Fate/erosion   作:ロリトラ

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幕間/地獄鬼

ハァ、ハァ、ハァ……

 

全力で道を駆ける。なんで、こんなことに!

こんなことなら、雷禅先生の言う事をちゃんと聞いておけばよかった……!

 

だが、そう考えても時は戻らない

私の後悔はそのまま、覆らないものとして刻まれるのだ。

 

 

私の名前は椎崎(しいざき) 雷火(らいか)。17歳、鎖山高校2-A所属で陸上部。

これでも地域じゃそこそこ名の知れたスプリンターだ。だからこそ、雷禅先生に誘拐犯による部活動中止を告げられても(その場は余りの威圧感に納得しちゃったけど)納得出来ず、こんな町外れの公園まで練習に来てたのに。

でも、やっぱり人の言うことは聞くものだ。例え誘拐犯が現れても、私の脚なら逃げ切れる。そう過信してたし。だから携帯も持ってきてなかった。

 

でも、現実はそんなに甘くはない。

 

「ふふ、ふふふ、ふふふふふふふ!!まだ逃げるとは、なかなか健脚なお嬢さんだ!!だが、このハンサムな僕から逃げるのには少し遅かったようだねぇ!」

 

そう、すぐ後ろにまでその男が迫る。

顔色こそ青白いけれどイケメンと読んでも差し支えのないほどには顔立ちは整っているし、服装も少しホストみたいだけれどもセンスが悪いわけじゃない。

だからこそ、話しかけられた時は不審に思わなかったし。ナンパされてると気づいた時は、私もこれでも女だ。悪い気はしなかった。

 

けれど。ついて行ったその先ので。彼のポケットからこぼれ落ちた骨を見た時に。気づいてしまった。転がっていたそれが、ヒトの大腿骨だと。

普通なら気持ち悪がる程度でヒトのものだとは思わないかもしれない。

けど、私はお姉ちゃんが検死官だからか人体の骨の模型は小さい頃から見せられてきた。だからこそ、それがすぐヒトのだと気づけてしまったんだ。

でも、それが逆にまずかったのかもしれない。そこで、悲鳴をあげたからこそ。

あの男も私に見抜かれたと気づいて追ってきたのだから。

 

だから、走って逃げた。

 

私の全力で、走って。走って走って。走って走って走って。走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走ってーーーーーー!!!

 

 

でも。こうして、すぐ後ろにつかれちゃう。なんで。どうして。なんで。どうして。

逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!!

 

けど、焦りは余計な動きを生み。それは最適な走りに無駄を生む。そしてその無駄を無理やり押して走ることは、確実に良くない結果を生む。

即ち、足のもつれから来る転倒という形でだ。

最悪だ。もう、起き上がっても間に合わない。

 

「ヒュウ、なかなか良かったよキミィ。でも、このハンサムな僕から逃げるのは流石に無茶ってものさ。」

 

息一つ切らせずに、その男は私の目の前で停止する。

周りを見やると、どうやら最初とは別の公園まで逃げてきていたみたいだ。

でも、周りには時間的にも人っ子1人いない。

 

やだ、怖い、助けて、誰か!

そう思うのに、声が、出ない。呼吸がまだ整ってないから?それとも恐怖から?分からないけど、私の口は酸素を求める金魚みたいにただ口をパクパクさせるだけ。

 

それを気にもとめないのか、目の前の男は聞いてもいないことをペラペラ喋り始める。

 

「やっぱり、僕のようなハンサムは食事も一流じゃないと相応しくない。セドリック…あぁ、セドリックってのは僕の家族の1人さ。アイツみたいに若い肉ならなんでもいい、なんて品のないことは言えないんだ。それに、僕は脳味噌が好きでね。脳味噌はやはり知識が詰まっているものじゃないと美味しくない。キミが見て逃げ出したこの骨の女、繁華街でちょっと甘い顔したらひょいひょい来たけど考え無しで動いてるだけあって脳の味の薄さと言ったら!」

 

な、なんなの!?何を言ってるのコイツ!!??

