遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 記念すべき第10話!!

 今回はリクエスト頂いた、初の水着回です!

 ※この作品は、ギリギリ健全です。



TURN - 10 Seaside Encount

 

 透明度の高い海と、どこまでも続く白い砂浜。突き抜ける様な青い空。

 

 ボクは浜辺で、ビーチパラソルの下に設置したサマーベッドに(あお)()けに寝転がり、さざ波の潮騒(しおさい)をBGMにして、心地よい昼寝を堪能していた。

 

 服装は、前を開いた白シャツ一枚に、紺色(こんいろ)のハーフパンツ。リゾートスタイルのアウトドアコーデで、バッチリ決めている。

 眼鏡(メガネ)も普段の赤メガネではなく、黒のサングラスを掛けてみた。

 

 気分は正に、南国でバカンスを満喫するセレブだ。

 

 

 

「……あぁ、癒される…。やっぱり夏と言えば海だね、ルイくん」

 

「そうですねぇ、セツナ先輩」

 

 

 

 (となり)でジュースを美味(お い)しそうに飲んでいる茶髪の少年・(いち)()() ルイくんと、そんな気の抜けた会話を交わす。

 

 ルイくんは水色のスウェットパーカーを羽織(は お)り、下は白のショートパンツを穿()いていた。

 裾口(すそぐち)から伸びる、細くて色白(いろじろ)太股(ふともも)だけを見たら、女の子と間違えてしまうかもしれない。だが男だ。

 

 

 

「まさか海水浴に誘ってもらえるなんて思わなかったです。…その……ありがとうございます」

 

「喜んでくれて良かったよ。言い出しっぺはマキちゃんだけどね」

 

 

 

 そう。なんと今日は(みんな)で、休日を利用して、海水浴に来ているんだ。

 

 切っ掛けは5日前。

 

 マキちゃんが唐突に、「そうだ、海に行こう!」、と、言い出したのが始まりだった。

 集まった(メン)()は、アマネとマキちゃんに、ボクとルイくんの計4名。ルイくんはボクが誘いました。

 

 ちなみに肝心の(じょ)()二人(ふたり)は今、更衣室にて、お着替え中。そろそろ戻ってくる頃だけど……

 

 

 

「お待たせー!」

 

「ごめんね、待った?」

 

 

 

 おぉ、ちょうど帰ってきたようだ。うたた寝していた意識を覚醒させて、上半身を起こす。

 

 

 

「…………わお…」

 

 

 

 思わず感嘆の声が漏れた。

 

 そこには全・男子諸君お待ちかね、水着姿の、アマネとマキちゃんが立っていた。

 

 アマネが着ているのは黒のビキニで、柄は無地。トップスは三角タイプで、ショーツは(ひも)パンだった。下着みたいなセクシーなラインに、ドキッとしてしまう。

 大きな(むね)、くびれのある細い(ウエスト)、しなやかな美脚。

 モデル顔負けのスタイルの良さを、水着の黒色が強調していて、とても似合っていた。肌も雪の様に白く、眩しい。

 

 マキちゃんも負けてはいない。

 ピンクと白のボーダー柄という、可愛(かわい)らしいデザインのビキニを身に(まと)っており、トップスはホルターネック。ショーツはアマネと同じく、(ひも)パンを穿()いている。

 形よく隆起した胸部や、キュッと引き締まった小さくて上向きなヒップ、流麗な曲線を(えが)く、すらりとした体型は、アマネに全く引けを取らない。

 

 ふつくしい……。気づけば、グラサンが()り落ちたのも(かま)わず、ボクは二人(ふたり)の大胆な格好に見惚(み と)れていた。

 ルイくんも、魅入(み い)って(われ)を忘れているみたいで、飲み物をドバドバと(こぼ)している。

 

 よし、この絶景は今の内に網膜(もうまく)に焼き付けよう。目の保養、目の保養。

 

 

 

「フフッ、さっきから見過ぎだよ~?セツナくんの、エッチ」

 

「ギクッ!?」

 

 

 

 マキちゃんに感づかれ、アマネにもジト目で睨まれたので、ボクとルイくんは急いで視線を逸らす。

 

 

 

「……あのさ、セツナ。…ちょっと…頼みがあるんだけど……いいかな?」

 

「頼み?」

 

 

 

 アマネは珍しく(しお)らしい口調でボクに言った後、パラソルの(かげ)に敷いておいたレジャーシートの上に、ゆっくりと腹這いで寝そべった。

 そして、どこか恥ずかしそうに顔を赤らめながら、その頼み事の内容を(くち)にする。

 

 

 

「せ、背中に……オイル、塗ってくれない…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在ボクは、うつ伏せ状態のアマネの(そば)にスタンバイしている。

 片手に持っているのは、マキちゃんから押し付けられたプラスチック製の容器で、中身はUVカット用のオイル。分かりやすく言うと、日焼け止めだ。

 

 アマネはビキニのトップスを外して、無防備な背中をこちらに晒している。

 シミひとつない健康的な美肌だ。これから、この素肌に両手で(じか)()れて、オイルを塗りたくっていくのか……って、いやいや、ちょっと待とうか。

 

 

 

「こ、こここ、こういうのは、女の子(マキちゃん)がやった方が良いんじゃないかな!?」

 

「マキちゃんは変なとこ触るからダメ」

 

 

 

 (ども)りながら(うわ)ずった声で提案してみたけれど、アマネにそれを一蹴された。

 まぁ、マキちゃんの場合は日頃の行いがアレ(・ ・)だから、彼女に任せたら絶対、ただ塗るだけじゃ済まなそうだしね……。

 

 

 

「アマネたんのイケズー」

 

「せ、先輩…ファイトです…!」

 

 

 

 マキちゃんは信用の低さに対して不満を吐きつつも、完全に面白がっている顔をしていた。

 ニヨニヨしてるもん!含み笑いを隠そうともしないもん!

