数日後、俺はおやっさんの整備を手伝う他に三日月さんに誘われて桜農場の手伝いもするようになっていた。
今日はどうするかと考えてながら歩いていると、向こうからクーデリアを連れた三日月さんが歩いてくる。その後ろにフミタンもついてきていた。
(ってことはクーデリアがノブリスと話して、俺達を犠牲にしてしまうんじゃないかって悩んでる所か)
向こうで三人とも気が付いた様で、こっちも桜農場についていこうと三日月さんの方へ走り出す。
(犠牲か……まぁ俺が居る限りそんな事態にさせるつもりは無いけどね)
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「シンさんですね」
真っ先に気付いたフミタンが呟く。
「あの三日月、シンさんが凄い勢いで此方に向かって来ているのですが……」
戸惑うクーデリア、しかし三日月は何時もと変わらず、
「別に問題ないよ。アイツも連れて行くつもりだったから」
そう言えば出かけるとしか言われてなかった事に気付いたクーデリア。
「連れて行く……とはこれから向かう場所にですか?」
そう話し掛けると三日月も簡潔に答える。
「そう。桜ちゃんがやってる農場」
「農場ですか……時々見かけないと思っていましたけど、三日月の手伝いをしていたんですね」
何度かあの特徴的なフォルムが見かけない事があって疑問に思っていた。そして見かけない日は何故かフミタンの機嫌が悪いのだ。その事に他の人は気付いていないが長い付き合いであるクーデリアは気付いていた。
「今は収穫の時期だから」
そして、シンと合流すると先に車で待っていたビスケットと共に車で桜農園へと向かった。
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農園に着いた俺達は早速トウモロコシの収穫を開始した。
どんどん収穫したモノを籠へ入れてゆく。
(向こうではアトラと三日月さんがラブコメの波動をだしてるなぁ~)
そんな事を考えてる俺の横では、
「随分と器用に尻尾を使うのですね」
何故かフミタンが作業していた。籠にはもう半分以上トウモロコシが入っている。
尻尾、これも必要に迫られて第四形態になる前だが口を付けた。
尻尾ビームはまだ撃てないが、それを使ってトウモロコシのの根っこを噛みきり、近くに置いておいた籠の中へ放り込んでいく。
(アンタはクーデリア放っておいていいのか?)
そんな意味を込めて鳴き声を出すと、
「お嬢様様でしたら心配は要りません。楽しんでいらっしゃる様なのでこのままで宜しいかと」
(え、俺の声で分かるの!?フミタン凄ぇ!)
その後も何故か会話が成立しながらトウモロコシの収穫を続けた。
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近くにあった籠が全て満杯になったので、フミタンに尻尾に結んで貰い一気に運ぶ。
(えーっと今の状況は……)
この辺り一帯の状況をレーダーで探る。
(ん?クーデリアと三日月さんが会話してる……?やべぇ!クッキーとクラッカーが車に轢かれそうになるんじゃねぇか!?)
急いでクッキーとクラッカーの位置を特定して走り出す。
(いくら原作で無事だったとはいえこの現実で無事になるとは限らない!)
今の俺は小型になったお陰でかなり速く走れるのだ。
前方で笑い合いながら車道の方へと走っていく双子を見つける。
(レーダーに車の反応あり!急げ俺!!)
体内のエイハブリアクターをフルで働かせ桜農場の農道を駆け抜ける。
そして、
(よし!間に合った!)
車が来ていることに気が付き固まってしまった二人の前に飛び出し、足を踏ん張りエイハブリアクターの出力を全開にする。
(車が壊れるかもしれないが、知ったことか!)
