グレイズの魔改造も無事に終わり、何をするともなしに船内を漂っていると、俺のレーダーに反応があった。
何か船映ってるなーと思い、急遽ブリッジへ向かうとモニターでマルバのおっさんが俺の船を返せと怒鳴り散らしている所だった。
(タービンズか、取り敢えずこっちの機体は不調どころか絶好調だし相手を殺っちゃわない様にしなきゃな……)
皆は……フミタンを除き俺が入って来たのに気付いていない様だ。
画面に映らない様にして話の推移をじっと聴く。
(ふ~む、やっぱ戦う流れか。まぁ俺も皆と離れ離れになるのは嫌だし、頑張りますか!)
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場所は移ってモビルスーツデッキ、俺は三日月さん相手にバルバトスの説明をしていた。
(腕に付いているのがチョコレートの人達から奪ったワイヤークロー、二発有ります。あと、残りの武装は何時ものメイスに滑空砲です)
「うん、リアクターの調子もいいね」
(そこの調整は俺がやったんですよ!後、敵に止めを刺すのはなるべく避けた方がいいです。後の交渉に響きます)
「分かった、出来たらそうする」
(頼みます!では俺も出撃するんで)
「後でね」
(ハイ!)
遠くでは、
「……おやっさん、何であいつら完璧に意志疎通出来てんだ?」
シンと三日月のやり取りを見ていた昭弘がおやっさんにマイクで呟く。
「……俺が知るかよ。それより昭弘、阿頼耶識の調子はどうだ?」
足元からおやっさんがグレイズに取り付けられた昭弘のモビルワーカーから移植した阿頼耶識の調子を尋ねる。
「あぁ、全然平気だ」
過剰な情報量を送り込まれた時に見られる鼻血などは起きていない。流石おやっさんと言う昭弘の言葉におやっさんは頭を振り、
「ソイツを付けたのはシンだ、最新式のグレイズにモビルワーカーの阿頼耶識を取り付けるなんぞ俺にだって出来ねぇ。まったく大した奴だよ」
そうなのか、と驚く昭弘。
「そう言えばおやっさん、コイツの背中にあるこれは……」
「そいつはシンが提案した改修案で、三日月とシンがかっぱらってきた腕で作った奴なんだが……違和感有るか?」
「いや、全然。筋トレ中に背筋が答えてくれた時の様な気分だ」
「……そうか」
変な事を言い出した昭弘に引きつつおやっさんは改修されたグレイズ、【グレイズバイセプス】を見上げる。
相手はタービンズ、全員無事で済むか分からない。なら自分は最高の状態にした機体でコイツらを見送るだけだ。
マイクに語り掛ける。
「昭弘、武装の説明だ。よく聞け」
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先に出撃していた三日月の元へ昭弘のグレイズバイセプスが到着する。
『待たせたな』
『向こうも二機出てきた。昭弘は左の青い奴お願い』
『まかせとけ』
お互い散開してそれぞれの敵へと向かっていく。
さて俺は何をしてるのかと言えば、
『シン、今から俺達は相手の戦艦に乗り込むオルガ達の為に強襲をかける』
イサリビの真正面にいた。
『三日月が通訳した言葉を信じるなら、お前は相手の戦艦が撃ってきた弾を全て防げるんだよな?』
鳴き声で肯定の返事を返す。
『……信じるぜ、船の防御は任せた』
(どんと来い!)
あの二機以外に敵が出て来る可能性を考えたオルガが一機をイサリビの護衛に回すことを提案し、俺の意見で戦艦程度の砲撃なら軽く防ぐ俺が船の直掩につくことになった。
勿論通訳が三日月さんだったのは言うまでもない。
(さて、三日月さんに昭弘の機体は俺の知ってる未来予測と違って整備は万全だが、それがどう転がるか……)
一瞬の思考に違和感を抱く。
(今俺未来予測って考えた?原作じゃなくて……?)
火星でガエリオの車で脳震盪起こしてから何かが変だ。
(何故か知ってる整備技術といい、何か忘れてる……のか……?)
しかしその思考は長く続かなかった。
(っと、砲撃が始まった)
真正面から撃ち込まれた砲撃を尻尾で受け止める。
(うし、無傷!バンバン行くぜ!)
相手からの砲撃が一瞬止まり戸惑っているのが伺える。相手は直ぐに砲撃を再開したが全て俺が受け止め弾いた。途中ナパーム弾も撃ち込まれたが、
(熱効率も大分上がってるんでね!飽和攻撃でもされなきゃ熱容量の限界なんざ迎えんさ!)
