遊戯王 INNOCENCE - Si Vis Pacem Para Bellum -   作:箱庭の猫

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 コラボ回・後編です!



TURN - 17 SPIRIT SUMMONER - 2

 

「ねぇ()()ちゃん、本当にこんなところに居るの?」

 

 

 

 大都市ジャルダンの一番街。都会の喧騒から離れた場所に佇む、寂れた廃工場を見上げながら、ボクは黒髪の女性に確認する様に問いかけた。

 横に立って並んだ時に気づいたんだけど、この人、男のボクより背が高いんだよね。ちょっと悔しい。

 

 

 

「あぁ間違いない。この場所に精霊の気配を確かに感じる」

 

「俺達が街に放った精霊が、ここに奴が潜伏しているのを見つけ出してくれたからな。ようやく追い詰めたぜ」

 

 

 

 刈り上げた短髪が精悍な印象を与える、ナイスガイのゴウさんが、(てのひら)に拳を打ち付け、そう言った。

 

 

 

「……すごいや。精霊回収者って、そんなことも出来るんだね」

 

 

 

 里香ちゃんとゴウさんは『精霊回収者』と呼ばれる人達で、デュエルモンスターズの精霊と、心を通わせる事が出来るらしい。その能力を駆使して精霊達に協力を仰ぎ、ボクらが追っているミイラ男……即ち、連続失踪事件の犯人の居どころを、突き止めたというわけだ。

 

 

 

「よし……行こう、二人とも。ここから先は何が起きるか分からない。用心してくれ」

 

「おう」

 

「うん」

 

「……セツナ、君をこんな危険に巻き込んでしまって、すまないと思ってる。あの時、もう少し早く駆けつける事が出来たなら……!」

 

 

 

 あの時……ボクがミイラ男、もとい『カードの精霊』に襲われて、魂の半分を吸収されてしまった時の事を言ってるんだろう。里香ちゃんはそれに責任を感じているのか、握り締めた拳を震わせていた。

 

 ボクは微笑んで、そんな彼女の背中を優しく叩く。

 

 

 

「ここに来てそんな水くさいこと言わないでよ里香ちゃん。言ったでしょ? 力になるって」

 

「セツナ……」

 

「それに……あのミイラ男を放っておくと、次はボクの大切な友達まで狙われるかも知れない。それだけは絶対に嫌なんだ」

 

「どうやら、腹は決まったみたいだな」

 

 

 

 ゴウさんの言葉にボクは頷き、ホワイトタイプのデュエルディスクを左腕に装着する。これで戦う準備は整った。

 

 

 

「つーわけだ、里香よ。お前が変に気負う必要はねぇ。本人は見ての通り、やる気満々だぜ?」

 

「……そうか。ありがとう、セツナ。君の力、借り受ける!」

 

 

 

 意を決してボク達3人は、工場の内部へと足を踏み入れた。

 

 

 

 ……打ち捨てられてから、どれだけの年月が経ったのだろう。街の開発から取り残された廃工場は、いつ倒壊してもおかしくない程に老朽化していた。

 寂寥感(せきりょうかん)の漂う工場内を探索していくと、やがて一際(ひときわ)広い空間に行き着いた。どうやらここが最奥の様だ。でも、ミイラ男の姿は見当たらない。

 

 

 

「何も……ない?」

 

「いや、気配はこの場所からは消えていな……」

 

『フフフフ……! ネズミがノコノコと(おび)き出されたか』

 

「「「!!」」」

 

 

 

 どこからか響いた、男の不気味な声。聞き間違える筈もない……あいつだ!

 

 

 

『しかも喰いかけ(・ ・ ・ ・)()()までついてくるとはな。なんと都合の良い!』

 

「ッ……! それって、ボクのこと?」

 

「どこだ!! コソコソと隠れてないで出てこい!!」

 

 

 

 里香ちゃんが声を張る。すると何の前触れも無く、虚空に電流が発生して周囲に火花を散らした。そして、その激しい雷電の中から、黒い外套(がいとう)を着込み、顔に包帯を巻いた大男が出現した。

 

 

 

「出やがった……!」

 

『フフフッ、待っていたぞ、忌まわしき精霊回収者ども』

 

「待っていた? どういう意味だ!」

 

「こういう意味よ、里香」

 

「!?」

 

 

 

 錆び付いた鉄骨階段を、ヒールの足音を鳴らしながら一段ずつ降りてきたのは、髪と瞳が緑色で、里香ちゃんに負けず劣らずの美貌を誇る少女だった。

 

 

 

「なっ……! お前は……西(にし)() ()()!!」

 

「ハァ~イ。お久しぶりね、マイスイートエンジェル」

 

「その気色悪い呼び方はやめろ、何故ここに?」

 

「何故? 決まっているでしょう? 全ては貴女(アナタ)を手に入れる為よ。私は貴女を、私自慢の美少女コレクションに加える為なら手段を選ばない」

 

「美少女コレクション?」

 

「セツナは気にしなくていい」

 

「私はどうしたら貴女を私のモノに出来るのか、ずっと考えていた……そしたらこの精霊が『契約』してくれたわ。決闘者(デュエリスト)の魂を生け贄に捧げれば、彼が復活した暁には、私の望みを叶えてくれるって」

 

「-! なん……だと……」

 

「この街は良いわね、どこもかしこも決闘者(デュエリスト)がウヨウヨしてる。生け贄を集めるのは簡単だったわ。そして精霊あるところには、精霊回収者あり。騒ぎを起こせば里香なら必ず、私に逢いに来てくれると踏んだ」

 

「俺達はまんまと誘い込まれたってわけか……!」

 

