イナミ艦隊   作:ねっぷう

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第12話 「覚悟」

「見つけたぞ暁!!我の一撃を喰らうがいい…どんな武器よりもォ、重い!強い!!デカい!!!我が主砲だァ~~~!!」

 

陸奥は先ほど防波堤を破壊した時のように、主砲の先端から黒煙と炎をたぎらせる。砲をカラカラと動かし、顔だけをこちらに向けて逃げ惑う暁に狙いを定める。

まさか…こんな場所で…!凪は思わず叫んだ。

 

「ダメェ!五良、逃げて!」

 

ドォン

 

低い音を立てて、主砲が火を噴いた。放たれた砲撃はその大きさ通り、普通よりも遅かったが、単純な爆弾のようなものと見ればその威力は計り知れない。その砲撃が暁を叩き潰そうと襲い掛かる。

が…

暁と弾丸との間に飛び出した五良は、咄嗟に暁を抱え込み、転がるようにして砲撃を回避した。その五良を叢雲が掴み、跳躍して遠くへ離れる。

地面に着弾した砲撃は炸裂し、駐車場の半分と周囲の道路を巻き込んでの大爆発を起こした。その砲撃の最たるものは着弾した後の爆発の範囲ではない。破壊力にあるのだ。範囲は直径10メートルに満たなくとも、地面の深くにまで衝撃を届け、内部から破壊し、膨大な熱で融解する。この爆発が起こった後は深いクレーターが形成され、その内側は火山の河口のように真紅に燃え上がっていた。

 

「なんて威力だ…」

 

叢雲は五良と暁を脇に抱えたまま建物の腕を飛び跳ねながら逃げる。

 

「逃げるなぁ、待てえええい暁ィイ!!」

 

「何すんのよ、人が居たかもしれないのよ!」

 

凪が陸奥の耳を引っ張りながらそう言った。

 

「黙っておれ娘!こうなったら、お前は我の暁への復讐を見届けるのだ!!」

 

「え?いやよ~~~~!!」

 

 

「どーするのよ!?」

 

暁が言った。五良は少し黙ってから言う。

 

「なぁ叢雲、俺らはいつまで奴から逃げてなくちゃなんねーのよ?」

 

「…そうねぇ、私たちがアイツと同じく、武器を手にできるまで…かしらね」

 

「何ですって、それはどういう事?」

 

「ちっ…やっぱりか…。お前があの槍を持ってれば、アイツを…どうにかできんのか?」

 

「ええ」

 

「…そうか」

 

「だったら早く武器を取りに戻りましょう!どうしたの、なんで何もしない?ねぇ?」

 

戻ろうとしても、恐らく陸奥はそれを迎え撃つだろう。ヤツが何か隙を見せたうちに姿を消し、そこから隠れて移動するしかない。

 

「これで私が死んで街も滅茶苦茶になったら、アンタ達の所為よ!」

 

「うれしいねぇ、アイツを騙した張本人から、お前の所為だのその台詞!」

 

暁がそう言った瞬間、五良は思いっきり軽蔑したような顔で暁にそう言い放った。暁は目を大きくし、怒っていたその表情を落ち着けていく。

 

 

─…お願いします!どうか私を、いずれ主力の水雷戦隊に!努力はします、戦果はすぐに得ますので、どうか…!

 

─うーむ、どうしようか…

 

─どうか…!

 

私にはこれしかなかった。今まで変な見栄を張ってきて、良い事なんて無かった。だったら本当の自分だけで、上へ行くしかないんだ。

 

─ははは、お前は酒も満足につげないのだな

 

─ごめんなさい…

 

だけどそんな時…

 

─あら、どうしたの?

 

陸奥と出会った。

 

─そう、じゃあこれから一緒に頑張りましょ!

 

憧れた。雰囲気だけじゃなく、その確かな実力。活躍し、仲間にも認められている。そんな陸奥に、私は憧れを抱いた。

しかし…憧れはやがて嫉妬へと変わってしまう…

 

─索敵部隊から伝令よ、南から敵艦載機が接近…対空火器を装備している駆逐艦は至急撃墜に向かえ、だって!行って来るわね!

