Fate/erosion   作:ロリトラ

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日常パートなのに書いてたら9000字超えてたので分割です



4日目/スクールライフ・アンダーマイン

 

朝の学校、朝の教室。いつも通りのぐだぐだな授業前。

 

「にしてもよー、あのワンツースリーはどうかと思うの。」

 

錬土が腹を擦りながらボヤく。どうやらダメージが抜けきってないようだ。かく言う俺も刀の柄で殴られた後頭部が割とかなり痛いのだが。

そこんとこどうなんですが、セイバーさん。

 

『あ、あれは儂悪くないじゃろっ!?寧ろお主の毒牙から(わっぱ)を守った功労者じゃぞ儂!?』

『酷い、その言い方だと俺がまるで幼女を襲う犯罪者みたいじゃないか。』

『いや、実情はともかく傍から見たら割と同じじゃろ、それ……』

 

失敬な。

少し不満げながらも目の前に意識を戻すと委員長が錬土に謝ってた。これこれ、こういう素直さがうちのセイバーにも欲しいよねー、全く。

 

「でも、殴ったことについては謝るけど後悔はしてないからね、私。」

「ひでぇなおい!?」

「いえ、寧ろグッジョブ私とすら思ってるわ。アソコでキメなかったら伍道君より先にブタ箱行きになってたわよ。」

「それはやべぇ……って流石にないだろそれは!?」

「ものの例えよ。とはいえクラスメイトが他所様に迷惑をかけてるのを止めないわけにはいかないじゃない。」

「あー、もう堅物なんだからよー。どうせなら男漁りでもしたらどうだよ委員長も、どうせ日照ってんだろ?」

「〜〜〜〜!!あ、あなた……!!」

 

あ、コイツ地雷踏んだな。

 

再び、華麗なまでのワンツースリー。

錬土はダウンでテンカウント。新チャンプは委員長だ!

いやー、全く。これだから女心の分からん鈍感系はねー、困ったもんですよ全く。

 

『五十歩百歩とはよく言ったものじゃの……』

『え……?』

『何でもないわい。それより気を引き締めるのじゃ、この気配。』

 

言われて気づく。扉の前に感じるこの感覚。ここ数日度々感じたあのバケモノの気配。心なしか空気すら呼吸の際に肺を焼いてくる気すらするこの空気そのものが、アイツがすぐ側にいるという存在証明にほかならない……!

 

「どこから、どこから来るんだ……!」

「なにが来るんですか?戈咒君。」

 

ーーーーーッッッ!!?

 

振り向けば、そこにはいつの間にかレアが平然と佇んでいた。おいおい、嘘だろ。

 

『儂も全く気づかんかった……どういう事じゃ。』

 

セイバーすら感知出来ないレベルでの隠形……!!

 

「どうしたんです、そんなに慌てて。え、もしかして何か私まずいことしましたか!?」

 

レアがまるで無害なただの女生徒であるかのように振る舞う。改めて見るとそれに全く違和感を覚えないのが。この記憶さえ無ければ俺自身も平然と受け入れそうな程に普通なのが怖い。

なんだそれは、お前はそんな生き物じゃないだろう、やめてくれ。なぜ違和感無く紛れ込むんだ、吐き気がする。

 

「気にしないで大丈夫よ、レアちゃん。伍道君ロリコンだから、きっと貴女をみて感極まっちゃっただけよ。」

「そ、そうでしたか。私が何かしてしまったのかと思ってびっくりしちゃいました。」

「早く慣れた方がいいわよ、この馬鹿共は四六時中これだから。さて、私はこの昏倒してるバカ1号は保健室にHR始まるまでに送り届けてくるわ。それじゃ、また後でね、レアちゃん。」

「はい、ありがとう京子さん。」

 

そう言うと委員長は錬土の首根っこを引っ掴み教室から出ていく、

すると、それを見計らったかのように小声でレアが俺に話しかけてくる。

 

「まったく、なんだい?さっきの無様なのは?」

「はぁ……!?てめぇのせいだろうが……このクソッタレめ。」

「やれやれ、女の子に使う言葉じゃないよね。それに、もっと自然にしてくれないと困るよ?怪しまれるのは君も困るだろう。あくまでもこの教室、この学校では私とキミはクラスメイトなんだからさ。」

「…チッ……レア、さん。せいぜいよろしく。」

「あぁ、こちらこそ、戈咒君。」

 