私の困惑をそのままにコイツはまだ話を続ける。

 

「その点、キミは素晴らしい。この骨を見ただけでそれをヒトの大腿骨と見抜いた知識、私からそこそこ逃げ続けられたその引き締まった肉体。きっと肉も、脳も。このハンサムな私が食べるのに相応しい一流の食材に違いない!!」

 

食……材……?わた、しが……え、えっと。つまり、私を食べるの……?

 

訳がわからない。というより、分かりたくないのか。

そうだ、なんであの骨はあんなに綺麗だったの?

いえ、石灰でも被せたに決まってる。いいや、そうじゃない。

もしそうならあの表面の動物が齧ったような跡は残らない。

 

なら。

なら、なら。

 

やっぱり、コイツは。私を食べようと……!!

そう、心底理解した瞬間。恐怖のタガが外れたのか、悲鳴が口から零れる。

全てを嘆き、全てを忘れ。全てを無かったことにしたいと願う程の絶望を乗せた絶叫が、日の暮れた守掌市の夜空に響き渡る。

 

が、その叫びはすぐに止むこととなる。目の前のコイツに、物理的に口を塞がれることによって。

 

「おいおい騒ぐなよ。食材ってのは新鮮な捌きたてが美味しいんだ。だから猟理人(シェフ)の所に持ってくまで殺せないし、人目につくのも面倒なんだ。だから、黙って僕に食べられるようついて来いよ。このハンサムな僕の血肉となれるんだ、光栄だろ?」

 

話が通じないし訳もわかりたくない。シェフ?なに?いやだ?こわい?

口を塞がれて呼吸が辛くなったからか思考がさらにグルグルと揺れ動く。

もう何もわからない。

でも、助けて。

死にたくない、お願い。嫌だ。誰でもいい。助けて。お願い。助けて。助けて。助けて。助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてーーー!!!

 

ーーーーその時。

 

 

「貴様。ウチの生徒に何してやがる。」

 

 

ーーー聞き慣れた、声が。

 

瞬間、轟音。

 

彗星のように脇の建物の屋上から落ちてきた、雷禅先生の拳が背中に突き刺さるーー!

 

「ぐ、ぐぼああああ!!」

「ぷはっ、げほっ、げほっ。」

 

口を塞いでいて手が除けられたことで、呼吸をなんとか取り戻す。

助けて、くれた。死ぬかと思ったのに!!

 

「椎崎、大丈夫か。」

 

いつものような厳しい声で。けれど今日はその中にハッキリとした優しさと想いを感じ取れる声で先生は私に問う。

 

「は、はい。私は特に。」

「そうか、ならいい。にしても、俺は出歩くなと言ったはずだが。」

「す、すいません!私、わたし……」

 

しかし、私の返答を待つまでもなく先生は私の頭をわしわしと撫でるようにして言葉を遮る。

 

「説教は後だ。携帯は持っているか?」

「い、いえ、持ってきてないです。すいません。」

「そうか、ならこれで警察に連絡をしろ。」

 

そう言って折り畳み式より前のタイプである、小さなガラケーを投げ渡してくる。

 

「それと、俺から余り離れないようにしろ。コイツが誘拐犯なら複数犯の可能性も高い。周りに潜んでいないとも言い切れん。」

「え、先生は……」

「俺はコイツの相手をする。どうやら、余り効いてないようだからな。」

 

そう言うと先生は吹き飛ばしたアイツの方へと向き直る。

 

「え、そんな……まだ、動けるんですか!?」

 

今の一撃、アイツの足下のアスファルトにヒビが入る程の威力だったのに!!

 

「あぁ、どうやらそこそこ硬いようだ。嘗て地下でもこの手の手合いは稀に見た。対処は心得ている。」

 

そうこうしていると、吹き飛んだ先の砂煙が晴れ。平然と立つあの男が目に映る。

 

「椎崎、早く警察を呼べ!」

「は、はい!」

 

急いで119……じゃない!落ち着け、私!110に電話をかけ、コールを待つ。まだなの!?