 

 

 

「は、早くしてよ……」

 

「う…うん!じゃあ、塗るね…?」

 

 

 

 れれれ冷静になれ!ただ日焼け止めを塗るだけだ!アマネの艶肌(ツヤはだ)を、紫外線から守る為に必要な事なんだ!

 

 ボクは一呼吸おいて、適量のオイルを手に取り、それをアマネの背中に塗りつける。

 

 

 

「…ッ…ん…!」

 

 

 

 途端、アマネは身体を微かに震わせて、押し殺した様な声を発した。ボクは吃驚(ビックリ)して手を止めてしまう。

 

 

 

「だ、ダイジョウブ?」

 

「ん……大丈夫、だから……続けて…?」

 

 

 

 半裸で言われると意味深に聞こえて、心臓が()たないんですがアマネさん。

 

 恐る恐る、日焼け止めの塗布(と ふ)作業を再開する。

 背中の柔らかい肌触りと、オイルのヌルヌル感が手の平いっぱいに伝わってくる。

 ずっと触っていたい欲求に駆られたけど、アマネの(くち)からは断続的に「あん…!」とか「んぅ…!」と言った、()(いき)()じりの(なや)ましげな声が洩れるので、ボクの理性が崩壊する前に終わらせないと色々な意味でヤバイ。

 

 

 

「……むぅ~、セツナくん()れったーい!あたしが手本を見せてあげる!」

 

「えっ!?ちょ…!」

 

 

 

 突然マキちゃんが(しび)れを切らしたのか乱入してきた。

 ボクを押し退()け、光の早さでオイルを自分の手に垂らすと、瞬時にアマネの身体を揉み(ほぐ)し始める。

 

 

 

「ひゃあんっ!?」

 

 

 

 するとどうだろうか。先程まで必死に声を抑えていたアマネが耐え切れず、甲高い矯声(きょうせい)を響かせた。

 慣れを通り越して、洗練された手つきだ。これが長年の経験(?)の賜物(たまもの)か…!

 

 

 

「ほらほら。日焼け止めは満遍(まんべん)なく塗らないと、ムラが出来ちゃうでしょ?アマネたんは敏感肌なんだから、全身に(・ ・ ・)(くま)なく塗ってあげないと!」

 

「全…!?ま、マキちゃん!前は自分で塗るから良いって…!」

 

「ヌフフフフッ……アマネたーん、観念なさい!」

 

「あっ…!!」

 

 

 

 アマネの抗議も虚しく、マキちゃんはアマネの胸に遠慮なく右手を伸ばした。

 塗られたオイルが文字通り、潤滑油の役目を果たしているので、手は容易(たやす)く胸の谷間へと(すべ)り込んだ。

 

 マキちゃんはその態勢のまま、アマネを(あお)()けに引っくり返す。

 アマネは(すで)に、マキちゃんの手練手管で身体が()(かん)し、すっかり脱力してしまっている。

 あの気丈なアマネが抵抗する素振りすら見せない。

 

 

 

「さぁ、お次は前をマッサージしましょうね!」

 

「や、やめろこの変態……んんっ!?」

 

 

 

 マキちゃんはオイルにまみれた手を、アマネの柔らかな双丘に這わせる。

 最初は円を描く様に、ゆっくりと揉み回し、時には寄せて上げたり、優しく圧迫してみたりと、無駄に熟練された様々な技法(テクニック)を駆使して、重点的に胸を攻め……オイルマッサージをしている。

 

 マキちゃんの指先が()れる(たび)に、身体を痙攣(けいれん)させ、(もだ)えるアマネ。

 18禁ギリギリの展開だ。大丈夫なのかこれ。

 

 

 

「……先輩?前が見えないです……」

 

「る、るる、ルイくんにはまだ早いから!」

 

 

 

 (とし)の差が1歳しか違わない後輩に対して何を言ってるんだと我ながら思ったけど、彼には刺激が強すぎると判断したので、ルイくんの両目を手で覆い隠した。

 

 

 

 --- しばらく揉みしだいて、ついに満足したのか。マキちゃんはアマネの胸から手を離した。よかった、やっと終わ……

 

 

 

「さてと、残るは()だね!」

 

「 」

 

「 」

 

 

 

 …ってなかったあああああ!!!!

 

 再び日焼け止めオイルを手に付けるマキちゃん。最早その笑顔も悪魔にしか見えない。

 

 

 

「大丈夫だよ。怖くないよ。むしろもっと気持ちよくなれるよ」

 

「そ……そんなぁ……」

 

 

 

 流石のアマネも涙目になっていた。

 

 マキちゃんの魔の手がアマネに伸びる。

 あぁ!いきなりそんなところを!?ちょ、マズイですよマキちゃんさん!そんなことしたら見え【 自 主 規 制 (ピーーーーーーーー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、二人の官能的な絡み合いは、ようやく終了した。

 

 

 

「はいおしまーい!お疲れアマネたん」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 

 結局、本当に全身にオイルを塗りたくられたアマネは、起き上がる気力も無いのか(いま)だ動けないでいる。

 

 粘度の高い液体で身体中を濡らし、赤い(ひとみ)(うる)ませ、(ほほ)を紅潮させ、乱れた呼吸に合わせて緩やかに()(ふさ)を揺らす姿は何とも、エロかった。

 

 ボクはというと、(おさ)えるのが大変だった。ナニをって、その……ねぇ…?