仕方なくリップサービスで挨拶を交わすと。

そう、甘い。毒のような声で、返してきた。

 

そうこうしているうちに、委員長が教室に戻ってきてほぼ同タイミングにHRの開始を告げるチャイムが鳴り響く。

 

そして、前方の扉をガラリと開けて数学担当にして担任教師の豪ちゃん……雷禅先生が入ってくる。だが、そのHR開始早々に言われた一言は。俺の不安感を再び煽った。

 

「あー、唐突だが。お前らに1つ伝えたいことがある。重大なことだ、よく聞け。最近、この街で行方不明者が多発している噂は分かるな?ありゃあ事実だ。」

 

その一言で教室中にどよめきが走る。そして俺はレアを見る。しかし、平然としておりそれが犯行が明るみに出たからなのか、それともそもそもこの件には完全に無関係なのか読み取ることは出来なかった。

 

その時、教室中に響き渡る爆裂音。クラス中の人間がその音源を見やると、そこには豪ちゃんがいる。その指から見るに、今の爆裂音は指パッチンのもの………え?

 

 

俺と同じことに気づき始めたクラスのの何名かがさっきのは別の意味でどよめきだすが、そこですかさず有無を言わさぬ指パッチンによる爆裂音が再び鳴り響く。いや……一体どんな指してんだよ………!?

 

「落ち着け、お前ら。原因……いや、おそらく犯人に関しては目下全力で警察が追ってくれてるし、行方不明の者も校長もあらゆるツテを使って探してくれている。だからお前らに出来ることは寄り道をせず速やかに帰ることだ、それがお前達の身の安全に繋がり、俺達の職務遂行に繋がる。だが、もしも危険な目にあったのなら、警察……いや。」

 

そう言葉を切ると、黒板に素早く数字の羅列を書いていく。

あれは……携帯電話の番号、か?

そうして書き終えるとこちらに向き直り真剣な表情で言葉を続ける。

 

「この番号に連絡しろ。市内ならどこだろうと15分以内に駆けつけてやる。だがその後も万一を考え電源は切らないように。もしその間に攫われていたらGPSでの追跡ができなくなるからな。そして、ソイツらには俺の生徒に手を出したことを地獄ですら生温い俺の一撃で後悔させてやる………っと、ゴホン。とりあえず、周囲には注意し素早く帰宅することを心掛けろ。部活動もしばらく中止だ。」

 

余りの威圧感に普通なら文句の出るであろうと部活動の中止にすら文句の一つすら出なかったのはある意味伝説に残るのではないだろうか……というか、ホントうちのクラスの担任何者だよ……!!

 

そして、この心からの叫び(ツッコミ)は。クラス全員の心が一つになっていたと確信を持って言えるだろう。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

何はともあれ、色々な意味で波瀾の朝はその後は何事も無く進み。

昼休みへとなる。

 

「飯どうする?戈咒。」

 

朝から2度のワンツースリーを喰らった錬土はいつの間にかピンピンして保健室から戻ってきており昼飯の予定を元気に考えている。コイツの耐久力も大概じゃないか……?

 

「おいコラお前今失礼な事考えてたろ。」

「え。」

 

な、何故バレたんだ!?

 

「そんな驚いた顔されてもなぁ……お前の感情は顔に現れやすすぎるんだよ。まぁ……いいや、それより昼だよ。」

「あ、あぁ。学食か、購買かか。」

 

錬土は基本的にそのどちらかで昼飯を済ませており、俺も普段は弁当派だがこと聖杯戦争が始まってからは時間が取れずそのどちらかに収まっている。

 

ここは、どちらにするべきか……

 

「購買で買ってきて教室で委員長達と食べようぜ。」

 

今の状況を考えると、もう1人の人質である委員長から易々と目を離すのは得策ではない。ならば、弁当派であるが故に教室に残る委員長とも共に食べられる購買を選択するのがベターだろう。

 

と、ここまで考えていると目の前の錬土がニヤついた顔でこちらを見ている。

なんか、嫌な予感がする。

 

「いやぁ、分かってるぜ。お前の目的はレアちゃんだろ?狙ってんだろ?昼は教室で委員長と食べてるからなあの娘。」

 

……はぁ?何言ってんだコイツ。今までの俺を見てて俺が魂BBAに惚れるとでも思ったのか?見る目がないな、全くこいつも。

 

