遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 今回は三月猫さまの小説・『遊戯王VRAINS 悪魔のカリスマデュエリスト』とコラボさせていただきました!!

 前編と後編の二部制でお届けします!デュエルは後編からとなります(。>ω<)
 初めての試みでとても緊張しておりますが、どうぞよろしくお願いします!



TURN - 11 vs DIABOLOS - 1

 

 平日、いつもの教室にて。次の授業が始まるまでの僅かな合間を縫って、ボクは鞄の中に入れておいた一冊の雑誌を取り出し、それを開いた。

 

 

 

「セツナが読書なんて珍しいね、なに読んでるの?」

 

 

 

 後ろの席に座って、暇そうにしている同級生(クラスメート)・アマネが尋ねてきた。ボクは雑誌を読み進めながら即答する。

 

 

 

「デュエルマガジンだよ、今週の」

 

「あぁ、そう言えば今日、発売日だっけ」

 

 

 

 プロ決闘者(デュエリスト)をインタビューした特集や、大会・イベント関連の開催情報、レポート(など)勿論(もちろん)、他にも新パックや、(ニュー)モデル決闘盤(デュエルディスク)の発売日、時には更新された禁止・制限リストから、エラッタされたカードの発表まで。

 『デュエルモンスターズ』に関する、世界中の最新情報を毎週お届けしてくれる人気週刊誌。それが『 DUEL(デュエル) - MAGAZINE(マガジン) 』。

 

 実は今朝、学園の購買部に立ち寄って買ってきたんだ。タイミングを逃すと、毎回すぐ売り切れちゃうからね。

 

 さて、今週はどんな内容になっているのかな……文字数の多い記事は後でじっくり読むとして、パラパラとページを捲っていく。

 --- すると、あるページに載っている写真が目に止まり……というか目に飛び込んできて、ボクはそれ(・ ・)を思わず凝視した。

 

 

 

「おおっ、何これ。コスプレ決闘者(デュエリスト)?」

 

「どれどれ?……すごい化粧ね。デスメタルってヤツ?」

 

 

 

 アマネも注目したこのページには、一人の決闘者(デュエリスト)の写真が紙面全体にデカデカと掲載されていた。

 

 まず何よりも印象的だったのは、その人物の容姿。

 

 顔面は白塗り、目元と唇は真っ黒。いわゆる『コープス・ペイント』と呼ばれる、派手なメイクを施していた。

 これだけでもインパクト抜群なのだけど、更には鎧みたいな漆黒の服装(コスチューム)に身を包み、禍々(まがまが)しいデザインの決闘盤(デュエルディスク)を装着していた。

 (キバ)のごとく鋭い歯を剥き出しにして口角を上げており、今にも地の底から響く様な不気味な笑い声が聞こえてきそうだった。こちらを睨みつける眼力は、見る者を完全に殺しにかかっている。

 デスメタルやブラックメタルのバンドでヴォーカルを務めていそうな、迫力満点の化粧と格好だ。子供に見せたら一発で泣くんじゃないかな。

 

 

 

「こういうパフォーマー路線の決闘者(デュエリスト)って、プロでも結構いるのよね。ここまで派手なのは、私も初めて見たけど」

 

「へぇ~、面白(おもしろ)そうだね。……ん?」

 

 

 

 写真のページの下半分には、被写体の強烈な見た目の雰囲気に合わせたのか、(イビツ)な文体で大きな見出し文が書き表されていた。ボクは興味を(そそ)られて、そのキャッチコピーを読み上げる。

 

 

 

「……『悪魔のカリスマデュエリスト』……ねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 某日、正午。

 (おびただ)しい数の車両が高速で行き交うハイウェイを、一台の移動販売車が走っていた。

 ドーナツのイラストが描かれた車体を操縦しているのは、意外な事に、小柄な女性。

 

 薄茶色(ライトブラウン)の長髪を三つ編みにした、少女と見違うほど幼げな顔立ちの運転手は、髪と同色の双眼で前方を真っ直ぐ見据えつつ、助手席に座る、藍色(あいいろ)の髪が特徴の少年に話しかける。