 

 と、とにかく!これでアマネの肌が日に焼ける心配はなくなった。当初の目的は果たせたし結果オーライ!……の、(はず)

 

 

 

「……ていうか!まだ海にも入ってないのに早くもヘトヘトにしてどうするの!?」

 

「フッフーン。アマネたんの身体を知り尽くした、このあたしの手にかかれば、ザッとこんなものよ!」

 

「褒めてないから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休日なだけあって、海岸は大勢の人々で賑わっていた。

 小さな子供や親子連れもチラホラ見かけるけど、全体的には、ボク達と同年代ぐらいだったり、二十代の男女の比率が多い印象だ。

 

 うん。やっぱり女の子の水着は良いものだね。

 そう言えば……以前、学園で決闘(デュエル)した、『十傑(じっけつ)』の鰐塚(ワニヅカ)ちゃんが水着を着たら、どうなるんだろう?

 グラマラスな体型(ボディ)してるからなぁ。きっと凄い破壊力に違いない。アマネやマキちゃんと、良い勝負だろうな。

 なんて事をボンヤリと考えていると、眼前に球体が飛んできた。

 

 

 

「どうおあっ!?」

 

 

 

 脊髄反射で両手を顔の前に出し、すっ頓狂な声を上げつつ、飛来してきた球体を間一髪で(はじ)く。

 危うく顔面に直撃して、グラサンが割れるところだった。ボクは余所見(よ そ み)していた意識を、瞬時にそちらへ引き戻す。

 砂浜に組み立てられたネット。空中で回転しているボール。

 あぁそっか。今は4人で、ビーチバレーをしてたんだっけ。

 

 

 

「アマネ!よろしく!」

 

「あいよ!任せな!」

 

 

 

 同じチームの相方であるアマネに、ボクが打ち上げたボールを託す。

 ネットで分断した反対側に立っているのは、ルイくん&マキちゃんのチーム。

 アマネの、「マキちゃんとは敵対したい」という明らかに私怨の混ざった希望に沿って、決定したチーム分けだ。

 

 

 

「食らえマキちゃん!積年の恨み、今ここで晴らす!」

 

(きみ)ら本当に友達!?」

 

 

 

 ついツッコミを入れてしまった。ひとまずそれは置いといて。

 

 アマネは空高く跳躍し、舞い上がったボールに右手を叩き付け、スパイクを打ち込む。

 弾丸の如き速度(スピード)で打ち出されたボールは、風を切り、相手コートの地面へと一直線に着弾。

 衝撃で巻き上げられた砂の量が、その威力を物語っている。

 ついでにアマネが入魂した、(えん)()(ねん)の強さも。

 

 

 

「うひゃあ~!これ本気で殺しに来てない?アマネたん」

 

「あわわわわわ……!」

 

 

 

 マキちゃんは()(かく)、ルイくんは今の一撃で、完璧に心が折れてしまったらしい。お気の毒に。

 

 

 

「ナイスショット!アマネ!」

 

「セツナこそ、ナイストス!でも他の女の子見てると怪我するわよ」

 

「うっ!バレてた!?」

 

 

 

 とりあえず得点は喜ぼう。ボクはアマネと、ハイタッチする。

 

 

 

「……あの二人お似合いだね~。ね?ルイちゃん」

 

「えっ?あ、はい……そう…ですね……ルイちゃん…?」

 

 

 

 ん?マキちゃんとルイくん、何の話をしてるんだろ?

 

 

 

「セツナ、サーブよろしく」

 

「あ、うん」

 

 

 

 おっと、今度はボク達のサーブで試合(ゲーム)開始か。

 ボクはボールを構えて、自陣のサービスゾーンに立つ。

 いくらビーチバレー用の柔らかいボールと言っても、男のボクが全力で打ったら、それこそ怪我させてしまいかねない。

 だから攻撃はアマネに一任して、ボクは彼女のアシストに専念しよう、そうしよう。

 

 

 

「んじゃ、行くよー?ほいっと!」

 

 

 

 なるべく軽めの(ちから)加減でサーブを打つ。

 ボールは山なりに飛んでいき、ネットを難なく越えて敵陣に到達した。

 この軌道なら、ルイくんの真上にピンポイントで落ちる。さぁ上手く返せるかな?

 

 

 

「わっ、わ、わ……!」

 

 

 

 ルイくんは(あわ)ただしく手を動かすだけで、ひどく狼狽(うろた)えている。うん、無理そうだ。

 

 

 

「ルイちゃん危なーい!」

 

「わあっ!ま、マキノさ…んむっ!?」

 

 

 

 そこへマキちゃんが颯爽とフォローに入り、ボールを代わりにレシーブしてくれた。

 しかし、斜め前に飛び込んだ際の勢いを殺せず、ルイくんと接触して、マキちゃんの胸の中に、ルイくんの小さな顔が埋まった。これが俗に言う、ラッキースケベか!

 

 

 

「おぉ、やるねぇルイくん。……ん?アマネどこ行った?」

 

「チャンスボール、貰った!」

 

「容赦なし!?」

 

 

 

 相手チーム2名が仲良く砂地に倒れ込んでいる事など意に介さず、アマネはマキちゃんが打ち返したボールを狙って、いつの間にか地を蹴り、ジャンプしていた。

 まるでバレーボールの経験者の様な美しいフォームだ。レーザービームばりの豪速球スパイクが再び炸裂するのか。マキちゃん逃げて超逃げて。

 

 

 

 --- ところがそうはならなかった。

 

 

 

「!?」

 

 

 

 突如、アマネがアタックしようとしたボールを、何かが刺し貫いた。

 注視すると、それは何枚ものカードだった。

 カードで串刺しにされたボールは砂浜を数回バウンドし、やがてボクの足下まで転がってくる。

 誰がこんな真似を?……というのは、考えるまでもなかった。すぐ近くに、犯人が現れていたからだ。

 

 

 