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

雷火が電話をかけたのを見届けると豪三郎はアサシンの息子の1人、ロジャーに向き直る。

 

「なに?まぐれ当たりで一発くらいぶち込めたくらいで誤解しちゃった?だったら残念、ハンサムな僕はこれくらいじゃ何ともないぜ。さぁ、僕の食事の邪魔は償ってもらおうか。」

「言いたいことは、それだけか。」

「……は?」

「なら、俺の生徒に手を出したことを後悔するがいい。地獄が生温い程の一撃を、この地獄鬼からの手向けとしてやる。」

「は、言ってろよオッサンーー!!」

 

サーヴァント特有の人知を超えた身体能力で目の前の豪三郎をぶち殺そうと距離を詰めるロジャー。

が、しかし。ここに立つのはただの人間でも、ただの達人でもない。嘗て地下闘技場で様々な武人だけでなく、改造人間や薬投与による強化措置を受けた獣。果ては魔獣すら打ち破ってきた地下闘技場伝説の拳闘士・地獄鬼の豪三郎である。

ただの身体能力のみに任せた突進など、彼にとってはサンドバッグと何ら変わりはしない。

 

「ぐ!ぼ!ぼ?おぇぇぇえ……」

「……ふむ。何らかの強化措置か、或いは特殊な改造か。割と、堅いな。」

 

故に、この結果も必然。彼の得意とする一瞬の三連レバーブロー、通称地獄打ち。それはロジャーの臓腑に確実なダメージを与え、サーヴァントとしての肉体であるロジャーの肝臓と膵臓。それを破裂させた。しかし、ロジャーも流石にサーヴァント。その程度では痛みを感じこそするものの倒れはしない。

すかさず距離を取り、息を整える。

 

「ぐはぁっ……はぁ、はぁ、はぁ。なんなんだよオッサン……ふざけるなよ……!!なんで、この僕が、ハンサムなこの僕がこんなオッサンにぃぃぃい!!」

「何か?と言えば。先程も答えたが、地獄の鬼だ。何故か、と言えば。それは貴様がその程度だからだ。」

「ふ、ふふふ、ふざけんなよコノヤロウ!!」

 

安いプライドを煽られ激怒したロジャーは自身の持ち歩く武装である肉切り包丁を取り出す。

そして自身のみが武装しているという優位性からか、冷静さを少しは取り戻し素早さを活かして撹乱しながら豪三郎の首を狙うーーー!

 

「ふん、先よりはマシだが。その程度か。」

 

首に向けて突き出した二本の肉切り包丁。その二振りほ包丁は。

豪三郎の両手の指、2本ずつで切っ先から受けられた。

 

「な、な、なな、なんで刺さらねぇんだよぉぉ!?」

「なに、こんなものはただの隠し芸だ。だが、こんな余技でも貴様に屈辱を味わわせるのに役立つのなら、幾らでも使ってやる。」

 

そう言うと、豪三郎はその包丁を折るどころか。刃を曲げ、くるくると丸めて握り潰した。

 

「は、はは、ははは、嘘だ。嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぉぁああーーー!!」

 

混乱と、焦りと、怒りのまま。突進してくるロジャー。

しかしそれこそ豪三郎の敵どころか、障害物ですらなく。奴の服を掴み、ジャーマンスープレックスを極める。

 

が、全てをかなぐり捨てたのか。ロジャーは無理やり素の膂力の差で抜けると牙を剥き出しにして頸動脈に喰らいつこうとする。しかし、平然と豪三郎は声帯の辺りに抜き手を放ち、無理やりその動きを停止させる。そして怯んだ所に再び、地獄打ちが入り。ロジャーの肉体は完全に崩れ落ちた。

 

しかし攻勢は止まらない。

そして、マウントを取ると。

 

「貴様は、そのハンサム顔が自慢のようだったな。」

 

そう、豪三郎は冷たく言い放つと。左から右へと薙ぎ払うチョップを右手で、ロジャーの上顎へと放つ。

 

ゴギギギゴギャゴギャギギゴギギャという嫌な音が耳を襲い、それと共に。上顎の全ての歯が折られていた。

 

ロジャーは悲鳴をあげたくても既に声帯を潰された以上、ヒューヒューというような音しか出すことが出来ず、苦悶の表情を浮かべる。

そして恐怖の余りか歯を打ち鳴らそうとしても、既に歯が下顎にしかない以上音は全く鳴りはしない。

 

