Fate/erosion   作:ロリトラ

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二話目です、頑張りました


5日目/妖刀・村正

そうして、俺は聖杯戦争のこと、セイバーのこと、そして錬土が攫われたと思ってここに来たことを話した。

 

「なるほど……な。お前も大概不幸体質だ。」

「うるせぇ、ここにいる次点で似たようなお前も似たようなもんだろうが。というか拐われてる分ヒロイン体質まで持ってるだろお前。」

「ハッ、違いねぇ……にしても、よく地下にいるってことまでわかったな。誰かの同盟相手の使い魔とかにでも聞いたのか?」

「あぁ、まぁそんなところだ。」

 

そう、言葉を濁して誤魔化すと今まで基本的には静観していたセイバーが念話で口を挟む。

 

『なぜレアの事を言わんのじゃ、ますたぁ。此奴自身に注意喚起しておくだけでもまだお主が背負う気苦労は減るじゃろうて。』

 

そう問いかけてくるセイバーに対し、俺は不安を告げる。

 

『言えないんだよ。』

『なに……?』

『この、左手。さっき使う前にアイツからの声が俺の中にとんできた。』

『なんじゃと……!?』

『そしてその時言ったんだよ、この左手は私自身だと。つまり、全て筒抜けなんだ。この会話の全てが。』

『つまり……あやつは。それを伝えることで言外にお主に余計な事は喋るな、と脅しをかけたという訳か……』

『あぁ、多分な。だからサービスとか言って特に対価を要求することなく足止めをしてくれたんだろうさ。勿論、俺に死なれちゃ困るとかつまらんとかも思ってそうだがな。』

『チッ……ほんにイラつく奴じゃのう。それに、ますたぁもますたぁじゃ。あのような事をするならせめて、儂に一言言わんか。』

『ごめん、つい……』

『つい、では無かろう。だいたいお主のサーヴァントは儂なのじゃ。まず頼るべきは儂が筋じゃろう!儂だって思いつきさえすればあんな感じで足下を崩しての足止めくらい出来たわ!』

『え、あ、そうなのか……』

『とにかく!お主は儂のますたぁなのじゃ。だから、頼る時はまず儂を頼れ。いいな。』

 

そう、念話で言い含めると同時にこちらを上目遣いで見上げて確認するように見つめてくる。

 

『……あぁ。』

 

ちくしょう、こんなの卑怯だって。ちょっと何このサーヴァント可愛すぎないか。もうダメ、ヤバい。

 

「おい、見つめ合ってるとこ悪いがそこのロリコンとロリ。」

「み、み、み、見つめ合ってなんかおらんわ阿呆ッ!」

「そそそうだぞ俺は可愛いなーとか俺のサーヴァント可愛すぎないかとか考えてただけだからなにもやましいことしてねぇぞ!」

「お前この状況でもロリコンをブレさせねぇってホントすげぇな……まぁいい。次、俺の話言っていいか?俺がサーヴァントについて知ってた理由とかも聞きたいんだろ?」

「あ、あぁ。」

 

そう言うと、錬土は深呼吸を、深く、深くして話し始めた。

 

「むかーし、むかし。具体的には16年7ヶ月程前。」

「語り口の割に随最近だな!?というか嫌に具体的だなおい!?」

「お、ナイスツッコミ。その調子で頼むぜ。」

「いやお前は何を語り出すつもりなんだ!?」

 

しかしその全霊の問いかけはスルーされ、錬土は再び続きを語り始める。

 

「この街に繰空(くりから) 錬土という未来のジュノンボーイ間違いなしなハンサムが産まれました。」

「お前それ自分で言ってて恥ずかしくねぇの!?というかハンサムって半分死語じゃね!?」

「そのハンサムボーイは見た目だけとっても非凡でしたが、非凡なところがまだありました。それは、生まれが魔術師の家だったのです。」

 

思わず息を呑む。やはり、錬土は魔術師の……!

