Fate/erosion   作:ロリトラ

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切りどころが見つからなかったからすこし長めです
やっと召喚できた……!


1日目/運命の夜

ライダーさんに見送られてから3人で歩くこと30分。俺たちは駅前まで無事に戻ってきた。

 

「いやー、しかし拍子抜けだったなぁ……あの筋肉にはビビらされたけども。」

「全くね。でもこれで根も葉もない噂だって分かったわけだし、安心して眠れるわ。」

「んだよ、委員長ビビってたのか?」

「そ、そんな訳…ってもうこんな時間!?ああもうお父さんからのお説教確定だわ……」

 

ふと携帯を確認すると既に時刻は2時近くを示している。明日もあることだし、早めに解散して帰宅するべきだろう。

 

「それじゃ、もう遅いし俺は先に帰るぞ。おやすみ、錬土に委員長。」

「お、そうだな。それじゃまた明日。委員長、送ってってやろうか?」

「……1人は物騒だし、お願いするわ。こんなのでもいないよりはマシだろうし。」

「おいおい、こんなのってなんだよきずつくぜ。」

 

2人の掛け合いを聞いて苦笑しながら自宅への道を歩いていく。

 

 

 

商店街の路地裏に入って数分。夜も遅くなった為いつも時間が無い時に通る裏道に入ったがそれは間違いだったろうか。街灯の灯りもなく、携帯電話のライトしか道を照らすものが無い為に夜闇の恐怖は商店街をそのまま通るより煽られている気がする。

 

「うぉっ!」

 

そしてやはり神経が過敏になっているのか道脇から飛び出してきた猫に驚いて声を上げてしまう。こんな所を錬土などに見られたら弄られかねない。さっさと抜けて街灯のある表通りに出ようと考えたその瞬間。

 

ふと、何かを齧り、咀嚼するような物音が聞こえた。この時間のこの場所。人はほぼいないが0とは言えない。

誰かこの近くに住む人がコンビニでお菓子でも買って食べているに違いない。

足を進めるとその物音はどんどん大きくなる。

恐怖からか、好奇心からか。

足を進める速度は1歩事に増していく。

心臓は早鐘のごとくバクバクと脈動している。全身が怖気だつような不気味さとともに肉体の血流は今すぐ全力でスパートを掛けられる程に高まっている。やはり夜闇は無駄に人間の根元の恐怖を煽るものらしい。全然この状況には無関係な筈の都市伝説。昼は聞き流していた守掌の人喰い鬼の噂が耳から入る咀嚼音の音とともに嫌でも脳に呼び起こされる。

これは関係ない。全く関係ない。

何かを啜るような音も/関係ない

何かを齧るような音も/関係ない

何かが折れるような音も/関係ない

誰かが助けを求めるような嗚咽も/関係ない

ーーー全て無関係。

全て無関係でこの音は酔っ払っいがきっとそこらのどこかで寝っ転がってお菓子を食べてるだけなんだーーー

 

その時。ふいに、足が、止まった。

恐怖からか、好奇心からか。

耳から入る物音は最高潮に達している。首がまさにギギギ、と擬音をたてて動くようなぎこちなさで首を音の方へと向ける。しかし俺の両の眼は何も捕えない。暗闇しか写せない。

だから、近づく。1歩、また1歩と。そして、携帯のライトを向けると。

 

ーーーゴミ箱の裏にサラリーマン風の服装をした男が座り込んでいた。

ここからじゃ顔は見えないが手が動いているのだ。死体を見つけてしまったなどという都市伝説のような話では無かったらしい。

ここで見かけたのも何かの縁だ。声くらいかけるか警察に場所を連絡するくらいはしてあげよう。

 

「はぁ、なんだよ。ビビらせやがって。」

 

何も無かった。その事実は俺を深く安心させ、つい気持ちが抜けて、そう言葉を溢れさせた。

 

 

ーーーしかし、その気の緩みこそが失態だった。

 

安心して近づくと男は目が覚めたのか小さく嗚咽を漏らしている。こんな程度の嗚咽に俺はビビっていたのかと思うと無性に情けなくなる。何か文句の一つでも言ってやりたい気持ちを抱えながらその男の前に立つと。男が言葉を発した。

 