 

 

「バ…バカにしないで…!最初から人間だったアナタに私の気持ちが分かってたまるか!」

 

暁はそう五良に言い返す。

 

「私が好きで子供の姿で生まれたと思う!?人間はいつか大きくなれるし、いつでも変わることができる…。叢雲だって私が知ってる叢雲とは全然違う!それにどうしても欲しいものがあったら、私が普通のやり方をしてたら手に入らないでしょうが!だからああ、陸奥には悪いことしたわ!でもそれが悪いって言うなら…生まれつき小さくて弱い奴は、欲しいもの全て諦めろっていうの!?おとなしく死んでもいいっていうの!?」

 

「その通り!!」

 

後ろから大声が響いた。振り向くと、すぐ後ろに陸奥が迫っていた。主砲をこちらへ向け、炎をくすぶらせる。

 

「お前は最初から泣き寝入りしとけばよかったのだ~~~!!」

 

「しまった、追いつかれて…!」

 

「いつまでも…逃げてると思うなァ!」

 

五良は陸奥の太い腕の上に乗り、殴りかかった。コイツの気を逸らせれば、鎮守府まで武器を取りに戻れるかもしれねぇ…。

面として被っている木の板の下にある顔目がけてアッパーを繰り出し、見事命中させる。…が…。

 

「ははははは、効くか人間!!この人間もろとも消し飛べ、暁!」

 

五良の目の前で、陸奥は砲撃をさく裂させようと構える。

 

「もう怒ったわ!」

 

その時、凪が立ち上がり、陸奥の面に手をかけた。

 

「凪…!」

 

「いくら恨んでるって言ったってやり過ぎでしょ!ちょっと聞いてる!?」

 

「ま、待て…!」

 

凪は面の板を掴み、思い切り引っぺがした。

 

「…ひでぇ…」

 

やはりと言うべきか…面の下の顔は、元が艦娘とは思えないほど歪んでいた。真っ赤な両目から血のような涙を流し、獣のように並んだ牙。怒りに歪んだ顔は悪鬼のようだ。

 

「えええい、見たな…!?我が素顔を見たな!?」

 

頭を振り回す陸奥に押されて、凪は思わず面を下へ落してしまう。

 

「面が…!」

 

陸奥は落ちた面を追いかけて建物の壁を駆け下りていく。

 

 

─おのれ、おのれ暁め!

 

陸奥の頭にあったアンテナのような装飾が真っすぐに伸びた角へと形を変え、その顔面を般若のように歪ませる。そして心に浮かび上がる憎悪を糧に、渾身の力で上へと目指していく。

海面から飛び出た陸奥は、まず水面に映る自分の顔を見た。

 

─ああ、何と醜き顔か…面を…面を…

 

木の板を頭の角に引っ掛けるようにして被り、陸奥は日本が有る方角へと体を向けたのだった。

 

 

 

「よし、アイツは下に降りた!今のうちに俺たちも戻るぜ!」

 

「ええ…あれは…」

 

叢雲が建物の上からふと下を見下ろすと、そこにはバイクに乗ってツーリング中の摩耶の姿が見えた。叢雲は五良と暁をもう一度抱えると、そこから飛び降りて摩耶の元へ向かった。

 

「…?何だありゃ?」

 

摩耶は自分が走っている道路の先に立っている人影を見た。

 

「なんで道路の上で人が止まってやがる?何かあったのか?…ありゃあ」

 

「ちょっと鎮守府まで乗せてほしいのだけど」

 

「げっ、叢雲に五良!!なんでテメェらが!!」

 

叢雲たちはバイクの後ろへ飛び乗り、早く動かすよう摩耶をせかす。

 

「追われてるの、鎮守府まで急いで!」

 

「お、おお、何だかわからんがわかったよ!」

 

四人を乗せたバイクは走り、横須賀鎮守府へと向かう。

やがて鎮守府の近くへとやって来た。後ろから陸奥が追ってくる気配はない。恐らく、ガソリンの匂いが混じって暁を追跡できないでいるのだろう。

 

「なんじゃこりゃ」

 

鎮守府へ着いた途端、摩耶はそう声を漏らした。警察と消防隊、そして大本営が爆発した区域を張っていた。

 

「急がないと…」

 

しかし、急ごうとしたその時、明らかに警官や隊員とは違う、黒ずくめの格好をした二人組が前に立ちはだかった。眼は赤く、肌は青白く、明らかに人ではない。

 

「こんな時に、辿異種…!」

 

「なんでぇテメェら退きやがれ!どかねぇと…」

 

「ねぇ五良…昔、私たち艦娘には心得みたいなものが教えられててね…」

 