 

「そしてそこでそのハンサムボーイはすくすくと成長し、様々な知識を蓄えていきます。しかし、彼が家を継ぐことはありません。彼には魔術師に必要な魔術回路が無いからです。そして、彼は11歳の頃にそんな家が嫌になって飛び出しました。そして今は母親の旧姓を名乗っているのでした、チャンチャン。」

 

色々気になることはあるが、語らないということは語りたくないということだろう。それに、今この場に関係があればコイツなら言うはずだしそこを問い詰めるのは気が引ける。

だから、俺はこう結論付けるように言った。

 

「……つまり、お前が色々知ってるのは生まれが魔術師の家系だからってことか。」

「そーそー、そういうことだ。本を読むのは元々好きだからな、文献とかは読んでて面白いし読み漁ってたのよ。んで、聖杯戦争ってのは結構向こうじゃメジャーな儀式な訳だ。厳密には亜種聖杯戦争ってのの方なんだがな。」

「亜種……?」

「モンハンは関係ねーぞ。」

「流石にそれは分かるわ、そこじゃねーよ。ただ、亜種ってなら本来の聖杯戦争が別にあるのか、と思ってな。」

 

その疑問に関しては錬土は無言で首肯して、話し始める。

 

「そ、まさにその通り。聖杯戦争ってのは本来冬木って町で確か200年前だったか?に始まった儀式らしくてさ、7騎のサーヴァントを使って、根源に至るのが目的だったらしいんだ。けど、決着がつかなくて数十年周期で持ち越しってなってたんだが、70年くらい前の第三次聖杯戦争でナチスが介入して大聖杯をかっぱらってったんだと。」

「そんなことがあったのか……」

「で、それ自体はつい最近まで行方不明になってたらしいんだが、その技術はどこからが流出しててみんながみんな聖杯を作ろうと躍起になったんだ。そうして生まれたのが出来損ないの亜種聖杯、呼び出せるのはどんなに出来が良くても5騎が限度の聖杯戦争だ。で、欧州だとそれが盛んに行われるってその本には書かれてたな。」

 

ナチスやら200年前やらスケールがデカくて正直ついていけないが、取り敢えずとんでもない儀式だったというのは改めて理解出来た。しかし、同時に今の説明で疑問も生まれる。

 

「5騎ってのは、本当なのか?セイバーは7騎って言ってたんだけども。」

「冬木のモノホンの聖杯なら7騎だが、それ以外ならまず有り得ないと思うな。だが……つい10年くらい前に聖杯大戦ってデカい戦いがあったらしくてだな、俺も殆ど情報は知らないんだが親父の話によるとなんでも冬木の大聖杯が出てたとか何とかって聞いたから、その時に誰かがデータを取ってたとかなら有りうるかもしれないな。といっても仮説に仮説を重ねた推論なんてまるで意味が無いが。」

 

そう言うと錬土は再び一呼吸つく。

 

「取り敢えず、俺の話はこんなもんだ。納得いったか?」

「あぁ、腑に落ちないところはあるが、そこはお前に聞いて分かるところでも無さそうだしな。」

「ならいい、なら次はあのアサシンにどうやって勝つか、だ。」

「……あぁ。取り敢えず、真名が分かればまだ何とかなるんじゃないかと思うんだが。」

「いや、どうにもならん気もするぜ?あいつらの真名に弱点に繋がるようなものは無さそうだったからな。」

「そうか……ならほかの手段を……」

 

え?

 

「いやいやいやいやちょっと待てお主、なんでアサシンの真名が分かっとるんじゃ!?」

「いや、俺も100%の確証は無いけどさ。ただ捕えられてた時にアイツらのことを、六道の奴が客って言ってたからアイツらも食人趣味のある英霊かなーと。で、家族とか言ってたから後はさっきここに逃げてきてからグーグル先生に《食人 家族》のワードで調べてもらったら普通にそれっぽいの出てきたからさ。人数もあってるし多分間違いないと思うぜ。」

「そ、そんな方法で真名が……」

「なるほどな、確かに出てきたわ。」

 

言った通りに検索をかけると確かにその名前が出てくる。その名はーー

 

「ソニー・ビーン、か……」

 

なになに……十五世紀から十六世紀のスコットランドにいたとされる人物。一族を率いて多数の人間を殺害、その肉を食したとして処刑されたという伝説で知られる、か。

 

「確かに、これじゃなんの打開策にもならねぇな……しかも合体して巨大化とかそんな逸話これっぽっちもねぇ。だいたい合体して巨大化ってなんだよスライムかよ。」

「それは俺も思った。」

「だよな!」

「儂は話についていけんが、取り敢えずお主らが至極どうでもいい話をしとるのだけは伝わってくるぞ………」

 

ジト目を向けられた錬土は気まずくなったのか、咳払いをすると話を戻す。

 