「ひゃ……ひゃふけ、へ……」

 

そう懇願する男は胸を、腿を、肩を、顎を腹を、腕を、脹脛を、身体中を。食い破られていた。とどのつまり、ゴミ箱の上にのってかろうじで肩から腱が繋がっていただけの左手以外、ヒトのカタチをしているというにもおぞましい、食べ残しがあるだけだった。

そして、それを作り出した捕食者の声が夜闇から聞こえる。

 

「ねぇねぇ、そこのお兄ちゃんや。それ、食べるか?」

 

無邪気な、それでいてイタズラ盛りの少年の声。

内容としては異常としか思えないその言葉は、しかし純粋な好意によるものであるのが余計に心を踞らせた。

姿を現したのは赤いTシャツと濃い紺色のジーンズに身を包んだ中学生になるかならないか程度の少年。しかしその濃密なまでの存在感は、彼が人ならざる異形であることを何よりも雄弁に語っていた。

 

「……!?」

 

口はパクパクと酸素を求める金魚のように、声も出せずにただ恐怖で立ち尽くす。

 

「ねぇ、お兄ちゃん?無視すんなよ。折角俺があげようって言ってるんだから断るか食べるかしろよー。まぁそこまで美味しくなかったからさ、別にいいんだけども、食べ残しはいけませんって親父も猟理人(シェフ)の奴も言うからよー。片付けなきゃなんだよ。」

 

それは、子供が食べ残しを見つかって親や先生から怒られるのを嫌がる自然な発言で。

それは、何よりも雄弁な犯行声明であった。

 

「ねぇ、ねぇってばぁ!俺のこと無視しないでよ。もう、ひどいなぁ。ん……?お兄ちゃんから薄いけど沢山魔力の匂いがする?お兄ちゃん、ひょっとして魔術師?」

 

魔術師?一体何を言っているんだコイツは。現実に理解が追いつかず、恐怖からか、金縛りにあったように俺は動きを止めた。逃げなくては、そう心は何よりも雄弁に語るのに、身体はその展開についていってくれず動かない。

そうこうしているうちにコイツは俺に近寄ってきて、壊れた言葉を紡ぎーー

 

「魔術師は殺さなきゃダメって親父も言ってたし、そして何よりいい匂いだし。ねぇ、お兄ちゃん食べていいかい?」

 

ーー処刑宣告がその身に下された。

 

「返事がないならいいよね。まぁ、俺はもう食べる気マンマンなんだけどーーー!!」

 

俺が死を理解したその瞬間。

この場で起きていたその全てを無視するかのように。

この場で起きていた何もかもを分かりながら最善手を選んだかのように。

 

「なぁぁーーご」

 

と、先程の猫が喉を鳴らして俺たちを見つめていた。

 

ーーーそして。アイツの気がそれたその瞬間。心と身体は完全に意志を一致させて。逃げるというただその為に全力を尽くし、アイツを全力で殴り飛ばして全速力で脚を回した。

 

 

とばす、とばす、とばすーーー!!

今の俺は何よりも早く道を駆けている。遠くから聞こえる少年の怒り声と俺を捕食しようとする宣言。

それから逃げようとする全身全霊の走りは、音を置き去りにするかの錯覚を覚えるほどに速く、鋭く、激しく俺を自宅へと導いたのであった。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」

 

自宅に入り、鍵をかけ、チェーンをかける。そしてようやく、息を整えて一息つく。冷蔵庫にまだペットボトルのお茶があったはずだ。それを飲んで、ゆっくりと寝て、明日朝イチで警察に通報することにしよう。そう考えながらお茶を求めて冷蔵庫を空けたその瞬間。

 

「ねぇ、人を殴り飛ばしておいて一方的に逃げるのって俺はどうかと思うなぁ。お兄ちゃん。」

 

恐怖からは、逃げられない。

そう告げるかのように自身を脅かしたその存在は再び襲来する。逃げ場の無い密室においてアイツは美味しい食事を目前にした子供のように涎を口端から垂らしながら俺にそう声をかけた。

 

「ひ、ひぃ……」

 

死が再び襲ってくる。それを理解した瞬間腰が抜けてしまう。逃げたい、逃げたいのに身体はもたついて動きが鈍い。

 

