遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

12 / 60

 大変!大変長らくお待たせ致しました!

 三月猫さまとのコラボ後編・ディアボロス陛下とセツナのデュエル回です!



TURN - 12 vs DIABOLOS - 2

 

「「 決闘(デュエル)!! 」」

 

 

 

 セツナ LP(ライフポイント) 4000

 

 ディアボロス LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

 白昼堂々、街のド真ん中。集まった観衆の大歓声が沸き起こる中心で、ボクとディアボロス陛下の決闘(デュエル)が始まった。

 

 

 

「先攻は挑戦者(チャレンジャー)、お前にくれてやる」

 

「えっ、いいの?じゃあ陛下のお言葉に甘えて……ボクは【暗黒の竜王(ドラゴン)】を召喚!」

 

 

 

【暗黒の竜王(ドラゴン)】 攻撃力 1500

 

 

 

「カードを2枚伏せて、ターン終了だよ!」

 

「ほう、ドラゴンデッキか。おもしろい」

 

「……!」

 

 

 

 たった1プレイでボクのデッキを見抜いた!?……さすが『悪魔』と謳われた、カリスマデュエリスト。人間離れした洞察力だね…!

 

 

 

「オレのターン!手札より、【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)(フォー)】を召喚!」

 

 

 

漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)4】 攻撃力 1000

 

 

 

 攻撃力1000?意外だな……これまでの決闘(デュエル)を見る限り、陛下のデッキは悪魔族が主体のビートダウンデッキ。序盤からパワーアタッカーがバンバン出てくるものだと思ってたけど……

 

 

 

「さらに魔法(マジック)カード・【フォース】を発動!【暗黒の竜王(ドラゴン)】の攻撃力を半分にし、その数値を【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】の攻撃力に加える!」

 

 

 

【暗黒の竜王(ドラゴン)】 攻撃力 1500 → 750

 

漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)4】 攻撃力 1000 → 1750

 

 

 

「げっ…!?」

 

「戦闘開始だ!【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】で、【暗黒の竜王(ドラゴン)】を攻撃!」

 

 

 

 魔法で攻撃力を増幅した【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】の一撃を受け、暗黒の竜王が破壊される。

 

 

 

「くっ…!」

 

 

 

 セツナ LP 4000 → 3000

 

 

 

「オレはカードを3枚伏せ、ターンを終了する」

 

 

 

漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)4】攻撃力 1750 → 1000

 

 

 

 陛下が先制したことで、彼のファンという名の『忠実なる下僕』達が、再び声を上げる。

 

 

 

「スゲーぜ陛下ァーッ!いきなり1000ポイントものダメージだぁ!」

 

「いいぞぉー!ぶっ殺せぇーッ!!」

 

 

 

 物騒な声援が飛び交う中、陛下の眼差しがボクを捉えた。その威圧的な視線が突き刺さるだけでも身震いしてしまう。

 

 

 

「どうした、お前のターンだ。まさかこの程度で終わりではないだろう?」

 

「…ッ…!…まだまだ!ボクのターン!」

 

 

 

 折れるな、気圧されたら負けだ。ボクは陛下のプレッシャーを振り払う様に、カードをドローする。

 

 

 

「…よし、悪魔には悪魔だ!手札から、【デビル・ドラゴン】を召喚!」

 

 

 

【デビル・ドラゴン】 攻撃力 1500

 

 

 

「バトル!【デビル・ドラゴン】で攻撃!」

 

(トラップ)発動!【闇の呪縛】!」

 

「!」

 

 

 

 どこからともなく飛び出した鎖が【デビル・ドラゴン】を拘束して、動きを封じてしまう。

 

 

 

「この鎖に囚われたモンスターは攻撃力が700ポイントダウンし、攻撃も表示形式の変更も出来ない」

 

 

 

【デビル・ドラゴン】攻撃力 1500 - 700 = 800

 

 

 

「ッ……ボクは、これで……ターンエンド…!」

 

「オレのターン、ドロー。この瞬間、【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)4】の効果が発動。このカードを墓地に送ることで、【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】は【LV(レベル)(シックス)】へと進化する!」

 

「!?」

 

 

 

 漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)の身体が突然変異を起こして、より凶悪な姿に成長した。その手には、一振りの(つるぎ)(たずさ)えている。

 

 

 

漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)6】 攻撃力 1700

 

 

