「ユージン!シンから報告!相手の姿を捉えた!」
「来たか!オルガを呼ぶぞ!!」
しかし、艦内放送を掛けても一向に来る気配が無い。
なし崩し的にユージンが指揮を執り三日月、シン、バエルの三機を前衛へと向かわせた。
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『三日月さん!!俺が撃ったら突撃を!!』
『分かった』
『バエルに乗ってる……!俺はバエルに乗ってるぞおおおお!!!アグニカァアアアアいっぱあぁぁぁぁあつ!!!』
テンションのおかしいマクギリスが突っ込んでいった場所とは別方向に第四形態のリアクターカノンで凪ぎ払う。
爆煙に紛れてバルバトスが突進し、テイルブレードを縦横無尽に振り回しモビルアーマーを沈めていく。
モビルアーマーがバルバトスの予想以上の攻撃速度に一瞬動きが止まった所を、
『墜ちろ』
『遅い!!』
三日月さんのダインスレイヴ滑空砲による砲撃と俺の斬撃で的確に仕留めていく。
『アグニカ!!バエル!!俺がガンダムだあああああ!!!』
キチガイに刃物とはよく言ったもので、シン達により当時以上のスペックを持つバエルがアグニカの子孫たるマクギリスに駆られふざけた掛け声とは裏腹にバッサバッサと敵を切り伏せていく。
アグニカの戦い方を模倣していたマクギリス。
それはバエルにとって一番アシストしやすい操縦であったので、阿頼耶識がついていないにも関わらず、阿頼耶識持ちと同等の戦闘を展開しまるで英雄のアグニカが甦ったようだった。
ざっと50機程倒した所でユージンから交代の指示が入る。
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三日月達と交代で昭弘、昌弘、ガエリオの三人に出動命令が下る。
『昌弘、その機体はガンダムフレームじゃない。慎重に行けよ』
『分かってる、兄貴!!』
(あの時あった昭弘がここまで強くなるなんてねぇ……)
二人を見ながらラフタはモビルスーツの中で一人考えた。
(最近昭弘の事考えるとざわざわするし……この戦いに参加する!って言ったら姐さんもダーリンも何かニヤニヤしてたし……)
何なのだろう。
(ま、色々考えるにしてもこの戦いを乗り越えてからだよね~)
そう考えながら機体のチェックをしていると急にグシオンから通信が入ってきた。
『ラフタ』
「わっ!?……ど、どうしたの?何か心配事?」
『いや……お前の事は俺が守る』
は、へ?
(え、ちょっと待ってそれって
『ガンダムフレームでなければダインスレイヴの相手はキツいからな』
(やっぱりかーーー!!)
ガッカリした瞬間急に自分の気持ちに気が付いた。
(あれ?つまりガッカリしたって事は私……)
『撃たせる前に倒す。だが万が一の時は……』
「大丈夫だって!シンが防御強化してくれたし、盾もあるしね」
だから、
「安心して敵を倒してきなよ。昭弘の家族は私が守るからさ」
『お前も俺達の家族だ。頼んだぞ』
そう言うと通信が切れた。
多分今の私の顔は真っ赤だろう。
(あ~~!!もう!!絶対生き残ってこんな気持ちにさせた責任取らせるんだから!!)