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「なっ!?子供が!?」
前方に飛び出してきた二人の子供に気付いたガエリオがハンドルを切り急ブレーキを踏む。
しかし荒野を走っているのとスピードを出していたことも有り、ガエリオの努力空しく車は砂埃を立てながら二人にあと何秒かで激突する所まで来ていた。
その時、
「何だアレは!?」
止まってくれ、と祈りながら見ていた前方に急にトカゲの化け物と表現するしかない生き物が飛び出して来てガエリオが驚きの声を上げる。そしてその化け物は、
まるで双子の楯となるように体を丸め、車と衝突した。
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急ブレーキの音を聞いた三日月達が駆けつける。
そこには倒れた双子、そして車から双子を庇って楯となったシンの姿があった。
「シン!?」
驚いた声を上げる三日月。
すると車体側面のへこんだドアから蒼い髪色をした男が出てきた。
「お……おい、お前達大丈夫か?」
動かないシンの体を回り込み、その影で震えながら体を抱き締め合っている二人の無事な姿を確認する。
「良かった……この化け物がクッションになったみたいだッ!?」
ガエリオのその物言いと仲間を傷つけられた事にキレた三日月がガエリオの首もとを掴んで吊し上げる。
「ちょ……お前何を!?」
ガエリオはもがくも三日月は意に関せず力を込めて首を絞めていく。
「た、助け……」
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(お……思ったより強い衝撃がきたな)
俺は先程の姿勢から微動だにしていなく、足だけ地面に少しめり込んでいるだけだった。
ただ、体は無事なものの双子を守るために全衝撃を余すところ無く吸収した結果、今の俺は軽い脳震盪の様な状態だった。
(あの車軍用の頑丈な奴だし、俺の体だってサイズ小さいからなぁ……宇宙行ったら真っ先にサイズ大きくしないと)
一応、今の車による衝撃で体がその攻撃について学習したようで、衝撃に多少強くなった様だった。
(機能は全復旧。えーっと周りはフミタンがクーデリアをトウモロコシ畑の茂みへ隠していて……ん?ガエリオ首絞められてるー!?あれ?双子は無事なのに?……あ、俺の為に怒ってるの?ありがとう三日月さんホント一生ついていきます!でも取り敢えず今は!)
あわてて俺は一声鳴き、三日月さんに無事である事を伝える。
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鳴き声に気付いた三日月がガエリオを下ろしシンの元へ駆け寄る。
「無事?」
コクコクと頷くシンの姿を見て三日月の顔に安堵の微笑みが浮かぶ。
後ろでは咳き込むガエリオがいたが気にせずシンの頭を撫でる。
そこに桜ちゃんが到着した。
「クッキー、クラッカー。何があったんだい」
「私たちが飛び出しちゃって…」
とクッキーが答え、
「シンが助けてくれたの……」
クラッカーも答える。
「そこで咳き込んでるのは三日月がやったのかい」
「そうだよ」
「……状況をろくに確認もせず締め上げたと?」
桜ちゃんは呆れを滲ませながら三日月に事実確認をする。
「うん」
その時、車の助手席からもう一人金髪の男が出て来た。
「いや、こちらも不注意だった。謝罪しよう。あの大きなトカゲが君達を庇ってくれていなかったら今頃大怪我をさせてしまっていただろうからね」
その言葉に漸く回復したガエリオが突っ掛かる。
「おい、マクギリス!俺はこいつにいきなり首を絞められたんだぞ!」
「そこのトカゲ君は無事かな?」
「無視するな!」
それに答えるようにシンも鳴き声で返事をする。
「……驚いたな。言葉が分かるのか?」
「そうだよ!シンはね、スッゴく頭がいいんだよ!」
「それに、尻尾も器用で凄いんだよ!」
双子が返事をする。それを見て一応全員無事だと分かった桜ちゃんが三日月に釘を刺す。
「昔っからカッとなるとすぐこれだ。気をつけな」
「ごめん。桜ちゃん」
謝る三日月、しかしそっちではない。
「謝る相手が違うだろ。まったく……」
そう言ってガエリオの方を示す。三日月はガエリオの方を振り返り、
「あの……すいませんでした」
「何がすいませんだ!」
それを気に食わなかったガエリオが三日月に殴り掛かる。
咄嗟にマクギリスが諌める声を出すもガエリオは拳を振りかぶり……
シンの尻尾のスイングを強かに叩き付けられ、車の開いたドアから頭を縁にぶつけながらダイナミックに再乗車させられた。
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ガエリオが目の前の少年に殴り掛かったが私の予想に反して少年が避ける事無く、代わりに大トカゲ……確か【シン】と言ったか、に尻尾で打ち据えられ結果的に元の車内へ強制的に戻っていった。
「あ~、その人生きてる?」
その少年の言葉にガエリオの文句を言う声が聞こえてこない事に気が付き、駆け寄りガエリオの様子を見るとシートに突っ込んだ体勢のまま動かない。
「生きてる、ただ気を失っているだけの様だ」
シートに座らせてざっと診るが血も出ていなく大した怪我はしていない。
「シンも三日月と同じかい……」
老婆が嘆息をつく。トカゲと人間、姿は違えど仲間を傷つけようとする相手には容赦しないのは同じ様である。その事にあの老婆は頭を痛ませているのだろう。
(ん……あれは?)
