔術師との戦いが出来ないのよ。嫌になるわ。」
「そんなこと俺に言われてもなぁ。」
「うるさいわね!別にあんたには言ってないわよ!それより、報告は終わりなの?まさか本当に道草を食ってただけ?」
「いや、セイバーのマスターと出会ったぜ。よく分からんが呪術系統の使い手に見えたな。」
その報告で少しは機嫌を直したのか少女はカップの珈琲をあおる。
「そう、呪術とは私の相手にしては派手目じゃないけどなかなかにセンスはいいじゃない、初戦の相手に相応しいわ。」
「じゃあ、監督役にでも頼んでソイツに宣戦布告でもする気か。」
「いえ、それはまだよ。まずは地下のゴミを洗い流してから。人目につかないところだし、どうせなら派手に行きましょう。カフナ家のイリマここにあり!ってこの街の凡百の魔術師どもに私の存在を知らしめるのよ!!」
「あー、そうですか。じゃあ決行は明日の夜か?」
「いいえ、明後日よ。それまでに私は準備を整えておくわ……」
そう言うと少女は部屋を出て姿を消す。
そしてそれを見送ったライダーは1人嘆息しながら呟いた。
「全く……うちのマスターは何を考えいるのか。まぁ、せいぜい俺は見定めさせてもらうとするか。」
その呟きの意味は、それを窓から眺める朝日すら知らず。
聖杯戦争の4日目が幕を開けた。