 

 

 

「もうすぐ到着するわよ、ユーゴ。……んも~、いつまで仏頂面してるのよぉ。イケメンが台無しよ?」

 

 

 

 女性の外見に似合った、高く可愛らしい声質が、少年の名を『ユーゴ』と呼ぶ。

 上機嫌でハンドルを握る女性と相反して、不機嫌そうに顔を(しか)めていた少年は、濃紺(のうこん)の瞳で彼女を一瞥すると、舌打ちしてから口を開いた。

 

 

 

「急に呼び出されて何の説明も無しに車に放り込まれて何時間も走りっぱなし、これでニコニコしてられるわけがないだろう。それともう1つ」

 

「なにかしら?」

 

「なぜ(おと)()さんまでついてきている」

 

「へ、(へい)()ああああっ!!私が一緒では不満でしょうか!?」

 

 

 

 少年と女性の背後から、ダークブラウンの髪を肩口まで伸ばした少女が涙目になって声を上げた。

 

 

 

「いや、そういう意味ではないが……というか今は車内だから問題ないが、くれぐれも屋外(そ と)では『陛下』と呼ばないでくれよ?オレの『正体』がバレたら、色々な意味で(・ ・ ・ ・ ・ ・)マズイんだ」

 

「もちろん心得ております!(ゆう)()くんの正体が『陛下』である事は、私達3人だけの秘密、トップシークレットですからね!()わば私達は運命共同体…!嗚呼(あ あ)……陛下の為ならこの()(くら) (おと)()、地獄まででもお供いたします!」

 

 

 

 少しばかり危ない気配を漂わせながら、一人で盛り上がっている少女を他所(よ そ)に、少年は運転席の女性に問いかける。

 

 

 

()()()さん、そろそろ教えてくれて良いんじゃないか?一体どこへ向かっていて、オレ達に何をさせる気なんだ?」

 

「『(あかね)ちゃん』って呼んでくれても良いのよ~?もしくは、お姉さんでも可!」

 

「阿久津さん(半ギレ)」

 

「やれやれ素直じゃないんだから……。これから私達が行く場所は、大都市『ジャルダン』。ユーゴも名前くらいは聞いたことあるでしょう?」

 

「ジャルダン……確か…『デュエルが全てを支配する街』、だったか…」

 

「そ。何でも近々、その街のデュエルアカデミアでね、プロさながらの大規模な大会が行われるらしいのよ。そ・こ・で!」

 

「この最新モデルのデュエルディスクを売り捌いて、荒稼ぎしようって事になったんです!」

 

 

 

 少女が運んできた大箱の中には、大量の紙箱が詰められていた。中身は全て、決闘者(デュエリスト)にとって欠かせない必須アイテム、デュエルディスクの最新版モデルだった。

 

 

 

「荒稼ぎ?なんでまた」

 

音羽(オ ト)ちゃんの学費を工面する為にね。私の商売と陛下(き み)のファイトマネーだけじゃ、どうしても厳しいところがあるのよ」

 

「それは世知(せ ち)(がら)い話だな……」

 

「ユーゴには、オトちゃんが売り子してる間の用心棒として同行してもらうわ。街で変な人に絡まれたりしたら大変だからね」

 

「安心しろ。アンタ以上の変人なんてそうそういない」

 

「おや?そんなにウチの特製フライヤーで、こんがり揚がりたいのかな?」

 

「冗談だ。とにかく用件は分かった。それならそうと乗せる前に言ってくれれば良いものを。拉致かと思って焦ったぞ……」

 

「フフッ、分かればよろしい。期待してるよ?『ディアボ(・ ・ ・ ・)ロス陛下(・ ・ ・ ・)』」

 

「ああ。……ん?ちょっと待て、なんだ今の含みのある言い方は。おい無視するな」

 

 

 

 女性の最後の意味ありげな台詞(セリフ)が気になったのか問い質す少年だったが、女性は「さぁ着いたよ、二人とも!」と言葉を被せ、強引に話を中断させてしまう。

 こうなったら何を言っても無駄である事は重々承知していた為、少年は諦めて、ため息をつくしかなかった。

 