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宇宙へ飛び出したグシオン達。
《準備はいいか?》
「ああ!【グングニル】起動!!」
グシオンの背後から飛び出してきたキマリスが追加ブースターの推力も加わり、弾丸の様な速さで敵陣へと突っ込んでいく。
キマリスのコックピットでは最初の機械型の蜘蛛の姿をとったアザーが自身を介して擬似的な阿頼耶識を成していた。
《そういやお前の先祖な!数ミリ単位で軌道修正して敵に突撃する人だったらしいぜ!》
「今の俺達はどうなんだ!」
《その精度以上の姿勢制御かつ俺が動力だから当時以上さ!!》
そう。今のキマリスは【グングニル】システムを発動した事により、特徴的な頭部からのレーダー、増設された巨大カメラアイ、アザーによる動力の増加が同時にリンクし恐ろしい正確さと威力を持った思考するダインスレイヴと化していた。
「しかし、粒子の過剰供給でこの様な光の槍になるとは……」
《今は失われた技術だがγナノラミネートソードの研究は元々その現象の追求だったんでね。研究データを拝借して完成させてやったんだよ》
旧来の槍ならいくら頑丈でも一定数の敵を貫けば壊れるのは必至だろう。しかし、この状態の槍ならば無敵の槍となるのだ。
《……ただこの状態を維持し続けると槍が自壊するからな。気をつけろよ》
「分かってるさ。時間以内に出来るだけ相手を墜とす……!」
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『ロングホーン!!』
『トレイン!!』
これで五度めの出撃で、今回は昭弘、昌弘、三日月が出撃している。
「ハハハハハ!!!何だその必殺技……!!」
「シノ笑ってないで撃って!」
「ほいよ!ギャラクシーキャノン!!」
両手に構えたグシオンからお下がりの銃をぶっ放す。
「直撃……流石だね」
「しゃあ!次だ!!」
ヤマギからの三機の予想進路からモビルアーマーが密集している場所へ両肩のスーパーギャラクシーキャノンを撃ち込んでいく。
先程までの無茶苦茶な軌道を描いていたバエルが居ない分支援砲撃がやりやすい。
「グシオンの銃と剣ももう無いしそろそろキツくなってきそうだね……」
グシオンは銃は撃ち放った後棍棒代わりにそれで殴り掛かり何故か昌弘も真似したせいで二人とも強制的に前線へ出てプロレス技でモビルアーマーを沈めていた。
「でもそっちの方が戦果が上だぜ?」
「そうなんだよね……滅茶苦茶だよ」
そして二人とも素手の方が戦闘力が上という普通のモビルスーツの開発者が聞いたら卒倒しそうな状況になっていた。
『タワーブリッジ!!』
『ベルリンの赤い雨!!』
『筋肉バスター!!!』
『筋肉ドライバー!!!』
『『完成!!マッスルドッキング……!!!』』
モビルスーツのプロレス技でモビルアーマーが倒されていく状況の中、連戦で少しボーッとしてきたシノが何ともなしにヤマギに問い掛けた。
「そういやお前って俺の事好きなの?」
「ブッ!!……今訊くの!?ってシノ!!あのモビルアーマーから……!」
「!何処だ!?」
「えっと……!」
ヤマギが慌てている間にダインスレイヴがイサリビへと撃ち込まれそうになるが、
……ハンマーヘッドの格納庫から光条が伸び迫るダインスレイヴを焼き払い、撃ったモビルアーマーはバルバトスが周囲の機体ごとメイスで吹き飛ばした。
「あっぶねぇ……サンキュ、シン、三日月」
「ほらシノ、今の話は後で!!次が来るよ!!」
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戦闘開始から何時間も経った。
鉄華団のモビルスーツは圧倒的だった。
しかし、倒しても倒してもモビルフォートレスから敵が出て来る。
一向に減る様子の無いモビルアーマーの群れに徐々に鉄華団の士気が落ちていく。
精神的支柱となる団長が不在なのも大きいだろう。
「くそっ、オルガは何処に行ったんだよ!!」
戦いが始まってから何度目とも分からない愚痴をユージンがこぼす。
その瞬間。
「困ってるみたいだなァ!ユージン!!」ヒック
上半身の服を脱いだオルガがイサリビのブリッジへと姿を現した。
「オルガ!!何処行って……え」
予想外の格好にビスケットが目を見開く。
「あの、団長さん。その格好は……?」
「はっはっは!!」
(((答えになってない!?)))
「任せて済まなかったなユージン。俺が代わる」
そのまま艦長席に居たユージンにそう告げる。
「お、おう」
謎の威圧感に素直にどくユージン。
そしてドッカリと座ったオルガは自身の阿頼耶識をイサリビへと接続する。
「ちょ!?オルガ!?」
慌てる周りを気にせずオルガは堂々とした声で命令を放った。
「イサリビ!!ホタルビ!!合体だァ!!!」
「……は?オルガ何を」
【了解シマシタ、団長ノ声紋認識……確認完了。イサリビ、ホタルビ、ドッキングモードヘ移行シマス】
「はあぁ!?」
ユージンが驚愕する。
艦長席には馬鹿笑いするオルガと謎のコマンドを受け付けたイサリビ。
これで驚くなという方が無茶である。
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【コレヨリイサリビ、ホタルビ、両艦ドッキングモードヘ入リマス】
当然ハンマーヘッドに居た俺達へもその警告が送られてきた。
「は!?誰がやったの!?」
「シン君!!アレって確か団長の音声認証が必要だったよね!?」
「そうだよ!?何で?……ホント何で!?」
今は三日月さんに昭弘のツートップが出撃している。
一体何が起きてるんだ……?