「それじゃあ……イッタダキマァス!!」

「ぐうっ!」

 

少年は獣の如き俊敏さで俺に飛びかかってくる。首を噛み切ろうとしたのだろうか。咄嗟に恐怖から身体を屈めた結果躱すことが出来たのだろう。結果的には肩の肉を少し食いちぎられるだけで済んだようだ。その痛みのお陰で多少は意識が冴えて恐怖が薄れる。何か、何か対抗出来る道具はないのか。

コイツは獣だ。獣と人間が戦うならライフルをもってようやく対等。ライフルはなくとも、せめて何か武器になるものが無くては話にすらならない。

周囲を見渡すと、目に付いたものがあった。今日の下校時に骨董品店で買った日本刀だ。

 

「あぁ、美味い、美味いよお兄ちゃあん。魔力が篭ってていい味が出てる。」

 

アイツは食いちぎった俺の肩肉を夢中になって食べている。今がチャンスだ、不意をついて一気に叩き斬るーーー!!

 

「うおおおおお!!!!」

 

しかし、その全霊を込めた上段は。

人ならざる肉体の前に容易く受け止められた。

 

「お兄ちゃんさぁ、人の食事を邪魔したらダメって教わらなかったの?その年にもなって。常識がないよ。」

 

まるで楽しい食事を途中で中断させられた子供のごとく、いやまさにコイツにとってはその心境なのだろう。不機嫌を露わにしてこちらを睨みつける。

 

「それとも、もっと食べて欲しいの?」

「う、あ……あ、ああ」

 

俺の心は既にストレスで極限まで細く削れてしまっている。あと一つ何かがあればもう壊れてしまうだろう。

 

「怖がりすぎだよ、お兄ちゃん。死ぬ時に怖がりすぎて死んだにお肉はあまり美味しくないんだ。だから笑顔さ。そうだら話を変えようよ。お兄ちゃん、聖杯戦争って知ってる?」

「せいはい……せんそう…?」

「うん、聖杯戦争。7人の魔術師がマスターとなって過去の人間をサーヴァントとして呼び出し戦い抜くバトルロイヤルさ。勝ったチームにはどんな願いも叶うんだ!」

「なんでも…」

 

コイツは何を言っているんだ?そんな、訳もわからない眉唾物のゲームの為に俺を襲ってるのか?

心はぐちゃぐちゃになって掻き混ざった恐れと痛みで逆に冷静に物事を考え始める。

 

「うん、だからお兄ちゃんみたいな魔力を持ってる魔術師を狙って食べてたんだ。俺たち家族は人が大好きなんだよ。」

 

その言葉は、子供が牛のお肉が好き、というかのような歪さに溢れており。

 

「だけど、お兄ちゃんは魔術師でもマスターでも無かったみたいだね。だけど、もしかしたらさ、結構体力もあったし、お兄ちゃんが7人目だったのかもね?」

 

そう軽く言い放つと

 

「ーーまぁいいや!さて、そろそろ落ち着いたかな?ならーーーいただきまぁす。」

 

言い切ると同時に俺に食欲と殺意が襲い掛かる。

だが。

こんなとこで/やっと自由なのに

 

喰われて死んでたまるか。

 

 

俺は/ボクは

 

自由に生きるーーーー!!!

 

 

 

ーーーその瞬間、手に持った刀から一筋の閃光が疾る。

 

そして、俺を襲った獣はそこから現れた刀に打ち払われ、窓から外へと弾き飛ばされる。

 

その瞬間は、例えこれから何があっても永劫忘れることはないのだろう。

 

日本人形のような艷めく長い黒髪。

全てに憧れるあどけなさ、そして羨むような不気味さを併せ持つ紅い満月の如き赫い瞳。

天の川を布地に起こしたかのような美しい着物。

そして、小学校高学年を思わせる小柄な姿。

 

 

その艶めかしい口が言葉を発す。

 

 

「問おう。お主が、儂のますたぁか。」

 

 

ーーーそれは、何よりも美しく。

俺の心に色を付けた、愛しき彼女。

剣の英霊、セイバーとの出会いだった。




見てわかる通りSNオマージュというかおもっくそ意識しまくった召喚シーン。
こういうのが二次創作の醍醐味だよね!
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