「あれー?アマネじゃねーの?久しぶりだなぁ~、おい」

 

 

 

 アマネの名を親しげに呼ぶのは、黒のアロハシャツを着こなした若い男。

 長い黒髪を、後ろの高い位置で束ねた髪型で、顔の左半分には刺青(タトゥー)が刻まれている。

 整えた顎髭(アゴヒゲ)を生やし、両耳に数個のピアス。下唇の端にも、リング型のピアスを一つ開けていた。

 インパクト抜群の外見をした、厳つい兄ちゃんだった。多分ボク達より年上だろう。タバコ吸ってるし。

 

 

 

「げっ……鯨臥(いさふし)…!」

 

 

 

 男の名前を『鯨臥(いさふし)』と呼びながら、何故か苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべるアマネ。

 どうやら知り合いみたいだ。

 

 

 

「ははっ、おいおい苗字(みょうじ)なんて余所余所(よ そ よ そ)しいぜぇ?昔みたいに『(オト)()』って呼んでくれよ。なぁ、アマネ?」

 

「…………」

 

 

 

 鯨臥(いさふし) (オト)()。それが男のフルネームらしい。

 

 親しいと言うよりは、馴れ馴れしい態度でアマネに近づく男…鯨臥(いさふし)

 対して、アマネが彼に向ける眼差しは、決して好意的なものではなかった。

 むしろ……敵を見る目。明確な敵意が込められている様に、ボクには思えた。友人…の線は薄そうだ。

 

 

「オトヤー、何してんの~?」

 

「おっ!ナンパ?しかもメッチャ良い女じゃん!」

 

「ズリーぜ、オトヤばっか!俺らにも分けてくれよ!」

 

 

 

 今度は鯨臥(いさふし)の仲間らしき、数人の若い男女がゾロゾロと此方(こちら)にやって来た。

 いかにも柄の悪そうな(ナン)()な集団は、鯨臥(いさふし)に詰め寄られているアマネに目を付けると、瞬く間に彼女を囲んでいった。

 これは……雲行きが怪しくなってきたかも…。

 

 その時、鯨臥(いさふし)(くち)(ひら)いた。

 

 

 

「ちげーよ、バーカ。こいつ、俺の元カノ」

 

「!?」

 

 

 

 うそぉ!!アマネって元カレいたの!?

 

 いや、アマネの恵まれた容姿を考えたら、彼氏の一人や二人いても、別に不思議な事ではないけど……。

 

 

 

「今さら何の用なの?私に」

 

「せっかくの再会だってのに、んな顔すんなよアマネ。また一緒に遊ぼうぜ?昔みてぇに、よぉ…?」

 

 

 

 ねっとりした声で語りかけながら、鯨臥(いさふし)は右手にタバコを持ち、アマネの肩を、左手で撫でた。

 --- ()めた方が良い。

 そう直感したボクは、二人の間に割って入ろうと足を踏み出した。すると……

 

 

 

「……!」

 

「……マキちゃん…?」

 

「…あ"ぁ…?」

 

 

 

 ボクよりも先に、マキちゃんが鯨臥(いさふし)の手を払い除けて、アマネを(かば)った。

 マキちゃんのあんな真剣な表情、初めて見た。なんだかんだでアマネとマキちゃんは、固い絆で結ばれた、親友なんだね。

 

 

 

「アマネちゃんが嫌がってるでしょ。どっか行ってよ」

 

「…………フハッ!」

 

「くくっ、どっか行け!だってよ?」

 

「つかこの子も可愛いじゃん。俺が貰っていー?」

 

 

 

 それでも連中は、一向に聞く耳を持たない。やはり(ボク)が仲裁するしか無さそうだ。

 

 ボクは先程ボールに突き刺さったカードを全て引き抜くと、それを鯨臥に向けて投げ飛ばした。

 

 

 

「!!」

 

 

 

 鯨臥は(とっ)()に反応して、上手いことカードをキャッチする。鋭い眼光がボクを睨み付けた。

 

 

 

「……何のつもりだ?手前(てめぇ)…!」

 

「返してあげたんだよ、君のカード」

 

 

 

 怯むなよ、ボク。こういう時は、少しでも弱腰になったら負けだ。常に()(ぜん)としていなくちゃ。

 

 

 

「ねぇ元カレさん。悪いんだけど、今日のアマネはボク達と遊んでるんだ。デートのお誘いは、また今度にしてもらって良いかな?」

 

「…!セツナ…?」

 

「……なんだと…?」

 

 

 

 アマネの肩に腕を回して、抱き寄せながら言い放つと、鯨臥の顔つきが急に(けわ)しくなった。明らかに機嫌を損ねているのが見て取れる。

 

 続けてボクは、この状況を切り抜ける、唯一の方法を提言する。それは……

 

 

 

「どうしてもって言うなら、そうだね……決闘(デュエル)で決めようよ。ボクと1対1で」

 

決闘(デュエル)だぁ?俺に勝てるつもりかよ」

 

「勝った方がアマネと遊べる。どう?簡単でしょ?」

 

 

 

 決闘者(デュエリスト)なら、受けざるを得ない交換条件だ。後は、ボクが負けなければ良い。

 

 

 

(……ケッ、バーカが。手前(てめぇ)を瞬殺するだけでアマネが手に入るなら、チョロいもんだぜ)

 

「おもしれーじゃねぇか。(かる)~く(ひね)ってやるよ、小僧」

 

 

 

 タバコを吐き捨て、首を鳴らしながら、余裕そうに笑う鯨臥。実力に相当な自信があるのだろうか。

 

 

 

「小僧は()めてよね。ボクの名前はセツナ。総角(アゲマキ) (セツ)()だよ」

 

「ちょ…セツナ!こんな奴ら相手にすることないって!」

 