 

「『LV(レベル)モンスター』…!?」

 

「その通り。魔王は倒した敵の魂を(かて)に、その力を増していく。オレは【悪魔のくちづけ】を【LV(レベル)6】に装備!攻撃力を700ポイントアップする!」

 

 

 

漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)6】 攻撃力 1700 + 700 = 2400

 

 

 

「さぁ行け、【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】よ!【デビル・ドラゴン】を打ち倒せ!」

 

「そうはさせないよ!伏せ(リバース)カード・オープン!【竜の転生】!」

 

「むっ…!」

 

「【デビル・ドラゴン】を除外して、手札の【ボマー・ドラゴン】を、守備表示で特殊召喚!」

 

 

 

 呪縛から解き放たれた【デビル・ドラゴン】は炎に身を包み、仲間のドラゴンにその意志を託して、戦線から消え去った。

 そしてデビル・ドラゴンの魂を引き継いで新たに召喚されたのは、球状の爆弾を抱え持った竜・【ボマー・ドラゴン】。

 

 

 

【ボマー・ドラゴン】 守備力 0

 

 

 

「ボマー・ドラゴンを戦闘で破壊した相手モンスターは破壊される!攻撃を止めるなら、今の内だよ!」

 

「フッ……そんなものを悪魔(オ レ)が恐れると思ったか!()れ!【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】!『制裁の剣(ソード・オブ・サンクション)』!!」

 

「!?」

 

 

 

 爆弾の存在を、まるで意に介していないのか。進化を果たした漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)は何の躊躇もなく、ボマー・ドラゴンを(つるぎ)の一閃で切り裂いた。

 

 

 

(……!【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】が破壊されない!?)

 

「残念だったな。漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)は破壊したモンスターの効果を無効にする。よって【ボマー・ドラゴン】の効果は不発だ!」

 

「!……そういうこと…!」

 

「これで条件は満たされた。次のオレのターン、魔王は更なる進化を遂げる!ターン終了(エンド)!」

 

「ボクのターン……」

 

 

 

 これ以上レベルアップさせるわけにはいかない。このターンで形勢を立て直さないと……!

 

 

 

「ドロー!」

 

(-!来た、【ソウルテイカー】!これなら…!)

 

魔法(マジック)発動!【ソウルテイカー】!【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】を破壊する!」

 

「甘い!リバース(トラップ)・【闇の取引】を発動!」

 

「!」

 

「オレのライフ、1000ポイントと引き換えに、相手が発動した魔法(マジック)カードの効果を、『相手はランダムに手札を1枚捨てる』に変更する!」

 

「えぇーッ!?」

 

 

 

 ディアボロス LP 4000 → 3000

 

 

 

 【ソウルテイカー】の効果テキストが書き換えられて、漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)を破壊する目論見は失敗に終わった。代わりに陛下は自分の手札を捨てる事となる。

 

 

 

「オレの手札はこの1枚のみ、【闇より出でし絶望】。こいつは相手のカード効果で手札から墓地に送られた時、特殊召喚できる!」

 

 

 

【闇より出でし絶望】 攻撃力 2800

 

 

 

 陛下の背後から、おぞましい巨大な影が出現する。

 

 自分のモンスターを破壊から守った上に、新たな上級モンスターまで呼び出してくるなんて……!

 

 どれだけの策を講じても、陛下はその上を行く高度な戦術(タクティクス)で、ことごとく潰してくる。一部の隙も無い完璧なプレイングだ。

 学園の生徒で言えば、『ランク・A』は確実。いや、下手したら、それ以上。カナメに匹敵する強さかも知れない。

 

 

 

「……ボクはターンエンドの前に、カードを1枚伏せる」

 

 

 

 これで手札は(ゼロ)。場には2枚の伏せ(リバース)カードだけ。

 

 ……でも、まだ可能性は残ってる。次の陛下の攻撃さえ凌ぎ切れれば……。

 

 

 

「オレのターン、ドロー。………フッ」

 

「……!」

 

「スタンバイフェイズだ。【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)6】の、効果発動!」

 

(来る…!)