「バカな事を……『悪霊』と契約するなど……それがどれほど危険な事か、分かっているのか!?」

 

「悪霊?」

 

「そういやセツナには説明してなかったな。奴の様に、人間や他の精霊に危害を加える精霊を、俺達は『悪霊』って呼んでるのさ」

 

 

 

 悪い精霊だから悪霊か、なるほど。

 

 

 

「あら、悪霊もなかなか役に立つものよ? こんな極上の獲物が手に入ったんだから」

 

 

 

 西野 万里と呼ばれた少女が指をパチンと鳴らした。すると──

 

 

 

「!?」

 

 

 

 天井から、鎖で拘束された女の子が何人も吊るされてきた。みんな意識を失っているのか反応が無い。着ている服は、デュエルアカデミア・ジャルダン校の制服だった。という事は……

 

 

 

「失踪事件の被害に遭った学園の生徒って、あの子達のことだったんだ……!」

 

「ウフフ、ジャルダンのデュエルアカデミアは美少女の宝庫だと聞いてたけど本当ね。よりどりみどりだわ~」

 

「このガチレズが」

 

「そんな顔しないで里香、すぐに貴女も仲間に入れてあげるわ。さぁ悪霊よ! 奴らを蹴散らしなさい!!」

 

『私に命令するな人間。言われるまでもない』

 

 

 

 ミイラ男がコートを脱ぎ捨て、包帯を取り去り、ついに正体を現した。

 

 

 

「!」

 

 

 

 その姿には見覚えがあった。スキンヘッドでスコープにガスマスク。このモンスターは、まさか……!

 

 

 

「サイコ・ショッカー!?」

 

『フフフッ、いかにも。私の名は……【人造(じんぞう)人間(にんげん)-サイコ・ショッカー】!!』

 

 

 

 決闘者(デュエリスト)なら誰もが知っているだろう、(トラップ)カードを完封する上級モンスターだ。

 

 

 

「よりにもよって、こんな厄介なモンスターが相手とはな……!」

 

『さぁ決闘(デュエル)だ! 一人残らず魂を喰らい尽くしてやる!』

 

「ッ……ここは私が行く!」

 

「ちょっと待って!」

 

 

 

 先んじてデュエルディスクを構えた里香ちゃんを止め、ボクは彼女の隣に立つ。

 

 

 

「サイコ・ショッカー。この決闘(デュエル)、こっちはボクと里香ちゃんの二人(タッグ)でやらせてもらうよ」

 

『なに?』

 

「ライフポイントは二人合わせて4000。フィールドも共有する。これなら文句ないでしょう?」

 

『……良いだろう。二人まとめて、我が復活の糧にしてくれる!』

 

「セツナ……」

 

「サポートは任せて、里香ちゃん」

 

「あぁ! 私達の力で、奴を粉砕する!」

 

 

 

「「『 決闘(デュエル)!! 』」」

 

 

 

 セツナ × ()() LP(ライフポイント) 4000

 

 サイコ・ショッカー LP(ライフポイント) 4000

 

 

 

『私の先攻!』

 

 

 

 サイコ・ショッカーの前面に、5枚のカードが立体映像(ソリッドビジョン)の様にして具現化された。デュエルディスクを使っていないところを見るに、アレが彼の手札みたいだ。これがカードの精霊の決闘(デュエル)スタイルなのかな。

 

 

 

『私は【人造人間7号】を召喚!』

 

 

 

【人造人間7号】 攻撃力 500

 

 

 

『カードを3枚伏せ、ターンを終了する!』

 

 

 

 ターンがボクに移る。

 

 

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

「セツナ、これはカードの精霊と魂を賭けた、いわば『闇のゲーム』だ。気を抜くなよ」

 

「分かってるよ、ゴウさん」

 

 

 

 この決闘(デュエル)には、ボク自身の命だけじゃなく、サイコ・ショッカーの後ろで捕らわれている女の子達と、これまでに魂を奪われ消えた、街の人々の命運も懸かっている。

 こんなの、ボクのキャラじゃないんだけどな……

 

 

 

(でも……なんでだろ。こんな時にボクは……)

 

「……なぁ、セツナ。私の勘違いだったら非常に申し訳ないが……もしかして、この状況を楽しんでないか?」

 

「あっ、バレた?」

 

「やっぱりか……顔がニヤけてたからな」

 

 

 

 あちゃー、()()に出てたか恥ずかしい。今度ポーカーフェイスの練習でもしとこ。

 

 

 

「……そりゃあ別に余裕こいてるわけじゃないよ、でも……ずっと伝説上の生き物だと思ってた『カードの精霊』を生で見れて、しかも決闘(デュエル)まで出来るって、凄い()()な体験だと思ってさ。……こんな時だってのに……ワクワクしてるんだ……!」

 

「セツナ……」

 

「ははっ、おもしれぇ奴だ。チャラい()()して、なかなか肝が据わってるじゃねぇか。なぁ里香?」

 

「……フッ、そうだな。それでこそ頼り甲斐がある」

 

 

 

 ボクは赤メガネを外して集中モードに突入する。絶対に負けるわけには行かないからね、最初から全力全開だ!