「ンなわけねぇだろ。俺は魂がロリの奴しかロリとは認めねぇよ。」

「うわっ、筋金入りだなお前やっぱ。まぁいいや。向こうからも割と気に入られてるっぽいし、仲良くして損は無いんじゃねぇか?」

 

錬土は純粋な好意で勧めてるんだろうが、全く大きなお世話というものである。

と、いうかだ。それはそっくりのしつけててめぇにこそ返してやりたいんですがねぇ!?委員長アレ絶対お前のこと好きだからな!?……とは思っても言わないけれど。委員長怖いし。ワンツースリー喰らいたくないし。薮をつついて蛇を出すのは俺のキャラじゃないからな、うん。

 

「………まぁ、とりあえず買って帰ろうぜ。お前何にする?」

「コロッケパンと緑茶。」

「よし、じゃあ俺はカレーパンとコーヒー牛乳な。」

 

そして、どちらからとも無く掛け声を出し素早く手を出す。

 

「「ジャンケンポン!」」

 

結果はグーとグー。つまり、まだ終わらない!

ここから予想されるのは錬土の行動パターンから考えてあいこの後は、同じ手を出してくる。しかし錬土も俺がこの思考をしてくることを読んでくるに違いない、ならば……最後は直感!!

 

「あいこで……」

「しょおっ!」

 

結果は俺がチョキ。

そして、錬土がグー。

 

「よし、戈咒。後は任せたぜー。」

 

おのれ……やはり直感より分析データに頼るべきだったか………

机をずらして席を作る錬土を尻目に俺はカレーパンとコロッケパンを買いに行くことになった……

 

とはいえ、これは逆にセイバーの昼飯を考えれば最適だったかもしれない。

念話でセイバーに呼びかけてみる。

 

『セイバー、今どこにいるんだ?』

『うん?ますたぁか。儂なら屋上におるぞ。何か学校全体でやらかせば一瞬で分かるし、ついでに周囲に怪しいのがおらんか見ることも出来るからのう。』

 

なるほど。それは理にかなってるし俺が授業を受けている間も見張っていてくれたということだ。やっぱりこれは労わなくては。

 

『セイバー、昼飯にパン何か買って持ってくけど何か希望あるか?』

『ふむ……じゃあアンパンと牛乳を頼む。それが現代の見張りのスタイル何じゃろ?』

『だからどこでそういうこと覚えてくるんだお前は……』

『聖杯からの知識にあったぞ?』

『前も思ったけど、この聖杯やっぱおかしくね?』

 

なんでそういうどうでもいい知識ばっか持っているのだこの聖杯は。

 

『ふん、そんな事を儂に言われても知らぬわい。まぁとりあえず、アンパンと牛乳は任せたぞ!ますたぁよ。』

『へいへい、分かりましたよっと。』

 

そうして念話を終了して、購買に向かうと既に人だかりが出来ていた。この人だかりを越えなければ獲物の入手は難しいだろう。

だが、ここにいるのはただの人間でも、ただのロリコンでもない。歴戦のロリコンであり、数々のロリータウオッチングをこなしてきたこの俺からすればこの程度、障害物にすらなり得ないーーー!!

 

助走をつけ、背面跳びの要領で人混みを跳び越える。そして、先頭集団の肩に手を置いて着地。そしてここからが肝要だ、まさにスピードが命。

冷静さを取り戻して文句を言われる前に速攻で買って逃げる!!

 

「おばちゃん、コロッケパンとカレーパンとアンパン一つずつ緑茶とコーヒー牛乳と牛乳1本ずつ!」

「あいよ!お題は670円だ!」

 

流石に購買のオバチャンはプロである。数々の購買戦争をくぐり抜けてきただけあってこの状況でも冷静に、そして的確に注文に応えてくれる。

そしてその差し出された掌を交すようにして五百円硬貨を1枚、五十円硬貨を3枚に十円硬貨を2枚手渡し、それと同時に商品を受け取る。そして購入者専用のレジ出口から素早く脱出!

 

この間、実に6.40秒。過去最高記録を1秒以上縮めている。どうやらここ数日の聖杯戦争の経験はこんな所にまで影響を及ぼしていたようだ、と小さな達成感を得るがすぐにそんな事してる前にセイバーにアンパンと牛乳を渡しに行かなくてはと思い直す。

あまり遅くなると錬土にもレアにも怪しまれるし手早く済まさねば……

 


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