 

 

 

 (つるぎ)の切っ先を天に向けて、高々と掲げる漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)。蓄積した魔力を解き放ち、(みずか)らの肉体を限界まで強化する。

 

 

 

「見よ!これぞ魔王の最終進化形態!【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)(エイト)】!!」

 

 

 

漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)8】 攻撃力 2800

 

 

 

 とうとう最後の進化を遂げた魔王。名前の通り、全身を漆黒の鎧で武装した悪魔が、大剣を振りかざして現れる。

 

 

 

「なんて迫力…!」

 

「光栄に思うがいい。魔王の真の姿を拝めた事をな」

 

(……奴のフィールドには伏せ(リバース)カードが2枚か……だが…問題ではない!)

 

「どんな(わな)を仕掛けて来ようと、全て捩じ伏せるだけだ!バトル!まずは【闇より出でし絶望】で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「………!」

 

 

 

 伏せカードを発動しようとして、とっさに踏み留まる。この(トラップ)の使い時は、ここ(・ ・)じゃない!

 

 ボクはそのまま無抵抗で、直接攻撃を食らった。大ダメージが身体を襲う。

 

 

 

「うあああああっ!!」

 

 

 

 セツナ LP 3000 → 200

 

 

 

「せ、セツナ先輩のライフが一気に…!?」

 

「次の攻撃が通ったら……セツナの負け…!」

 

 

 

「くっ……」

 

「少年よ、これが絶望だ。【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)8】の攻撃!『蹂躙の大剣(セイバー・オブ・ドミナント)』!!」

 

 

 

 魔王の斬撃は黒い刃を型どった衝撃波となって、ボクに迫り来る。

 

 まさしく絶体絶命のピンチ。だけどボクは……

 

 

 

「……絶望?まさか」

 

 

 

 不敵に、笑う。

 

 

 

(トラップ)発動!【カウンター・ゲート】!」

 

「!!」

 

「相手モンスターの攻撃を、一度だけ無効にする!」

 

 

 

 ボクの前方に現出した光の(ゲート)によって、敵の攻撃が遮断される。

 

 その後、ボクはメガネを外して、シャツの胸元に掛けた。ちょっとオシャレ。

 

 

 

「……むしろ、面白(おもしろ)くなってきた。これで勝ったら実に気持ちいいだろうね」

 

(-!?……こいつ…!)

 

「………ッ!!」

 

 

 

(…!ユーゴが身構えた…?)

 

「……(あかね)お姉さま、陛下が今……」

 

「えぇ……あの銀髪くん、セツナって呼ばれてたっけ……これは面白いものが見られそうね…!」

 

 

 

 --- ボクはデッキの一番上のカードに手を伸ばして、ドローの体勢を取る。

 

 

 

「【カウンター・ゲート】の効果で、ボクはカードを1枚ドローする。そしてそれがモンスターだった場合、通常召喚できる!ドロー!」

 

(……ナイス!)

 

「引いたのはレベル3の【ポケ・ドラ】!この子を攻撃表示で召喚だ!」

 

 

 

【ポケ・ドラ】 攻撃力 200

 

 

 

「うひゃあーっ!!かーわーいーいーっ!!」

 

「マキちゃん静かに。気持ちは分かるけど」

 

 

 

 ちっこくて愛らしい見た目のドラゴンの登場に興奮するマキちゃんと、そんな彼女を(たしな)めるアマネ。可愛いもんね、しょうがないよね。ボクのデッキのマスコットです。

 

 

 

「【ポケ・ドラ】が召喚に成功した時、デッキからもう1枚の【ポケ・ドラ】を、手札に加える事が出来る!」

 

「……いいだろう、チャンスをくれてやる。その下級モンスター1匹から、この戦況を(くつがえ)せるならやってみるがいい!ターンエンドだ!」

 

「見せてあげるよ……ボクなりのエンタメデュエルをね!ボクのターン!!」

 

 

 

 たった今ドローしたカードを確認し、ボクは即座にリバースカードを発動する。

 

 

 

(トラップ)カード・【無謀な欲張り】!さらにカードを2枚ドロー!」

 

「ほう……賭けに出たな」

 

 

 

 陛下の言う通り、これは賭けだ。何故(な ぜ)ならこの(トラップ)を使うと、代償として以後2ターンの間、ドローが出来なくなる。このドローで、逆転のキーカードを引き当てられなかったら、ボクの敗北は確定的だ。

 

 手札が4枚に増える。……行ける…!