「あ?何言ってやがる…」

 

叢雲は五良にだけ聞こえるようにそう呟いた。その間にも、敵は自分たちに襲い掛かってくる。

 

「『我ら艦娘は乙女なり。ならばその宿命は乙女の尊厳を守ることに有り、それすなわち深海棲艦から人を守ることに直結す。我、その戦に命を懸ける”覚悟”有り』!!」

 

向かい来る敵よりも叩く飛び跳ねると、両足で頭を踏み、そのまま地面へ叩きつけた。二体の辿異種はしばらく抵抗したがやがて動かなくなり、蒸発して消えた。

 

「すげ…」

 

「ええ…武器もないのに…」

 

「さ、行きましょうか」

 

摩耶を置いた三人は鎮守府の中へと急いだ。

 

「お、お前らこの騒ぎは何だ?」

 

建物の窓から真っ赤なクレーターを見ていた天龍が、すれ違う叢雲たちにそう言った。

 

「後で説明してあげるから!」

 

しかし、天龍の言葉は軽く流して先を急ごうとする。が、暁だけがその足を止めた。

 

「こりゃ大変な事だぜ…大混乱だ。なぁ、暁…」

 

そう天龍に話しかけられた暁は、踵を返して走り出した。

 

「あ、おっおい!!どこ行くんだ?」

 

 

ゴオオオオ

 

「そういえば、電話切ってなかったわ」

 

叢雲の武器が置いてある彼女の部屋にたどり着いた五良たち。ふと電話を切っていなかったことに気付き、叢雲が携帯を見た。相変わらず風の音が聞こえるが、未だ陸奥の元に居る凪の声が聞こえてくる。

 

 

 

「暁ちゃんに騙されたって聞いたから可哀想だと思ってたけど、これじゃやり過ぎよ!」

 

探し当てた面を再び被った陸奥はあたりを見渡している。

 

「どんな運の悪い人だって、完璧に不運の犠牲者じゃないのよ!…?」

 

その時、凪の頬に何か水が当たった。降ってきた方向を見ると、陸奥は目から涙を流してこちらを見ていた。

 

「私…は…騙されたまま…でも良かった…」

 

「え?暁に騙された貴方が恨んで…」

 

「ちが…ウ…私は…チガウ…本当は…」

 

陸奥は背中に背負っている主砲を手で触れた。

 

「本当は…私じゃない…本当におかしいのは…私のそばにあった…この主砲…!!」

 

 

「何ですって!?」

 

電話越しに話を聞いていた叢雲も思わず声を上げた。

 

 

 

「ぶっ放してぇなぁ!!」

 

深海の底には、かつての決戦で沈んだ艦娘の成れの果てや、壊れた艤装がゴロゴロと転がっている。そんな中、一つの46cm三連装砲が動き出した。

 

「でも撃つのにゃあ理由が要るしなァ!俺を武器として使ってくれる使い手もいるしなァ!」

 

赤い水に塗れた真っ黒な装甲の上に、ギョロリとした一つ目と牙だらけの口が浮かび上がった。

 

「おっ?いるじゃんいるじゃん!俺を使えるワケと体を持った使い手がよォ~~~~!!ほーら俺の力を貸してやる、遠慮すんな!使いたくなってくるだろ…?ん?」

 

 

「私は…確かに撃たれる直前、暁を恨んだ…でも、すぐに忘れた…それでもいいと思ったから…だって、次の時代を生きるのは、長く生きた私ではなく…」

 

「はあああああいそれまでええええええ!!今じゃこのむっちゃんが俺の武器なんだもんねええ~~!」

 

その時、背負っていた艤装の砲身の一つがぐにゃりと曲がり、一つ目と口が浮き上がったかと思うとそう喋りだした。驚いた凪が思わず声を上げる。

 

「うわあああああ!」

 

「むっちゃん見なよ!」

 

指された方を見ると、さっき逃げたはずの暁がこちらへ向けて走って来ていた。

 

「ほら、憎たらしい奴が出てきたぜえ、吹っ飛ばしちゃえよ!」

 

「イヤ…いや…」

 

「何が嫌なもんか!お前にゃできるよ、やれって!応援してるぜ!うれしいなァ、俺の無敵の強さをここでもまた証明できらぁ!ケケケケケ!」

 

「暁ちゃん!?逃げたはずじゃ…なんで戻ってきたのよ!」

 