「アマネは下がってて。マキちゃんも。ここはボクが(おさ)めるからさ」

 

「セツナくん…」

 

 

 

 ボクと鯨臥は適当な距離を空け、互いに決闘盤(デュエルディスク)を起動させる。まさか海に来てまで決闘(デュエル)する事になろうとは。

 

 勝負の前に、ボクはサングラスを取り外して、赤メガネに付け替えた。

 やっぱり決闘(デュエル)の時は、赤メガネ(こ っ ち)の方がやり(やす)いからね。

 

 

 

「準備オッケー。いつでも良いよ」

 

「身の程を教えてやるぜ、小僧!」

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 4000

 

 鯨臥(いさふし) LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

「俺の先攻だ!俺は手札から【ジェネラルデーモン】を墓地に捨てる事で、デッキから【万魔殿(パンディモニウム)(あく)()巣窟(そうくつ)-】を手札に加える!」

 

「…!悪魔の巣窟…!?」

 

「とくと(おが)ませてやるぜ…!フィールド魔法・発動!【万魔殿(パンディモニウム) -悪魔の巣窟-】!!」

 

 

 

 鯨臥がディスクのフィールドカードゾーンにカードをセットした瞬間、フィールドは海辺の景観ぶち壊しの、おぞましい空間へと変貌(へんぼう)()げた。

 

 

 

「ヒュー。オトヤの奴、(しょ)っぱなから【万魔殿(パンディモニウム)】かよ」

 

「あいつ、野郎(ヤロー)にはとことん容赦しねぇからな。ギャハハッ!」

 

 

 

 決闘(デュエル)を観戦していた鯨臥の仲間達が笑いながら話しているのが聞こえた。

 いきなり全開か……望むところだよ!

 

 

 

「俺は【ゼラの戦士】を召喚!」

 

 

 

【ゼラの戦士】 攻撃力 1600

 

 

 

「さらに【ゼラの戦士】をリリース!現れろ!【デビルマゼラ】!!」

 

「!」

 

 

 

 (けん)(ヨロイ)で武装した屈強な戦士は闇に飲み込まれ、邪悪な魔族と化した。

 

 

 

【デビルマゼラ】 攻撃力 2800

 

 

 

「【デビルマゼラ】の効果発動!召喚時、相手の手札をランダムに3枚捨てる!」

 

「ええっ!3枚も!?」

 

 

 

 デュエルディスクが自動で選出した3枚の手札を、泣く泣く墓地に送る。

 

 

 

(うぅ…【ラビードラゴン】も持ってかれた…!)

 

 

 

 せっかく手札に控えていた自慢のエースカードを、早くも捨て札にされた。嘆かわしい。

 

 

 

「カードを1枚伏せて、ターン終了だ。手前(てめぇ)のターンだぜ、小僧!」

 

「だからセツナだってば。ボクのターン、ドロー!」

 

 

 

 正直、最初のターンから手札を減らされたのは痛手だ。動きにかなり制限が掛かる。

 

 

 

(…まっ、やれるだけの事はやるよ)

 

「自分フィールドにモンスターがいない時、墓地から【ミンゲイドラゴン】を特殊召喚できる!」

 

 

 

【ミンゲイドラゴン】 攻撃力 400

 

 

 

 これで【ラビードラゴン】が手札にあれば、【ミンゲイドラゴン】をリリースしてアドバンス召喚できたんだけど……墓地に行ってしまったのでは仕方がない。

 

 

 

「さらに【ドラゴラド】を通常召喚!」

 

 

 

【ドラゴラド】 攻撃力 1300

 

 

 

「【ドラゴラド】が召喚に成功した時、墓地から攻撃力1000以下の通常モンスターを、守備表示で特殊召喚できる!出ておいで!【ヤマタノ(ドラゴン)()(まき)】!」

 

 

 

【ヤマタノ竜絵巻】守備力 300

 

 

 

 フィールドに、赤い竜の()(えが)かれた絵巻が出現する。

 

 

 

「ぎゃはははっ!!なんだそれ!今時そんなカード使ってるやつ見たことねぇよ!」

 

「さっきから雑魚(ザ コ)モンスターしか召喚してねーし!そんなんでよくオトヤに『決闘(デュエル)しろ』なんて言えたなぁ、ガキンチョ!」

 

 

 

 何が可笑(お か)しいのか下品な笑い声を上げる男達。失敬だな、こんなにカッコいいのに。

 

 

 

「あいつら…!」

 

「落ち着いて、アマネちゃん。セツナくんなら大丈夫だから」

 

 

 

 マキちゃんの言う通り。野次や罵声(こ ん な の)は九頭竜くんと決闘(デュエル)した時に、もう慣れてる。ボクは気にせず、ターンを続行した。

 

 

 

「ボクは手札から魔法(マジック)カード・【突撃指令】を発動!自分フィールドの通常モンスター1体をリリースして、相手モンスター1体を破壊する!」

 

「んだとぉ…!?」

 

「行け!ヤマタノ竜絵巻!!」

 

 

 

 絵巻の中の(ドラゴン)が実体化して、敵モンスターに突撃。【デビルマゼラ】を破壊した。

 

 

 

「ぐおっ…!馬鹿(バ カ)な……俺のモンスターがこんな雑魚に…!」

 

「ボクの可愛いドラゴン達をバカにすると、痛い目みるよ!」

 

「……だが残念だったな?伏せ(リバース)カード・オープン!【デーモンとの駆け引き】!」

 

「!?」

 

「俺のフィールドの、レベル8モンスターが墓地に送られた事で、デッキから【バーサーク・デッド・ドラゴン】を特殊召喚できる!来い!【バーサーク・デッド・ドラゴン】!!」

 

 

 

【バーサーク・デッド・ドラゴン】 攻撃力 3500

 

 

 

「攻撃力……3500…!」

 

 

 

 まさか【デビルマゼラ】すら、このモンスターを召喚する為の布石に過ぎなかったとは…!