 

 

 

「勝てる!!」

 

「!」

 

「ボクは2体目の【ポケ・ドラ】を召喚!」

 

 

 

【ポケ・ドラ】 攻撃力 200

 

 

 

「さらに魔法(マジック)カード・【ドラゴニック・タクティクス】発動!フィールドの2体の【ポケ・ドラ】をリリースして、デッキからレベル8のドラゴンを特殊召喚する!」

 

「なにっ!?」

 

「現れ出ちゃえ!ボクのデッキの切り札(エース)!【ラビードラゴン】!!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950

 

 

 

 甲高い咆哮を轟かせながら、フィールドに舞い降りた【ラビードラゴン】。その攻撃力に驚いたのか、陛下の下僕(ファン)が騒然とし始めた。

 

 

 

「な、なんだありゃあ!陛下のモンスターの攻撃力を上回るのか!?」

 

「そんなの有りかぁーっ!?」

 

 

 

「……おもしろい…!」

 

 

 

 当の陛下は焦りもせず、勝ち気な笑みを浮かべている。

 そうだろうと思ったよ。でも、今から度肝を抜いてあげる!

 

 

 

「お楽しみは、これからだ!ボクは永続魔法・【ドミノ】を発動!」

 

「!……【ドミノ】だと?」

 

「バトル!【ラビードラゴン】で、【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス) LV(レベル)8】を攻撃!」

 

「ッ!」

 

「『ホワイト・ラピッド・ストリーム』!!」

 

 

 

 視界を覆い尽くす程の白き光の奔流が、漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)を直撃した。

 

 

 

「ぐおおおおおおっ!!」

 

 

 

 ディアボロス LP 3000 → 2850

 

 

 

「そしてボクは……【ラビードラゴン】を墓地に送る!」

 

「…!なんだと…?」

 

 

 

 せっかく召喚できた上級モンスターを、わざわざ墓地送りにしたボクの行動が異常に映ったらしく、陛下は(いぶか)しげな視線をボクに向けてきた。フフッ、そんな顔しなくても、すぐに解るよ。

 

 

 

「さぁ……これが『ドミノ』だ!」

 

 

 

 ボクが宣言すると、さっきの戦闘(バトル)で【ラビードラゴン】に攻撃された【漆黒(ダーク)()魔王(ルシアス)】が、衝撃に耐え切れず足下のバランスを崩して後方に倒れ込む。

 そしてそのまま背後に居た【闇より出でし絶望】と衝突し、2体とも同時に破壊されて消滅した。

 

 

 

「ぐっ…!?オレのモンスターが……全滅だと…!」

 

「【ドミノ】は戦闘で相手モンスターを破壊した時、自分のモンスター1体を墓地に送ることで、相手モンスター1体を破壊できる!」

 

「……なるほど……正に『ドミノ倒し』のカードと言うわけか……だがその為にお前は、エースモンスターを失った!」

 

「それはどうかな?」

 

 

 

 ボクは手札の1枚を取り出して、パチッとウィンクを決める。

 

 

 

「なに…?」

 

「手札から速攻魔法・【銀龍の轟咆(ごうほう)】を発動!(よみがえ)れ!【ラビードラゴン】!!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950

 

 

 

「まさか……これほどとは…!」

 

「カードが応えてくれたのさ……これで、チェックメイトだ!!【ラビードラゴン】!陛下に直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

 

 

- ホワイト・ラピッド・ストリーム!! -

 

 

 

「…………ッ!!」

 

 

 

 ラビードラゴンの二度目の攻撃が陛下に命中した。放った光線は爆発を起こして、(まばゆ)い閃光が陛下を見えなくする。

 

 

 

「へ……陛下が……負けちまったのか…?」

 

 

 

 観客の誰かが、そう声を漏らした。気づけば先程までの、ライブさながらの大盛況が嘘の様に、周りは急激に静まり返っていた。

 

 アマネもルイくんもマキちゃんも、ドーナツを売ってくれた小さいお姉さんも、ディスクを販売する売り子ちゃんも、陛下を応援していた下僕の方々(かたがた)も。

 誰もが固唾を飲んで、この決闘(デュエル)の行く末を見守る中……

 

 やがて光が消える。そこには腕を組んで、仁王立ちしている陛下の姿が。

 

 

 

「……見事だ。エンタメは相手にも見せ場を与えなければいかんからな、なかなか骨が折れる」

 

「-!?」

 

 

 

 ディアボロス LP 2850

 

 

 

「ライフが減ってない!?なっ……なんで…!」

 

「オレのフィールドをよく見るがいい」

 

「……!」

 

 

 

【バトルフェーダー】 攻撃力 0

 

 

 

 陛下のフィールドには、いつの間にかモンスターが召喚されていた。しかも、あのモンスターは……

 

 

 

「悪いがオレは今の攻撃で、手札から【バトルフェーダー】を特殊召喚していた。こいつは相手が直接攻撃を仕掛けてきた時に召喚でき、バトルフェイズを強制終了させる」

 

 

 

 ここに来て、そんな防御札を隠し持っていたのか…!