 

 

 

「さぁ行くよ! ボクは手札から魔法(マジック)カード・【予想GUY(ガイ)】を発動! 自分フィールドにモンスターがいない時、デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚できる! ボクが召喚するのは、【デビル・ドラゴン】!」

 

 

 

【デビル・ドラゴン】 攻撃力 1500

 

 

 

「そして【ミンゲイドラゴン】を通常召喚!」

 

 

 

【ミンゲイドラゴン】 攻撃力 200

 

 

 

『2体のモンスターを揃えたか……』

 

「これで終わりじゃないよ。魔法(マジック)カード発動! 【ドラゴニック・タクティクス】!」

 

『!』

 

「フィールドの2体のドラゴンをリリースして、現れろ! 【ラビードラゴン】!!」

 

 

 

 白い体毛と長い耳を持つ巨大なドラゴンがフィールドに飛来した。

 

 

 

【ラビードラゴン】 攻撃力 2950

 

 

 

『ほう?』

 

「凄い……これがセツナのエースモンスターか……!」

 

「こんな序盤から呼び出せるとは、里香の見立て通り、ただ者じゃねぇぜ」

 

「てへへ」

 

 

 

 里香ちゃんとゴウさんの感嘆の言葉を受けて、ボクはつい頬が緩むのを感じた。いかんいかん気を引き締めなくては。メガネ外した意味がない。

 

 

 

「行くよ! 【ラビードラゴン】の攻撃! 『ホワイト・ラピッド・ストリーム』!!」

 

 

 

 ラビードラゴンが口から放った光線が敵モンスターに迫る。

 

 ──その時、サイコ・ショッカーが動いた。

 

 

 

『【人造人間7号】をリリースし、【死のデッキ破壊ウイルス】を発動!』

 

「なっ!?」

 

『相手フィールドと手札にある、攻撃力1500以上のモンスターを全て破壊する!』

 

 

 

 ラビードラゴンの身体がウイルスに侵食されていき、最後は粉々に破壊されてしまった……!

 

 

 

「ラビードラゴン!?」

 

『フフフッ、せっかく召喚したのに残念だったな。さぁ、手札を確認させてもらおうか』

 

「くっ……」

 

 

 

 やむを得ず、手札を公開する。

 

 今のボクの手札は、【トレード・イン】、【ガード・ブロック】、【ラヴァ・ドラゴン】の3枚。

 

 

 

『フフッ、【ラヴァ・ドラゴン】は攻撃力1600。墓地に捨ててもらおう』

 

「ッ……」

 

『【死のデッキ破壊ウイルス】の効果により、貴様はデッキから攻撃力1500以上のモンスターを、3枚まで破壊できる。どうする?』

 

「…………」

 

 

 

 墓地にモンスターを送っておけば、回収する手はいくらでもある。ここは……

 

 

 

「ボクはこの3枚を墓地に送るよ」

 

 

 

 デッキの中から【暗黒の竜王(ドラゴン)】、【エレメント・ドラゴン】、【竜の尖兵】を破壊し、墓地へと送った。

 

 

 

「……カードを1枚セットして、ボクはターン終了(エンド)

 

 

 

 言わずもがな、この伏せカードは(トラップ)カード・【ガード・ブロック】だ。サイコ・ショッカーにもバレバレだろうけど、場に出しておいて損は無い……はず。

 

 お次は里香ちゃんのターン。

 

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

「里香ちゃん! ボクのカード、遠慮なく使って!」

 

「ありがたく使わせてもらう! 墓地の【ミンゲイドラゴン】の効果! 私達の場にモンスターがいない事で、スタンバイフェイズに墓地から特殊召喚できる!」

 

 

 

 ボクのディスクの墓地(セメタリー)ゾーンから戻ってきた【ミンゲイドラゴン】のカードを取り出して、里香ちゃんに投げ渡す。

 

 

 

【ミンゲイドラゴン】 攻撃力 200

 

 

 

「そして【ミンゲイドラゴン】は、ドラゴン族をアドバンス召喚する場合、2体分のリリース要員として扱える。【ミンゲイドラゴン】をリリース!」

 

 

 

 【ミンゲイドラゴン】が光の渦に飲み込まれる。来るか、里香ちゃんのエースモンスター!

 

 

 

「現れろ! 雄々しくも美しく輝く二色(ふたいろ)(まなこ)! 【オッドアイズ・ドラゴン】!!」

 

 

 

 右の眼には赤、左の眼には(みどり)という、異なる虹彩(こうさい)の色を秘めた美しいドラゴンが地上へ降り立ち、コンクリートで囲まれた空間に、咆哮を轟かせた。

 

 

 

【オッドアイズ・ドラゴン】 攻撃力 2500

 

 

 

『精霊……!』

 

「そうだ! このドラゴンこそ私の精霊! かけがえのない、家族だ!」

 

 

 

 デュエルモンスターズが家族かぁ。確かに【オッドアイズ】と里香ちゃんの間には、固く結ばれた強い『絆』を感じる。

 

 

 

「バトル! 【オッドアイズ】でサイコ・ショッカーに直接攻撃(ダイレクトアタック)! 『スパイラルフレイム』!!」

 

(トラップ)発動! 【魔法の筒(マジック・シリンダー)】!』

 

「!?」

 

 

 

 二つの筒が空中に出現し、その内の一つ、こちらから見て左側の筒に、【オッドアイズ】の放った()(せん)状の火炎放射が吸い込まれていき、右側の筒から里香ちゃんを狙ってそれが発射された。

 

 

 

『【オッドアイズ】の攻撃を無効にし、その攻撃力分のダメージを貴様に与える!』

 

「里香ちゃん危ない!!」

 

「っ……! 手札から速攻魔法・【(ぼう)(ぎょ)(りん)】を発動!」

 

 

 

 4枚の板が付いた鉄製のリングが里香ちゃんの前で回転を始め、反射された炎を受け止めて里香ちゃんを守ってくれた。

 

 

 

「ふう……なんとか(しの)いだか。私のターンは終了だ!」

 

『私のターン!』

 

 

 