「で、だ。そこのロリセイバー、お前……まだ真名思い出せないんだっけか。」

「う、うむ……すまんが、の。」

「でも宝具だけ使えたりとか、そういう都合いいことだったりはしない?」

「じゃったら苦労せんわ……擬似解放が出来ておる以上、あと少しだとは思うのじゃがな……」

「それに関しては、俺に考えがある。一つ、手を打ちたい。」

「わかった、ならお前に任せるぜ、戈咒。」

「あぁ、恩に着る。」

「で、次の案だが………」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「よし、じゃあそういう事で行くか!」

 

錬土が勢いよく立ち上がったその時、地響きがキッチンを揺らす。

 

「何が、そういうことだ?」

 

俺達が入ってきた狭い入口を無理やりこじ開けるようにして、アサシンが顔を突っ込んできていた。

 

「うお、気づかれたのかよ!よし、後は任せたぞ戈咒とセイバーちゃん!」

 

錬土は気づかれたことに対して反応するも、これはこれで計画通りだ。

錬土はそのまま扉を開け、本来のキッチンの出入口から出てこの場を離れる。

ここは、俺たちの番だ。

 

「さぁ、行くぞセイバー!!」

「うむ!!」

 

セイバーを再び、腰に備えるような感覚。

 

そして、抜き放つと同時に穿つ突きは覗き込んだアサシンの顔面を抉りながら押し返した。

 

「よっ……と。綺麗に決まったけど、どうせまた再生するんだよなぁ、こいつ。」

『やはり、火力不足かのう。』

「だろう、な。だが、取り敢えずは牽制だ。1発言っとくぞ、セイバー。」

 

「宝具・限定解放ーー」

 

魔力を呪いの塊として、これぞ妖刀の本分とばかり纏わせ巨大な斬馬刀のようなサイズの刀身へと変える。

そして、それを袈裟懸けに振り下ろす!!

 

「ーーー呪刀・魍魎殺し!!」

 

それは、(どく)をもって異形(どく)を征す一太刀。

その全霊を使い、放たれるセイバーのとっておき。

その一太刀はアサシンの身体に今までとは違う、確実な一撃を傷痕として残す。

 

「……これで、終わりか?」

 

だが、それだけだ。その一太刀であっても霊核を断ち切るには至りはしない。

 

「やっぱ火力不足か……!」

 

そう言いながら距離を取りつつ、戈咒は唇を噛み締める。

本当はこんな、問い詰めるような形にはしたくはなかった。だが、背に腹は変えられないし俺が代わりになんとかできる訳でもない。

覚悟を決め、セイバーへと語りかける。

 

『なぁ、セイバー。』

『なんじゃ、ますたぁよ。さっき言っておった考えというやつか?悪いが儂もうお主の考えがロクなものではないと疑っとるからのう、まずは話してからにするのじゃぞ。儂はお主に無茶ばかりされるのは御免じゃからの……』

『……ごめん、けど、そうじゃない。寧ろ、セイバーに無理をしてもらうかも。』

『なに……?』

 

下がりつつ詰め寄ってくるアサシンの攻撃を時に受け、時に躱し、時に後ろに回り込みと、決定的な一撃は避けつつ呼吸を整え、セイバーへと問いかける。

 

『なぁ、セイバー。お前、本当は真名に心当たりがあるんだろ?』

『……!?ば、馬鹿なことを言っとる場合か、ますたぁよ。時と場合を考えてみぃ、それならそうと言っておる筈じゃろうが。』

『そう、か……それならそれでいい。なぁ……マスターってサーヴァントの夢を見たりとか、しないか?』

『ーーー!!』

 

静かな、だけど、確かな動揺が伝わってくる。

皮肉にも、これまで共に戦ってきたからこそ、その動揺はどうしようもなくありありと分かってしまう。

 

『数日前……明らかに、俺のものじゃない夢を見たんだ。妖刀の……夢だ。出てくる名前に覚えがあったから調べてみたら、とある歌舞伎の一幕にもなってた話だった。だから、お前の真名もわかったんだ。お前の真名は……』

 

「やめてッッッーー!!!」

 

そう、全力でそれを否定するように、その答えは認めたくないというように、その声は俺の心だけでなく、音となってまで響き渡る。

 

「やめろ、やめるのじゃ、ますたぁよ。それ以上言ってはならぬ、ならぬ。儂は消えたくない、消えたくないのじゃ。今ある己を…この(自己)を失いたくないのじゃ……!!」

『やっぱり……セイバーも勘づいてたんだね。いや……もしかしてセイバーもあの夢を……』

『そうじゃ、儂もあの夢を。本来サーヴァントは眠りにつくことは無いしあの時もそうであったはずなのに、儂の意識はいきなり断絶し、あの夢を見てお主と当時に目が覚めていた。』

