ところで帝都イベ面白かったですね、以蔵さんいいキャラだった……それはそうと老人書文はまだです?
吹き込む潮風を感じながら、俺たちは停止した原付から降りる
。
「ここが……守掌教会。」
「ああ、監督役と
「ふーん、そうか。」
そんなことより、はやくセイバーを見てもらわないと。
そう思い、慌ててセイバーを実体化させ、抱えて教会に入ろうとしたとき。
「お待ちなさい、セイバーのマスター。これより先は、不可侵たる領域。サーヴァントを連れたマスターがおいそれと立ち入っていい場所ではありませんわ。」
そういいながら、内側から扉を開いて現れる1人の女性。
いや、こいつは確か昨日見た裁定者の……!!
「……たとえ、それが手負いの消えかけなサーヴァントだったとしても。」
「ま、待ってくれ!消えかけって……セイバーはまだ、大丈夫だろ?なぁ!おい!治してもらいに来たんだよ!!なぁ!!」
「落ち着け、戈咒。」
「錬土……」
「おいおい、
「情報提供……?」
「あぁ、この茶番劇の裏に潜む黒幕のな。」
「……仕方ない。ルキアを呼んできましょう。」
そう言うと
だが、今はそれより錬土の言った言葉だ。黒幕……まさか、この聖杯戦争にはまだ何かあるのか?
「おい、錬土。どういう事だよ黒幕って。」
「ん?あぁそれか、言葉の綾だ。つーか半分くらいは適当にカマかけただけだ。」
「…………おい。そのせいでホラ吹き扱いされて追い返されてたらどうするつもりだったんだよお前は……!!」
「その時はその時だろ、それに結果として成功した。なら文句はねぇだろ。」
「……まぁ、それもそうか。」
とにかく、今はセイバーを救うことが第一だ。その為なら確かにどんな手段でも構わないし、治療してもらう迄にバレなければ嘘だって問題ない。
「それに、半分くらいはっていった通り心当たりがまったく無いって訳でもないからな……だが、今は関係ない。」
「……そうか。」
気にはなるが、今は関係ないというなら信じるべきだろう。
実際今はそれどころではないのだし。
「で、どういうことだお前ら。昨日は何もそんなこと言ってなかったのに今日になって急に来て。」
「いやぁ、なに。昨日は早く帰りたかったもんでね。わざわざ言うまでも無いと思ってたんだけれど、ちょっと事情が変わったもんでね。」
「……まぁいい、話してみな。」
そう促されるがままに錬土はさっきの考察を所々大げさに強調しながら、全ての責任は聖杯戦争のルールを守らず反則で契約を奪おうとした黒幕にあると語り出す。
にしてもホント口上手いな……俺も見習わなくては。
「……なるほど。話は理解したさ。」
「そりゃあよかった。なら早速…」
「で、なぜ治療する必要がある?いくら反則だと言われても、こっちがその証拠を観測していない以上はただの言いがかりに過ぎない。」
「…そう来ると思ってましたよ。戈咒、令呪を見せろ。」
「…で、それがどうしたって?セイバーのマスターが契約を奪われかけたマヌケってだけだろう。そこまで想定してなかったそちら側の落ち度だ……いや、待て……その左手。
」
そう言うとルキアは俺の左手をしげしげと見つめ出す。
そしてひとしきり観察すると、俺の右手をつかんで奥へと引っ張っていく。
「え、あ、ちょっ!?」
「セイバーのマスター……伍道戈咒、だったっけか。気になることが出来た。ちょっと奥まで来い。ルトガルディスは待っててくれ。」
「……?分かりましたわ。」
「え、おい、監督役さんよ、まだ話は……」
「悪いがそれより優先することが出来た。話は後だ、大人しく待ってろ。」
そう言うやいなや入り口の扉は閉められてしまい、俺はそのまま奥へとドナドナされていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして、教会の奥。客間のような場所にまで連れてこられると、ルキアは俺の胸ぐらを掴み俺を問い詰める。
「おい、その左手だ。」
「あ、え、ああ、だから、なぜか令呪が…」
「そっちじゃない。だいぶ見た目は元に戻ってるようだが、その鬱血したような左手首だ。レアの仕業だな?」
「!?」
どうして、それを……?いや、ここでうかつな反応をしたらまずい。レアにはこの会話も全部筒抜けなのだから。それに、数日前のことから考えてもこの監督役とレアには何らかの因縁があるはず。下手に関わりすぎてレアの機嫌を損ねるのはまずいーーー
「レアに聞かれたらどうしよう……そんな顔だな、伍道戈咒。安心しろ、あたしはそれがどういう状態かは知っている。」
「え……?」
「なんせ、かつてこの左目をそのせいで抉り出すことになったんだからな。」
そう言うとルキアは左眼をコロン、と取り出した。
「ぎ、義眼……!?」
「まぁ、そういうことさね。それから解放されるにはあたしみたいに早い内に聖別済みのもので切り落とすなりなんなりしておかないと、どうにもならなくなるよ。その契約に関してもそいつが原因の一つじゃないのか?」
「な…なら、ルキア…監督役はレアと敵対してるんですよね?貴女たちに協力する代わりにセイバーを……」
「断る。」
「な、なんで…」
「あたしは今ここに聖杯戦争の監督役としているんでね。例え聖堂教会に仇なすアイツを倒す為だとしても、必要以上の肩入れは監督役としてはできない。」
「そ、そんな……」
「大人しく脱落してたらどうだ。そうすれば聖杯戦争が終わるまでの安全は保証してやるさね、仕事だからね。」
「そんな……そんな話が聞けるか!?セイバーを、彼女をこのままだと失うって言うんだぞ!!いい加減にしろ!!」
「いい加減にするのはお前だ、伍道戈咒。無茶言ってるのはお前の方だろうよ。大体なんでそこまで聖杯戦争に固執する。お前はそもそも巻き込まれただけの一般人だろうが。」
「そんなの決まってる!彼女が幼女で!俺は彼女を愛すべき
ーーそう。彼女は、俺にとって愛すべき、守るべき
そして、それだけじゃなく。
彼女の過去を知り、覚悟を知り、決意を知った。
それが、俺には大切に思えたんだ。
だからこそ、俺は。
「
「……何だ?つまりサーヴァントに惚れたとでも?」
「いや、それはない。というか、駄目だ。ロリコンたるもの、YesロリータNoタッチの鉄則は守らなくちゃいけないし。」
「……ハ、ハハハハハ、ハハハハハハハハハ!!なんだお前、訳が分からねぇよ!!まったく面白い奴だよ、レアが唾付けるわけさね。」
ルキアはひとしきり笑うとこちらに向き直る。
わりとこっちのことを認めてくれたか、気に入ってくれたのか……?なら、今ならチャンスが……
「な、なら……」
「だが、それとこれとはやはり話が別だ。監督役として、手出しはしない。」
「ぐっ………!!」
もう、駄目なのか……!?
「なら、貴方個人が手を出すならーーーいいのかしら?」
「お前は……!」
「鎖姫ちゃん……?」
この部屋の扉を開け放ち、そこにいたのは。
ランサーのマスター、繰空鎖姫ちゃんだった。