 一度は敗れたかに思われた陛下が驚きの返し手を披露した途端、オーディエンスの熱狂も、一気に再燃した。

 

 より勢いと声量を増して鳴り響く大歓声の()(なか)、ボクは悔しさを滲ませて歯噛みした。もう……ボクに出来る事は無い。

 

 

 

「……ターン…エンド…!」

 

 

 

 ターンが陛下に渡ってしまう。ライフ差は陛下に分がある上に、ボクは【無謀な欲張り】のデメリットでドローできない。……だけど、フィールドには【ラビードラゴン】がいてくれてるし、今の陛下の手札は(ゼロ)枚。

 

 

 

(可能性はある…!最後まで希望は捨てない!)

 

「……………」

 

(…ディアボロス(オレ)決闘(デュエル)して恐怖するどころか……未だに戦意を失わない相手は、この男が初めてだな……フッ、最初は気乗りしてなかったが…今日は()()()さんに連れて来られて、良かったかもな)

 

「少年。お前の名を聞いてなかったな」

 

「……セツナ。総角(アゲマキ) (セツ)()だよ」

 

「セツナか、覚えておこう。久々に楽しい決闘(デュエル)だった。敬意を表して、オレも全力の(エン)()()をお前に魅せよう!オレの……ターンッ!!」

 

「!」

 

 

 

 陛下がデッキからカードを引き抜いた瞬間、突風が周囲に吹き荒れた。

 悪魔が本気になった。その重圧が、ビリビリと肌に突き刺さる感覚に見舞われる。

 

 

 

「オレは魔法(マジック)カード・【強欲で貪欲な壺】を発動!デッキの上から10枚除外し、2枚ドローする!」

 

 

 

 ドローした2枚を確認すると、陛下は微笑して「良い引きだ」と呟き、空を指さした。

 

 

 

「ファン諸君に宣言しよう!オレはこのターンで決着をつける!!」

 

 

 

 その宣誓(せんせい)が起爆剤となり、観客のボルテージは最高潮に達した。

 ていうかなんか白塗り顔の人数が多くなってきてるのは気のせい?陛下の(あふ)れ出るカリスマ性は、通りかかった一般人をも(とりこ)にしてしまうのか。

 

 

 

「ウオオオオッ!!ついに来たぞ!」

 

「陛下の処刑宣言だああああッ!!」

 

「陛下の豪快な戦術を見せてくれええええっ!!」

 

 

 

「刮目せよ!悪魔の決闘(デュエル)を!リバースカード・オープン!【リビングデッドの呼び声】!復活しろ、【闇より出でし絶望】!」

 

 

 

【闇より出でし絶望】 攻撃力 2800

 

 

 

「そして……オレは【バトルフェーダー】と【闇より出でし絶望】をリリースして、アドバンス召喚!」

 

「こ、ここでアドバンス召喚!?」

 

「楽しませてもらった礼だ。お前には、オレのデッキの『最終兵器』によって葬られる栄誉を与えてやる!」

 

 

 

 フィールドに発生した闇の渦が、陛下の従えるモンスター2体を飲み込んだ。

 

 

 

「闇を纏いて現れよ!【魔王ディアボロス】!!」

 

 

 

【魔王ディアボロス】 攻撃力 2800

 

 

 

「魔王……ディアボロス……!?」

 

 

 

 天地を揺るがす咆哮と共に降臨したのは、陛下と同じ名を冠する闇黒(あんこく)の魔竜。

 ラビードラゴンとは対をなす黒き体躯と、真っ赤な眼光。この2体の(ドラゴン)が対峙する光景は壮観と言う他なくて……気がつくとボクは、心を奪われていた。

 

 

 

「す……凄い…ッ!」

 