「次は、下だ。」

 

そう告げると同時に下顎の歯も折りとられる。

 

そして。

 

拳を顔面へと構え。

 

「これで、とどめだ。悔いて死ね。」

 

そう言い放ち。顔面どころか頭蓋ごと粉砕する右拳吸い込まれるように撃ち込まれーーーー

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「はい、平斗町の公園です!すぐ来てください!!」

 

通報を終えて、再び先生の方を見ると。

アイツは先生にボコボコにされて、マウントを取られていた。

でも、なんか不安な気持ちになって。少し近づく。

 

そのまま寄っていくとすぐ後ろまで辿り着いた。でも、声を掛けづらい。

 

その時。先生の冷たい声が響いた。

 

「これで、終わりだ。悔いて死ね。」

 

そう、言って。振り下ろせば、頭部がトマトのようになりそうな右拳を振り下ろして。

 

ーーー気づけば。

 

「ダメぇぇぇぇーー!!」

 

思わず、そう叫んで先生にしがみついていた。

 

予期していなかつたのか、先生の動きが止まる。

 

「先生、ダメです。殺しちゃダメです。殺したら……ソイツと同じになっちゃいます……だから……。」

 

思わず泣きながらそう、呟く。私を救ってくれた人が、目の前で人を殺すところなんて見たくない。そんな身勝手なエゴだけど、紛れもない本心で先生に言った。

 

「そう……か。そうだ、な。ああ、済まない椎崎。生徒に教えられるとは俺もまだまだだ。」

 

そう、先生は右拳を下ろし。こちらを向いて優しく、けど何処か哀しく微笑んだ。

 

 

ーーその時。

 

「ええ、その通りよぉ。あなたはこれ以上踏み込むべきではないわぁ、先生。」

 

そう、野太い声と共に。1人のオネェが姿を見せる。

 

「え、え、え?」

「あらン。驚かせちゃったかしらん。私は爆霧 風破。お嬢さん達には爆霧ビルのオーナーと言った方がわかり易かったかしらん?」

 

え?え、え、え?

 

「えぇぇぇーーー!?」

 

この人が、このオネェが、あの。爆霧ビルのオーナーさん!?

爆霧ビルといえば、守掌駅の目の前に昨年出来た高層ビルだ。上層部はオフィスになっていて、下層部は色んな流行りのお店が入っている。かくいう私も部活の友達と何度か行ったことがある若い子達にも大人気の駅ビルだ。

 

そのオーナーが、まさかオネェだったなんてーーー!!?

 

「椎崎。人を見た目で判断するのはよくない。特にこれからの時代、人の在り方は多様化していく。一概的に決めつけるようではいかんぞ。」

 

私の態度に気づいたのか、雷禅先生が注意する。

 

「いえ、いいわよぉ別にそんな気にしなくても。それより、そこのアレ。引き取らせてもらうわぁ。」

 

そう、倒れ伏したアイツを指さして爆霧さんは言う。

 

「そこの輩は、あなたの関係者ですか……?」

「いいえぇ。でも、私の仕事上、管理して始末する必要があるのよ。地上にいたうち、コイツだけ取り逃しちゃってね。ご迷惑をおかけしたわぁ。」

「で、ですが……」

 

しかし納得がいかないのか食い下がろうとする先生。それはもちろん私もだ。だいたい、さっきの始末するって、まさか殺す気じゃ……

 

「雷禅先生、それ以上はおまかせしてください。」

 

その時、凛とした声が公園内に響き渡る。

 

「それは私達の理解の及ばない存在です。これ以上は彼に任せることです。」

「こ、校長!?」

「校長先生っ!?」

 

そこに来たのは、長い黒髪に括れたウエストと大きなバスト。童顔だけれど、女の私から見ても魅力的なスタイルをした鎖山高校の校長先生、その人だった。

 

「ど、どういう事ですか校長先生。なにが、どうなってるんですか?警察に引き渡すんじゃ?」

 

思わず校長先生を問い詰める。しかし校長先生は毅然とした表情を崩さずに答える。

 

