Fate/erosion   作:ロリトラ

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いや、ホントお待たせしました………最近モチベーションが全然出てこなくて、全然書けませんでした

これからはもう少しお待たせせずに更新出来ればな、と思います


幕間/始まりの食卓

 

篠突くように降り続ける雨の中、目の前の男によって空けられた穴を潜り独房の外へと出る。

しかしそれと同時に警報がなり始める。

 

「チッ……喧しいな。お前、肩に掴まれ。走って逃げるぞ。」

「あぁ、了解したとも。」

 

そうして彼に掴まると、彼は人間離れした身体能力で塀を一息で跳び越えるとそのまま屋根づたいに忍者のように、逃げていく。

そのまま彼は私に問いかけた。

 

「で、キッチンとやらはどこにある……?」

「あぁ、それなのだがね。そこに行くのは恐らく危ないだろう。」

「何……?どういう事だ。」

 

怪訝な顔をする男。それに対して私は予測を述べる。

 

「キッチンは私が根城としていた場所だ、当然警察にも知れ渡っている。下手に突入されたら落ち着いた食事も出来ない。真の美味には落ち着いた時間もまた重要な要素の一つなのだから。それに、長らく帰っていない故にそもそも食材が尽きているのだよ。」

「……貴様、私を謀ったのか?」

「無論、そんなつもりは無い。この近くでも幾つか使えそうな場所には心当たりがあるのだ、そこへ向かってもらえるかな。」

「ふん……だが、その料理とやらが不味ければ貴様も肉にして喰らってやろう。」

「私はまだ至高の美味へと至っていないが故に、死ぬ訳にはいかない。最善を尽くさせてもらうとしようか……と、ここだ。」

 

そう言って下ろしてもらったのは高級住宅街に位置する一軒家。

ここは修行時代の同期の自宅であり、何度も招かれたこともあるだけに調理設備の整いぶりもよく知っていた。

 

そして、何より。

 

この家には、10になるかならないか程の()()()2()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ここは?」

「ここは私の知り合いの家でね、調理設備の整い具合はなかなかのものだ、そしてこの家には子供がいる。」

「なるほど……確かに若い子供の肉は柔らかくしっとりとしているが、些か肉の味は薄い。そんなもので私を満足させられるとでも?」

 

「御安心を、お客様。確かに子供の肉は淡白で柔らかい。そのまま食べるだけでは味の薄さがくっきりと出てしまうがキチンとした調理をするならこれ程その場で落として食べるのに向いた肉もないのですよ。まぁ……論より証拠です、まず捌いて調理を行わなくては。」

 

お客様を迎え入れる料理人としての言葉遣いに切り替え、共に家の中へと入る。そして、ひとしきり屠殺を終えると解体作業に入る。

 

「それでは、私は調理に入ろうと思うのでお客様は食卓にかけていてください。そう待たせは致しません。」

 

そうして子供の肉を使い、料理を作り始める。

ムネ肉のソテーは私自身も初めて作った人肉料理であり、思い入れも深い料理だ。シンプルだが、それだけに彼も生の人肉ではなく、人肉料理の素晴らしさを知ってくれるに違いない。

彼は間違いなく私と同じく真の美食を知る人間だ、絶対に分かってもらえるはずなのだから。

それならば、人間とは思えないような挙動をしていようが、人間で無かろうが、()()()()()()()

 

そうこう考えをはせているうちに調理は完了し、盛り付けに入る。

 

そして。

 

「お待たせしました、お客様。子供のムネ肉を使ったヒューマンソテーでございます。」

「ふん、見た感じただ焼いただけ……いや、その割には匂いが食欲を唆るな……」

 

そう呟きながら彼はソテーを不器用な使い方ながらナイフで切り、フォークで刺して口に含む。

 

「熱ッ……だが、美味い。」

「光栄でございます。」

 

そう言った私の返答も聞こえていないのか、彼は夢中にガツガツと喰らってくれている。ここまで自分の料理を求められると料理人冥利に尽きるというものだ。

 

「ふぅ……美味い、私が今まで食べてきたものと比べても確かに数段以上上の味だった。先程の無礼に謝罪をしよう。君の料理は素晴らしい。」

「感謝の極みという他ありませんな、お客様。私の料理に満足して頂けたのなら、それは料理人として最高の幸福というものです。」

 

そこで言葉を切って1つ、訊ねる。

 

「ところでーーお客様。お客様が何者かは存じ上げませんが、もし良ければ私を連れていっては頂けませんか?」

「それは、何故だ?」

「見ての通り、私は囚人でしたので。捕まって料理が出来なくなるのも、人肉料理を食べられなくなるのも不本意なのですよ。それに私はあくまで料理人、逃げたりする術に長けているわけではありませんのでお客様の力をお借りしたいという訳です。」

「………なるほど。確かに、それならこっちとしても願ったり叶ったりという奴だ。君は私と同じ匂いのする同胞だと感じている、だから君を信頼して私のことをまず、語るとしよう。」

「お客様のこと、ですか。」

 

張り詰めた空気に思わず、唾を飲み込む。

 

「あぁ。だが、まずは名乗りから始めるとしよう。私は、アサシンのサーヴァント。真名はソニー・ビーンだ。ついでだ、君の名前は……?」

「ビーン様、わざわざご丁寧にありがとうございます。私の名は六道(りくどう) (みこと)でございます……ですが。私のことは猟理人(シェフ)、と呼んでいただければ。」

「そうか。では、猟理人(シェフ)と。さて、次は私のことをアサシンのサーヴァントと名乗ったが、その説明に移らせてもらおうか……」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「なるほど……聖杯戦争、サーヴァント、そしてアサシンのクラスにマスター、と。」

「なかなか物分りがいいじゃないか、猟理人。信じるのか?」

「ビーン様が人並外れた動きをするのは実際に体感しましたし、それに人肉食を理解する同胞である貴方を疑ったりはしませんよ。」

「ふふ、やはり君は素晴らしいな。そこまで私を信じてくれている以上、同胞であり、そして君の料理に惚れ込んだものとして共に戦おうではないか。」

「えぇ、ビーン様。」

「猟理人、その呼び方はやめてくれ。私と君は只の客と料理人の関係ではなく、同胞なのだ。もっと軽くいこうではないか。」

「それじゃあ、アサシン。これから宜しく。」

「あぁ、こちらこそ。猟理人。」

 

そうして、ここに。この聖杯戦争最凶のマスターとサーヴァントの組み合わせが誕生した。

 

「ところで、猟理人。君の願いは何なのだ?」

「何、ある……夢ですよ。それこそ万能の願望器でも無ければ叶えられないほどの、ね。」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

そして、時間は再び現代へと戻り。場所は地下下水道の一室へと戻る。

 

「やはり、この料理は美味いな。いや、美味いと言うなら君の作る料理全てだろうか。だが、あの時よりも美味く感じる気もするのだ。」

「それは、熟成によるものでしょうね。冷蔵庫などをここに一月近くかけて整備しただけあって、大分調理環境も良くはなってきました。ですがまだまだ、私の理想には程遠い。」

「あぁ、そうだな。君の語ってくれた夢、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を作り上げること……完成すれば今よりももっと簡単に味のいい肉が手に入り、より美味な食事を楽しめるという訳だ。」

「ええ、ですから。その為にもまずはセイバーとランサーをここで始末して、聖杯を取る為にまた一つ、駒を進めるとしましょう。」

 

そう言うと2人はどちらからともなくグラスに注いだワインを掲げて共に誓う。

 

「「乾杯」」

 


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