 

 

(嫌な予感しかしない……)

 

 

 

 一抹の不安を胸中に抱きながら、少年・()(がみ) (ゆう)()は、新たな決闘(デュエル)の街へと降り立った。

 

 --- 二人の少年が邂逅を果たすまで、あと数時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いっけなーい!遅刻遅刻!」

 

 

 

 昼下がりの街中を大急ぎで走り抜けている、赤色のメガネを掛けた銀髪の男がいたらボクです、セツナです。

 真昼時よりは暑さも幾分か和らいだとは言え、まだまだ季節は夏真っ盛り。これだけ全力疾走したせいで、すでに身体は汗だくになっていた。

 

 アマネとマキちゃんとルイくんは、とっくに集合場所で待機中とのこと。盛大に寝坊をやらかしたせいで、約束の時間は余裕でぶっちぎり。早く行かないとアマネが怖い。さっき端末にメッセージで、笑顔の顔文字だけが送られてきた時は総毛立ったよ。

 

 あぁ、バイクの一つでも欲しいところだ。乗りながら決闘(デュエル)できるバイクとかだったら最高だね。

 なんて馬鹿(バ カ)げた事を頭の片隅で夢想しつつも、ようやく皆と待ち合わせる予定だった、街の駅前まで辿り着いた。

 

 いつ来ても相変わらず人が多いな、さすが都会。息も絶え絶えに三人を探して彷徨(うろつ)いていると、広場に何やら、人だかりが出来ているのを発見した。

 見世物か何か()ってるのかな?もしかしたらアマネ達も、ボクが来るまでの暇潰しとして、あの群衆(な か)に紛れているかも知れない。

 

 試しに近づいてみると、どうやら決闘(デュエル)が行われているみたいだ。ジャルダン(この街)では最早ありふれた光景だけど、これほどまでに注目度の高い決闘(デュエル)なんて、街の真ん中じゃ滅多に観れない。

 ……一体どんな大物が決闘(デュエル)を……

 

 

 

「オレは悪魔のカリスマデュエリスト・『ディアボロス』!!悪魔の決闘(デュエル)は、エンターテイィメントでなければならない!!」

 

「!?」

 

 

 

 観客(ギャラリー)に取り囲まれた中心で声高(こわだか)に名乗りを上げたのは、全身を黒の衣装で派手に着飾り、顔を白く塗りつくした、ヴィジュアル系を彷彿とさせる風貌の男だった。

 彼の声は、マイクも通していないのに広場全域に重く響き渡り、オーディエンスも割れんばかりの大歓声で、それに応える。まるでライブ会場の様な空間がそこには誕生していた。ゲリラライブというやつか。

 

 あの一度見たら忘れられない個性的なファッション……間違いない。この前読んだデュエルマガジンで特集を組まれてた決闘者(デュエリスト)、ディアボロスさんだ。人相(?)も雑誌に載ってた写真と一致している。

 

 ここ最近、デュエル界で頭角を表してきている、カリスマデュエリストと呼ばれる存在。

 その強烈なビジュアルに(たが)わず、相手を圧倒的な力で捩じ伏せ、叩き潰し、絶望の淵へと陥れる凶悪な決闘(デュエル)を持ち味とし、人々から恐れられる悪役(ヒール)のスタイルを貫いている。

 

 彼の徹底した『(あく)』の魅力に惹かれたファンは、自らを『下僕』と総称し、彼を『陛下』と呼び称え、崇拝さえしていると聞く。

 

 まさかこんな所で有名人をお目にかかれるなんて……凄いや、本物だ…!