 

 

 

「ッ…!ボクはカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

「俺のターン!【バーサーク・デッド・ドラゴン】で、【ミンゲイドラゴン】を攻撃ィ!『ジェノサイド・カノン』!!」

 

 

 

 不気味な異容のドラゴンの口から、巨大な火球が放たれる。

 標的となった【ミンゲイドラゴン】は、爆破され消滅してしまった。

 

 

 

「うぅ…!ぐっ…!」

 

 

 

 セツナ LP 4000 → 900

 

 

 

「せ、先輩のライフが…!?」

 

 

 

 たった一撃で、ライフを3(ケタ)まで削られた…!ディスクのライフカウンターに表示されている数字の色が赤に変わる。

 

 

 

「これで終わりじゃないぜぇ?【バーサーク・デッド・ドラゴン】は、相手モンスター全てに連続攻撃が可能!!」

 

「!?」

 

 

 

「そんな…!【ドラゴラド】に攻撃されたら先輩は…!」

 

「セツナ…!」

 

 

 

 バーサーク・デッド・ドラゴンは、再び口腔(こうくう)に炎を(あふ)れさせ、追撃の態勢で(あるじ)の命令を待つ。

 

 

 

「くっ……!」

 

「トドメだ小僧!【バーサーク・デッド・ドラゴン】の攻撃!!」

 

 

 

 自身の勝利を確信し、高らかに攻撃宣言をする鯨臥。

 

 --- だが……

 

 

 

『……………』

 

 

 

 突如、バーサーク・デッド・ドラゴンの動きが止まり、鯨臥(コントローラー)の指示に反して、攻撃を放棄した。

 

 

 

「……あん?…おい!どうした!!」

 

「…そのドラゴンの攻撃力、よく見てみなよ」

 

「!」

 

 

 

【バーサーク・デッド・ドラゴン】 攻撃力 0

 

 

 

「攻撃力(ゼロ)だと!?」

 

「「「!?」」」

 

 

 

 鯨臥は目を剥いて驚愕の声を挙げた。彼の仲間達も、状況に理解が追いついていない様子で、どよめきが起こっている。

 皆のリアクションの良さに満悦したところで、いよいよ(タネ)明かし!

 

 

 

「ボクはこの(トラップ)カード・【ゼロ・フォース】を発動していた!」

 

「…!て、手前(てめぇ)……そのカードは…!?」

 

「そう。【ゼロ・フォース】は自分のモンスターがゲームから除外された時、フィールドに存在する、全てのモンスターの攻撃力を、(ゼロ)にする!」

 

 

 

「除外って…先輩のモンスターは、いつ除外されたんですか…?」

 

「【ミンゲイドラゴン】だよ。あのモンスターは自身の効果で墓地から復活した場合、次にフィールドを離れる時には除外(・ ・)される効果を持ってるの」

 

 

 

 マキちゃん説明サンクス!ルイくんも納得して、緑色の瞳を輝かせていた。

 

 

 

「ダメージを優先して、絶対【ミンゲイドラゴン】から攻撃すると思ったよ」

 

「このガキ…舐めやがって…!」

 

 

 

 もちろん【ドラゴラド】も【ゼロ・フォース】の効果は受けている。だけど攻撃力(ゼロ)同士なら、相討ちにすらならない。

 正直、連続攻撃は予想外だったから、少し焦ったけどね。

 これでもし【ドラゴラド】から先に攻撃されてたら、負けてたわけか……あっぶな!!

 

 

 

【ドラゴラド】 攻撃力 1300 → 0

 

 

 

 バトルフェイズが終わり、ターンはメインフェイズ2に切り替わる。

 鯨臥は、脅威的な攻撃力を失った【バーサーク・デッド・ドラゴン】を見上げると、苛立たしく舌打ちして……

 

 

 

「チッ、使えねーな……役立たず(・ ・ ・ ・)が!」

 

「……!」

 

 

 

 あろうことか自分の為に戦ってくれている(しもべ)に対して、そんな暴言(コトバ)を吐き捨てた。

 

 

 

「なら、せめて生け贄(・ ・ ・)になりやがれ!魔法(マジック)カード・【()(しき)の下準備】を発動!デッキから儀式魔法と、儀式モンスターを手札に加える!」

 

「儀式…!?まさか…!」

 

「くくくくっ…!俺が発動する儀式魔法は……ウルトラレアカード・【ゼラの儀式】!!」

 

 

 

 !!【ゼラの儀式】…!?

 (レベル)の合計が8以上に揃うよう、自分のモンスターをリリースして、儀式モンスター・【ゼラ】を召喚する……儀式魔法の元祖と(うた)われた、伝説のレアカード…!

 

 

 

「俺はレベル8の【バーサーク・デッド・ドラゴン】を()(にえ)(ささ)げ、【ゼラ】を降臨(こうりん)させる!!」

 

 

 

 屍の龍が悲痛な叫声(きょうせい)を響かせながら、闇の業火に包まれる。

 

 そして、青白(せいはく)の巨躯に紫の外套(がいとう)を纏った、凶暴な魔物が新たに降臨。

 悪魔の巣窟(パンディモニウム)に、大地を揺るがす咆哮を轟かせた。

 

 

 

【ゼラ】 攻撃力 2800

 

 

 

「ヒャハハハハハッ!見たか小僧!これぞ悪魔族の中でも最強クラスのモンスター、【ゼラ】だ!!」

 

「……オリジナルは世界でも、3枚しか存在しないと言われる、究極のウルトラレアモンスター…!」

 

 

 

「なんでそんなカードを鯨臥(あいつ)が…!」

 

 

 

 アマネも、鯨臥が【ゼラ】をデッキに入れてる事は知らなかった様だ。つい最近ゲットしたのかな?……なんて、今はどうでもいいか。それより……

 

 

 

「……おもしろいね…!」

 

「はぁ?」

 

 

 

 伝説級のレアモンスター。相手にとって不足なし。

 ボクは微笑(ほほえ)みを(たた)え、【ゼラ】に敬意を表すつもりで、メガネを外して裸眼になった。

 最も、使い手である鯨臥とは、仲良くなれそうにないけどね。

 

 

 

「笑ってんじゃねぇよ小僧が!次のターン、ゼラの攻撃で息の根を止めてやるぜ、ターンエンドだ!」

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

(よし!)