「……なかなかやるじゃねぇか、あの悪霊……里香とセツナの二人がかりをものともしてねぇ」

 

「フフン、当然よ。より精霊力の強い悪霊を選んで呼び覚ましたんですもの」

 

 

 

『ドロー! ……フフフフッ! ついに我が復活の時が来たようだな!!』

 

「!」

 

「まさか……!」

 

『私は【人造人間-サイコ・ジャッカー】を召喚!』

 

 

 

【人造人間-サイコ・ジャッカー】 攻撃力 800

 

 

 

『そして効果発動! このモンスターをリリースする事で、デッキから【人造人間】と名のつくモンスターを1枚、手札に加える事が出来る! 私は【サイコ・ショッカー】を手札に!』

 

「アレは、サイコ・ショッカー自身のカード!?」

 

「セツナ、気をつけろ……!」

 

『【サイコ・ジャッカー】の効果はまだある。相手の場に伏せられている魔法(マジック)(トラップ)カードを全て確認する!』

 

「なっ!?」

 

 

 

 ボクが前のターンにセットしておいた、1枚の伏せ(リバース)カードが開示されてしまった。

 

 

 

『フフフッ、やはり【ガード・ブロック】を伏せていたか。それこそ私の狙い通り!』

 

「っ! どういうこと……?」

 

『この効果で確認したカードの中に(トラップ)カードが在る場合、その数だけ手札の【人造人間】を特殊召喚できる!』

 

「「!!」」

 

 

 

 しまった、よかれと思って(トラップ)カードを伏せておいたのが裏目に出た……!

 【サイコ・ショッカー】のカードが表になった途端、そのカードから再び電流が発生して辺り一面に放電する。眩しくてまともに目が開けられない。

 

 

 

『出でよ! 【人造人間-サイコ・ショッカー】!!』

 

 

 

 今までプレイヤーとして立っていたサイコ・ショッカーが、今度はフィールドに……モンスターカードゾーンに姿を現していた。

 

 

 

【人造人間-サイコ・ショッカー】 攻撃力 2400

 

 

 

『フフフフフ……』

 

「ついに【サイコ・ショッカー】が……復活した……!?」

 

「いや……まだ私達の魂は吸収されていない。つまり完全な復活ではない」

 

『その通り! 貴様らの魂を取り込む事で、私の復活は完了する! 効果発動、トラップ・サーチ!!』

 

 

 

 サイコ・ショッカーの目元に付いているスコープから赤いレーザーが射出され、セット状態に戻っていた【ガード・ブロック】のカードに命中した。すると【ガード・ブロック】は発動できなくなってしまう。

 

 

 

『残念だったな。この私、【サイコ・ショッカー】が場にいる限り、全ての(トラップ)カードは無力と化す!』

 

「くっ……だがそれはお前も同じ事だ! それに、私の【オッドアイズ】の方が攻撃力は高い!」

 

『それはどうかな? 私は手札から【電脳増幅器】を、私自身に装備!』

 

 

 

 ヘルメットみたいな形状の機械がサイコ・ショッカーの頭部に装着された。

 

 

 

『これにより、私は【サイコ・ショッカー】の効果に影響されず、(トラップ)カードを発動できる!』

 

 

 

 ボクらだけが(トラップ)を封じられたってわけか。それズルじゃん!

 

 

 

(トラップ)発動、【エナジー・ドレイン】! 自分のモンスター1体の攻撃力・守備力を、相手の手札の枚数 × 200ポイントアップさせる!』

 

 

 

 里香ちゃんの手札は4枚。って事は、800ポイントアップか。

 

 

 

『おおおオオオオッ……! 我が力の増幅を感じるゥゥッ……!!』

 

 

 

【人造人間-サイコ・ショッカー】 攻撃力 2400 + 800 = 3200 守備力 1500 + 800 = 2300

 

 

 

「攻撃力が【オッドアイズ】を越えてきたか……!」

 

『バトルだ! 私自身で【オッドアイズ・ドラゴン】を攻撃! 電脳(サイバー)エナジー・ショック!!』

 

 

 

 サイコ・ショッカーの掌から撃ち出された球状のエネルギー弾が、【オッドアイズ】をいとも容易く粉砕した。

 

 

 

「【オッドアイズ】!! うあっ!」

 

「うぅ……!」

 

 

 

 凄まじい衝撃波……! サイコ・ショッカーが発動した【死のデッキ破壊ウイルス】の効果で、このターンはボク達にダメージは無いけれど、それでもここまでの威力だなんて、これ直撃したらヤバいんじゃない……!?

 

 

 

『ターン終了! エンドフェイズに私の攻守(ステータス)は元に戻る』

 

 

 

【人造人間-サイコ・ショッカー】 攻撃力 3200 → 2400 守備力 2300 → 1500

 

 

 

「っ……ボクのターン、ドロー!」

 

 

 

 【サイコ・ショッカー】……

 

 ひとたび召喚に成功すれば、それだけで場を制圧できる程の力を持つ凶悪なモンスター。ボクが過去に決闘(デュエル)した相手の中にも何人か使い手がいて、何度か(たたか)った事はあるけれど……毎回その厄介な効果と高い攻撃力には苦戦させられてきたっけな。

 

 なんて、懐かしんでる場合じゃないや。現状あのモンスターを退()かせられるカードは、ボクの手札に無い。となると……

 

 

 

「ボクは……1枚カードを伏せて、ターンエンド!」

 

『フッ、モンスターも呼べないとはな』

 

「ごめん、里香ちゃん」

 

「気にするなセツナ、私に任せろ! 私のターン!」

 

(……よし、これなら!)