息を切らしながら立ち止まった暁の身体は小刻みに震えている。

 

「わ、私だって…戻りたくなかったよ…で、でも…」

 

でも…全部、私の所為で…

暁の脳裏には、破壊された駐車場や天龍の顔が浮かぶ。

 

「陸奥~、ごめんなさいぃぃ、私が悪かったわ~~…!!」

 

その言葉を聞いて、再び陸奥の目から涙があふれる。

 

「はあ?アイツ今更何言ってんのォ!?むっちゃん、叩き潰そうぜぇ!」

 

「イヤ…私にはできない…やめて…」

 

「ほら、こう言ってるじゃない!やめなさいよ!」

 

「うるせぇよ人間!」

 

伸びてきた鉄の棒が凪を殴った。

 

「だめよ、やめてええ!!」

 

「やんな」

 

叫ぶ凪を無視して、下卑た笑いを浮かべながらそう命令する。陸奥は砲を暁に向けたまま、充分な射程距離まで近づいていく。

 

「はは…どんどん近づいてくる…はやーい…。あれで吹っ飛ばされるのは、痛いだろうな~」

 

仕方ないよ、悪かったのは私だもん…。

砲に赤い炎が立ち上り、いよいよ発砲がされる。暁は涙しながら自分の死を覚悟した。散々見てきた光景に私もなる。爆発に吹き飛ばされてバラバラになった身体は黒くなって鉄になって、粉々になって散らばる。これが艦娘の最期だ。しょうがないんだ…。

 

ギャリッ…!

 

が、しかし。

颯爽と現れた五良が金色のドリルを振るい、発砲寸前の砲身を殴りつけた。砲身はあらぬ方向へと曲がり、的外れな方角へ砲撃してしまう。

 

「なァにィィ~~~~!?なんだァおめぇらァ~~~~!!?」

 

「うるせぇなぁ!こっちゃ、覚悟ってのを決めんのに忙しいんでえ!」

 

「なにこれ…艤装が勝手にしゃべってる!」

 

「深海棲艦化しておかしくなっていたのは陸奥じゃなく、あの艤装だったって事よ」

 

少し遅れて駆け付けた叢雲が戸惑う暁にそう説明する。

 

「そ、そんな…」

 

「だからよ…コイツをぶっちめりゃ終いって事よ!」

 

槍を持った五良が暁を後ろへやり、陸奥と対面する。

 

「あはははは!ぶっ放してぇなぁ!!」

 

挑発するように偽装が笑った。陸奥の元を離れた凪は急いで五良たちのところへ駆け寄る。

 

「おいおい、五良たちはあんなのに勝てんのかよ?」

 

ここまで車で送って来た摩耶が窓から身を乗り出し、そう呟いた。

 

「大丈夫よ」

 

と、凪が摩耶に言った。

 

「五良がアレ持ってるでしょ?…大丈夫よ」

 

「やい、テメェさっき俺の一撃を逸らしたからっていい気になんなよな!だいたい、あの時はオレ、マジに力出してなかったもんな!はは…」

 

「うるせぇなァ」

 

「あんだァ、何か言ったかァ、クズが…」

 

五良がうるさいと呟いたとたん、愉快気に話していた艤装の表情が一気に怒気を含んだものへと変わる。

 

「うるせぇって言ったんだ。いつまでもゴチャゴチャ述べやがってよ…」

 

「キサマ、俺を怒らせるとどうなるか分かってんだろうなぁ?」

 

「どっちみちテメェにできるのは撃つことだけだろうが。アホが、男なら黙ってやりゃあいい。それをぐだぐだと…なーにが、『吹っ飛ばしてぇなぁ』だったかな?…イヤ、『ぶっ放してぇなぁ』だ!ばぁか!!」

 

「殺ォス!!」

 

艤装は怒りの声を上げ、もう一度照準を五良へ合わせる。

 

「よぉ暁、準備はいいかよ?」

 

「ええ…準備って?」

 

「決まってるだろ、あの主砲野郎に思い知らせる準備よ。ヤツはお前のダチを操ってひでぇ目に遭わせたんだ…お前もきっちり落とし前つけるのよ…」

 

五良はそう言いながら暁を背中におぶるように背負い、その小さな手を自分が持っているドリルの柄に握らせた。

 

「俺の力だけじゃ足りねぇからよ、一緒にこれを振るんだ」

 