まさに鉄壁。鉄華団にとっては頼もしい仲間であり、相手にとっては戦艦の攻撃を全て受け止める化け物であった。
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その頃ハンマーヘッドのブリッジでは、
「何だありゃあ……」
名瀬は驚愕していた。まさかあんな得体の知れない化け物が出て来るとは。
それに、
「ハンマーヘッドの砲撃を全て受け止めるだと……!?」
余りにも常識を外れすぎている。それに映像を拡大した所、尻尾に何かを持っている。
「めっちゃグロいし……!」
「何考えてるのかわからない顔してるし……キモいし!」
「ダーリン!あれ気持ち悪い!」
拡大した映像はオペレーターの三人からも大不評の様だ。
隣のマルバを見れば、アババババと口から泡を吹いている。
……いや、動揺しすぎだろおっさん。
自分以上に慌てている者を見たお陰で落ち着きが戻ってきた。
オペレーターの娘に指示を出しモビルスーツデッキのラフタに繋げる。
「ラフタ、やれるか?」
『もっちろん!ダーリン、あのウナギ見たいなのやっちゃえばいいの?』
ウナギ……?ちょっと思考が止まるが気を取り直し指示を出す。
「いや、相手の船の横っ面を叩いてくれ。あの素早い動きを越えられるのはお前の百里だけだ。任せたぞ」
『了解~♪』
ラフタの援護に此方からは砲撃を続ける様に指示を出す。
「アミダとアジーはどうなってる?」
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その頃三日月達は、
『ハハっ、やるじゃないさ!』
三日月の滑空砲の攻撃をアミダが避ける。一瞬でもブースターを吹かすのが遅れれば直撃である。
『当たらない……!今までの奴とは違う……』
三日月も歴戦の強者であるアミダの操縦技術に攻めあぐねていた。
そもそも三日月はモビルスーツの操縦に関して、バルバトスから得た情報のみで今まで戦ってきた。それで何とかなっていたのはひとえに本人のセンスとガンダムフレームの力、そして阿頼耶識のお陰である。
しかし、アミダは阿頼耶識こそ付けていないが長年モビルスーツに乗って戦ってきた経験がある。ここに来て阿頼耶識の優位性に頼っていたツケが回ってきていた。
『なら……!』
弾は当たらない、ならば重荷となる滑空砲はいらない。
『昭弘、残弾は?』
『残り少しだ』
昭弘の位置を確認する。そしてアミダの攻撃を避けながらグレイズバイセプスの側を通り過ぎ、
『ならコレ使って』
背中の滑空砲を放り投げた。
『おい、三日月!……っとと』
咄嗟に青い百錬に向かって牽制の弾幕を張り、三日月からの滑空砲を掴み取る。
そして青い百錬に向けて発砲した。
『三日月の奴、滅茶苦茶しやがる……!』
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機体を軽くした三日月は直ぐに背中のアームからメイスを掴み百錬に接近戦を挑み掛かった。
『当たらないと分かったら機体を軽くして接近戦かい!嫌いじゃないよ!その潔さはねぇ!』
そう言って叩き付けられた三日月のメイスと腰から引き抜いた片刃ブレードで競り合う。
そして何合も打ち合い、弾き飛ばし、そしてまた激突する。
(早くコイツを片付けねぇと……)
昭弘は焦っていた。シミュレーションは何十回とこなしたが、実戦は二回目である。
幸い阿頼耶識の反応速度のお陰で相手からの攻撃は避けられるが、
『こっちの攻撃が当たらねぇ……!』
先程から滑空砲を撃つも殆ど避けられてしまう。
「三日月達が押さえている内に急ぐぞ!」
ユージンが状況を見て命令を出す。
そこへフミタンから新しいモビルスーツ出現の報告が入って来た。
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『悪い昭弘、前の2つ任せていい?』
『ああ、任せろ!』
短いやり取りで通信を終え三日月は新しく現れたモビルスーツに、昭弘は前の二機へと向かって行く。
三日月を追いかける様にピンクの機体がバルバトスの方を向くが、直後滑空砲の砲撃に足を止める。
『ここは俺が任された!』
その言葉に答える様にグレイズバイセプスがカメラアイを輝かせた。
イサリビの側面から攻撃を加える百里、ユージンもイサリビの対空火器で撃ち返すが相手が速くて当たらない。
シンも先程から苛烈さを増した相手の戦艦の砲撃を防ぐので手一杯で百里の相手が出来ない。
そこへ三日月のバルバトスが到着した。
『俺達の船に勝手に手出すなよ』
メイスを突き出し突貫するが百里に避けられる。
『生意気!』
直ぐにラフタはバルバトスに狙いを変えて襲い掛かる。
そこにシンの尻尾から放たれたスモーク弾が炸裂した。
急に視界が閉ざされた事で百里の動きが止まる。
その隙を三日月は見逃さなかった。
『シン!』
相手の機体目掛けてワイヤークローを放ち、すかさずシンに声を掛ける。
『尻尾!』
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突然の命令に戸惑ったがスモークの中から飛んで来たワイヤークローを尻尾に掴ませる。
(ワイヤークローを当てる隙を作るだけのつもりだったけど何をするつもりなんだ?)