 

魔法(マジック)カード・【左腕の代償】! 手札を全て除外し、デッキから魔法(マジック)カード1枚を手札に加える! 私が手札に加えるのは……【魔法効果の矢】!」

 

『なに!? そのカードは!?』

 

「発動!」

 

 

 

 魔力を込めた矢がサイコ・ショッカーに装備されている【電脳増幅器】に突き刺さり、破砕した。

 

 

 

『ぐっ、ぐああああああっ!!!?』

 

「この効果で魔法(マジック)カードは破壊され、お前は500ポイントのダメージを受ける!」

 

「しめた! 【電脳増幅器】がフィールドを離れれば、装備モンスター(サイコ・ショッカー)も破壊される!」

 

 

 

 サイコ・ショッカーは断末魔の叫び声を上げながら、瞬く間に消滅した。

 

 

 

「やったか?」

 

「里香ちゃん、それフラグ」

 

 

 

『まだだぁ……! 私は(よみがえ)る……邪魔などさせないぃ……!!』

 

「きゃあ!? な、なによこれ! 何をするのサイコ・ショッカー!?」

 

「西野!?」

 

 

 

 サイコ・ショッカーの声が聴こえたと思ったら、後ろで観戦していた緑髪の少女に異変が起きた。彼女の身体を霊魂の様なものが取り巻いていたんだ。

 

 

 

「あの悪霊まさか、あの女に取り憑いて……!?」

 

 

 

 ゴウさんが言った。精霊って人間に憑依できるの!?

 

 少女──万理ちゃんで良いかな──万理ちゃんは、為す術もなくサイコ・ショッカーに精神を乗っ取られて、一度ガクンと項垂(うなだ)れた後に顔を上げると、その両目は真っ赤に染まっていた。だんだん展開がホラー映画じみてきたのはボクの気のせい?

 

 

 

「フッ……フフフフ……さぁ、決闘(デュエル)を続けるぞ!」

 

 

 

 西野(サイコ・ショッカー) LP 4000 → 3500

 

 

 

「……完全に悪霊に憑かれたか……西野のバカ。だから言ったんだ」

 

「里香ちゃん、アレって何とか出来ないの?」

 

「恐らく……悪霊の復活が不完全な今なら、まだ救い出せる可能性はある」

 

「つまり、この決闘(デュエル)で勝てばいいと」

 

「そういうこと。感謝しろよ西野、ひとつ貸しだ!」

 

 

 

 まさか事件の主犯格まで助ける事になるとは。

 

 

 

「私のターン、ドロー! 【命削りの宝札】を発動! さらに3枚ドローする!」

 

(……フフフッ)

 

「私はカードを3枚伏せてターンエンドだ!」

 

 

 

 また3枚の伏せカードか。ようやく反撃の好機(チャンス)が巡ってきたっていうのに。

 

 

 

「ボクのターン! ……よし! 【フェアリー・ドラゴン】召喚!」

 

 

 

【フェアリー・ドラゴン】 攻撃力 1100

 

 

 

「伏せカードは怖いけど、ここは攻める! 【フェアリー・ドラゴン】で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「永続(トラップ)発動! 【デスカウンター】! 直接攻撃(ダイレクトアタック)によって戦闘ダメージを与えたモンスターを破壊する!」

 

「ッ!」

 

 

 

 【フェアリー・ドラゴン】の攻撃は止まらない。そのまま万理ちゃんにダメージを与えた。

 

 

 

「ぐっ……!」

 

 

 

 西野(サイコ・ショッカー) LP 3500 → 2400

 

 

 

「この瞬間、【デスカウンター】の効果が発動! 【フェアリー・ドラゴン】を破壊する!」

 

「!」

 

 

 

 【デスカウンター】のカードから発射された光線に撃ち抜かれて、【フェアリー・ドラゴン】は消し飛んでしまう。

 

 

 

「っ……【フェアリー・ドラゴン】……!」

 

「やはり一筋縄ではいかないか。私のターン、ドロー!」

 

(……(トラップ)カード・【レインボー・ライフ】か……)

 

「私はカードを1枚伏せて終了だ!」

 

「ならば私のターン! 手札から【マジック・プランター】を発動! 【デスカウンター】を墓地へ送り、カードを2枚ドロー! さらに罠カード・【貪欲な(かめ)】! 墓地のカードを5枚デッキに戻し、1枚ドローする!」

 

 

 

 万理ちゃんの墓地から【人造人間-サイコ・ショッカー】、【人造人間-サイコ・ジャッカー】、【死のデッキ破壊ウイルス】、【魔法の筒(マジック・シリンダー)】、【命削りの宝札】の5枚がデッキに戻り、万理ちゃんはもう1枚カードを引いて、手札が3枚に増えた。どんだけドローする気!?

 

 

 

「そして私は【人造人間-サイコ・リターナー】を召喚!」

 

 

 

【人造人間-サイコ・リターナー】 攻撃力 600

 

 

 

「今度はこちらの直接攻撃(ダイレクトアタック)だ! 『電脳(サイバー)エナジーショット』!」

 

 

 

 小柄な人造人間が、体格に見合ったサイズのエネルギー弾を撃ち放つ。

 

 

 

「させないよ! (トラップ)発動、【ガード・ブロック】!」

 

 

 

 今の今まで【サイコ・ショッカー】のせいで使えなかった防御札を、ようやく発動できる。これで──

 

 

 

「かかったな! それを待っていた!」

 

「!?」

 

(トラップ)カード・【サイコ・ショックウェーブ】! このカードは相手が(トラップ)を発動した時に発動できる! 私は手札の魔法(マジック)カード・【エクトプラズマー】を墓地に捨て、デッキから機械族・闇属性・レベル6のモンスター1体を特殊召喚する!」