 

魔法(マジック)カード・【命削りの宝札】!ボクはカードを、3枚ドローする!」

 

 

 

 ……これなら十分にチャンスはある!

 

 

 

「カードを3枚セットして、【ドラゴラド】を守備表示に変更!」

 

 

 

【ドラゴラド】 守備力 1900

 

 

 

(バカめ、逃げられると思うなよ!)

 

「俺のターン!手札から()(ほう)発動!【『守備』封じ】!」

 

「ッ!守備封じの、カード……!?」

 

 

 

【ドラゴラド】 攻撃力 0

 

 

 

 しまった、ドラゴラドが攻撃表示に…!

 

 

 

「バトルだ!【ゼラ】よ、奴の雑魚モンスターを引き裂けッ!『デビルズ・クロー』!!」

 

(トラップ)発動!【ガード・ブロック】!」

 

 

 

 ゼラの鋭い鉤爪(カギヅメ)に切り裂かれて、ドラゴラドは破壊される。でも【ガード・ブロック】のおかげで、致命傷は免れた。

 

 

 

「……【ガード・ブロック】の効果によって、戦闘ダメージを無効にし、1枚ドローできる。さらに伏せ(リバース)カード・【()(せき)残照(ざんしょう)】を発動!このターン、戦闘で破壊された自分のモンスターを、墓地から特殊召喚する!」

 

 

 

【ドラゴラド】 攻撃力 1300

 

 

 

「くそッ、しぶとい野郎だ……ならば永続魔法・【波動キャノン】発動!」

 

「!」

 

 

 

 鯨臥の場に、魔導式の大砲が現れる。

 

 

 

「こいつは発動後に経過した、自分のスタンバイフェイズの数 × 1000ポイントのダメージを相手に与える!次の俺のターンで効果を発動すれば、手前(てめぇ)のライフは(ゼロ)になる!」

 

「……!」

 

 

 

 正真正銘、次がボクのラストターンってことか。

 

 

 

「これで俺のターンは終了だ!」

 

(雑魚の分際で手こずらせやがって……だが今度こそ終わりだ!)

 

「ボクのターン……ドロー!」

 

 

 

 この1ターンで勝負が決まる。

 

 最後のドロー。--- 引いたカードは…!

 

 

 

「……フフッ。ボクのデッキも、【ゼラ】と(たたか)いたがってるみたい」

 

「なに?」

 

「手札から魔法(マジック)カード・【思い出のブランコ】を発動!ボクが墓地から復活させるのは、【ラビードラゴン】!!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950

 

 

 

「ば、バカな!俺の【ゼラ】の攻撃力を、上回るだとぉ!?」

 

「バトル!【ラビードラゴン】で、【ゼラ】を攻撃!『ホワイト・ラピッド・ストリーム』!!」

 

 

 

 【ラビードラゴン】の放った白き奔流が【ゼラ】を吹き飛ばす。

 

 

 

「ぐおぉぉあっ!?」

 

 

 

 鯨臥 LP 4000 → 3850

 

 

 

「さらに【ドラゴラド】で、直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「ぐわああああっ!!」

 

 

 

 鯨臥 LP 3850 → 2550

 

 

 

「ぐっ、くそ…!調子に乗りやがって…!だが俺には【波動キャノン】がある!次のターンで……ッ!?」

 

 

 

【トライホーン・ドラゴン】 攻撃力 2850

 

 

 

「なっ…なな……何なんだこいつはぁあーっ!?」

 

「速攻魔法・【ライバル・アライバル】!バトルフェイズ中に一度、モンスターを通常召喚できる!」

 

 

 

 これはボクが3枚目に伏せていたリバースカード。

 【ラビードラゴン】と【ドラゴラド】の2体をリリースして、手札の【トライホーン・ドラゴン】を、アドバンス召喚したんだ。

 

 

 

「これでチェックメイトだ!【トライホーン・ドラゴン】!プレイヤーに直接攻撃(ダイレクトアタック)!!」

 

 

 

 トライホーンの強靭な爪が鯨臥を捉え、強烈な一撃を彼に浴びせた。

 

 

 

「うわああああああっ!!!?」

 

 

 

 鯨臥 LP 0

 

 

 

「やったー!セツナくんの勝ちだよー!」

 

「ひゃわっ!?ま、マキノさん…!」

 

 

 

 歓喜したマキちゃんが隣のルイくんを激しく抱き締めた。

 

 決闘(デュエル)が決着して、フィールド魔法も消失。悪魔の殿堂から、平和な砂浜へと帰還した。

 

 

 

「じゃあ、そういうわけだから。行こう?アマネ」

 

「……うん」

 

 

 

 アマネを連れて、皆で早々に立ち去ろうとした時だった。

 

 

 

「……認めねぇ……認めねぇぞ…!待ちやがれ!!」

 

「…!」

 

 

 

 鯨臥が怒鳴る。彼を含め、喧嘩(う で)に自信のありそうな男が数人こちらに迫っていた。

 

 

 

「へっ……最初から、こうすりゃ良かったんだ……!アマネは俺の(もん)だ……誰にも渡さねぇ…!」

 

 

 

 決闘(デュエル)で取り決めた約束をも(はん)()にする程、アマネに対して異常な執着を見せる鯨臥。

 

 まいったな……殴り合いとか苦手分野なんだけど。とりあえず、皆が逃げ切れる時間は稼がないと…!