 

 

 

「あっ!セツナ先輩!」

 

「ん?おおっ、ルイくん!アマネにマキちゃんも!」

 

 

 

 ボクを見るなり嬉しそうに駆け寄ってくるルイくんと、それに続いて歩いてくる、アマネ(アンド)マキちゃんのコンビ。良かった、やっと合流できた。

 

 

 

「もう、遅いわよ。セツナ」

 

「あはは……ごめんごめん。後でなんか奢るから許して?…ところでコレは何事なの?」

 

「なんかね~?あの『へいか』って人に決闘(デュエル)で勝つと、あそこで売ってるデュエルディスクが無料(タ ダ)になるんだって」

 

 

 

 マキちゃんが指さした先では、確かにボク達と同い年くらいの茶髪の女の子がデュエルディスクを販売していた。

 ちなみに売り場のすぐ横では、何故かドーナツの移動販売車が停車していて、ただいま絶賛営業中。

 店名は『ハートフルドーナツ』か。そう言えば久しく甘いもの食べてないな、ちょっと寄ってみよう。

 

 

 

「いらっしゃいませ~!」

 

 

 

 接客してくれたのは、髪が薄茶色で、調理帽とエプロンを身に付けた、かなり背の低い女の子だった。……女の子…だよね?

 

 

 

「あら、こう見えてもピチピチな大人のお姉さんだよ~?」

 

「心を読まれた!?」

 

「目を見れば分かるわよぉ。女のカンは、鋭いんだゾ☆」

 

 

 

 パチッとウィンクを決める、自称・大人のお姉さん。大人なのは揺れるほど大きく実っている、ボリューミーな胸だけでは?

 

 

 

「ま、まぁいいや。それじゃ……フレンチクルーラーふたつ、ゴールデンチョコレートをひとつ。あと、アイスコーヒーもお願いして良いかな。ここまで走ってきたから、のど渇いちゃって」

 

「はぁ~い!お姉さんに任せなさい!」

 

 

 

 ハイテンションで気さくな女性(ひ と)だなぁ、見ていて面白いかも。

 

 

 

「にしても……あの『ディアボロス』って人、すごい人気だよね。ここにお店を出してるって事は、お姉さんも彼のファンなの?」

 

「それはもちろん!今話題沸騰(ふっとう)中のカリスマデュエリストだからね!(きみ)決闘(デュエル)してみたら?陛下の洗礼を受けられる、またとない機会(チャンス)だよ~?」

 

「あはは、考えてみるよ。……あ、そうだ」

 

 

 

 ちょうど良いや。待たせてしまった皆に、ドーナツを奢ってあげるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あむ……おいしいですぅ」

 

「ね、美味しいよね。ここのドーナツ」

 

 

 

 エンゼルフレンチを夢中でかじるルイくんに同意する。ルイくんの一口(ひとくち)は、小動物みたいに小さかった。

 

 

 

「セツナくん、ドーナツごちそうさま~」

 

「悪いわね、セツナ」

 

「うぅん、気にしなくて良いよ」

 

(どうせ全額、DP(デュエルポイント)で払えたし)

 

 

 

 そう。自分が注文した物も含めて、全員分のドーナツとドリンクを購入したのだけれど、支払いは全てデュエルディスクに貯蓄されていた『DP』で(まかな)ったので、ぶっちゃけ痛くも痒くもなかったのだ。フハハハ(ゲス顔)。

 

 ボク達がドーナツを頬張っている真横では、まだまだディアボロス陛下のパフォーマンス決闘(デュエル)が続いていた。と言っても、このターンで決着がつくけれど。

 

 

 

「力の差を思い知るがいい!モンスターで直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「ひっ…!あ、悪魔……ぎゃああああっ!?」

 

 

 

 敗者の断末魔の悲鳴と共に、またも陛下の完勝で決闘(デュエル)は終了した。

 今ので何人目だろうか。挑んでくる決闘者(デュエリスト)を、次から次へ容赦なく蹴散らしていく戦いぶりは、正に悪魔の所業と言い表すに相応しかった。

 ここまで陛下は、(いま)だ無敗。しかも間を置かず連戦を繰り広げたにも関わらず、疲労した様子が一切ない。本当に悪魔なんじゃないかと思えてくる。

 

 

 

「うひゃあ、圧巻だね。……あれ?マキちゃんは?」

 

 

 

 ふと気がつくと、ボクの隣でハニーディップを味わっていた(はず)のマキちゃんが姿を消していた。はて、何処(いずこ)へ?