 

「機械族で闇属性でレベル6って、まさか……!?」

 

「そうだ、私が呼び出すのは当然──」

 

 

 

【人造人間-サイコ・ショッカー】 攻撃力 2400

 

 

 

「また出たか……【サイコ・ショッカー】……!」

 

 

 

 里香ちゃんが忌々しげに呟く。最初に【貪欲な瓶】で【サイコ・ショッカー】をデッキに戻したのはこの為か。それにしても、サイコ・ショッカーが場に出たのに万理ちゃんが正気に戻らないって事は、()()はあの状態のまま闘うつもりらしい。

 

 

 

「【サイコ・ショッカー】の効果により、(トラップ)カードは無効化される! 『トラップ・クラッシュ』!」

 

「しまった……!」

 

 

 

 【ガード・ブロック】が無効となり、里香ちゃんが伏せてくれていた【レインボー・ライフ】も使用できなくなった。そして(トラップ)をすり抜けた【サイコ・リターナー】の攻撃が、里香ちゃんに炸裂した。

 

 

 

「うぐっ……!」

 

「里香ちゃん!?」

 

 

 

 セツナ × 里香 LP 4000 → 3400

 

 

 

「だ、大丈夫だ、これくらい…… ──ッ!?」

 

「! ぼ、ボク達の身体が!?」

 

 

 

 ライフポイントが減った途端、ボクの身体の一部が綺麗さっぱり消失してしまった。里香ちゃんも同様だ。

 

 

 

「フフフッ、ライフポイントは600マイナス。その600ポイント分の肉体が、私の復活の為の生け贄となったのだよ」

 

「……っ……ライフが(ゼロ)になったら、肉体が完全に消えちゃうってわけか」

 

 

 

 そんな死に方は、死んでも御免こうむる。

 

 

 

「まだ私の攻撃は残っている! ()れ【サイコ・ショッカー】!!」

 

 

 

電脳(サイバー)エナジーショック!! -

 

 

 

 敵の標的は、またもや里香ちゃんだ。ボクは考えるより先に、身体が動き出していた。

 

 

 

「ッ!!」

 

「セツナ!?」

 

 

 

 里香ちゃんの前に立ち、両腕をこれでもかと言うくらいに広げて、彼女の盾となる。相当なダメージを食らう事を覚悟して、歯を食い縛った。

 そのまま【サイコ・ショッカー】が放ったエネルギー弾が、ボクに直撃する──

 

 

 

「里香!!」

 

 

 

 ──寸前、ボクの視界に、別の人影が飛び込んできた。横から現れた人影の正体は──ゴウさんだった。彼はボクと同じ様に両手を目一杯に広げ、次の瞬間、サイコ・ショッカーの攻撃を、その大きな背中で受け止めた。

 

 

 

「ぐあぁぁあっ!!」

 

「ゴウ!!」

 

「ゴウさん!?」

 

 

 

 苦悶の表情を浮かべつつも決して倒れず、上級モンスターの悪霊の一撃を、一身で受けきったゴウさん。攻撃が止むと、ボクは慌ててゴウさんの身体を抱き止めて支えた。

 

 

 

「ゴウさん大丈夫!? しっかりして!」

 

「がはっ! ……へっ、心配すんな……精霊回収者ってのは、精霊力に対してある程度……耐性があるもんだ……!」

 

「だからって悪霊の攻撃を生身で受ける奴があるか! 全く無茶をして……」

 

「里香、その言葉は、うぐっ……! セツナの方に言ってやってくれねぇか?」

 

「もういい喋るな……安静にしてろ」

 

 

 

 瀕死のゴウさんを床に寝かせた後、里香ちゃんは立ち上がって万理ちゃんに視線を向けた。正確には、万理ちゃんの中に宿っているサイコ・ショッカーを見ているのだろう。その眼には怒りが感じられた。

 

 

 

「よくも私の相棒を傷つけてくれたな……貴様は絶対に許さない!!」

 

「ふん。闘いの()(なか)に入り込んできた愚かな人間など、心配している余裕があるのか?」

 

「「っ……!!」」

 

 

 

 セツナ × 里香 LP 3400 → 1000

 

 

 

 ゴウさんがボク達を守ってくれたおかげで実際にダメージを受ける事は無かったけれど、二人で共有しているライフが一気に減少したのは事実。もうすでに里香ちゃんとボクの身体は、大部分が持ってかれていた(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 

「フフフフッ! 貴様らに更なる絶望を与えてやろう! 【サイコ・ショッカー】を墓地へ送る!」

 

「!」

 

「見るがいい! これぞ我が最強の進化形態! 【人造人間-サイコ・ロード】!!」

 

 

 

【人造人間-サイコ・ロード】 攻撃力 2600

 

 

 

 新たに召喚されたのは、まさに【サイコ・ショッカー】の進化形と言うべき異様の存在だった。6本のコードらしき物が背中から伸びていて、()()のスコープが不気味さを倍増させている。

 

 

 

「この土壇場で、またとんでもないのを出してくれたね……」

 

「怯むなセツナ。どうにか私のターンまで繋げてくれ。後は私がやる」

 

「里香ちゃん……」

 

 

 

 (トラップ)は使えず、モンスターもいないと言う劣勢に追い込まれて、ライフだけでなく自分達の肉体までもが、文字通り風前の灯火となりかけている。それでも(なお)、里香ちゃんは真っ直ぐに相手を見据えていた。

 

 

 

「……分かったよ。ボクのターン! ドロー!」

 

 

 

 引いたカードを見て、ボクは微笑んだ。

 

 

 

「きっと来てくれると思ってたよ! 手札から【トレード・イン】を発動! 手札の【トライホーン・ドラゴン】を墓地に送って、カードを2枚ドロー! ……魔法カード発動、【黙する死者】! 墓地の【ラビードラゴン】を、守備表示で蘇生!」

 

 

 

【ラビードラゴン】 守備力 2900

 

 

 

「守備力2900か……壁モンスターを立てて時間を稼ぐつもりか?」

 

(だが無駄な事だ。【サイコ・リターナー】は直接攻撃(ダイレクトアタック)が可能なのだからな!)