「……くくっ、魔王の竜が降り立つには、この空の光は相応(ふさわ)しくないな。邪魔な太陽には消えてもらおうか!フィールド魔法・【ダークゾーン】!」

 

 

 

 今度は怪しげな暗雲が立ち込めてきて、太陽の光を(さえぎ)り、フィールド全体を落雷が襲った。

 その演出が余計に観客の興奮を煽るらしく、最早ここが街の駅前である事なんて、みんな忘れてしまっていた。何この終末感。

 

 

 

「【ダークゾーン】の効果により、【魔王ディアボロス】の攻撃力は、500ポイントアップする!」

 

 

 

【魔王ディアボロス】 攻撃力 2800 + 500 = 3300

 

 

 

「攻撃力……3300…!」

 

「これがオレの(エン)()()だ!行くぞセツナ!【魔王ディアボロス】で、【ラビードラゴン】を攻撃!!」

 

「…!」

 

「希望を打ち砕け!『殲滅(せんめつ)のディスペア・ストリーム』!!」

 

 

 

 魔竜が放った、黒く邪悪な光線。それに貫かれた【ラビードラゴン】の身体は、粉々に砕け散ってしまう。

 

 

 

「うわぁあああああっ!!」

 

 

 

 セツナ LP 0

 

 

 

 ライフが尽き、ボクの負けで、決闘(デュエル)は決着した。あと一歩……及ばなかったなぁ。

 

 

 

「あちゃ~、セツナくん負けちゃったかぁ。けど惜しかったよね、アマネたん」

 

「そうね。まっ、相手は現役のプロだし。かなり善戦したんじゃない?」

 

 

 

「うっ……ッ!?」

 

 

 

 しまった、フラついた拍子に足が(もつ)れた!

 

 

 

「あっ、とっ、とっ、わあっ!」

 

 

 

 バランスが崩壊して、覚束ない足取りで後ろに数歩下がる。立て直すこと叶わず重力に圧されて、身体が地面に背中から傾いた。

 コンクリートに打ち付けられるのを覚悟して、とっさに目を(つむ)ったけれど、誰かが倒れかけたボクの身体を支えてくれた。

 

 

 

「いたた……あれ?」

 

「よぉボウズ。大丈夫か?」

 

「ぃ!?」

 

 

 

 顔を上げると、白塗りの顔面が覗き込む様にボクを見ていた。ひえっ、ビックリして声が出ちゃった、ごめんなさい。

 抱き止めてくれたのは陛下のファンの男性だった。間近で見ると、更にド迫力なメイクだね……って、そうだ!お礼を言わないと!

 

 

 

「あ、ありがとう……」

 

「すげぇじゃねーかボウズ!陛下をあそこまで追い詰めるなんてよぉ!俺ァ鳥肌たっちまったぜ!」

 

「え?」

 

「おう!スゲー決闘(デュエル)だったぜぇー!」

 

「良いエンタメを見せてもらったぜ!」

 

「陛下相手にやるじゃねぇか!最高だったぜーッ!」

 

 

 

 次々と皆から賞賛の言葉を贈られて、次第に万雷(ばんらい)の拍手が沸き起こった。

 ポカンとしているボクを、白塗りのお兄さんが立ち上がらせてくれる。

 

 

 

「ほら、堂々と胸を張れよ。ボウズ」

 

「……!…えへへ……ありがとう、みんな!」

 

 

 

 ボクは手を振って、拍手に応える。なんだか照れるけど、素直に嬉しい。

 

 

 

「……フッ。今日も素晴らしき決闘(デュエル)だった!!また会おう、諸君!!」

 

「「「 陛下!! 陛下!! 陛下!! 陛下!! 」」」

 

 

 

 マントを(ひるがえ)して、ディアボロス陛下は颯爽と立ち去っていった。嵐のような人だったなぁ。いや、悪魔か。

 

 あっ、そう言えば……決闘(デュエル)に勝って、マキちゃんの欲しがってたデュエルディスクを無料(タ ダ)で譲ってもらうつもりだったんだ。

 負けちゃったんじゃ、ダメだよね……ボクは肩を落として、三人の元に戻った。

 

 

 

「ごめん、マキちゃん。勝てなかったよ」

 

「うぅん、気にしなくて良いよ。楽しい決闘(デュエル)も見られたし。ありがとうね、セツナくん!」

 

「そこのお二人!ちょっと待ちなよ!」

 

