「……じゃあ兄貴の方も手筈通りに頼みます。では」
そう言い終えオルガは通信を切った。
「タービンズの方もこれで安心だ。タカキ、シンから連絡は来たか?」
「今歳星で急ピッチで作業中だそうです!」
タカキが答える。
「まぁあの二人なら間に合うだろ……最近の整備長、何かヤバいしな」
「あはは……確かにそうだね」
ユージンの意見にビスケットが賛成した。
「こっちはこっちでモビルスーツの訓練だ。もう始めてんのか?」
「あぁ、今三日月がバルバトスの試運転をしてる所だ。それとモビルアーマー」
「ハシュ丸か……」
シンの指名で初めてのモビルスーツがモビルアーマーになってしまったハッシュ。
シン特製のシミュレーターを1日に何十時間もこなし今日が初搭乗である。
「ちょっと見に行くか?」
ユージンが提案する。
「あぁ。模擬戦やるってミカが言ってたしな」
「……ちょっと待てオルガ!!その面子で模擬戦やるってのか!?」
「ヤバいんじゃないかな……」
『うおおぉぉぉお!!……ぐはッ!!』
(((そんな事なかった!!)))
着いた時にオルガ達が見たのは模擬戦が始まった一瞬でメイスを携えたバルバトスにのされるハシュ丸の姿だった。
「凄ぇなぁ……ミカは」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バルバトスが突きつけたメイスをどけるや否やハシュ丸が体を一回転させ両足を纏めて叩き付けようとする。
それをバルバトスは一歩引いて紙一重でかわし、頭を掴んで地面に叩き付けた。
『まだまだぁぁぁぁ!!!』
『熱くなってちゃ勝てないよ』
その後もバルバトスはハシュ丸の攻撃を完全に見切りカウンターでモビルアーマーを沈めていく。
30戦全てバルバトスが勝ち、模擬戦が終わった。
「ハアっハアっ……」
ハシュ丸のコックピットで俺は荒い息をついていた。
シンさんの厚意で乗せて貰ったこのモビルアーマー。
しかし、自分はまるで乗りこなせていない。
「ちくしょう……」
座ったまま項垂れていると、急に頭上から硬い音がする。
誰かがこの機体に上に居のだろうか。
「開けるよ」
三日月さんがハシュ丸の強制開放レバーを使って此方のコックピットを開けてきた。
「ッ!……三日月さん」
「落ち込んでる?」
「……はい。そりゃ落ち込んでますよ。シンさんから乗機もシミュレーターも貰ってスゲー練習したのにカスりもしないなんて」
「そっか。なら次はマサヒロ辺りとやってみるのがいいかな」
「……え?それってどういう……?」
訊き返す間もなく三日月さんはハシュ丸からバルバトスの掌へ飛び移り、コックピットへと戻ってしまう。
『マサヒロ、次行ける?』
『行けます!!』
次の相手は筋肉号グレート、グレイズがベースのハズだがシンさんが魔改造したせいで下手なガンダムフレームより強いというおかしな事になっている機体だ。
『昌弘・アルトランド、筋肉号グレート!行くぜ!』
『ハッシュ・ミディ、ハシュ丸!!うおおぉぉぉ!!!』
最初の何戦かは直ぐに負けた。
しかし、段々とバルバトスと比べたら遅い機体に目が慣れていく。
5回目の模擬戦が終わった時に自分の中で何か掴んだ気がした。
6回目、記憶の中の三日月さんの様に相手を攪乱させる為に機体を左右に振って近付いていく。
『フン!!』
『……ッ!!』
カウンターで回し蹴りが来る。しかし、バルバトスを相手にしていた経験から避ける事に成功する。
背後に回り込み右翼を叩き付けようとしたが、直ぐに反転した相手に防がれて一撃を喰らい負けてしまった。
けど……初めての防御から一連の反撃までを流れる様に繋げる事が出来た。
『それ。今までハッシュはこう……出だしを見て後が分かる動きしかしてなかった』
三日月さんの声を聞きつつ、直ぐに機体を立て直し戦いを再開する。
それからは模擬戦を重ねる毎に筋肉号との一回の戦闘時間が伸びていった。
30回目の最後の模擬戦で此方の攻撃とあちらの攻撃が同時に重なり組み合いになる。
直ぐにお互いを弾き飛ばし睨み合う。
機を伺い神経が研ぎ澄まされていくのを感じる。
バルバトスからの三日月さんの声が遠く離れていく。
『見た感じ訓練もちゃんとしてるし反応も良い。センスは有るから後は実戦でそれを磨いていけば……』
「そこだッ!!!」
筋肉号の隙を突いて機体を一回転させ両翼による連打で相手を地面に叩き付ける。
審判をしていたグシオンから決着を知らせるブザーが鳴った。
『勝者!ハシュ丸!!』
今の出来事が信じられず、暫く呆然として握っていた操縦棍から手を放し、両手を見つめる。
じわじわと実感が湧いて来て、無意識に機体の頭部を動かしバルバトスの方を見た。
「……!!三日月さん……!俺……!!」
『うん、良い感じだね』
「……ッ!!ありがとうございます!!」
三日月さんに見えていないのは知っているがコックピットの中で俺はバルバトスに乗っている三日月さんに向かって頭を下げた。
その瞬間コックピットに変な機械音声が鳴り始める。
それと同時に操縦棍のカバーが開き色々ボタンや形状が変わった新しいモノになった。
(!?何だ何だ何だ!?)
