Fate/erosion   作:ロリトラ

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6日目/地伏す妖刀

「ん……む」

 

雲の隙間と窓の隙間から漏れる日差しによって、緩やかに覚醒する。

身体に未だ残る気怠さを感じつつも、一晩の休息はこれから動けるだけの確かな活力を肉体に与えていた。

 

「さて、やっとの日曜日だ。昨日は学校が半日だってのにそれどころじゃなかったし、やっとゆっくりと羽を伸ばせる。」

 

……とは言っても今日もそれほど余裕はないのだろうけど。

まったく、つくづく厄介な出来事だ。この聖杯戦争というものは。

と、そこまで考えを巡らせたところで、セイバーが部屋に見当たらないことに気づく。まさか、昨日の今日で1人で外出ということも無いとは思うのだろうけど……そう考えながら廊下へと出ると。

 

「おーい、セイバー。今日の予定なんだけど……ッッ!?」

 

そこには黒い和服の白い模様が血で赫黒く染まり倒れ伏したセイバーの姿があった

「どうした、セイバー!?いつやられた!!いや、傷が開いたのか!?と、とにかくしっかり、しっかりしてくれ、セイバー!」

 

しかし、答えとして返ってくるのは沈黙ばかり。

 

「クソッ、こうなったら救急車…じゃ、駄目だよな。そうか、錬土に聞けば何か……」

 

あいつならばなにかサーヴァントのこういう事態についても知っているかもしれない。

そう考えて急いで電話をかける。そうして、コール音が止むと同時に声をあげる。

 

「おい錬土!!セイバーが、セイバーが!!!」

『うおっ!?声でけぇって、落ち着け戈咒!!おまえがそこまで焦るってことは幼女のことだろ?そしてこのタイミングで俺に連絡してきたってことはおそらく聖杯戦争絡み……鎖姫絡みではないはずだから、セイバーちゃんに何かあったんだな?』

「お、おう。理解が早くて助かる。朝起きたら廊下で、血を流してセイバーが倒れてたんだ。治療の魔術なんか使えないし、セイバーを助ける方法を探すにはお前に頼るしかなくてな。」

『まぁ、色々言いたいことはあるが、取り敢えず俺に相談したのはよかったろうな。下手に余所の陣営に情報を流す羽目になりかねないだろうし。とりあえず、俺が今から原付で向かう。話はそれからだ。』

 

そう言うと、通話が切れる

そして、心の中で一言セイバーに謝罪した後、血糊で固まりひっついた和服をベリベリと剥がし、傷を探す。

だが……

 

「傷が、ない……?」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

その、少し前。

錬土の自宅では、彼が電話を再びかけていた。

 

「お、そっちはどうだ?」

『ーーーーーー!!!ーーーー!!』

「はははは……悪い悪い。でさ、教会に行こうかと思うんだ。」

「ああ、それならありがたい。じゃあ、現地で待ってるぞ。」

 

錬土はスマホをスリープモードにして懐に入れると一呼吸、ため息をついてから窓の外を見る。

 

「よし、これで打てるだけの手は……打ったか?……いや、あれも用意しておくべきか。」

 

そう言うと再びスマホを手に取り操作を始める。

そして数分後、鳴り出したスマホで戈咒との会話を済ませると、今度はヘルメットを持って家を出る。

そして、原付に乗って朝の日差しの中、公道を賭けて駆けていった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

結局セイバーの意識は戻らず、それ故に霊体化も頼めないので寝床に寝かせ、様子を見ること15分。

インターホンがなり、来客…いや、錬土の到来を知らせる。

 

「来たか……!」

 

そうしてドアを開け錬土を部屋に連れ込み、まずセイバーを見せる。

錬土はセイバーをしげしげと見つめ、ゆっくりと口を開いた。

 

「まず、セイバーちゃんのことだが。俺も専門家でもないどころか、知識が多少あるだけの一般人だからな。魔力も感じ取れないくらいだし、正直容態は分からん。ただ、傷がないのは気にかかるな。」

「ああ、それは俺も気になったんだ。外傷でないなら病気か、()か……」

「サーヴァントが通常の病気にかかるなんて話は聞いたことがない。あるとすれば他のサーヴァントの宝具って可能性だが…これはひとまずおいておこう。どんな奴がいるかもロクに把握できてないのに考えるのは無理がある。」

「つまり、十中八九、毒に犯されている……?」

「俺はそう考えるな。まぁ一応、治癒されたって可能性も残るが。ただ、その場合はなぜ目を覚まさないって話になるわけだがな。」

 

なるほど……確かに、その考えには筋が通っている。けれど、それにはどうしても違和感が残るのだ。

 

「でも、それは変な気もするんだよな。セイバーがいうには、セイバー自身が呪いや毒の集合体みたなものだから、生半可なものじゃ逆に塗りつぶし返すだけだって。実際に無効化した場面も目撃してるし、俺にはどうもセイバーが毒でやられるとは考えにくいんだ。」

「なるほど……確かに耐性持ちのサーヴァントを正面から毒で弱らせるのは相当無理があるか……おまけにこのサーヴァントは三騎士の頂点にして最優のクラス、セイバーだ。なにか反則じみた裏技を使われたと考えた方がいいかもな……」

「なら、審判の監督役に伝えにいけば治療して貰える、とか?」

「その可能性は、ある。裁定者がいたってことは向こうもその可能性の考慮はしててもおかしくない。」

 

審判による治療、きっとそれならセイバーも助かるかも知れない。

そう考えると心が逸る。一刻も早く向かわなくては……!!

 

「なら……!」

「だが、証拠がない。今言ってもただの難癖付けて監督役から不当に便宜を図って貰おうとしてるとしか思われないだろうな。」

「……クソッッ!」

 

せっかく、セイバーが助かるかも知れなかったのに……なにか、何か無いのか。視界に入った左手の、かすれかけの令呪が不安を増大させる。

 

「……令呪、そうだ。令呪を使えば治すこととか出来ないのか!?」

 

思わず左手の令呪を見せつけるようにして錬土に詰め寄る。

だが、その浅い考えは錬土が首を横に振ることであっさりと打ち砕かれた。

 

「残念だが……令呪ってのはただの魔力の塊だ。優秀な魔術師ならそれでブーストした治癒魔術を行使するって手もあるかもしれないが、少なくとも俺たちには……ちょっと待て。なんで令呪がかすれている?戈咒、お前もう使い切ったのか?」

「んなわけないだろ、セイバーの衰弱が関係してるんじゃないのか?」

「いや、そんな事例は俺も読んだことがない。令呪ってのは契約の繋がりを表すもんだ。だからサーヴァントが消えたら令呪が消滅する、くらいしかとくにはないはずだ。」

「ってことは……?」

「何者かがお前達に契約(パス)を通じて干渉しようとしている、そんな反則があったかもしれない。そう主張する根拠には少なくともなりうる、はずだ。」

 

つまり、それは。セイバーを治療して貰える目が出てきた、ってことで。

 

「なら……!!」

「ああ、すぐ支度して表に止めてある俺の原付に乗れ。教会のある海浜地帯までかっ飛ばすぞ!」

 




執筆の感覚が、いまいち取り戻せない……!!

それはそうと最新体験版のでたオクトパストラベラーとカービィの夏のアプデ、たのしみですね(すぐサボる予定立てる奴)

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