「「ん?」」

 

 

 

 ボクとマキちゃんを呼び止めたのは、あの茶髪の売り子ちゃんだった。

 

 

 

「銀髪くん!君の健闘を讃えて、特別にこのデュエルディスクを進呈します!どうぞ受け取って!」

 

 

 

 そう言って売り子ちゃんは、パステルピンクのデュエルディスクを箱に入れると、マキちゃんに手渡してくれた。

 

 

 

「えぇーっ!!ほ、本当に貰っちゃって良いの!?」

 

「もちろん!皆には内緒だよ?」

 

「ありがとうー!セツナくんのおかげだよー!」

 

「やったー!ありがとう売り子ちゃん!」

 

「良かったわね、マキちゃん」

 

「二人とも、すごく嬉しそうです」

 

 

 

 陛下に勝てはしなかったけど、マキちゃんの望みの品が手に入って、本当に良かった。

 

 

 

「……今度は負けないよ、陛下」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ……疲れた……」

 

 

 

 阿久津さんの経営する移動販売車・『ハートフルドーナツ』の裏方に置いてある仮眠用のベッドに、オレはグッタリと寝転がった。ちなみに化粧(メイク)は洗い落として、衣装は床に脱ぎ捨ててある。

 

 そう、『悪魔のカリスマデュエリスト・ディアボロス』は、元の姿である()(がみ) (ゆう)()へと戻ったのだ。

 

 変身を解いたオレは、最後に戦った挑戦者……総角(アゲマキ) (セツ)()という名前の、銀髪で赤いメガネを掛けた少年との決闘(デュエル)を思い返す。

 

 そして……改めて肝を冷やす。

 

 

 

(危なかった!マジで危なかった!何なんだアイツは!あそこで【フェーダー】握ってなかったらマジで負けていたぞ!!)

 

 

 

 心臓に悪いなんてもんじゃない。公式試合なら()(かく)、野良デュエルで(同い年ぐらいの)学生に敗北するなど、悪魔(ディアボロス)のキャラ的に、あってはならない事だ。

 決して油断していたつもりはないが……よもや、あんな強者と当たるとはな。正直ヒヤヒヤしたぞ。

 

 

 

(……にしても……メガネを外した時の、あの男の豹変ぶりには驚いたな……)

 

 

 

 あれ程の気迫を出せる決闘者(デュエリスト)は、プロでも(まれ)だ。あいつは一体……

 

 

 

「お疲れさま~!ユーゴ~!」

 

「……阿久津さんか。あぁ、死ぬほど疲れた」

 

「はいこれ!コーヒーと、君の大好きなシナモンシュガーにチョコオールドファッション!」

 

「いただこう」

 

「わおっ、急に元気になったわね。さすがスイーツ男子」

 

 

 

 その呼び名は(いささ)か不本意だが否定は出来ない。この店のドーナツは、オレの大好物だからな。

 一口(ひとくち)かじる。美味い。やはり疲れた身体と脳には甘いものが一番だ。

 

 時折コーヒーを(すす)りながら休憩していると、不意に阿久津さんが口を開いた。

 

 

 

「楽しかった?」

 

「……何がだ」

 

「あのセツナくんって子との決闘(デュエル)だよ。ユーゴったら、途中から自分が『陛下』だってこと、忘れてたでしょ?」

 

「………………そんなことはない」

 

「今の()は何よ」

 

「まぁ、なかなか楽しませてくれる相手ではあったな」

 

「フフッ、やっぱり素直じゃないわね、ユーゴって」

 

 

 

 やれやれ…(かな)わないな。この人には何もかも、お見通しと言うわけか。

 

 しばらくして、用意した在庫を完売させた(おと)()さんが大喜びで戻ってきたので、目的を遂げたオレ達は、ジャルダン()()つ事にした。

 

 いつも通り、阿久津さんの運転で車は走り出す。若干の名残惜しさは感じたが、来たくなったらまた来ればいい。

 

 

 

「……総角(アゲマキ) (セツ)()…か。あいつとは、またいつか決闘(デュエル)してみたいものだ」

 

 

 

 きっと、そう遠くない内に。

 

 

 

 





 というわけで、初めてのコラボ回でした!三月猫さま、お声掛け本当にありがとうございました!とても楽しく書かせて頂きました!

 コラボのお誘いは、いつでもお待ちしております(*´∀`)♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。