《おめでとうございます、ハッシュ・ミディ様。シミュレーターと実戦での両データから判断し【補助輪システム】を終了。当機【ハシュ丸】の全機能を開放します。シミュレーターは全機能開放状態に更新完了。ではまずAIの名前を設定して下さい》
「は……え!?」
《【蝿】はあまり推奨出来ません。設定しますか?》
(不味い……何か始まったぞ!?)
「待ってくれ、何でそもそも名前を設定しなくちゃならないんだ!?」
《当機【ハシュ丸】は
(成る程……って暴走!?俺そんなヤバいのに乗ってたのか……)
いい名前が思い付かないので、外に居る三日月さん達に状況を説明していい名前がないか訊いてみた。
『三日月さん、何か格好いい名前ないっすか?』
『オルガ』
「いや、ミカそれはちょっとな……」
『昭弘さんに昌弘さんは……』
『『筋肉』』
『ですよね~……団長にビスケットさんは』
「スマンが咄嗟には出て来ねぇな」
「ゴメンね。俺もちょっと思い付かないかな」
『そうすか……どうしたら』
「オイ!ハッシュ!!副団長の俺に訊かねぇのかよ!?」
『あ、その……前ライドさんから副団長のネーミングセンスはアレだって話聞いた事があって……』
「ライドの野郎……!まぁいい。俺の考えた格好いい名前はな……」
溜めた後に副団長が自信たっぷりに宣言した。
「
『おうか?……桜の方の桜花っすか?』
「違ぇよ!!鳳凰ってカッケぇ鳥の名前と鉄華団の華!」
「凰華……」
《了解しました。AI名【
「あ゛」
「どうよ!ハッシュ!!」
『副団長さん……その名前になっちゃいました』
「「「ええええぇぇぇぇええ!!??」」」
(凰華……凰華かぁ……まぁ悪くはないか……?)
外野が騒ぐのを他所に一人考えているとコックピットの画面が上へ上がっていき、中から輝く何かがせり上がってくる。
「これは……?」
そのまま見ているとその光輝く何かは立方体の形をしているのが分かった。
その形を認めた次の瞬間その物体が駆動音を立てながら変形していく。
(まさか……コイツがAI?)
その予想が当たったようで、その物体は白銀の胴体に羽の一部と爪が朱鷺色をした鳥の姿になっていた。
「お、
『Gyaaaa!!』♪
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「という訳で俺の機体のAIだそうです。Gリアクターが変形して機械の鳥に……鷹ってのがモチーフだとか」
「ふーん。可愛いね」
「何でそう毎回毎回直ぐ受け入れられるんだよ三日月は……」
全然動じない三日月さんに副団長がツッコむ。
「で、名前は……」
「【
「凰華になりました」
『Gya!』♪
嬉しそうに鳴いて俺の頭に止まってくる。
う~ん、可愛い。
「それとシンさんがハシュ丸に掛けてきたリミッターが取れたそうで」
「……それでこの状況って事か」
団長が呆れた表情で演習場の周りにびっしりと集結した無人随伴機【プルーマ】を見渡す。
「最初何事かと思ったよ」
ビスケットさんが呟いた。
……俺も全く同じ気持ちっす。
AIの名前は凰華になりました。
虚空さん、素晴らしい名前をありがとうございました。