「いいえ、この輩は彼が引き取ります。警察に引き渡したところで意味がありませんから。」

「ど、どういう事ですか!説明してくれなきゃ、納得出来ません!!」

「言葉では、説明出来ないこともあるのです、椎崎さん。」

「そんな、卑怯です!私だって巻き込まれたんです、ちゃんと教えてください!!」

 

その時、その問答に助け舟を差し伸べたのは意外な人物だった。

 

「ふふ、そんなに知りたいなら、いいわよぉ。」

「爆霧さん、いいのですか!?」

「ええ、このまま伝えない方が色々嗅ぎ回られそうだしねぇ。ただし、一切。家族であろうとも口外しないように。」

「は、はい!」

「それじゃあ、まずは見せた方が早いかしらねぇ。」

 

そう言うと爆霧さんは先程アイツの横に行き。心臓にナイフを突き立てた。

 

「きゃっーーーー!!」

「よく見なさいなぁ、椎崎さん。」

「え……!?」

 

見ると、目の前の男の姿は光の粒子になって消えていく。

 

「これで分かってもらえた?コイツは、人じゃない、幽霊なのよぉ。そして私はそれを除霊する、ゴーストバスターよ!!」

「「え、えええーー!!?」」

「な、なんと……」

 

私達全員が驚きを口にする。というか、先生達も知らなかったのか。

ま、まさか。そういう事だったなんて!!

 

「し、知らなかった……まさかホントにそんな人達がいるなんて。でも、そうでもしないと今の消滅に理由がつきませんよね。分かりました、私信じます!そして誰にも言いません!」

「えぇ、そうしてくれるとありがたいわぁ。」

 

まさか、そういう理由だったなんて。

でも、それなら先生が動けない人をボコボコにした訳じゃないし、少しは安心かも。

 

「それじゃあ、夜も遅いし公園の入口にタクシーを呼んであるから。それで帰りなさい。」

 

そう言って校長先生は私にタクシーチケットを渡してくれた。

 

「それじゃ、お世話になりました。また明日学校で!」

「これだけの事があったのに……椎崎さん、強いわね。」

「いえ、心細かったですけれど。先生が守ってくれたおかげです!それじゃおやすみなさい!」

 

最後にもう一度挨拶をしてからタクシーに乗って自宅へと向かう。

 

それにしても、私を助けに来てくれた時の雷禅先生、カッコよかったなぁ……

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

雷火がタクシーに乗って去っていった後。

 

 

「それじゃあ、我々もそろそろ解散としますか、校長先生。」

「……御裂(みさき)。私の方が歳下なんだし妹弟子みたいなものなんだからいい加減、御裂(みさき)って呼びなさいよ、豪くん。」

「い、いえ校長先生は上司ですし、師匠の娘にして俺の恩人です。そんなぞんざいな呼び方など、断じてできません!」

「あー、もう!フラグばかり立てるくせにどうして私ルートに入らないのよ!!」

「は……?フラグ?ルート?何のことですか校長先生。今後の新しい教育システムか何かですか?」

 

その答えを聞いてはぁ、と校長……獅王堂(しおうどう) 御裂(みさき)は深く溜息をつく。

そしてそれを見ながら風破はくすくすと笑う。

 

「朴念仁相手は大変ねぇ……獅王堂さんも頑張ってねぇ?」

「よ、余計なお世話です、爆霧さん!!帰りますよ雷禅先生!運転をお願いします!!」

「は、はぁ。それじゃあ、失礼致します。」

「ええ、それじゃあ。」

 

そうして、1人残った風破は煙草に火をつけながら1人ごこちる。

 

「あんな嘘を信じて、騙されてくれるなんてねぇ。ホントに皆、いい人達だこと。だからこそ、私達とは交わらせる訳にはいかないわねぇ………さて、私達も行くわよぉ。」

 

そう呟くと、巨大な犬型の獣が現れ。風破を背に乗せ、夜の中に消えていく。

 

聖杯戦争の4日目はこうして、今度こそ幕を下ろした。

 




Q:教師の癖に強すぎない?


A:型月の二次創作の一般人です、逸般人に決まっています

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