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《そういや動力無いんじゃね?……俺の出番かな♪》
「アザー?何処へ行くんだ?」
《いやいやチョーっとお手伝いをね!!》
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【イサリビ、上半身変形完了】
【ホタルビ、下半身変形完了】
【団長ニヨル最終承認ヲ……】
「やれ!!ドッキングだああああ!!」
【団長ニヨル最終承認ヲ確認、ドッキング開始】
「何がどーなってんだよー!!??」
ユージンの悲痛な叫び声が響く中、両艦が合体していく。
【動力確認……該当セズ。直チニ確認ヲ】
《いるさ!!ここに一人なぁ!!!》
ハンマーヘッドから飛び出してきたアザーが形態変化をして黒い正方形へと変化する。
そしてイサリビが変形して出来た巨大な上半身の胸部へと格納された。
【
イサリビ、ホタルビの赤い外装が一斉に弾け飛び、中から純白の装甲が姿を現す。
心臓部から身体の各所に走るラインが紫色の光を放ち、最後に一本角の巨大なガンダムの頭部がせり上がって来た。
【全行程終了。ガンダムフレーム・
「ハッハッハッハッハァ!!!お前らァ!!これが俺らの最終手段だ!!止まるんじゃねぇぞ!!!」
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艦内はアザーの重力制御によって一切負荷は掛かっていない。
またご丁寧にもこの機体の活躍を教えるべくハッキングした監視衛星からアリアドネを経由して、乗組員と全世界へと最高に格好いいアングルから撮られた映像を送り届けていた。
『行くぞオラァァァァァ!!!』
ゴジラ一体を丸々使った出鱈目な出力にものを言わせて【
艦長席のオルガが拳を握り締めると【
そして手近にいたモビルアーマーに殴り掛かる。
圧倒的な出力により粘土のようにモビルアーマーの姿が押し潰れる。
そのまま拳を振り抜き、吹き飛ばした残骸が近くにいたモビルアーマーを纏めてスクラップへと変貌させた。
三日月達を相手にしていたモビルアーマー群が一斉に新たに出現した敵へと突進する。
オルガがその軍団に左手を掲げた。
【
そして、アザー制御によるリアクターカノンを敵の密集地帯へと放つ。
シンの放つものより大口径の光条がモビルアーマーを焼き払う。
戦場に突如現れ圧倒的な戦力で敵の半数を駆逐した【
それに対して今まで沈黙を保っていたモビルフォートレスが動いた。
全モビルアーマーを体内へ格納し、そのエネルギーを持ってして超巨大なダインスレイヴを連射する。
そんなものに当たる【
『おい!刀!刀はねぇのか!!』
【検索……一致。該当項目:【
右腕が変形し腕そのものが巨大な対艦刀へと変貌した。
即座にエイハブ粒子の過剰供給が行われ、刀身が極光を放つ。
【超過駆動開始、約300秒後ニ自壊シマス】
『上等だァ!!その前にたたっ斬る!!』
ブリッジにいたメンバーか全員その気迫に飲まれて何も言えない中、フミタンだけ滅茶苦茶キラキラした目で団長の勇姿を目に焼き付けていた。
【
そして。
『オラァァァ!!!』
遂に【
蹴りと斬撃の継ぎ目無い連撃になす術もなく甚大なダメージを与えられていく。
生き残ったモビルアーマー達がモビルフォートレスを攻撃する【
『させないよ!!』
『やっぱオルガは凄いな』
『アレがオルガかよ!?』
『団長さんも鍛えてたからな!!』
『アッヒャッヒャッゲホッゲホッ!!』
『シノ笑いすぎだよ』
この千載一遇のチャンスに総攻撃を仕掛けた俺達が敵を刈り取る。
『素晴らしいぞ!!オルガ・イツカ!!最っ高にCOOLだ!!』
『何だあの出鱈目な性能は……』
『気にしたら負けですよ。ヴィダー……ガエリオ』
『これは勝ったね~!撃ち漏らしたのを倒しに行きますか!』
最後の一撃をくれてやるべく一旦距離を取った【
『バカな!!人間ごときが!!この私達を!!』
『機械ごときが!!俺達の未来に立ち塞がるんじゃねえぇぇぇぇ!!!!』
光の束が機械を真っ二つに斬り裂き……