「私にも…敵を討たせてくれるの…?」

 

「おめぇにその気もねぇのに、俺が代わりになんてできるかよ」

 

「アンタ…私が陸奥を騙して殺したから、けいべつしてたんじゃなかったの…?」

 

「俺がいつそんなこと言ったよ?」

 

「跡形もなく消し飛べよコルァ~~!!」

 

艤装のギョロ目がひび割れたような模様を出し、陸奥がこちらへと物凄い勢いで距離を詰めて来る。怒号が響き、砲身の先に今までよりもでかい特大の炎がくすぶり始める。

 

「ひぅ、き、来た…!」

 

「俺ァな、オツムの回転がちょっとワルくてよ。そんでよ、決めてるんだ」

 

「あ、あのっ、前!前!」

 

「どっちが正しいか分かんねぇときは、負け犬の方につくってな。オメェは…負け犬か?」

 

「…殴るわよ」

 

ドォオン

 

陸奥は特大の砲撃を発砲した。真っ赤な弾丸が回転しながら撃ちだされ、五良へと向かう。持っている金色のドリルが回転しだすと、五良は発砲に合わせて突きを繰り出した。

 

ガキン

 

高速回転するドリルの先端が弾丸と接触し、炎と黒煙がぶわっと一気に立ち込める。

 

「くくく…」

 

艤装が思わず笑い声を漏らした。しかし、それもつかの間だった。艤装のにやけていた目が見開かれる。

 

「『我ら艦娘は乙女なり。ならばその宿命は乙女の尊厳を守ることに有り、それすなわち深海棲艦から人を守ることに直結す。我、その戦に命を懸ける”覚悟”有り』」

 

暁の詠唱と同時に、弾丸が削られ、割られる音が響く。やがて黒煙の中からその姿を現したのは…五良だった。五良は見事ドリルであの弾丸を突き抜け、なおも突き進んでいく。

 

「そんなッ…馬鹿なあああ~~~~~!!!」

 

ドリルは艤装の中央に突き刺さり、その回転で装甲に続いて内部を破壊してしまう。

断末魔と共に巨大な偽装は砕け散り、開放された陸奥の身体が縮んでいく。面として被っていた木の板が割れ、元に戻った陸奥の素顔が現れた。

 

「陸奥…」

 

暁の声。

 

「暁…」

 

二人は立ち上がって駆け出し、ひしと抱き合った。

 

「よかったわねぇ」

 

五良の横で凪が言った。

 

「…ああ」

 

「あのう…此度は本当にすみません…」

 

五良と叢雲、そして凪の前に陸奥が歩いてきた。

 

「五良といったっけ…貴方、強いのね」

 

「へっ、あの武器のおかげさ…」

 

「それでも使えるだけ凄いわ。…私、強い男の人って好きよ」

 

「お、おお…!」

 

「ちょっと陸奥!」

 

耳元で呟いた陸奥の袖を暁が引っ張る。

 

「あの艦娘の武器をあそこまで使いこなすなんて…まるで私と同じ、艦娘みたいだったわ」

 

「まっさかな…俺は人間だぜ」

 

「さてと…悪いけど陸奥、アナタを大本営へ連れていかなければならないわ」

 

叢雲がそう言った。その背中にはもう今は何ともない、普通の46cm三連装砲が背負われている。

 

「あらそうなの?じゃあまた会いましょうね、五良」

 

「そいつァ勘弁だな」

 

「…ふふっ、分かったわ、貴方は天邪鬼なのね!」

 

そう楽しげに言いながら、陸奥は摩耶の車に乗り込んだ。艤装にシートをかぶせて車の上に乗せ、暁も叢雲に言われて乗り込む。車が走り出すまで、暁は窓からじっとこっちを見ていた。

 

「私たちも行こっか?」

 

「俺ぁ帰るぜ、もう疲れた…」

 

五良は大きなあくびを空に向けて放った。

 

 

 

 

五良…さっき、私を負け犬って言った…。

悔しいわ…腹も立つ…。こうなったら…!!

 

 

「絶対に私を負け犬なんかじゃない、一人前のレディーだって認めてもらうわ!」

 

 

次の日、横須賀鎮守府に新たな艦娘が配属となった。

 

「長門型戦艦二番艦の陸奥よ。よろしくね。あまり火遊びはしないでね。お願いよ?」

 

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