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。──フィニッシュ(チェックメイト)は任せたよ、里香ちゃん!」

 

「あぁ! 私のターン、ドロー!」

 

(……来たか……!)

 

「魔法発動! 【禁じられた聖杯】! モンスター1体の攻撃力を400ポイントアップし、効果を無効にする! 対象は【サイコ・ロード】!」

 

「ぬうっ!?」

 

 

 

【人造人間-サイコ・ロード】 攻撃力 2600 + 400 = 3000

 

 

 

「これで、(トラップ)カードへの制約は無くなった! セツナ!」

 

「うん! (トラップ)発動! 【竜の転生】! 【ラビードラゴン】を除外して、墓地から【オッドアイズ・ドラゴン】を特殊召喚する!」

 

「なに!?」

 

 

 

【オッドアイズ・ドラゴン】 攻撃力 2500

 

 

 

「おのれ……【ラビードラゴン】を蘇生させたのはこいつを呼び出す為か……だが! 攻撃力では【サイコ・ロード】に遠く及ばん! わざわざ貴様が強化してくれたからなぁ! フハハハッ!」

 

「それはどうかな?」

 

「……なんだと?」

 

 

 

 ここでボクは、1枚の伏せカードを発動する。それは、最初に【サイコ・ショッカー】を召喚された次のターンから、ボクがずっと伏せていた(トラップ)カード。

 

 

 

「リバースカード・オープン! 【燃える闘志】!!」

 

「!?」

 

「この(トラップ)を、里香ちゃんの【オッドアイズ】に装備する!」

 

 

 

 【オッドアイズ・ドラゴン】が、その身に紅蓮の炎を纏い、闘争心を燃え上がらせる。

 

 

 

「バトル! 【オッドアイズ】で【サイコ・ロード】を攻撃!」

 

「はっ、攻撃だと? 精霊回収者と言えど、所詮は愚かな人間か! 返り討ちにしろ【サイコ・ロード】!」

 

 

 

電脳(サイバー)エナジーインパクト!! -

 

 

 

 前身である【サイコ・ショッカー】の技よりも、格段に威力の増した高圧エネルギーの塊が、【オッドアイズ】に向けて放たれる。 ──しかし里香ちゃんは不敵に笑った。

 

 

 

「【燃える闘志】の効果! 相手フィールドに元々の攻撃力よりも高い攻撃力のモンスターが存在する時、ダメージステップの間、装備モンスターの攻撃力を倍にする!」

 

「なっ……ま、まさか!」

 

「そう、【サイコ・ロード】は【禁じられた聖杯】の効果で、攻撃力が上がっている。よって【オッドアイズ】の攻撃力は倍!」

 

 

 

【オッドアイズ・ドラゴン】 攻撃力 2500 → 5000

 

 

 

「攻撃力……5000だと!?」

 

「今、目を覚まさせてやるぞ西野! 行け! 【オッドアイズ・ドラゴン】!! その二色の眼で、捉えた全てを焼き払え!!」

 

 

 

- スパイラル・フレイム!! -

 

 

 

 二色の眼を光らせ、【オッドアイズ】は渦巻く炎を口から放つ。迫り来るエネルギー弾を貫き、かき消して、炎は【サイコ・ロード】を跡形も無く粉砕した。

 

 

 

「うおおおおおっ!?」

 

 

 

 西野(サイコ・ショッカー) LP 2400 → 400

 

 

 

「【オッドアイズ】が戦闘でモンスターを破壊した時、元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える! 『リアクション・フォース』!!」

 

 

 

 追撃にしてトドメの一撃を受け、万理ちゃんの身体が吹き飛ばされる。

 

 

 

「うぐあああああああっ!!!!」

 

 

 

 西野(サイコ・ショッカー) LP 0

 

 

 

「私達の勝利だ!!」

 

「やった! 勝った!」

 

「へへっ、やりやがった……さすがだぜ、二人とも」

 

 

 

 決闘(デュエル)が終了すると、ボクと里香ちゃんの身体もすっかり元に戻った。

 

 

 

「これで悪霊に奪われた人々の魂も解放されて、消えた住民達も戻ってくる筈だ」

 

「ほっ……良かった」

 

 

 

 里香ちゃんの言葉にボクが胸を撫で下ろして安堵していると、里香ちゃんは床に落ちていた1枚のカードを拾い上げた。

 

 

 

「それ……【サイコ・ショッカー】のカード?」

 

「……回収、完了」

 

 

 

 カードの精霊か……タッグで挑んでも手こずる程の強敵だったけど、なんだかんだで振り返ってみれば、楽しい決闘(デュエル)だったね。

 

 

 

「さて……とりあえず、あの子達を下ろしてあげなくちゃ。いつまでもあのままじゃ、かわいそうだし」

 

「そうだな」

 

 

 

 決闘(デュエル)中ずっと宙吊りにされていた人質の女の子達を、里香ちゃんと二人で拘束から解いてあげる作業が始まった。途中からゴウさんも、「もう復活した」とか言って手伝ってくれた。あれだけのダメージを受けたのに、タフな人だなぁ。

 

 

 

「ふう……セツナ、この子で最後だ」

 

「ありがとう里香ちゃん。みんな怪我は無いみたいだね」

 

 

 

 全員を助け出して命に別状はない事も確認した。これで一安心だね。後はセキュリティに連絡すれば何とかしてくれるでしょう。

 ちなみに万理ちゃんはどうしたかと言うと、里香ちゃんがふん縛って床に転がしてあります。

 

 

 

「にしても……あの女が言ってた通り、ジャルダンの女学生ってのは上玉が揃ってんなぁ。起きた子から順にナンパしてやりたいぜ」

 

「今日くらいは控えろ、フェミニスト」

 

 

 

 あ、ゴウさんってそういうキャラなの?