 

 

 

「あーっ!これ、あたしがずっと探してたモデルのデュエルディスクじゃん!?」

 

 

 

 あ、いた。

 

 マキちゃんは茶髪の少女が売り子を務めている、デュエルディスクの販売コーナーへと足を運んでいた。

 

 

 

「マキちゃん、なにか良いのあった?」

 

「見てみてー!このパステルピンク!可愛くない!?ヤバくない!?」

 

「お目が高いね、お客さん!それはウチで取り扱ってる中でも、最新の女性向けモデルだよ!」

 

 

 

 売り子ちゃんが得意げに説明する。どうでもいいけど、Tシャツ一枚でツナギの上着部分を腰に巻いてるだけって、年頃の女の子にしては珍しい服装だね…?

 

 

 

「これ買います!いくら?」

 

「毎度あり!お値段はこれぐらいだよ!」

 

「げっ、高…ッ!あたしのDPじゃ届かない……」

 

 

 

 残念そうに肩を落とすマキちゃん。さすがに最新式ともなると、値段は優しくなかった様で。

 

 ……ん?待てよ……(ひらめ)いた!

 

 

 

「ねぇ売り子ちゃん。確か『あの陛下(ひ と)に勝てば無料(タ ダ)』だったよね?」

 

「そうだよ~!挑戦する?」

 

「えっ、セツナ?」

 

「先輩もしかして……」

 

「……ちょっと行ってくるよ」

 

 

 

 デュエルディスクを左腕に付け、両足に力を込めて跳躍。観客の皆さんの頭上を飛び越えて、ボクは陛下の()(ぜん)に着地した。

 

 周囲がざわめく。ボクと陛下の視線が交差する。それだけで、重苦しい威圧感(プレッシャー)がボクに()しかかってきた。あの、人間?ですよね?

 

 

 

「ほう、(いさ)ましい登場だな。オレの次なる相手はお前か」

 

 

 

 ニヤリと笑って腕を組み、堂々たる(たたず)まいで、ボクを見下ろす陛下(あくま)

 ヤバイ、超帰りたい!!下手を打ったら(ロウ)人形にでもされてしまいそうだ!

 

 でも、女の子の前では良いとこ見せたくなるのが男。ここで引き下がるわけにはいかない!

 重圧に押し潰されそうになるのを何とか堪えて、ボクは懸命に口を開く。

 

 

 

「挑ませてもらうよ、陛下殿(どの)!」

 

「よかろう。かかってくるが良い!」

 

 

 

 陛下がマントを(ひるがえ)してデュエルディスクを構えた途端、周りの観戦者(ギャラリー)、もとい陛下の『下僕』達が、一斉に熱狂する。

 

 

 

「うおおーっ!!陛下ァァーッ!!」

 

「陛下の(エン)()()デュエルが始まるぜぇーッ!!」

 

「ヒャッハー!決闘(デュエル)の時間だーッ!!」

 

 

 

 よーく見たら、陛下に感化されたのか同じ様な白黒メイクをしてる人がチラホラいるね。

 完全にアウェーな空気だけど、陛下の放つ存在感が凄まじくて、そっちに意識を持ってかれてるから大して気にもならなかった。ていうか気にしてる場合じゃない。

 

 

 

「セツナの奴、マキちゃんの為にわざわざ……」

 

「素敵!抱いて!」

 

「マキちゃん静かに」

 

 

 

 ディスクを起動、展開して、ボクも構える。勝てれば良し。負けても、カリスマデュエリストと手合わせ出来たって思い出にはなる。ただ、やるからには……例え相手が悪魔だろうと、全力で勝たせてもらうよ!!