『あの時に……』

 

だから、保健室から出るまでセイバーの姿が見当たらなかったのか……

 

『じゃが、儂にはあんな記憶に実感も何もかもがない。儂の記憶の筈なのに、どうしてなのじゃ!?じゃから、怖いのじゃ。あの記憶は、儂のものでは無い。ならばこの霊基はなんじゃ?聖杯のイレギュラーから生まれた仮初の霊基か?真名がハッキリすると同時にバラバラになって消えてしまう存在しない意識か!?いや、いやじゃ、儂は確かに此処に在る。肉の身体すら持たない半端であろうと、存在しておる!!なら消えたくなど、喪いたくなどないのじゃ!!そんなならば真名など要らぬ、儂は、無銘の妖刀でいい。』

『セイバー……』

 

その語りは悲壮に満ち、絶望に溢れ。

けれど、俺はこう言うしかない。彼女は、彼女こそが真のその霊基の持ち主で、存在そのものだと。真名の判明なんかで揺らぐ様な、そんなヤワな存在ではないと、俺が証言しなくて誰がそれをすると言うんだーーー!!!

 

『聞いてくれ、セイバー。』

『ます……たぁ?』

『お前は……君は。仮初なんかじゃない。確かに此処に在る存在だ。そして、それでいて。確かに君は無銘なんかじゃなくて。(なまえ)を持った、俺のサーヴァントだ。真名が、記憶がどうした!俺は確かに此処に在る君を知っている!!君はそんな真名の存在で揺らぐ不確かな存在じゃない!!寧ろ、逆に君こそがその真名を名乗るに相応しい存在なんだ!!』

 

言い切った。言い切ってしまった。

けど、俺はそう信じている。

だから、呆気に取られたような、セイバーのポカンとした顔が目に浮かぶようだ。

 

『な……なぜ、そこまで信じられるのじゃ。儂はサーヴァントとしても不完全な、お主がいなければ戦えない存在だというのに。』

『だからこそ、だ。常に俺は君と共に戦ってきた。だから、君を一番近くに感じていた。だからこそ分かるんだ。それに……』

『それに……?』

 

 

『ロリコンが、ロリを信じないでどうするんだよ!!!』

 

 

『………はぁ…………ほんっっっに、阿呆じゃのう、お主は。』

『え、そこまで深く溜息つかれるほどに?』

『あぁ、底知れぬ阿呆じゃとも。けれど、その阿呆の言を信じてみとうなったわ。それに、ますたぁにここまで言わせたのじゃ。儂がますたぁを信じねば、妖刀(サーヴァント)が廃るというものじゃろうて。』

『……なら!』

 

『あぁ、今こそ認めよう。我が諱は籠釣瓶。そして我が真名……いや、真銘こそは、江戸に仇なす刀の一振り。妖刀・村正であるとーーー!!』

 

 

その、瞬間。確かに、彼女という存在が認められたの如く。腰に帯びた彼女自身(ようとう)にも、熱が伝わってくるような気がする。

 

『さぁ……ゆくぞ、ますたぁ!!』

「あぁ!!」

 

「何をブツブツと、先程から受けたり流したりと小手先ばかりでいい加減邪魔くさい。我ら家族全員の力を込めた一撃で葬り去って、その肉を骨を、欠片と遺さず喰ろうてやろう!!」

 

アサシンが天井を破壊しながら立ち上がり、腰だめ力を溜めながらこちらを見据える。

 

「望むところだ……セイバーの、俺たちの本気を見せてやるよ!!」

 

腰だめに構えたその妖刀(かのじょ)から伝わる力が更に増してくるのが分かる。

今なら、今の俺たちならいけるーー!!

 

「真銘解放ーーー妖刀……」

 

「そのまま死ねぇぇぇえぇいいいい!!!」

 

「村正ァァァァァァァ!!!!!」

 

 

振り下ろされる地へと迫る超質量の拳……いや、それは振り下ろされるより早く、地に着いた。

 

抜き放った一太刀が、霊核ごとその身を斬りおとすことによって。

 

「ーー斬られて死ね、キチガイ野郎。」




やっとサーヴァント1騎脱落した……なげーよホセ

にしても今回はかなり頑張ったと思います(意訳:感想ほしいれす)

……サボらずに続きも書き上げたい
どうでもいいですけどモンハン3Gってめちゃくちゃ楽しいですよね!!(だからサボるな)

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