しかし、直ぐに三日月さんの意図が分かった。
(成る程ね、確かに手近にあってあの素早い機体を繋いで置けるのは俺だけだ)
推力の違いを一目見て俺を土台にするのを思い付いたのだろう、レーダーで見ればガンダムフレームの馬鹿力でワイヤーを引っ張りメイスのパイルバンカーでブースターを貫く姿が見えた。
(なら、三日月さん!ついでにそれを使って……)
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イサリビがスモーク弾を発射したのが見えた。
昭弘は一機で百錬二機と渡り合っていた。機体は激戦でそこかしこが歪んでいる。
突進して来る青い機体目掛けて弾を撃ちきった滑空砲をハンマーの様に叩き付ける。
相手は受け止めたが左腕を損傷した。そこへ背後からピンク色が襲ってきたが、
『うおおおおおおお!!!!』
背後の隠し腕を展開して両腕を捕まえる。
『やっと捕まえたなあ!!』
背中の片方のアームで掴んだまま反転し、その頭部を思いっきり殴り飛ばす。
へしゃぐ百錬の頭部、すぐさま青い機体が援護に来るが斬りかけられたブレードを頭を振ってかわして、クロスカウンターを叩き込む。
『イサリビへは行かせん!』
見ればイサリビが敵の戦艦に突っ込むのが見えた。
なら、作戦はもうすぐ完了だ。
それまでに……
『おおおおおおおお!!!!!』
何としても足止めを……!
『昭弘、そこ動かないで』
突然三日月から通信が入った。
『は?』
三日月のこういうボソッとした発言はちゃんと聞いていないと命に関わる。
急に動きの止まったグレイズに百錬二機が距離を詰め、
先程見掛けた敵の機体がワイヤーに繋がれたまま、百錬二機を巻き込んで目の前を通り過ぎていった。
『…………』
愕然としているとオルガから連絡が入って来た。
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団長からの通信を聞いた後三日月さんは昭弘を回収してイサリビへ、俺は百錬百里の三機を引っ張ってハンマーヘッドへと向かっていた。
(良かったなぁ……未来予測より全然被害が小さい)
足からブースターを吹かしながら遠ざかっていく二機の様子をチェックする。
(バルバトスはワイヤークローを使っただけでほぼ無傷。グレイズは装甲は歪んでるけど頭部も無事で修理すれば全然使える)
そして反対に今引っ張っている三機のモビルスーツを見る。
(百里はブースターを破損、百錬二機とも頭部に損傷でその片方には腕装甲の歪み……と)
原作ではギリギリの戦いだったが、実際蓋を開けてみれば割りといい勝負であった。
(名瀬さんも俺達が普通の集団ではないってのはこれで分かってくれるだろうな)
まぁ、ゴジラなんている時点で普通ではないのだが。
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ハンマーヘッドのモビルスーツデッキに着いた。
尻尾で掴んでいたワイヤークローを放して、機体を一機づつ入れていく。
タービンズの整備班の人達が誘導してくれたのでスムーズに作業が進む。しかし、
(あー、表情とか見るにめっちゃ警戒されてる)
一瞬で慣れた鉄華団が変なだけで、この反応が普通なのだが……俺には割りとショックだった。
(早くイサリビに戻りてえ……)
苦行の様な時間を終え、俺は途中で体のサイズを縮めつつイサリビへと戻ってきた。
(戻ってきましたよー!我が家!イサリビ!)
モビルスーツデッキから入ると整備班の二人が迎えてくれた。
「シン、お疲れ」
「お疲れ様!」
ヤマギとタカキが声を掛けて来る。
(あぁこの温かい感じ……!)
ちょっと感動していると、早速おやっさんから声が掛かる。
「シン、早速で悪ぃがグレイズの修理だ」
(了解っす!)
一声鳴いて、タカキ達に尻尾を振りながらグレイズバイセプスの元に居るおやっさんへと近づく。
見ればおやっさんの側に昭弘が居た。近づいて鳴き掛ける。
(昭弘、四本腕役に立った?)
「あぁ、それに阿頼耶識もな。……ありがとうシン」
言い終えた後、暫く俺の眼をじっと見てから昭弘はモビルスーツデッキから出ていった。
(あ、もしかしてそれを伝えたいから待っててくれたの?)
おやっさんの方を見ると「昭弘の奴直接お礼を言いたいってな」と教えてくれた。
(いやぁ照れるなぁ……それを使いこなしたのは昭弘だよ)
この嬉しい気持ちはグレイズの整備にぶつけるとしようか!
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グレイズの整備を始めてから暫くして三日月さんがやって来た。
「シン、何か手伝う事ある?」
(あ、三日月さん!えーっとじゃあバルバトスの各モーターとかリアクターの出力、阿頼耶識の情報伝達のチェックお願いします。気になった事が有ったら些細な事でも言って下さい)
「分かった。後シン、あのワイヤークローありがとう」
(いえいえ、とんでもない!)
バルバトスの方へと向かっていった三日月さん。
(……やっぱり鉄華団最高だな!)
景気付けに遠吠えして、俺はグレイズの整備を再開した。
タービンズ戦終了。