 

 

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 --- デュエル開始より、時は少々さかのぼり……

 

 

 

「ここら辺が良いわね、駅前だから人通りも多いし。ここで始めましょう」

 

「了解です、(あかね)お姉さま!」

 

「……おい……ちょっと待て」

 

「どうしたの?ユーゴ」

 

 

 

 街の広場にキッチンカーを停め、この日の為に用意してきたという大量のデュエルディスクを売り捌くべく、いそいそと開店の準備に取りかかる阿久津さんと音羽さん。

 

 そんな二人の後ろで、オレは怒りに身を震わせながら大声を上げる。

 

 

 

「な・ん・で!オレがこの格好(・ ・ ・ ・)なんだよっ!!」

 

 

 

 生気を全く感じさせない白塗りの顔面。どす黒く染め上げた目元と口まわり。やたら細部まで意匠を凝らした、純黒のコスチューム。

 

 世間では『ディアボロス』と呼ばれている、その姿に、オレ・()(がみ) (ゆう)()は変装していた。

 

 

 

「陛下アアアアアッ!!!ついに真の姿を解放されたのですねッ!!人間の身体では、さぞ動き(づら)かった事でしょう!」

 

 

 

 オレの身体に抱き着いて、好意とも心酔ともつかない感情を暴走させるのは、()(くら) (おと)()さん。

 こう見えて優秀なメカニックで、オレと阿久津さんの活動を色々とサポートしてくれている。実はこの姿のオレ(デ ィ ア ボ ロ ス)の大ファンらしい。

 ていうか「人間の身体では」って何だよ。普段のオレは、音羽さんの中では仮の姿なのか?

 あとグイグイ密着してくるから、ずっと彼女の胸が当たってる。現在(い ま)はこんな怪しい風体をしているが、オレだって高校生なんだ。気になってしょうがないだろう。

 

 

 

「なんでって、決まっているでしょう?仕事(ビジネス)よ、ビ・ジ・ネ・ス♪」

 

 

 

 無駄に色気のある喋り方をするのは()()() (あかね)さん。

 オレ達が乗っている移動店舗・『ハートフルドーナツ』の店主(オーナー)にして、カリスマデュエリスト・ディアボロスのプロモーターでもある。何を隠そう、オレをディアボロス(こ ん な ふ う)にした、張本人だ。

 

 子供の様に低い身長と、高い声。しかし本人いわく、実年齢は二十歳(ハ タ チ)を越えているという、ある意味で謎の存在。

 その外見には不釣り合いな巨乳は、身長に割り振られていた筈の栄養を、全て胸に集中させたのではと疑うほど豊満に育っていた。

 

 

 

「他の街にも『ディアボロス』の存在を知らしめ、オトちゃんの生活費も稼ぐ。ついでに折角(せっかく)だから、ハートフルドーナツの売り上げも伸ばそうって戦略よ!」

 

「姑息な手を…!」

 

「商売上手と言ってほしいなぁ~」

 

 

 

 いつもながら勝手で強引な人だ。出会った当初から分かりきっていた事だが。

 

 

 

ジャルダン(この街)の住人は異常なほど決闘(デュエル)に積極的だから、ディスクもポンポコ売れるに違いないわ。ディアボロスの『目的』である広告塔の役目も果たせるし、私の店も(もう)かって、全員にメリットがある。まさに一石三鳥よ!」

 

「そう上手くいけば良いがな……」

 

「上手くいかせるのよ。陛下の力で、ね?」

 

 

 

 阿久津さんに促されて車外を覗いてみると、すでに大勢のファンが駅前に集結していた。道理で騒がしいと思った。

 

 

 

流石(さすが)はお姉さま!宣伝も抜かりないですね!」

 

「フフーン、私の手にかかれば、これぐらい朝飯前よ」

 

 

 

 音羽さんの称賛に気を良くした阿久津さんが胸を張ると、ふたつの膨らみが大きく揺れた。

 

 おっと、いかん。オレは今、真上 遊吾ではなく、最悪の悪魔・ディアボロスなのだ。いい加減スイッチを切り替えなくては。

 

 

 

「さぁ今日も派手に暴れてきなさい!ディアボロス!」

 

「ふん……言われるまでもない」

 

 

 

 聞こえてくるのはファンの『陛下』コール。ここまで来たら、やるしかあるまい。

 

 そこまで望むなら見せてやろう。

 このオレ、ディアボロスの(エン)()()デュエルを!

 

 

 

 





 陛下!カッコイイー!!

 前編を最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

 後編はいよいよ、陛下とセツナのデュエルが始まります!
 感想、評価、リクエスト等、お待ちしております(*´∀`)♪
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