ふと少年の首の後ろに棘の様なモノが三本突き出しているのを発見する。
(あれは……【阿頼耶識システム】か。人の体に埋め込むタイプの有機デバイスシステム、未だに使われていると聞いたことはあったが……ガエリオ、いや地球に住む者がこれを見たら気分を悪くするか卒倒するだろうな)
かぶりを振り、阿頼耶識システムを見た瞬間に心の中から湧いてきたアグニカ・カイエルの伝説と自身の野望を振り払う。
(そろそろ基地へと帰らねば……おっと、その前に)
ポケットの中からお菓子を取り出しつつ、シンと戯れている双子に近づく。
「怖い思いをさせてすまなかったね。こんなものしかないが、お詫びのしるしに受け取ってもらえないだろうか」
双子は笑顔でそれを受け取り、お礼を言ってきた。
念のために医者に診せておく事と私の名前を伝え何かあったらギャラルホルン火星支部へ、と老婆に伝える。
そして二人の少年の方へ向き質問をする。
「そういえば、この付近で最近戦闘があったようなのだが、君達は何か気付いた事はないか?」
それに太った少年の方が答える。
「そういえば2~3日前ドンパチやってる音が聞こえたような……けど近くに民兵の組織があるからそこの訓練かなって……ねっ?」
そう言ってもう一人細身の少年の方へ下手なアイコンタクトをとる。
「うん」
口数少なく答える。阿頼耶識といい、何か隠しているのは明白だか……
「なるほど。ご協力感謝する」
ここは放置する事にした。今ここで事を荒立てる必要も有るまい。
「そこの……シン君だったか、君にも謝っておこう。ぶつかってすまなかった」
それに答えてシンが一声鳴く。
「気にするな……だってさ」
(フム、本当に頭がいいのだな)
驚きつつ、車に乗り込む。車を発進させてふと後ろを振り返るとシンが尻尾を振っていた。
苦笑しつつ軽く手を振り返す。
(帰ったらこの事をアルミリアに話したら信じるだろうか?)
いい話の種になる事は間違いないだろう。
「おいガエリオ……まだ気絶してるか」
気絶したガエリオを乗せ、運転しながら思考する。
(農場の少年の証言どおりあの近くにはCGSという民兵組織が存在していたが、経営者が替わり社名も変更になっている。新しい名前は鉄華団、消したかったのは名前だけかそれとも……)
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農場から帰ってくると、基地の壁にでかでかと鉄華団のマークが描いてあった。
(おお……そう言えばこんなマークだったっけ)
遠くでは三日月さんと団長が話していて、シノとライド、タカキがデザインについて話している。
(そうだ……俺がこの場所と仲間を護っていくんだ……)
あの未来の結末が脳裏をよぎる。
(させるかよ、そんな未来)
因みにこの作品ではガエリオの人生結構ハードになるかもしれません。
次回宇宙へ。