 

 

 

「君達!何を騒いでいる!」

 

 

 

 警報と共に張りのある声が聞こえた。そちらを見ると、ヘルメットを被り、鈍色の制服を着込んだ人達が駆け寄って来ていた。

 

 

 

「やべぇ!『セキュリティ』だ!」

 

「オトヤ、逃げんべ!?(ニセ)のカード使ってんのバレたら…!」

 

「チィッ…!」

 

 

 

 あぁ、なんだ。あの【ゼラ】偽者(ニセモノ)だったんだ。希少なカードは()(ぞう)品や、複製品(レプリカ)も多く出回るって話は本当みたいだね。

 

 

 

手前(てめぇ)ら……(ツラ)ァ覚えたからなぁ!!」

 

 

 

 鯨臥は捨て台詞(ゼリフ)を吐いて、仲間共々、一目散に逃走していった。

 

 助かった……ありがとう、セキュリティさん。にしても、何であんな良いタイミングで…?

 

 

 

「フフン。こんな事もあろうかと、デュエル中にこっそり通報しといて良かったよ」

 

「マキちゃん!オメガGJ(グッジョブ)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時はどうなる事かと肝を冷やしたけど、騒動は事なきを得て終結した。

 あの後、海の家で少し休憩を挟んで、ボク達は海水浴を再開した。

 

 

 

「アマネたーん!それー!」

 

「ちょ、冷たっ!やったな、マキちゃん!お返しだー!」

 

 

 

 女の子が水を掛け合う光景というのは、何故かくも美しいのだろう。気づけば、そんな感想を胸中に(いだ)いていた。

 もちろん、ボクとルイくんも一緒に海に入っているので、今は上着を脱いで、上半身だけ裸になっている。

 

 ……と、不意にマキちゃんがボクのところへやって来た。

 ボクと目線を合わせて、ニッコリと笑うと、ボクの掛けていた赤メガネを取り外した。

 

 

 

「……?マキちゃん?」

 

「アマネたんを助けてくれた、お礼だよ」

 

「ッッッッッ!?!?!?」

 

 

 

 マキちゃんはメガネを折り畳んで、それを自分の胸の谷間に差し入れた。……ええええええっ!!!?

 ボクのメガネがマキちゃんの胸にいいいい!?

 

 

 

「さぁ、どうぞ?」

 

 

 

 安定の小悪魔スマイルを披露しながら、マキちゃんは胸をボクに突きつける。二つの膨らみの間からは、愛用のメガネが飛び出していた。

 

 

 

(これを取れと!?)

 

 

 

 どう足掻いても、メガネを取り出そうとすれば必然的に胸にも指が触れてしまうんですが。しかし、いつまでも取らないわけにもいかない……ボクは覚悟を決めた!

 

 

 

「し…失礼しま~す……!」

 

 

 

 緊張で震える手を、ゆっくりとマキちゃんの胸へ伸ばす。水浴びで濡れた胸元が視界を支配して、ボクは生唾を飲み込んだ。

 もうちょい……あと少しで、メガネに指先が届く…!行け!取るんだ、ボク!男を見せろ!

 

 

 

「なにバカやってんのよ」

 

「「!!」」

 

 

 

 アマネが参上し、ボクとマキちゃんの頭に手刀を叩き込んだ。

 そして即座にマキちゃんの胸からメガネを取り上げ、ボクに手渡してくれた。安心したけど残念な気もするのは、どうしてだろう?

 

 

 

「えーん。良いところだったのにー」

 

「セツナ、あまりマキちゃんのペースに振り回されてると、いずれ大変な事になるから気をつけてね」

 

「経験者は語る、かな?アマネたん」

 

「むっ……!」

 

 

 

 急に赤面するアマネ。マキちゃんが言う『経験』とは何なのか…は、深く追究しない方が良さそうだ。

 

 え?メガネはどうしたのかって?そのまま掛けたに決まってるじゃない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、とうとう帰りの時刻が訪れた。

 水着から私服に着替え直したボク達は、荷物を片手に駅を目指して、のんびりと歩いている最中だった。

 

 

 

「楽しかったねー、ルイくん」

 

「は、はい!ちょっと怖い思いもしましたけど……」

 

「……セツナ。その事なんだけど…」

 

 

 

 アマネは立ち止まり、ボクと真っ直ぐ向き合った。そして、普段より柔和な表情で、言葉を紡ぐ。

 

 

 

「ありがとうね。助けてくれて……。凄く、嬉しかった」

 

「…!……あははっ、気にしなくて良いよ?友達なんだもの、(ほう)っておける(はず)、ないって」

 

 

 

 なるべく平静を装って、いつもの調子(ノ リ)で言葉を返す。

 内心……なんだかドキドキしてるけど、ね……。

 

 

 

 





 リクエストありがとうございました!!
 正直かなり攻めた気がしますが如何だったでしょうか?( ゜∀゜)

 やはり水着回は良いものですね!初めての試みでしたが楽しく書けました!
 でも気合い入り過ぎて、執筆に1ヶ月も掛かってしまいました。お待たせして、すいませんでした( ;∀;)

 感想、リクエストお待ちしております!リクエストには全身全霊で、『忠実』にお答えします!

 最後に一言。
 おっぱい!おっぱい!( °∀°)
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