 

 

 

「冗談だって。おし、セキュリティには俺から連絡しとく。まぁ事情聴取とかメンドクセーから、俺達はトンズラするけどな」

 

「そっか。じゃあボクも帰……あ……あれ?」

 

 

 

 立ち上がって歩き出そうとしたら、急に身体の力が抜けて尻餅を突いてしまった。

 

 

 

「ど、どうしたセツナ!? 大丈夫か!」

 

 

 

 里香ちゃんが心配そうに駆け寄ってくれる。次の瞬間、ぐぅ~っと、腹の虫が盛大に鳴った。

 

 

 

「…………お腹が空いて力が入らない……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 そう言えば今日の昼から何も食べてないんだった。緊急事態でそれどころじゃなかったのと、決闘(デュエル)に夢中で完璧に忘れてた。事件が終息して気が抜けちゃったのかな。

 

 

 

「……フッ、セツナ。腹が減るって事は、君の魂が肉体に帰ってきた証拠だ」

 

「……あははっ、なら良かった」

 

「やっぱり面白い奴だな、お前は」

 

 

 

 ボク達3人は、くたびれた様子で笑い合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セキュリティが廃工場に到着して、軟禁されていた女の子達を救出していくのを、ボク達は離れた場所で見守っていた。たぶん今ごろ万理ちゃんは逮捕されてるのかな。今回の大騒動の引き金となった張本人だからね。

 何にせよ今夜からは枕を高くして眠れそうだ。

 

 

 

「やれやれ、やっと終わったな。行こうぜ、里香」

 

「……あぁ」

 

 

 

 二人とも、もう行っちゃうみたいだ。悪霊を回収し終えて事件を解決したから、ジャルダン(この街)に留まる理由も無くなったんだろう。お別れの挨拶と、お礼をしておかないと。

 

 

 

「里香ちゃん、ゴウさん。本当にありがとう。二人のおかげで街は救われたし、ボクも死なずに済んだよ」

 

「こちらこそ感謝するよセツナ。君の協力が無ければ、きっと勝てなかった」

 

「短い間だったけど、一緒に決闘(デュエル)できて楽しかったよ里香ちゃん。……じゃあね」

 

 

 

 きっと、もう会えないかも知れない。

 

 

 

「あぁ……さよな──」

 

「オーーーホホホホホッ!!」

 

「「「!!!?」」」

 

 

 

 誰だこのちょっと感動的な別れのシーンのムードを邪魔する、甲高い笑い声の主は!?

 

 

 

「あっ……! 西野!?」

 

「ウフフ、また会ったわね。マイスイートエンジェル!」

 

「だからその不愉快な呼び方はやめろー!」

 

「あの女、あんな目に遭ってまだ懲りてねぇのか」

 

「ていうか、どうやってあの縄を抜けたの?」

 

「里香。今回は不覚を取ったけれど、次こそは貴女を私色に染めてアゲル。じゃ~ね~~~!」

 

 

 

 万理ちゃんは里香ちゃんに投げキッスをぶつけて、忍者の様な軽やかな身のこなしで退散していった。さっきまで悪霊の操り人形にされてたのに元気な人だね。

 

 

 

「里香ちゃん、なかなか熱心なファンがついてるね」

 

「違う。アレは粘着質なストーカーだ」

 

 

 

 ため息をついて肩を落とす里香ちゃん。ほんと、さっきまでの空気がぶち壊しだ。……まぁでも、しんみりするのは好みじゃなかったから、むしろ感謝するべきかな?

 

 

 

「じゃあ改めて……またね(・ ・ ・)、二人とも」

 

「……フフッ、そうだな。また会おう、セツナ」

 

「次はお前と決闘(デュエル)できるのを楽しみにしてるぜ」

 

「うん!」

 

 

 

 二人は爽やかな笑顔を残して立ち去っていく。

 

 さぁ、ボクも帰ろっか。ボクらの街へ!

 

 

 

 ──ジャルダンの街を恐怖と混乱に陥れた連続失踪事件は、こうして幕を閉じた。

 翌日のニュースによると、廃工場で保護されたアカデミアの生徒達を初め、今までに被害に遭った行方不明者が次々と発見され、無事に家族との再会を果たしたらしい。

 犯人は最後まで見つからなかったみたいだけど、それ以降、新たな被害者は出ておらず、数日後には事件は完全に風化していった。

 まぁ犯行が突然ピタリと止んだのは、その犯人が消えちゃった(・ ・ ・ ・ ・ ・)からなんだけど……

 

 全ての真相を知っているのは、ボクと、二人の決闘者(デュエリスト)だけ。

 

 

 

 ──また会おう、セツナ。

 

 

 

「うん。……きっと、また会えるよね」

 

 

 

 





 長らくお待たせしてしまいました! コラボ編、これにて完結です!!

 yunnnさん、改めてコラボのお誘いありがとうございました!!
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